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作者: 七霧 孝平
第2話
荒野の町を出た三人。

コウルはそこで最初の試練に直面する。



「はあっ!」

ジンの剣の一閃がモンスターを切り裂く。だが一方――。

「や、やっ!」

コウルの剣がモンスターを掠める。反撃に転じようとするモンスターをジンが素早くきりつけた。

「す、すみません」

「いや、気にすることはない。いきなり戦わせるのは酷だったね」

ジンは自分の剣をしまい周りの安全を確認すると、コウルに剣を構えてみるように言った。

「こうですか?」

コウルは剣道のような構えを取る。

「うん、構えはさまになっている。が……」

コウルの手はプルプルと震えていた。

「剣、重いかい?」

「ええ、少し……」

ジンはひとつ重大なことに気づいた。

「魔力の巡りを教えていなかったね」

「え、魔力? 巡り?」

ジンは頷くと、精神を集中し始める。そして腕を前に出すと、光の玉が放たれ近くの岩を粉砕した。

「これは……」

「この世界では魔力をコントロールすることで様々な力になる。これは一番簡単な魔力弾……と、私は呼んでいる」

「魔力弾……」

コウルの頭の中で様々なフィクション作品を思い浮かべる。

エネルギーを飛ばす。単純だがわかりやすい攻撃手段だ。

コウル、そして観ていたエイリーンも魔力の練習を行うことになった。

「まず、魔力を集中してみよう。精神を集中して、力が巡るイメージをするんだ」

二人は言われた通り精神を集中する。

ジンの眼には二人に魔力が集中していくのがわかる。

だが予想外だったことがあった。

「これは――!」

コウル、エイリーン。二人の魔力はジンの想像を上回っていた。

「ジンさん?」

「ああ、コウルくん、エイリーンちゃん。やめていいよ」

言われるまま二人は一呼吸入れる。魔力はおちついた。

「すごいな。二人とも」

「そうなんですか?」

今のコウルにはわからない。

「この世界では魔力の強さは、能力の強さと言っても過言じゃない。二人の今の集中した魔力は私以上だよ」

コウルとエイリーンはわからないながらも二人で喜ぶ。

その様子をジンは一人見ながら考え込んだ。

(コウルくんも十分だが、エイリーンちゃんの魔力、そこが知れなかった。コウルくんの腕を治した力といい彼女は一体……)

「ジンさん?」

呼ばれてハッとしたジンは咳払いをすると、続きを教え始める。

「さて、これが一番コウルくんにとって重要かな。先ほどのように魔力を集中したら、全身に流れるようにイメージするんだ」

言われた通りにすると、二人は力が巡ってくるのを感じた。

「す、すごい! 力が沸いてくるみたいです!」

「うん。剣をもう一度構えてごらん」

コウルは剣を構える。

先ほどと同じ構え。しかし先ほどと違い腕の震えなく剣を持っている。

「バッチリだ」

「格好いいです。コウル様」

「ありがとう。……様?」

「どうかしましたか?」

「いや、様付けで呼ばれるなんてと思って。呼び捨てでいいよ」

慣れない呼ばれ方に、コウルは戸惑う。

しかしエイリーンは。

「コウル様にジン様。助けてもらってるのです。そう呼ばせてください」

「ああ、うん」

コウルとジンは顔を合わせると。

「彼女、高貴な者かもしれないな」

「そうですね」

そう思うのであった。

「さて、魔力の練習はこれくらいかな。慣れてくると魔力を自由に体に巡らせて、腕を強めにしたり、足を強めにしたりできるが、まあそれは追々だろう」

そう言ってジンは歩き出す。二人はその後を追った。



町から町までは当然、かなりの距離がある。

コウルたちは安全を確認しつつキャンプをすることになった。

「ジンさんってなんでもできますよね」

食事をしながらコウルが呟く。

安全地帯の確認、簡易寝床の設置、料理。全てジンが早々と済ませていた。

「ははっ、これくらいは慣れればきみにもできるさ」

「そうですかね……」

倒してきたモンスターの肉をその場で捌きだした時に、あれはできそうにないと感じたコウルであった。



「これは――」

三人はひとつの村に立ち寄った。だがそこはには大勢の人が倒れている。

「大丈夫ですか!?」

コウルは近くの村人をゆっくり起こし声をかける。

村人は少しだけだが声を発し、目を覚ます。他の村人たちも皆、命に別状はなかった。

「どうしてこんなことに?」

ジンの問いに村人の一人が答える。

「数日前のことです、あなたたちと同じく旅の方がこの村を訪れました。

するとその男は『大事な話がある』と我々を広場に集めました。

そしたら……よくわからないのですが、急に力が抜けていき、皆倒れてしまったのです」

「力が抜ける?」

コウルが首をかしげる。

「魔力を急激に失うと、力を失い朦朧とすることがある。それかもしれない」

「!」

ジンの答えにエイリーンが反応する。

「魔力……失う……奪う? 何か思い出しそうなのですが……」

「魔力を奪う……か」

エイリーンの言葉をジンが復唱しつつ考える。

だがサッと切り替え、写真を取り出し村人に見せた。

「まさか、その男とはこの男ではないか?」

コウルとエイリーンも見た、ジンの友人カーズの写真。

それを見た村人は――。

「こ、この人です。間違いありません!」

「!」

ジンがいつもより大きく反応し。

「ありがとう。すまないが急ぐので。失礼する」

「え、ジンさん? 今日はここに泊まるんじゃ……」

「カズの手がかりを見つけたんだ。まだ追いつける。それに――」

(この村と同じく、他の町も犠牲になるとも限らない)

速歩で進むジンの背中をコウルとエイリーンは必死に追った。

そして、とある町。
噴水のある広場には町人たちが集合している。その噴水に立つのは――。

「カズ!」

ジンの叫びに町人たちが振り返り、カーズは噴水からジンを見下ろす。

「ジン……」

「やっと見つけたぞ……カズ!」

二人の目線が交じり合う。
今、親友同士のぶつかり合いが始まる――!
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