第16話-if-
エイリーンを乗せた車はその後は問題なく、神社にたどり着いた。
「行ってきます」
エイリーンはすぐに車から出ると、神社の前で紋章を描く。
すると光が展開し、一瞬でエイリーンの姿が消えた。
「これが異世界人か……」
ミナミ大佐は怖い表情でその様子を見ていた。
「エイナール様!」
すぐにエイリーンはエイナールの所へ向かう。
「事情は分かっています。貴女に魔力使用の許可を与えましょう」
エイナールが光を放ち、エイリーンの封印が解ける。
「ありがとうございます。行ってきます」
「気を付けるのですよ……」
エイナールが悲しげな眼で見ていることにエイリーンは気づかなかった。
「戻りました!」
「早かったな。乗れ」
エイリーンは首を横に振ると、翼を広げ飛び立つ。
「なんと……!」
ミナミ大佐は驚く。
「はあっ!」
コウルは多数の異世界軍を相手に奮闘していた。だが数の多さに次第に疲れが蓄積していく。
その時だった。
「コウルー!」
エイリーンが飛んでくる。すぐに魔力を集中すると、魔力弾を一斉に放った。
異世界軍がまとめて吹き飛ぶ。
「お待たせしました」
「いや、わりと早かったよ!」
二人はハイタッチすると、すぐさま残りの異世界軍を追い払いにかかる。
「早く退け、死にたいのか!」
「もう帰ってください。それがあなたたちのためです!」
二人は必死に呼び掛けるが異世界軍は気にもとめない。
「援護しにきたぞ!」
こちらの軍の戦車が救援にくる。こうなるともう一方的だった。
コウルたちの攻撃と戦車の攻撃。同時には耐えられない。
異世界軍は壊滅し、その場は死屍累々と化した。
「二人のお陰であの地域に出没した異世界軍を殲滅できた。感謝する」
「いえ……」
二人は先ほどの状況を思い出す。
異世界エイナールではなかった、血と死体の山。それが二人の気分を悪くする。
「この調子で頼むよ。ハッハッハッ」
ミナミ大佐は笑った。
そして次の日から、コウルたちの異世界軍討伐仕事が始まった。
来る日も来る日も異世界軍との戦い。二人は日に日に疲弊していった。
「大丈夫ですか、コウル……」
「うん……。エイリーンは?」
「わたしは……少し疲れてますが大丈夫です」
その時だった。
「コウルくん、エイリーンさん大変だ」
二人は飛び起きる。
「××地区に大量の異世界軍が集結している。君たちも手を貸してくれたまえ」
二人は車に乗ると、異世界軍との戦闘に向かう。
××地区。そこは広く非常にたくさんの、異世界軍がいた。
だがそれだけではない。異世界軍は強いと言っても、こちらの戦車で充分対応できる。
「それを苦戦させてるのが、あそこだ」
ミナミ大佐は一角を指差す。
鎧に覆われた二人組が暴れまわり、次々と戦車を破壊していた。
「あれは僕たちが止めます。皆さんは他を!」
コウルとエイリーンは鎧の二人組に近づく。鎧の片方は聞いたことのある声をだした。
「移動人コウルと女神見習いエイリーンではないか」
「この声……?」
「私だよ」
鉄仮面が外れる。その下はまたも仮面。
「僕たちを捕らえた奴らのリーダー!」
「フフ……久しぶりだね。この世界の軍に利用されているとはね」
「利用?」
「違うかね? 我々と戦うためだけに使われて。利用ではいと?」
「違う、これはこの世界にお前たちを引き寄せるきっかけを作った、僕たちの責任を取っているだけだ!」
「ふん、うまいこと言いくるめられて……」
「わたしたちを捕らえて利用しようとしたあなたたちに言われたくはありません!」
「ふん。そうか、ならここで、死んでもらう!」
鉄仮面を被り直し、コウルとエイリーン、鎧の男二人の二体二の戦いが始まる。
コウルと片方の仮面の剣がぶつかり合う。その後ろからエイリーンともう片方の仮面が援護する。
「この剣の動き……。あの魔力弾の撃ち方はまさか!?」
「そう、きみたちの戦いかたさ。あの時血を取っただろう? その時のデータからすぐにこの鎧が完成した。きみたちのデータが入った最強の鎧だ!」
コウルとエイリーンの二人は、自身と同じ動きをする鎧に翻弄される。
「だけど、本物は偽物には勝つ!」
「それはどうかなあ」
鎧の剣が違う動きをし、コウルを斬りつける。咄嗟のことにコウルは回避しきれない。
「これはーー!?」
「ただのコピーではない。コピーに我々の持つ他の強力な戦闘データを組み込んであるのだ」
二人は、だんだんと押され始める。しかし余裕は崩さなかった。
「何故そんなに余裕そうなのかな? それとも苦し紛れの笑いかな?」
「データは取ったと言ったね……。じゃあ、これはどうかな?」
コウルは手をかざし聖剣を呼んだ。手に聖剣が、現れる。
「な、なんだそれは……データにはなかったぞ!?」
「女神聖剣。僕とエイリーンの絆の力!」
コウルは聖剣を構え踏み出した。
鎧はすぐに防御姿勢を取る。
「遅い!」
コウルはすぐさま斬る向きを替え、防御を切り崩す。
「がっ……馬鹿な!?」
目の前の鎧を切り落とすと、次は後ろの鎧目掛け跳躍する。
データにない動きに、後ろの鎧はあっさりと斬られた。
こうして、鎧に崩された戦線は立て直され、××地区に集結していた異世界軍は殲滅。異世界軍との、戦いは終わりに近づいていた。だが……。
「こちらミナミ大佐だ。ドクターEにもう用はない始末しろ」
そしてーー。
「はあはあ、これで、今回の戦いも終わり?」
「そうですね。あと少しで、また平和にーー」
パァン!
銃声が響いた。
コウルは後ろを振り向くと、エイリーンが倒れてくる。
「エイ……リーン?」
抱き止めたエイリーンは動かない。
コウルはそっとエイリーンを見た。血がついている。いや、血が流れている。
「エイリーン!? エイリーン!」
コウルが呼び掛けるが返事はない。
「無駄だ。娘は死んだ」
エイリーンの向こうにはミナミ大佐が立っていた。
「ミナミ大佐……? これはどういうことです!」
「見ての通りだよ。エイリーンくんには死んでもらった。ドクターEにもな」
「何故!?」
「きみたちの圧倒的力だよ。今回は味方となったが、また味方とは限らない。次に敵になっているかもしれないだろう?」
ミナミ大佐はコウルに銃を向けた。
「だから今のうちに死んでもらおうというわけだ」
「っ……! うおおっ!」
コウルは剣を挙げ大佐に斬りかかる。その剣は裏切られたことへの怒りか、エイリーンを失った悲しみか。
「無駄だよ」
ミナミ大佐がスイッチを押す。突然、コウルから力が抜けていく。
「な、なにを、……した?」
「ドクターEはいいものを残してくれた。もしもの時のための服の効果をなくす装置。これできみはただの一学生にすぎない」
「くそっ……くそおっ!」
改めて大佐はコウルに銃を向けた。
「さよならだ……コウルくん」
引き金に指がかけられた。
(ここまでなのか……僕は……。エイリーンの仇も撃てないまま僕は……!)
(力が欲しいか)
突如、コウルの脳内に声が響く。
(この声は……)
(力が欲しいか)
コウルの脳内にひとつの宝玉が浮かび上がる。
(あれは、カーズがくれた闇の宝玉!?)
(力が欲しいか)
宝玉は常にそれだけを聞いてくる。
(闇の……魔力……)
コウルは目の前の宝玉に手をかざす。
(ああ、いいよ。力をくれ。エイリーンを殺したやつを殺す力を!)
コウルの腕に闇の宝珠が収まった。
パァン!
銃声が響く。だが、コウルはその弾をギリギリで受け止めた。
「な……!?」
ミナミ大佐は驚愕の表情を浮かべる。
「服の力は無力化したはず、銃弾を受け止めるなどできるはずがない!」
コウルは無言で近づく。
「く、来るな!」
大佐は連続で銃を撃つ。だがコウルはそれを全て受け止める。
「あ、ああ……」
弾が切れ大佐はすぐに弾を入れ換えようとする。だがもう遅かった。
「終わりだ」
コウルは剣を振り下ろした。
ミナミ大佐は血を流し倒れる。
「くくく……ハッハッハッ!」
コウルは笑う。それがなんの笑いなのか、もはや自分でもわからない。
「た、大佐がやられたぞ! う、撃てー!」
兵たちが一斉にコウルに向け発砲する。
だが無駄だった。コウルは全て避けると、次々と兵士を切り裂いていく。
それから数分後、そこは地獄と化していた。
敵も味方もない血だらけのエリア。そこに独りコウルは立つ。
エイリーンの亡骸を抱えながら。
「行ってきます」
エイリーンはすぐに車から出ると、神社の前で紋章を描く。
すると光が展開し、一瞬でエイリーンの姿が消えた。
「これが異世界人か……」
ミナミ大佐は怖い表情でその様子を見ていた。
「エイナール様!」
すぐにエイリーンはエイナールの所へ向かう。
「事情は分かっています。貴女に魔力使用の許可を与えましょう」
エイナールが光を放ち、エイリーンの封印が解ける。
「ありがとうございます。行ってきます」
「気を付けるのですよ……」
エイナールが悲しげな眼で見ていることにエイリーンは気づかなかった。
「戻りました!」
「早かったな。乗れ」
エイリーンは首を横に振ると、翼を広げ飛び立つ。
「なんと……!」
ミナミ大佐は驚く。
「はあっ!」
コウルは多数の異世界軍を相手に奮闘していた。だが数の多さに次第に疲れが蓄積していく。
その時だった。
「コウルー!」
エイリーンが飛んでくる。すぐに魔力を集中すると、魔力弾を一斉に放った。
異世界軍がまとめて吹き飛ぶ。
「お待たせしました」
「いや、わりと早かったよ!」
二人はハイタッチすると、すぐさま残りの異世界軍を追い払いにかかる。
「早く退け、死にたいのか!」
「もう帰ってください。それがあなたたちのためです!」
二人は必死に呼び掛けるが異世界軍は気にもとめない。
「援護しにきたぞ!」
こちらの軍の戦車が救援にくる。こうなるともう一方的だった。
コウルたちの攻撃と戦車の攻撃。同時には耐えられない。
異世界軍は壊滅し、その場は死屍累々と化した。
「二人のお陰であの地域に出没した異世界軍を殲滅できた。感謝する」
「いえ……」
二人は先ほどの状況を思い出す。
異世界エイナールではなかった、血と死体の山。それが二人の気分を悪くする。
「この調子で頼むよ。ハッハッハッ」
ミナミ大佐は笑った。
そして次の日から、コウルたちの異世界軍討伐仕事が始まった。
来る日も来る日も異世界軍との戦い。二人は日に日に疲弊していった。
「大丈夫ですか、コウル……」
「うん……。エイリーンは?」
「わたしは……少し疲れてますが大丈夫です」
その時だった。
「コウルくん、エイリーンさん大変だ」
二人は飛び起きる。
「××地区に大量の異世界軍が集結している。君たちも手を貸してくれたまえ」
二人は車に乗ると、異世界軍との戦闘に向かう。
××地区。そこは広く非常にたくさんの、異世界軍がいた。
だがそれだけではない。異世界軍は強いと言っても、こちらの戦車で充分対応できる。
「それを苦戦させてるのが、あそこだ」
ミナミ大佐は一角を指差す。
鎧に覆われた二人組が暴れまわり、次々と戦車を破壊していた。
「あれは僕たちが止めます。皆さんは他を!」
コウルとエイリーンは鎧の二人組に近づく。鎧の片方は聞いたことのある声をだした。
「移動人コウルと女神見習いエイリーンではないか」
「この声……?」
「私だよ」
鉄仮面が外れる。その下はまたも仮面。
「僕たちを捕らえた奴らのリーダー!」
「フフ……久しぶりだね。この世界の軍に利用されているとはね」
「利用?」
「違うかね? 我々と戦うためだけに使われて。利用ではいと?」
「違う、これはこの世界にお前たちを引き寄せるきっかけを作った、僕たちの責任を取っているだけだ!」
「ふん、うまいこと言いくるめられて……」
「わたしたちを捕らえて利用しようとしたあなたたちに言われたくはありません!」
「ふん。そうか、ならここで、死んでもらう!」
鉄仮面を被り直し、コウルとエイリーン、鎧の男二人の二体二の戦いが始まる。
コウルと片方の仮面の剣がぶつかり合う。その後ろからエイリーンともう片方の仮面が援護する。
「この剣の動き……。あの魔力弾の撃ち方はまさか!?」
「そう、きみたちの戦いかたさ。あの時血を取っただろう? その時のデータからすぐにこの鎧が完成した。きみたちのデータが入った最強の鎧だ!」
コウルとエイリーンの二人は、自身と同じ動きをする鎧に翻弄される。
「だけど、本物は偽物には勝つ!」
「それはどうかなあ」
鎧の剣が違う動きをし、コウルを斬りつける。咄嗟のことにコウルは回避しきれない。
「これはーー!?」
「ただのコピーではない。コピーに我々の持つ他の強力な戦闘データを組み込んであるのだ」
二人は、だんだんと押され始める。しかし余裕は崩さなかった。
「何故そんなに余裕そうなのかな? それとも苦し紛れの笑いかな?」
「データは取ったと言ったね……。じゃあ、これはどうかな?」
コウルは手をかざし聖剣を呼んだ。手に聖剣が、現れる。
「な、なんだそれは……データにはなかったぞ!?」
「女神聖剣。僕とエイリーンの絆の力!」
コウルは聖剣を構え踏み出した。
鎧はすぐに防御姿勢を取る。
「遅い!」
コウルはすぐさま斬る向きを替え、防御を切り崩す。
「がっ……馬鹿な!?」
目の前の鎧を切り落とすと、次は後ろの鎧目掛け跳躍する。
データにない動きに、後ろの鎧はあっさりと斬られた。
こうして、鎧に崩された戦線は立て直され、××地区に集結していた異世界軍は殲滅。異世界軍との、戦いは終わりに近づいていた。だが……。
「こちらミナミ大佐だ。ドクターEにもう用はない始末しろ」
そしてーー。
「はあはあ、これで、今回の戦いも終わり?」
「そうですね。あと少しで、また平和にーー」
パァン!
銃声が響いた。
コウルは後ろを振り向くと、エイリーンが倒れてくる。
「エイ……リーン?」
抱き止めたエイリーンは動かない。
コウルはそっとエイリーンを見た。血がついている。いや、血が流れている。
「エイリーン!? エイリーン!」
コウルが呼び掛けるが返事はない。
「無駄だ。娘は死んだ」
エイリーンの向こうにはミナミ大佐が立っていた。
「ミナミ大佐……? これはどういうことです!」
「見ての通りだよ。エイリーンくんには死んでもらった。ドクターEにもな」
「何故!?」
「きみたちの圧倒的力だよ。今回は味方となったが、また味方とは限らない。次に敵になっているかもしれないだろう?」
ミナミ大佐はコウルに銃を向けた。
「だから今のうちに死んでもらおうというわけだ」
「っ……! うおおっ!」
コウルは剣を挙げ大佐に斬りかかる。その剣は裏切られたことへの怒りか、エイリーンを失った悲しみか。
「無駄だよ」
ミナミ大佐がスイッチを押す。突然、コウルから力が抜けていく。
「な、なにを、……した?」
「ドクターEはいいものを残してくれた。もしもの時のための服の効果をなくす装置。これできみはただの一学生にすぎない」
「くそっ……くそおっ!」
改めて大佐はコウルに銃を向けた。
「さよならだ……コウルくん」
引き金に指がかけられた。
(ここまでなのか……僕は……。エイリーンの仇も撃てないまま僕は……!)
(力が欲しいか)
突如、コウルの脳内に声が響く。
(この声は……)
(力が欲しいか)
コウルの脳内にひとつの宝玉が浮かび上がる。
(あれは、カーズがくれた闇の宝玉!?)
(力が欲しいか)
宝玉は常にそれだけを聞いてくる。
(闇の……魔力……)
コウルは目の前の宝玉に手をかざす。
(ああ、いいよ。力をくれ。エイリーンを殺したやつを殺す力を!)
コウルの腕に闇の宝珠が収まった。
パァン!
銃声が響く。だが、コウルはその弾をギリギリで受け止めた。
「な……!?」
ミナミ大佐は驚愕の表情を浮かべる。
「服の力は無力化したはず、銃弾を受け止めるなどできるはずがない!」
コウルは無言で近づく。
「く、来るな!」
大佐は連続で銃を撃つ。だがコウルはそれを全て受け止める。
「あ、ああ……」
弾が切れ大佐はすぐに弾を入れ換えようとする。だがもう遅かった。
「終わりだ」
コウルは剣を振り下ろした。
ミナミ大佐は血を流し倒れる。
「くくく……ハッハッハッ!」
コウルは笑う。それがなんの笑いなのか、もはや自分でもわからない。
「た、大佐がやられたぞ! う、撃てー!」
兵たちが一斉にコウルに向け発砲する。
だが無駄だった。コウルは全て避けると、次々と兵士を切り裂いていく。
それから数分後、そこは地獄と化していた。
敵も味方もない血だらけのエリア。そこに独りコウルは立つ。
エイリーンの亡骸を抱えながら。