残酷な描写あり
R-15
サーカスから追放
ピエロが明確な殺意を持っているから、ファラ姫は政治的な駆け引きをする余裕がなく、冒険者ギルドの指名手配犯であるローグと共に戦うしかない！
ファラは目の隅で、ミーリがソフィアの手を治療しているさくらのところに駆けつけるのを見た。彼女は自分の仲間に指示を出す余裕がなく、彼女たちが適切な行動を取ることを信じていた。
「先程マスターからの指示がありました。ここにいる４人はすぐに戦線を離れて、主教にあなたのポーションで治療を施してください」さくらがミーリに伝える。
「彼はパーティーの中で私だけがポーションを持っていることを知っているの？」ミーリが言う。短い間の交流で、このローグという冒険者が様々な職業の戦術に非常に詳しいことに気付いた。
「マスターにとって盗賊が主教が負傷した際に使用するポーションを常備するのは常識。では、出発しましょう」さくらは動けないソフィアとエリナを背負い、ミーリとともに森へと逃走した。
「あらあら、すぐに倒さないといけない相手が攻撃範囲から逃れると面倒ね……」とピエロが言い、さくらの方向に袖口から花火を発射する。
「【百步穿葉】！」ローグの矢が空中で花火を爆発させ、その攻撃を阻止した。
「まずは二人のサンドバックを越えなければね。それに、チートスキルで不死身になっているから、本当に面倒だ……」
「【一獲千金】－『攻撃力５フレア』！『防御力７ボーリー』！」ピエロは核エネルギーと聖光を放ち！この攻撃で相手を殺すことはできないが、一時的に行動不能になることができる。
「【光神守護】－『攻撃力アップ（中）』『防御力アップ（小）』！」ファラは魔法陣を展開し、自分とローグにステータスを強化する。
【光神守護】の特徴は、様々なバフを使うことができることだ。ファラは普段属性防御の技を使っているが、ステータス強化技も取得する！
核エネルギーの爆発が攻撃力１７９のローグを通り抜けた、聖光は防御力１３６のファラには届かなかった。
「攻撃力プラス２４、防御力プラス１０か……これでちょうど５と７の倍数を逃れたわけね。計算早いわね……あ、これは【|王者号令（ステータス）】の効果。」
ファラの目は自分とローグのステータスを輝き、それで適切なバフを見つけ出す。計算を誤れば、バフ後のステータスは本来の倍数ままでは【光神守護】の対策は無意味になる。
「はあっ！」とファラは声を上げ、ピエロに突進し【突進猛襲】の距離に引き込む。
「攻撃力が５８６もあるのか……」ピエロが大きな手袋を挙げて、金属音でファラの長剣を弾き飛ばす。「だが、防御力９９９の装備で防げばいい」
ピエロの手袋は、冒険者ギルドが冒険者たちから徴収した血税で作られた最高級の装備だ！ピエロはそのような装備で身を固めており、その肉体のステータスはローグやファラをはるかに超えていた。これが冒険者ギルドの切り札－ピエロだ！
ファラは長剣を振り続けて攻撃するが、ピエロはファラの敏捷力や日常の素振りの回数から、彼女の剣の速度と角度を完全に計算し尽くしていた。彼女の一振り一振りが、ピエロの手袋によって正確に防がれる！
ファラとピエロの交戦の最中、ローグはピエロの背後に回り込み、彼の動体視力では捉えられないスピードで矢を放つ！
しかしピエロはローグの瞬間加速能力と彼が普段読むのエロ本でローグの射撃習慣と好みの軌道を正確に計算し、足元のバネで躍起してローグの矢を避けた。その矢が逆に交戦最中のファラに命中する！
「うっ！」ファラは胸に刺さった矢を抜き、チートスキルの効果で傷が瞬時に癒え、かろうじて死なずに済む。
「くそ……こっちは二人もいるのに、相手も戦闘スキルなし、でもステータスが把握されているせいで完全に劣勢に立たされている！」
ローグとファラのスキルはピエロの道化師コンボに対応できず、戦闘全体的に圧倒されてしまう。
「ふぅ……」ファラは剣を握りしめ、息を切らしながら苦しんでいる。パーティーのサポートがなく、HPが0.0001％というひどい状態には行動すること自体が非常に苦痛である。彼女がまるでHPが満タンであるかのように動けるのは、彼女自身の強固な意志力によるものだ。
「バサッ！」ピエロはファラへの攻撃をつもりたが、ローグの放った矢によって防御の構えに切り替る。
「姫騎士、私たちが持っている八つのスキルの中で、勝機があるのはあなたの【|王者号令（ステータス）】だけ！私があなたが休む時間を稼ぐから、この間【光神守護】で私をサポートしてください。」
「分かった……」直接戦闘スキルはピエロには効いてない、【一獲千金】に対抗できる【光神守護】も時間稼ぎに過ぎない。【支配従属】も冒険者には効かないため、二人の勝利の機会は【|王者号令（ステータス）】を活用してステータスを超越する戦術しかない！
ファラは剣を垂れて地面に突き刺し、これまで常に前線で仲間を守ってきた彼女は、初めて後衛に下がり指揮に専念する。
「『縮地』！『瞬間射擊』！」ファラはローグが【百步穿葉】で習得した技能を呼び出し。たとえ初めての仲間であっても、【|王者号令（ステータス）】はローグの技能名を含めの明白な指示を出すことができる。
ファラの指示のもと、ローグは巧みなステップでピエロを翻弄し、ピエロの手袋は空振りの瞬間でピエロの背後に現れて弓を引く。これは射撃速度を極限まで高めた奇襲攻撃だ！
ピエロは手をローグに向け、手袋の中心部から飛び出るおもちゃロケットをローグに向けて発射する。
熟練した冒険者にとって、敵の前で大声で指示された行動も、敵の反応を待つことなく即座に実行することが可能できる。そのため、ピエロはファラからの具体的な指示を聞いて反応したわけではなく、ローグの準備動作を見て彼の次の一手を予測した！
「【光神守護】！」ローグの胸に魔法陣の描かれた光盾が現れ、おもちゃロケットを防ぐ！しかし、おもちゃロケットの攻撃によって弓を構えの姿勢が崩れ、本来の突撃が不可能になった！
「【百歩穿葉】－『穩固射撃』！」でも煙が消え去るの後、空から落ちるのローグまだ弓矢を構え、矢を放つ。それはファラの命令とは異なる、速度を犠牲にしても弓を構えを安定させるの技能に取ったの原因だ！
「ステータスがバレている今、ピエロを倒すには普段の冒険者のやり方に反する戦術しかない！」その一瞬、ローグは【|王者号令（ステータス）】の指示を無視し、別の攻撃技を選んだ。
この戦法本来は【|王者号令（ステータス）】の指揮システムの意義を失わせる無謀な行動だったが、偶然にもピエロの隙を生じさせた。ローグ即興の戦術は、まさにその予期せぬ瞬間を狙ったものだった。
「おほほ！」ピエロはおもちゃロケットロケットを発射した後、来るべき矢を横に避ける。ピエロはこの予測不可能な攻撃さえも見抜いている。
「【光神守護】の防御と【百歩穿葉】の攻撃が完璧だったのに、どうして当たらないの？」ファラは不安です。二人の連携攻撃は一流の職業冒険者でも避けられないはず。
「『指揮力』の数字から姫騎士の戦術を読み、『変化力』の数字で猟人の即興の一手を判断だけ。冒険者の奇跡なんて、もうテクノロジーで解析できるステータスだよ」ピエロは冷ややかに言う。
ステータスには「レベル」「攻撃力」「防御力」の基本の他、数百の詳細なパラメーターがある。これらを解読し活用するのは、【鑑別認定】の真骨頂だ。
ピエロにステータスがバレたら、もはや抵抗する余地はない。
（マスター、私と姫様のバーディメンバー達はガルのオーク部族と合流しました。次の行動を指示してください）ローグはさくらからのテレパシーを感じ取る。
（さくら、あなたたちは先にここから逃げて。私と姫騎士はチートスキルを持ってから、少なくとも死ぬことはない）
（申し訳ありません、マスター。その命令に従うことはできません。致命傷を防ぐ特殊能力があっても、マスターが拘束された場合、敵に捕まる可能性があり、非常に危険です）
（そんな細かいことはどうにかなる。まずはあなたの安全を確保することが……）
（マスター、今議論すべきは、マスターはピエロの手から生き残る方法です）
「うるさいな！」【生存本能】はテレパシーを使う際口を開く必要がないにも関わらず不満そうに叫ぶ。「お前は前にも勝手に俺のために身代わりになっただろう？今度は私が！美人を守るのは男の義務だ！」
【生存本能】の生前はいつもこの調子だった。外見はやや生意気に見えるが、実際には他人のために自分の命を犠牲にすることも厭わない性格だ。
（マスター、私は工具です。使う者の安全を確保するのが私の役割です。使用者が工具を守るために自己犠牲するのは本末転倒です）
「えっ？またお前の剣の理論か？こんな美人の剣がどこにいるんだよ！」
（マスター、これは主教ソフィアからのメッセージです、姫様に伝えてください。彼女たちの治療はもう終わり、すぐに助けに戻ります、もう少し耐えてください。）
「だからお前ら戻ってきて、何の意味があるんだ……っ！」【生存本能】は自分の武器を見下ろし、感情の高ぶりでスキルのコントロールがうまくできない。【生存本能】の手にする武器は遠距離攻撃が不可能なナイフに変わった。やむを得ず、彼は後ろ向きの宙返りでピエロの正面からの攻撃を避けるしかない。
ピエロの手袋が地面に叩き、灰色の人工地面にひびが入る。しかし、ピエロは再び手を振り、今度は手袋からスプリングを発射し、巨大な手のひらがローグのジャンプした方向に飛んでいき、黑髮青年を捉える！
「キン！」ファラは【光神守護】付きの剣でピエロの手袋をはじき、黒髪青年がその一撃から逃れた。
「すまない、姫騎士」【生存本能】は戦闘態勢を素早く整える。
「ローグ先輩！さくらと話しているのね！」ファラは大声で叫ぶ。「落ち着いて！今は喧嘩する時じゃない！あの子は先輩が命をかけて守るべき人でしょう？」
「私は……」【生存本能】は剣を持つファラはピエロと戦いの姿を見ている。【突進猛襲】が近距離で最強のスキルであるにも関わらず、ファラはピエロの道化師コンボに押され気味だ。
今までは数の利を活かしてなんとか持ちこたえていたが、【生存本能】は自身のスキルが不調であることに気づく。このままでは敗北は時間の問題だ。
（マスター、我々アントロイトは冒険者をサポートするために存在。ここでマスターが私を使わずの事は私の機能を放棄し、私の存在を抹消することと同じです。）
（こんな時に、私のためだけに生きると言うのか……）ローグは冷静さを取り戻し、心の中でさくらと再び話をする。
（私は個性もなく、頭の中はおっぱいを触りたいだけ。そんな奴のために、全てを犠牲にするのは本当にいいのか？）
ファラがピエロとの激しい戦いで人工地面に穴を開けているのを見ても、ローグはその影響を受けず。ただ膝を曲げ、姿勢を低くしている。
（マスター、それは他人の目です。マスターの価値はマスター自身が決めるべき）
ローグは手に持った武器を消し、手を地面につける。
（マスターが自己の価値を認めるのであれば、私はマスターの命令に従い、永遠にそばにいます！）
ローグは姿勢を低くし、意識はピエロに集中する。
（それはお前が言ったことだ、遠慮なく使うぞ！）
「ピエロ、死ね！」ローグが大声で叫び、0.0001秒で地面から飛び出し、ピエロの目の前に高速で飛ぶ！
ピエロは先ほどとは異なる冷たい殺気を感じ取る。職業冒険者の本能が絶対にこの敵と正面から戦ってはいけないと警告する。
（狩人の直感力2005、この生死をかけた瞬間、高速移動の【生存本能】だけに頼るはずがない。中距離の【支配従属】の鞭系攻撃に警戒すべきだ！）ピエロはすぐに【鑑別認定】で相手の次の動きを予測する。
ピエロは両手を広げ、自分の視界の死角から飛んでくる鞭を防ぐ体制を取る。
しかし、ローグはピエロの両手の間をくぐり抜け、その胸にナイフを突き刺した！ピエロのクラウン衣装の防御力により即死は免れたが、HPは大幅に減少した！
（なんと、最善手の【生存本能】！）ピエロは驚く。彼は冒険者の習性を知っている。この大地で多くの狡猾なモンスターと戦って生き残る熟練の戦士たちは、常に最も危険な瞬間に最も予想外の戦術を選ぶ。突然に真っ向勝負ことはない！
ピエロの手がローグに向かって振り下ろされるが、ローグは後ろに跳んでピエロの攻撃を離れる。
（敏捷力8551、冒進力74の狩人が左側の空中43度に【百步穿葉】で追撃するのは本能だ！）ピエロは空を見上げ、口からカラーボールを吹き出す！
しかし、そのカラーボールは空振りで、ピエロは空中に何もいない空に向かって攻撃する滑稽な姿になる。
「くっ！」そして、鞭がピエロの首に巻き付き、締め付け！
敵に大きなダメージを与えたローグは追撃せず、安全策としてピエロから離れて反撃を避ける。たピエロの反撃が空振りさせる、そして【支配従属】で相手を捉える。
（何が起こっているんだ！【鑑別認定】の計算が狂っている！）
「まさか本当にそうなるなのか……」ローグの声がピエロの耳に届く。「お前はこの世界につい最近目覚めたさくらのステータスは計算できないんだよ！」
ピエロは眉をひそめる。そしてローグの鞭使いの姿勢は異常な正確、まるで人形のようだ！
（さくら、敵味方の能力と状況を踏まえ最善の行動を示してくれ。力の加減まで細かく指示もやる！）
ローグがピエロに向かって突進する瞬間、さくらに行動指示を要求する。
冒険者をサポートする戦闘メイド|《Generative AI》は、戦場にいなくても既存の情報を基に瞬時に最適な戦術を決定できる。さくらには意志がないため、この状況では最も一般的な戦術しか選べないが、冒険者の意志を見抜くピエロに対して、この意識のないサポートが奇妙な効果を発揮する。
「はあ！」ファラは地面を踏み固め、腰を回転させて体重を利用し、長剣を斜め上からピエロの頭に斬りつける！鞭に捕らえられたピエロは、この一撃を避けられない。これが決定打となり、ピエロを倒す！
「お前ら、この戦いが終わったら結婚するんだな」
「はっ！」「ああ！」ローグとファラは心臓が激しく脈打ち、血液を失って目眩で倒れる。鞭と剣も手から離れ、ピエロを倒すチャンスを逃した。
「何だ？異常状態か？」ローグは驚いて尋ねる。
「違う、即死攻撃だ！【公主毅魂】があるからかろうじて死ななかった！」ファラが説明する。
「即死攻撃？でも【一獲千金】は発動してないはず！」
ピエロはレベル４デスを使っておらず、使ったとしても2人のレベルが4の倍数でなければ即死効果は発動しない。ピエロがただ「ローグとファラ、この戦いが終わったら結婚する」という意味不明な言葉を発しただけだ！
「まさか……？」
「そうだ、チートスキルを使わざるを得ないなんで、お前ら本当には厄介な。でもこれで終わりだ……」ピエロは自分の首をこすりながら不気味に笑う。「チートスキル【丑旦言霊】！私の言葉が期待と事実を逆らわせる！」
ピエロのチートスキル【丑旦言霊】は、特定の言葉を発した後、それに相応する現実を引き起こす力を持っている。そしてその現実は言葉の意味とは反対な事ばかり！
例えば、「この防御は無敵だ！」と言えば、その防御は次の瞬間に打ち破られる。「この戦術は絶対に成功する」と言えば、その戦術は失敗にする。ピエロの視界には「やったか！」「なんだ気のせいか…」「ここはオレにまかせて！」などのフレーズのリストがあり、「この戦いが終わったら結婚するんだ」という項目がグレーに変わり、その上に「23:59:50」というカウントダウンが表示されている。
次の瞬間、ピエロのクラウン衣装のポケットが開き、内蔵されたポーションがエネルギーを放出する。これは特別に調整された【神聖癒言】の技能で、戦闘エリア内のすべてのユニットのHPを7に回復させるものだ。一見するとそれほど効果的ではない回復技だが……
ローグとファラのHPが治癒効果で0.0001から7に増加する。
「【一獲千金】－－『HP素数バインド』！」続いて、ピエロはHPが7に調整された二人に対して攻撃を仕掛ける！
ローグとファラの足元から無数の蔓が湧き出し、二人を拘束する！血液を失い倒れた二人は、この束縛効果を避ける力がない！
「ガ！」ローグは鞭を手に入れよう自分に攻撃てHPを改変したいが、すぐに蔓によって動きを封じられてしまう。次の瞬間、二人は蔓にしっかりと縛られた。
「姫様！」ミーリの声と共に、彼女の持つナイフがファラの身に巻きついた蔓を切り落とし、同時さくらもローグの蔓を切る。そして【生存本能】のあるミーリは、つるを切り裂いた後、すぐに【一獲千金】の射程範囲から離れる。
「ふん……」ピエロは射程範囲内に残るさくらのステータスを確認する。「なんだこのステータス、俺にとって都合が悪すぎるだろう」
「戦闘メイドは、戦闘機能をある程度調整できる。だからステータスを【一獲千金】のすべての発動条件から逃れるようにすることもできる」さくら手首はもはや細身の体に不釣り合いな巨大な筋肉の腕に変わっていた。
「だからこの前、【一獲千金】を持つ道化師を引き止める自信があったんだな」ローグが鞭を拾い上げ、遠距離攻撃用の弓矢に変形させる。
「調子に乗るなよ。お前が戦場に現れて、ステータスを確認できる、先ほどのテレパシーによる奇襲は効果がなくなる。他の3人の自由冒険者が私の【一獲千金】を避けることはできないから、戦線に入ることはできない。私の優位は変わらない、この戦いは確実に私の……おっと、口に出してはいけないな、こう言うべきだ……」
ピエロが再び不気味な声で言う。「この戦いは、絶対にお前たちの勝ちだ」
ピエロの視界にある【丑旦言霊】の「これじゃ俺の勝ち」の項目が灰色に変わる。
「ぐっ！ローグ、ファラ、さくらは三人ともバランスを崩し、突然の滑りで戦闘姿勢を保てなくなる。ピエロは彼らの絶対的な敗北を呼び出したのだ！
そして、ピエロは再び手袋を挙げて、次の「HP素数バインド」の準備をする。
「くそ！さくら、今どうすれば……！」
「心配しないでください、マスター」とさくらは感情の波がない声で答える。「私たちは確実はピエロに対処できる策を用意してからここに戻ってきた」
ピエロは眉を顰め、極めて不機嫌のようだ。次の瞬間、ローグはその理由に気づく。
重い足音が聞こえ、方向を確認すると、それは森からのものだった。
「ガオー！」そして、オークたちの戦いの雄叫びが響き渡る。
援軍だ。数多くのオークたちがいた。その逞しい体躯は圧倒的な存在感、戦場に新たな希望を吹き込む。
「ガル！」ローグはオークのリーダーの名前を叫ぶ。その黒いオークがローグの側に来る。
「俺は間違っていたんだ」ガルは言う。「一方的に保護を受けることばかり考えていたが、この世界では何もかもがただでは得られない。だから戦わなければならない、この戦いであなた方の保護を受ける資格を証明するのだ！」
「ですが、オークたちがピエロと戦うのは……」ファラが言う。彼女とローグは最初からオーク族を戦力とは見なしていなかった。彼ら魔物が冒険者の強力なスキルに対抗する力がなく、敵に触れることもなく全滅する。
実際、ピエロはオークの群れに対し広範囲の『防御力７ボーリー』を発動し、７の倍数の防御力を持つオークは白光の照射により即座に灰燼に帰す。さらに、手袋で近づくオークを粉砕する。スキルがない魔物は、冒険者の戦闘能力とトップクラスの装備には敵わない。
「構わない、もしお二人の優しさがなければ、私の部族はとっくに滅んでいたでしょう……」
「我が剣は姫様の共に！」ガルは大声で叫びながら、手にした粗末な木棒を握りしめる。
「我が剣は姫様の共に！」同時、ミーリ、エリナ、ソフィアの3人も木陰から飛び出し、ガルのオーク族と一緒にピエロに突進する。
「マスター、ピエロがいかに強大でも、彼のステータスは冒険者の範囲を超えていません。大量の魔物に対しては、彼も圧倒されるでしょう。私たちが作った機会を無駄にしないでください」
「ファラ、オークを【光神守護】で支援して！私も戦線に加わってピエロを混乱させる！後はあなたの【|王者号令（ステータス）】に任せます！」ローグは叫びながら、さくらと共にピエロに向かって走る。
「そうなのか、王家は軍を持つ、命をかけて忠誠を示す民を持つ、そしてその軍民と共に戦うことが姫騎士の本来の姿だ！」ファラは剣を握りしめて立ち上がる。彼女は王女であるが、王女に関する知識は歴史の物語から得ているのだが、今まさにその王女としての実感を感じ取っている。
多数のオークに囲まれたピエロは疲れた様子を見せる。彼は手軽にこれらの弱い生物を殺せるが、多くのステータス不明のオークが殺到し、一つ一つのスキルに対応できず、限られた手袋で一つ一つ打ち倒すしかなかった。
そして、オークの群れの中には、冒険者が６人まで紛れ込んでいる。
「皆、その……！」ファラがオークたちに指示をしようとするが、でも言葉が通じずから命令が前線に届かないの事を気付いた。
現在の自軍の損傷は拡大していない、これは絶え間ない攻勢のおかげだ。しかし、攻勢に破綻が生じれば、ピエロはその隙をついて反撃し、道化師コンボで全員を一掃するだろう。その段階になる前に何とか策を講じなければならない。
「【光神守護】－－『集団敏捷力アップ（極）』！」ファラが特定のオーク群にバフをかける。それにより、そのオーク群は他より攻撃速度が向上し、同時に攻撃していたオークが順次的な波状攻撃に変化する。
「『めまい』！『魔力回復』！『奪命刃』！『迅速射撃』！」徐々に戦闘のリズムを掴んだファラは、指示を受け入れられる冒険者たちをオークの無秩序な攻撃の中に巧みに動かし、ピエロを追い詰める陣形に変えていく。
ピエロの体は【元素掌握】の電撃で固まり、一方でオークたちの木棒は彼の手袋の防具を割れ目を入れる、防御の限界に追い込まれる。
「終わりだ、ピエロ！」ピエロがさくらのハンマーをかわし、0.0001秒の隙を生まれる。その瞬間、ローグはピエロの背後に回り込み、腰に足を絡ませ、ナイフをピエロの左胸に突き刺す！
ローグは、ピエロの奇妙な【丑旦言霊】に備えて、一撃を加える前に左手で喉を圧迫し声帯を押さえ、そのセリフによるの「必殺の一撃から逃れる」イベントを呼び出すのを防ぎながら致命的な一撃を与える。ピエロにはこの一撃から逃れることは不可能だ。
しかし……
「お前、やったか？」ピエロの声が響く。同時ピエロの視界にある【丑旦言霊】インターフェイスの「やったか？」項目が灰色になる。
ピエロの歯の後ろには、声を出すミニレコーダーが仕込まれていた。これにより、ピエロは予め録音された言葉を再生することができ、その声で【丑旦言霊】を発動させる！
「くそ！」ローグは心の中で悔しがる。チートスキルは原理が判別できない超常能力だ。ローグはせいぜい「スキルを発動するためには声帯の振動が必要」と計算して、そこから口を押さえるのではなく声帯を直接封じるという対策をとった。初めて見るチートスキルに対しては、これが既に最善の対応だったはずだか、予め録音された音声でも発動する状況まで計算することは不可能だった。
ピエロの姿が煙のように消え、ローグは足場を失ってしまい、手を地面についてバランスを取る。
（【虚形無影】のように影を消す能力が……まずい！姫騎士！）ローグは内心で叫んだ。消えたピエロの光景を見て、素早く反応する冒険者たちは武器を構えて可能な攻撃を警戒したが、オークたちは攻撃の勢いを止められず、ピエロ元のいた位置にローグへと木棒を振り下ろし。
「ぐ！」沉重な木棒の攻撃を受けでも、【仲間のために】のスキルがあったためローグはオークの誤攻撃で命を落とすことはなかったが、でも同時に仲間への警告を出すこともできなかった。
「このセリフの効果は、敵が私を倒すの事実を無効にし、さらに形勢逆転の事実を追加するのイベントを呼び出す。俺の最後の切り札だ」ファラは背後から響く不気味な声を聞いてすぐに【突進猛襲】で対応しようとするが、しかしピエロの巨大な手袋に体を掴まれ動けなくなる。。
「ぐ！」ピエロが力を込め、ファラの両腕の骨を砕き、剣が手から地面に落ちる。
「まずは指揮塔、次に治療者だ。」ピエロが言い、ファラの隣で仲間をサポートする主教エリナを見つめる。ファラは彼女が戦場の最後尾に配置のせいで、ピエロに狙われた時には仲間の援護を受けられない。
エリナは杖で身を守ろうとしたが、近接格闘の技術はピエロのものには及ばず、数回のやり取りで杖は彼に打ち落とされた。
エリナを救出できるのはローグだけであったが、彼はオークの大群をかき分け、【百步穿葉】に切り替えるのに精一杯で、その間ピエロがさらにエリナを捕らえ、彼女からは鋭い悲鳴が上がる。
「ショーは終わりだ。お前ら、今日からサーカスから追放された！」ピエロは大笑いを上げる。後方の支援者がいなくなれば、この冒険者とオークの奇襲グループはすぐに彼の【一獲千金】で一人ずつ擊破されるだろう。
「ガハッ！」ピエロの口から血が吹き出し。力が入らず、エリナを押しつぶすことができない。下を見ると、自分の胸を貫いているファラの長剣が見えた。
ピエロは混乱する。ファラが反撃するのを防ぐために、彼女の両手を破壊していたはずだ。チートスキル【公主毅魂】は死なないことだけを保証するもので、治癒能力はない。
辛うじて振り向き、長剣を持つのは一つ醜悪なオーク。そしてそのオークこれまで目にしていなかった！
「あなたは……前に私を襲ったあの……！」エリナはそのオークを認識する。それは数日前に彼女に深い精神的トラウマを与えたの愚かなオーク。
このオークは知能や身体能力が他のオークより劣り、ガルがピエロとの戦いを決意しオーク群を指揮して進むの時、彼だけ部族に追いつけなかった。戦場に着いた時、戦いは既に始まっていた。
彼は戦いに加わりたかったが、目の前に以前襲ったエリナが立っており、性欲が命令を覆い隠す。しかしその前エリナを襲った後ガルに殴られた記憶が甦り、勇気が出せず、木陰でこっそりエリナを見ていた。
隠れていたのが冒険者だったら、冒険者キラーの道化師コンボは彼の存在を感知できたが、弱いオークは識別対象外であり、ローグたちだけでなくピエロも気づかず。そのわけわからんの誤算でこの奇襲が成功した。
もちろん、この一撃は勇敢的なものではなく、単にエリナが危険にさらされたことを感じ取り、落ちていた剣を拾って襲撃者を突いただけ。
「なんだこれ……この俺が……こんな意味不明な魔物に敗れるなんて！」心臓を貫通した一撃でピエロのがＨＰがゼロになり、心臓の供給機能が停止し、彼の巨大な手は力を失い、押さえていたエリナが地面に落ちた。派手なクラウン衣装から血が滲み出し、人工的な地表に広がっていく。
オークは呆然と倒れたピエロを見つめ、自分が冒険者たちに恐れられる冒険者処刑人を倒したことをまだ理解していない。
「勝った……私はあのピエロから生き残ったんだ」ローグは弓を握りながら感嘆し、ピエロを倒したオークに向けて言う。「こいつ、よくやったな」
「ガル、君たちの部族に感謝する」疲れ果てた様子のファラがガルに近づき言う。「でも、申し訳ない。この戦いの後、私たちの王国は冒険者ギルドと敵対することになるだろうから、君たちに対する王国としての責任を果たす余裕はなくなるんだ」
「大丈夫です、姫様」ガルは安堵の表情を浮かべる。「あなたの尊敬を得られることが何より」
「姫騎士！」ローグはファラを呼び止める。「ごめん、これでお前もギルドの手配対象になっちゃった。これからどうする？魔王城で一緒に隠れるか？」
「いいえ、私には王女としての責務があります。だから王宮に戻ります」ファラが答える。その間にミーリが魔王城の門の前に停めてあった魔導馬車を運転してきた。
「ローグ……あなたとさくらは幸せになってね」少し間を置いてファラが言う。
ローグはファラの言葉に驚きを隠せず、立ち尽くす。
「ありがとうございます、姫様」さくらが礼儀正しくファラに感謝の言葉を言うたが、ファラはそれに応じず、魔導馬車に乗り込み、去っていく。
数日後、オークたちは魔王城を中心に集落を建設する。当初ローグは魔王城のスペースがオーク族にとって十分だと考えていたが、他の魔物部族も移住を求めてきたため、結局ガルのような知恵個体だけが城内に留まることになった。
魔王城へ移住するこれらの魔物の対応を行う業務の中で、ローグは自分が予言の中の魔王としての役割を担い始めていることに気づく。
「……ということは、今週はコプリン、アンデッド、バービーの三つの部族の移住を処理するんだな」魔王城の会議室で、ローグはさくらからの報告を受けている。
「アンデッドか……。この中どんでもない種族が混ざっているな。死者も冒険者公會から逃れなければならないのか？」
「マスター、アンデッドは生存意志が薄いだけで、生物としての本質は他の魔物と変わらないのです」
「わかってるよ、冗談だ。冒険者ギルドと王宮の状況はどうなってる？私と姫騎士がピエロを倒したこと、結構やばい状況になってるんじゃないか？」
さくらは報告を続ける。
「姫様からの情報によると、冒険者ギルドはピエロの死因を隠蔽し、外部には病死と発表しています」
「隠蔽？なぜだ？」ローグは冒険者ギルドがピエロの死を利用して、他の職業冒険者を自分の討伐任務に引き込むは当たり前の事を思っていた。
「ご注意、これは戦闘メイドの推測に過ぎませんが。理由はマスターがピエロを倒したことを公表すると、魔王城が冒険者ギルドにとって大きな脅威であるという宣言になるからです。冒険者たちの支配を維持するため、この事実を公表しないにしたのです」
「支配を維持するために真実を隠す……それは冒険者ギルドらしいやり方だな……」ローグはかつて冒険者公會に所属していた頃の目の当たりにした社会の暗部を思い出す。当時は関与しなければいいと思っていたが、今は直接その汚だな事に直面しなければならない。
「そして、この間に魔物の討伐クエストは大幅に減少し、冒険者たちに高額の報酬で大規模な共同ミッションのトレーニングに参加するよう奨励しています。具体的なミッションの内容は言及されていませんが、これは将来の魔王城攻略のための準備だと推測されますす」
「何だこれ……彼らが三頭魔龍の討伐ミッションにこれほど本気を見せるなんて。いつから脳がおかしい無個性の冒険者がこんなに重要視されるようになったんだ？」ローグは悪寒を感じる。同時にさくらもローグの顔の微妙な変化から彼の恐怖を察知する。
「マスター、ご命令があれば、どんな敵も阻止します」さくらはローグに敬礼し、その美しい姿勢を見せる。
「ありがとう、さくら」ローグは誰かがいつも支えてくれることの安心感て安堵する。「でも、具体的にはどうしたらいい？また君を戦わせるような選択はしたくないんだ」
ローグの言葉は単なる愚痴だったが、忠実に命令を実行するさくらにとっては、ローグが彼女に助言を求めているように聞こえた。
「マスター、冒険者を救うために、この大地にいる私以外の３人のアントロイトを見つけてください。私たちが必ずマスターの力になる」
「その予言の……」
「はい、ガルさんの夢に出てきた予言によると、私たちは『魔族四天王』と呼ばれています。マスター、予言通り魔王になり、魔物たちを率いて冒険者ギルドに抵抗し、大陸の冒険者たちを救ってください」
ローグは手が震えていることに気づく。彼は魔物と対峙するときに震えたことがない。彼の頭の中にあるスキルは、彼に多くの魔物と戦う方法を教える。それらは伝説の冒険者たちの記憶から来た正確で豊富な経験だ。
しかし、この世界にはまだ一人の冒険者も冒険者ギルドに反抗したことがないため、どのスキルもローグに何をすべきか教えてくれない。
それでも、ローグは前に進むしかない。残りの三人の四天王を見つけ、冒険者ギルドに立ち向かうのだ！
ファラは目の隅で、ミーリがソフィアの手を治療しているさくらのところに駆けつけるのを見た。彼女は自分の仲間に指示を出す余裕がなく、彼女たちが適切な行動を取ることを信じていた。
「先程マスターからの指示がありました。ここにいる４人はすぐに戦線を離れて、主教にあなたのポーションで治療を施してください」さくらがミーリに伝える。
「彼はパーティーの中で私だけがポーションを持っていることを知っているの？」ミーリが言う。短い間の交流で、このローグという冒険者が様々な職業の戦術に非常に詳しいことに気付いた。
「マスターにとって盗賊が主教が負傷した際に使用するポーションを常備するのは常識。では、出発しましょう」さくらは動けないソフィアとエリナを背負い、ミーリとともに森へと逃走した。
「あらあら、すぐに倒さないといけない相手が攻撃範囲から逃れると面倒ね……」とピエロが言い、さくらの方向に袖口から花火を発射する。
「【百步穿葉】！」ローグの矢が空中で花火を爆発させ、その攻撃を阻止した。
「まずは二人のサンドバックを越えなければね。それに、チートスキルで不死身になっているから、本当に面倒だ……」
「【一獲千金】－『攻撃力５フレア』！『防御力７ボーリー』！」ピエロは核エネルギーと聖光を放ち！この攻撃で相手を殺すことはできないが、一時的に行動不能になることができる。
「【光神守護】－『攻撃力アップ（中）』『防御力アップ（小）』！」ファラは魔法陣を展開し、自分とローグにステータスを強化する。
【光神守護】の特徴は、様々なバフを使うことができることだ。ファラは普段属性防御の技を使っているが、ステータス強化技も取得する！
核エネルギーの爆発が攻撃力１７９のローグを通り抜けた、聖光は防御力１３６のファラには届かなかった。
「攻撃力プラス２４、防御力プラス１０か……これでちょうど５と７の倍数を逃れたわけね。計算早いわね……あ、これは【|王者号令（ステータス）】の効果。」
ファラの目は自分とローグのステータスを輝き、それで適切なバフを見つけ出す。計算を誤れば、バフ後のステータスは本来の倍数ままでは【光神守護】の対策は無意味になる。
「はあっ！」とファラは声を上げ、ピエロに突進し【突進猛襲】の距離に引き込む。
「攻撃力が５８６もあるのか……」ピエロが大きな手袋を挙げて、金属音でファラの長剣を弾き飛ばす。「だが、防御力９９９の装備で防げばいい」
ピエロの手袋は、冒険者ギルドが冒険者たちから徴収した血税で作られた最高級の装備だ！ピエロはそのような装備で身を固めており、その肉体のステータスはローグやファラをはるかに超えていた。これが冒険者ギルドの切り札－ピエロだ！
ファラは長剣を振り続けて攻撃するが、ピエロはファラの敏捷力や日常の素振りの回数から、彼女の剣の速度と角度を完全に計算し尽くしていた。彼女の一振り一振りが、ピエロの手袋によって正確に防がれる！
ファラとピエロの交戦の最中、ローグはピエロの背後に回り込み、彼の動体視力では捉えられないスピードで矢を放つ！
しかしピエロはローグの瞬間加速能力と彼が普段読むのエロ本でローグの射撃習慣と好みの軌道を正確に計算し、足元のバネで躍起してローグの矢を避けた。その矢が逆に交戦最中のファラに命中する！
「うっ！」ファラは胸に刺さった矢を抜き、チートスキルの効果で傷が瞬時に癒え、かろうじて死なずに済む。
「くそ……こっちは二人もいるのに、相手も戦闘スキルなし、でもステータスが把握されているせいで完全に劣勢に立たされている！」
ローグとファラのスキルはピエロの道化師コンボに対応できず、戦闘全体的に圧倒されてしまう。
「ふぅ……」ファラは剣を握りしめ、息を切らしながら苦しんでいる。パーティーのサポートがなく、HPが0.0001％というひどい状態には行動すること自体が非常に苦痛である。彼女がまるでHPが満タンであるかのように動けるのは、彼女自身の強固な意志力によるものだ。
「バサッ！」ピエロはファラへの攻撃をつもりたが、ローグの放った矢によって防御の構えに切り替る。
「姫騎士、私たちが持っている八つのスキルの中で、勝機があるのはあなたの【|王者号令（ステータス）】だけ！私があなたが休む時間を稼ぐから、この間【光神守護】で私をサポートしてください。」
「分かった……」直接戦闘スキルはピエロには効いてない、【一獲千金】に対抗できる【光神守護】も時間稼ぎに過ぎない。【支配従属】も冒険者には効かないため、二人の勝利の機会は【|王者号令（ステータス）】を活用してステータスを超越する戦術しかない！
ファラは剣を垂れて地面に突き刺し、これまで常に前線で仲間を守ってきた彼女は、初めて後衛に下がり指揮に専念する。
「『縮地』！『瞬間射擊』！」ファラはローグが【百步穿葉】で習得した技能を呼び出し。たとえ初めての仲間であっても、【|王者号令（ステータス）】はローグの技能名を含めの明白な指示を出すことができる。
ファラの指示のもと、ローグは巧みなステップでピエロを翻弄し、ピエロの手袋は空振りの瞬間でピエロの背後に現れて弓を引く。これは射撃速度を極限まで高めた奇襲攻撃だ！
ピエロは手をローグに向け、手袋の中心部から飛び出るおもちゃロケットをローグに向けて発射する。
熟練した冒険者にとって、敵の前で大声で指示された行動も、敵の反応を待つことなく即座に実行することが可能できる。そのため、ピエロはファラからの具体的な指示を聞いて反応したわけではなく、ローグの準備動作を見て彼の次の一手を予測した！
「【光神守護】！」ローグの胸に魔法陣の描かれた光盾が現れ、おもちゃロケットを防ぐ！しかし、おもちゃロケットの攻撃によって弓を構えの姿勢が崩れ、本来の突撃が不可能になった！
「【百歩穿葉】－『穩固射撃』！」でも煙が消え去るの後、空から落ちるのローグまだ弓矢を構え、矢を放つ。それはファラの命令とは異なる、速度を犠牲にしても弓を構えを安定させるの技能に取ったの原因だ！
「ステータスがバレている今、ピエロを倒すには普段の冒険者のやり方に反する戦術しかない！」その一瞬、ローグは【|王者号令（ステータス）】の指示を無視し、別の攻撃技を選んだ。
この戦法本来は【|王者号令（ステータス）】の指揮システムの意義を失わせる無謀な行動だったが、偶然にもピエロの隙を生じさせた。ローグ即興の戦術は、まさにその予期せぬ瞬間を狙ったものだった。
「おほほ！」ピエロはおもちゃロケットロケットを発射した後、来るべき矢を横に避ける。ピエロはこの予測不可能な攻撃さえも見抜いている。
「【光神守護】の防御と【百歩穿葉】の攻撃が完璧だったのに、どうして当たらないの？」ファラは不安です。二人の連携攻撃は一流の職業冒険者でも避けられないはず。
「『指揮力』の数字から姫騎士の戦術を読み、『変化力』の数字で猟人の即興の一手を判断だけ。冒険者の奇跡なんて、もうテクノロジーで解析できるステータスだよ」ピエロは冷ややかに言う。
ステータスには「レベル」「攻撃力」「防御力」の基本の他、数百の詳細なパラメーターがある。これらを解読し活用するのは、【鑑別認定】の真骨頂だ。
ピエロにステータスがバレたら、もはや抵抗する余地はない。
（マスター、私と姫様のバーディメンバー達はガルのオーク部族と合流しました。次の行動を指示してください）ローグはさくらからのテレパシーを感じ取る。
（さくら、あなたたちは先にここから逃げて。私と姫騎士はチートスキルを持ってから、少なくとも死ぬことはない）
（申し訳ありません、マスター。その命令に従うことはできません。致命傷を防ぐ特殊能力があっても、マスターが拘束された場合、敵に捕まる可能性があり、非常に危険です）
（そんな細かいことはどうにかなる。まずはあなたの安全を確保することが……）
（マスター、今議論すべきは、マスターはピエロの手から生き残る方法です）
「うるさいな！」【生存本能】はテレパシーを使う際口を開く必要がないにも関わらず不満そうに叫ぶ。「お前は前にも勝手に俺のために身代わりになっただろう？今度は私が！美人を守るのは男の義務だ！」
【生存本能】の生前はいつもこの調子だった。外見はやや生意気に見えるが、実際には他人のために自分の命を犠牲にすることも厭わない性格だ。
（マスター、私は工具です。使う者の安全を確保するのが私の役割です。使用者が工具を守るために自己犠牲するのは本末転倒です）
「えっ？またお前の剣の理論か？こんな美人の剣がどこにいるんだよ！」
（マスター、これは主教ソフィアからのメッセージです、姫様に伝えてください。彼女たちの治療はもう終わり、すぐに助けに戻ります、もう少し耐えてください。）
「だからお前ら戻ってきて、何の意味があるんだ……っ！」【生存本能】は自分の武器を見下ろし、感情の高ぶりでスキルのコントロールがうまくできない。【生存本能】の手にする武器は遠距離攻撃が不可能なナイフに変わった。やむを得ず、彼は後ろ向きの宙返りでピエロの正面からの攻撃を避けるしかない。
ピエロの手袋が地面に叩き、灰色の人工地面にひびが入る。しかし、ピエロは再び手を振り、今度は手袋からスプリングを発射し、巨大な手のひらがローグのジャンプした方向に飛んでいき、黑髮青年を捉える！
「キン！」ファラは【光神守護】付きの剣でピエロの手袋をはじき、黒髪青年がその一撃から逃れた。
「すまない、姫騎士」【生存本能】は戦闘態勢を素早く整える。
「ローグ先輩！さくらと話しているのね！」ファラは大声で叫ぶ。「落ち着いて！今は喧嘩する時じゃない！あの子は先輩が命をかけて守るべき人でしょう？」
「私は……」【生存本能】は剣を持つファラはピエロと戦いの姿を見ている。【突進猛襲】が近距離で最強のスキルであるにも関わらず、ファラはピエロの道化師コンボに押され気味だ。
今までは数の利を活かしてなんとか持ちこたえていたが、【生存本能】は自身のスキルが不調であることに気づく。このままでは敗北は時間の問題だ。
（マスター、我々アントロイトは冒険者をサポートするために存在。ここでマスターが私を使わずの事は私の機能を放棄し、私の存在を抹消することと同じです。）
（こんな時に、私のためだけに生きると言うのか……）ローグは冷静さを取り戻し、心の中でさくらと再び話をする。
（私は個性もなく、頭の中はおっぱいを触りたいだけ。そんな奴のために、全てを犠牲にするのは本当にいいのか？）
ファラがピエロとの激しい戦いで人工地面に穴を開けているのを見ても、ローグはその影響を受けず。ただ膝を曲げ、姿勢を低くしている。
（マスター、それは他人の目です。マスターの価値はマスター自身が決めるべき）
ローグは手に持った武器を消し、手を地面につける。
（マスターが自己の価値を認めるのであれば、私はマスターの命令に従い、永遠にそばにいます！）
ローグは姿勢を低くし、意識はピエロに集中する。
（それはお前が言ったことだ、遠慮なく使うぞ！）
「ピエロ、死ね！」ローグが大声で叫び、0.0001秒で地面から飛び出し、ピエロの目の前に高速で飛ぶ！
ピエロは先ほどとは異なる冷たい殺気を感じ取る。職業冒険者の本能が絶対にこの敵と正面から戦ってはいけないと警告する。
（狩人の直感力2005、この生死をかけた瞬間、高速移動の【生存本能】だけに頼るはずがない。中距離の【支配従属】の鞭系攻撃に警戒すべきだ！）ピエロはすぐに【鑑別認定】で相手の次の動きを予測する。
ピエロは両手を広げ、自分の視界の死角から飛んでくる鞭を防ぐ体制を取る。
しかし、ローグはピエロの両手の間をくぐり抜け、その胸にナイフを突き刺した！ピエロのクラウン衣装の防御力により即死は免れたが、HPは大幅に減少した！
（なんと、最善手の【生存本能】！）ピエロは驚く。彼は冒険者の習性を知っている。この大地で多くの狡猾なモンスターと戦って生き残る熟練の戦士たちは、常に最も危険な瞬間に最も予想外の戦術を選ぶ。突然に真っ向勝負ことはない！
ピエロの手がローグに向かって振り下ろされるが、ローグは後ろに跳んでピエロの攻撃を離れる。
（敏捷力8551、冒進力74の狩人が左側の空中43度に【百步穿葉】で追撃するのは本能だ！）ピエロは空を見上げ、口からカラーボールを吹き出す！
しかし、そのカラーボールは空振りで、ピエロは空中に何もいない空に向かって攻撃する滑稽な姿になる。
「くっ！」そして、鞭がピエロの首に巻き付き、締め付け！
敵に大きなダメージを与えたローグは追撃せず、安全策としてピエロから離れて反撃を避ける。たピエロの反撃が空振りさせる、そして【支配従属】で相手を捉える。
（何が起こっているんだ！【鑑別認定】の計算が狂っている！）
「まさか本当にそうなるなのか……」ローグの声がピエロの耳に届く。「お前はこの世界につい最近目覚めたさくらのステータスは計算できないんだよ！」
ピエロは眉をひそめる。そしてローグの鞭使いの姿勢は異常な正確、まるで人形のようだ！
（さくら、敵味方の能力と状況を踏まえ最善の行動を示してくれ。力の加減まで細かく指示もやる！）
ローグがピエロに向かって突進する瞬間、さくらに行動指示を要求する。
冒険者をサポートする戦闘メイド|《Generative AI》は、戦場にいなくても既存の情報を基に瞬時に最適な戦術を決定できる。さくらには意志がないため、この状況では最も一般的な戦術しか選べないが、冒険者の意志を見抜くピエロに対して、この意識のないサポートが奇妙な効果を発揮する。
「はあ！」ファラは地面を踏み固め、腰を回転させて体重を利用し、長剣を斜め上からピエロの頭に斬りつける！鞭に捕らえられたピエロは、この一撃を避けられない。これが決定打となり、ピエロを倒す！
「お前ら、この戦いが終わったら結婚するんだな」
「はっ！」「ああ！」ローグとファラは心臓が激しく脈打ち、血液を失って目眩で倒れる。鞭と剣も手から離れ、ピエロを倒すチャンスを逃した。
「何だ？異常状態か？」ローグは驚いて尋ねる。
「違う、即死攻撃だ！【公主毅魂】があるからかろうじて死ななかった！」ファラが説明する。
「即死攻撃？でも【一獲千金】は発動してないはず！」
ピエロはレベル４デスを使っておらず、使ったとしても2人のレベルが4の倍数でなければ即死効果は発動しない。ピエロがただ「ローグとファラ、この戦いが終わったら結婚する」という意味不明な言葉を発しただけだ！
「まさか……？」
「そうだ、チートスキルを使わざるを得ないなんで、お前ら本当には厄介な。でもこれで終わりだ……」ピエロは自分の首をこすりながら不気味に笑う。「チートスキル【丑旦言霊】！私の言葉が期待と事実を逆らわせる！」
ピエロのチートスキル【丑旦言霊】は、特定の言葉を発した後、それに相応する現実を引き起こす力を持っている。そしてその現実は言葉の意味とは反対な事ばかり！
例えば、「この防御は無敵だ！」と言えば、その防御は次の瞬間に打ち破られる。「この戦術は絶対に成功する」と言えば、その戦術は失敗にする。ピエロの視界には「やったか！」「なんだ気のせいか…」「ここはオレにまかせて！」などのフレーズのリストがあり、「この戦いが終わったら結婚するんだ」という項目がグレーに変わり、その上に「23:59:50」というカウントダウンが表示されている。
次の瞬間、ピエロのクラウン衣装のポケットが開き、内蔵されたポーションがエネルギーを放出する。これは特別に調整された【神聖癒言】の技能で、戦闘エリア内のすべてのユニットのHPを7に回復させるものだ。一見するとそれほど効果的ではない回復技だが……
ローグとファラのHPが治癒効果で0.0001から7に増加する。
「【一獲千金】－－『HP素数バインド』！」続いて、ピエロはHPが7に調整された二人に対して攻撃を仕掛ける！
ローグとファラの足元から無数の蔓が湧き出し、二人を拘束する！血液を失い倒れた二人は、この束縛効果を避ける力がない！
「ガ！」ローグは鞭を手に入れよう自分に攻撃てHPを改変したいが、すぐに蔓によって動きを封じられてしまう。次の瞬間、二人は蔓にしっかりと縛られた。
「姫様！」ミーリの声と共に、彼女の持つナイフがファラの身に巻きついた蔓を切り落とし、同時さくらもローグの蔓を切る。そして【生存本能】のあるミーリは、つるを切り裂いた後、すぐに【一獲千金】の射程範囲から離れる。
「ふん……」ピエロは射程範囲内に残るさくらのステータスを確認する。「なんだこのステータス、俺にとって都合が悪すぎるだろう」
「戦闘メイドは、戦闘機能をある程度調整できる。だからステータスを【一獲千金】のすべての発動条件から逃れるようにすることもできる」さくら手首はもはや細身の体に不釣り合いな巨大な筋肉の腕に変わっていた。
「だからこの前、【一獲千金】を持つ道化師を引き止める自信があったんだな」ローグが鞭を拾い上げ、遠距離攻撃用の弓矢に変形させる。
「調子に乗るなよ。お前が戦場に現れて、ステータスを確認できる、先ほどのテレパシーによる奇襲は効果がなくなる。他の3人の自由冒険者が私の【一獲千金】を避けることはできないから、戦線に入ることはできない。私の優位は変わらない、この戦いは確実に私の……おっと、口に出してはいけないな、こう言うべきだ……」
ピエロが再び不気味な声で言う。「この戦いは、絶対にお前たちの勝ちだ」
ピエロの視界にある【丑旦言霊】の「これじゃ俺の勝ち」の項目が灰色に変わる。
「ぐっ！ローグ、ファラ、さくらは三人ともバランスを崩し、突然の滑りで戦闘姿勢を保てなくなる。ピエロは彼らの絶対的な敗北を呼び出したのだ！
そして、ピエロは再び手袋を挙げて、次の「HP素数バインド」の準備をする。
「くそ！さくら、今どうすれば……！」
「心配しないでください、マスター」とさくらは感情の波がない声で答える。「私たちは確実はピエロに対処できる策を用意してからここに戻ってきた」
ピエロは眉を顰め、極めて不機嫌のようだ。次の瞬間、ローグはその理由に気づく。
重い足音が聞こえ、方向を確認すると、それは森からのものだった。
「ガオー！」そして、オークたちの戦いの雄叫びが響き渡る。
援軍だ。数多くのオークたちがいた。その逞しい体躯は圧倒的な存在感、戦場に新たな希望を吹き込む。
「ガル！」ローグはオークのリーダーの名前を叫ぶ。その黒いオークがローグの側に来る。
「俺は間違っていたんだ」ガルは言う。「一方的に保護を受けることばかり考えていたが、この世界では何もかもがただでは得られない。だから戦わなければならない、この戦いであなた方の保護を受ける資格を証明するのだ！」
「ですが、オークたちがピエロと戦うのは……」ファラが言う。彼女とローグは最初からオーク族を戦力とは見なしていなかった。彼ら魔物が冒険者の強力なスキルに対抗する力がなく、敵に触れることもなく全滅する。
実際、ピエロはオークの群れに対し広範囲の『防御力７ボーリー』を発動し、７の倍数の防御力を持つオークは白光の照射により即座に灰燼に帰す。さらに、手袋で近づくオークを粉砕する。スキルがない魔物は、冒険者の戦闘能力とトップクラスの装備には敵わない。
「構わない、もしお二人の優しさがなければ、私の部族はとっくに滅んでいたでしょう……」
「我が剣は姫様の共に！」ガルは大声で叫びながら、手にした粗末な木棒を握りしめる。
「我が剣は姫様の共に！」同時、ミーリ、エリナ、ソフィアの3人も木陰から飛び出し、ガルのオーク族と一緒にピエロに突進する。
「マスター、ピエロがいかに強大でも、彼のステータスは冒険者の範囲を超えていません。大量の魔物に対しては、彼も圧倒されるでしょう。私たちが作った機会を無駄にしないでください」
「ファラ、オークを【光神守護】で支援して！私も戦線に加わってピエロを混乱させる！後はあなたの【|王者号令（ステータス）】に任せます！」ローグは叫びながら、さくらと共にピエロに向かって走る。
「そうなのか、王家は軍を持つ、命をかけて忠誠を示す民を持つ、そしてその軍民と共に戦うことが姫騎士の本来の姿だ！」ファラは剣を握りしめて立ち上がる。彼女は王女であるが、王女に関する知識は歴史の物語から得ているのだが、今まさにその王女としての実感を感じ取っている。
多数のオークに囲まれたピエロは疲れた様子を見せる。彼は手軽にこれらの弱い生物を殺せるが、多くのステータス不明のオークが殺到し、一つ一つのスキルに対応できず、限られた手袋で一つ一つ打ち倒すしかなかった。
そして、オークの群れの中には、冒険者が６人まで紛れ込んでいる。
「皆、その……！」ファラがオークたちに指示をしようとするが、でも言葉が通じずから命令が前線に届かないの事を気付いた。
現在の自軍の損傷は拡大していない、これは絶え間ない攻勢のおかげだ。しかし、攻勢に破綻が生じれば、ピエロはその隙をついて反撃し、道化師コンボで全員を一掃するだろう。その段階になる前に何とか策を講じなければならない。
「【光神守護】－－『集団敏捷力アップ（極）』！」ファラが特定のオーク群にバフをかける。それにより、そのオーク群は他より攻撃速度が向上し、同時に攻撃していたオークが順次的な波状攻撃に変化する。
「『めまい』！『魔力回復』！『奪命刃』！『迅速射撃』！」徐々に戦闘のリズムを掴んだファラは、指示を受け入れられる冒険者たちをオークの無秩序な攻撃の中に巧みに動かし、ピエロを追い詰める陣形に変えていく。
ピエロの体は【元素掌握】の電撃で固まり、一方でオークたちの木棒は彼の手袋の防具を割れ目を入れる、防御の限界に追い込まれる。
「終わりだ、ピエロ！」ピエロがさくらのハンマーをかわし、0.0001秒の隙を生まれる。その瞬間、ローグはピエロの背後に回り込み、腰に足を絡ませ、ナイフをピエロの左胸に突き刺す！
ローグは、ピエロの奇妙な【丑旦言霊】に備えて、一撃を加える前に左手で喉を圧迫し声帯を押さえ、そのセリフによるの「必殺の一撃から逃れる」イベントを呼び出すのを防ぎながら致命的な一撃を与える。ピエロにはこの一撃から逃れることは不可能だ。
しかし……
「お前、やったか？」ピエロの声が響く。同時ピエロの視界にある【丑旦言霊】インターフェイスの「やったか？」項目が灰色になる。
ピエロの歯の後ろには、声を出すミニレコーダーが仕込まれていた。これにより、ピエロは予め録音された言葉を再生することができ、その声で【丑旦言霊】を発動させる！
「くそ！」ローグは心の中で悔しがる。チートスキルは原理が判別できない超常能力だ。ローグはせいぜい「スキルを発動するためには声帯の振動が必要」と計算して、そこから口を押さえるのではなく声帯を直接封じるという対策をとった。初めて見るチートスキルに対しては、これが既に最善の対応だったはずだか、予め録音された音声でも発動する状況まで計算することは不可能だった。
ピエロの姿が煙のように消え、ローグは足場を失ってしまい、手を地面についてバランスを取る。
（【虚形無影】のように影を消す能力が……まずい！姫騎士！）ローグは内心で叫んだ。消えたピエロの光景を見て、素早く反応する冒険者たちは武器を構えて可能な攻撃を警戒したが、オークたちは攻撃の勢いを止められず、ピエロ元のいた位置にローグへと木棒を振り下ろし。
「ぐ！」沉重な木棒の攻撃を受けでも、【仲間のために】のスキルがあったためローグはオークの誤攻撃で命を落とすことはなかったが、でも同時に仲間への警告を出すこともできなかった。
「このセリフの効果は、敵が私を倒すの事実を無効にし、さらに形勢逆転の事実を追加するのイベントを呼び出す。俺の最後の切り札だ」ファラは背後から響く不気味な声を聞いてすぐに【突進猛襲】で対応しようとするが、しかしピエロの巨大な手袋に体を掴まれ動けなくなる。。
「ぐ！」ピエロが力を込め、ファラの両腕の骨を砕き、剣が手から地面に落ちる。
「まずは指揮塔、次に治療者だ。」ピエロが言い、ファラの隣で仲間をサポートする主教エリナを見つめる。ファラは彼女が戦場の最後尾に配置のせいで、ピエロに狙われた時には仲間の援護を受けられない。
エリナは杖で身を守ろうとしたが、近接格闘の技術はピエロのものには及ばず、数回のやり取りで杖は彼に打ち落とされた。
エリナを救出できるのはローグだけであったが、彼はオークの大群をかき分け、【百步穿葉】に切り替えるのに精一杯で、その間ピエロがさらにエリナを捕らえ、彼女からは鋭い悲鳴が上がる。
「ショーは終わりだ。お前ら、今日からサーカスから追放された！」ピエロは大笑いを上げる。後方の支援者がいなくなれば、この冒険者とオークの奇襲グループはすぐに彼の【一獲千金】で一人ずつ擊破されるだろう。
「ガハッ！」ピエロの口から血が吹き出し。力が入らず、エリナを押しつぶすことができない。下を見ると、自分の胸を貫いているファラの長剣が見えた。
ピエロは混乱する。ファラが反撃するのを防ぐために、彼女の両手を破壊していたはずだ。チートスキル【公主毅魂】は死なないことだけを保証するもので、治癒能力はない。
辛うじて振り向き、長剣を持つのは一つ醜悪なオーク。そしてそのオークこれまで目にしていなかった！
「あなたは……前に私を襲ったあの……！」エリナはそのオークを認識する。それは数日前に彼女に深い精神的トラウマを与えたの愚かなオーク。
このオークは知能や身体能力が他のオークより劣り、ガルがピエロとの戦いを決意しオーク群を指揮して進むの時、彼だけ部族に追いつけなかった。戦場に着いた時、戦いは既に始まっていた。
彼は戦いに加わりたかったが、目の前に以前襲ったエリナが立っており、性欲が命令を覆い隠す。しかしその前エリナを襲った後ガルに殴られた記憶が甦り、勇気が出せず、木陰でこっそりエリナを見ていた。
隠れていたのが冒険者だったら、冒険者キラーの道化師コンボは彼の存在を感知できたが、弱いオークは識別対象外であり、ローグたちだけでなくピエロも気づかず。そのわけわからんの誤算でこの奇襲が成功した。
もちろん、この一撃は勇敢的なものではなく、単にエリナが危険にさらされたことを感じ取り、落ちていた剣を拾って襲撃者を突いただけ。
「なんだこれ……この俺が……こんな意味不明な魔物に敗れるなんて！」心臓を貫通した一撃でピエロのがＨＰがゼロになり、心臓の供給機能が停止し、彼の巨大な手は力を失い、押さえていたエリナが地面に落ちた。派手なクラウン衣装から血が滲み出し、人工的な地表に広がっていく。
オークは呆然と倒れたピエロを見つめ、自分が冒険者たちに恐れられる冒険者処刑人を倒したことをまだ理解していない。
「勝った……私はあのピエロから生き残ったんだ」ローグは弓を握りながら感嘆し、ピエロを倒したオークに向けて言う。「こいつ、よくやったな」
「ガル、君たちの部族に感謝する」疲れ果てた様子のファラがガルに近づき言う。「でも、申し訳ない。この戦いの後、私たちの王国は冒険者ギルドと敵対することになるだろうから、君たちに対する王国としての責任を果たす余裕はなくなるんだ」
「大丈夫です、姫様」ガルは安堵の表情を浮かべる。「あなたの尊敬を得られることが何より」
「姫騎士！」ローグはファラを呼び止める。「ごめん、これでお前もギルドの手配対象になっちゃった。これからどうする？魔王城で一緒に隠れるか？」
「いいえ、私には王女としての責務があります。だから王宮に戻ります」ファラが答える。その間にミーリが魔王城の門の前に停めてあった魔導馬車を運転してきた。
「ローグ……あなたとさくらは幸せになってね」少し間を置いてファラが言う。
ローグはファラの言葉に驚きを隠せず、立ち尽くす。
「ありがとうございます、姫様」さくらが礼儀正しくファラに感謝の言葉を言うたが、ファラはそれに応じず、魔導馬車に乗り込み、去っていく。
数日後、オークたちは魔王城を中心に集落を建設する。当初ローグは魔王城のスペースがオーク族にとって十分だと考えていたが、他の魔物部族も移住を求めてきたため、結局ガルのような知恵個体だけが城内に留まることになった。
魔王城へ移住するこれらの魔物の対応を行う業務の中で、ローグは自分が予言の中の魔王としての役割を担い始めていることに気づく。
「……ということは、今週はコプリン、アンデッド、バービーの三つの部族の移住を処理するんだな」魔王城の会議室で、ローグはさくらからの報告を受けている。
「アンデッドか……。この中どんでもない種族が混ざっているな。死者も冒険者公會から逃れなければならないのか？」
「マスター、アンデッドは生存意志が薄いだけで、生物としての本質は他の魔物と変わらないのです」
「わかってるよ、冗談だ。冒険者ギルドと王宮の状況はどうなってる？私と姫騎士がピエロを倒したこと、結構やばい状況になってるんじゃないか？」
さくらは報告を続ける。
「姫様からの情報によると、冒険者ギルドはピエロの死因を隠蔽し、外部には病死と発表しています」
「隠蔽？なぜだ？」ローグは冒険者ギルドがピエロの死を利用して、他の職業冒険者を自分の討伐任務に引き込むは当たり前の事を思っていた。
「ご注意、これは戦闘メイドの推測に過ぎませんが。理由はマスターがピエロを倒したことを公表すると、魔王城が冒険者ギルドにとって大きな脅威であるという宣言になるからです。冒険者たちの支配を維持するため、この事実を公表しないにしたのです」
「支配を維持するために真実を隠す……それは冒険者ギルドらしいやり方だな……」ローグはかつて冒険者公會に所属していた頃の目の当たりにした社会の暗部を思い出す。当時は関与しなければいいと思っていたが、今は直接その汚だな事に直面しなければならない。
「そして、この間に魔物の討伐クエストは大幅に減少し、冒険者たちに高額の報酬で大規模な共同ミッションのトレーニングに参加するよう奨励しています。具体的なミッションの内容は言及されていませんが、これは将来の魔王城攻略のための準備だと推測されますす」
「何だこれ……彼らが三頭魔龍の討伐ミッションにこれほど本気を見せるなんて。いつから脳がおかしい無個性の冒険者がこんなに重要視されるようになったんだ？」ローグは悪寒を感じる。同時にさくらもローグの顔の微妙な変化から彼の恐怖を察知する。
「マスター、ご命令があれば、どんな敵も阻止します」さくらはローグに敬礼し、その美しい姿勢を見せる。
「ありがとう、さくら」ローグは誰かがいつも支えてくれることの安心感て安堵する。「でも、具体的にはどうしたらいい？また君を戦わせるような選択はしたくないんだ」
ローグの言葉は単なる愚痴だったが、忠実に命令を実行するさくらにとっては、ローグが彼女に助言を求めているように聞こえた。
「マスター、冒険者を救うために、この大地にいる私以外の３人のアントロイトを見つけてください。私たちが必ずマスターの力になる」
「その予言の……」
「はい、ガルさんの夢に出てきた予言によると、私たちは『魔族四天王』と呼ばれています。マスター、予言通り魔王になり、魔物たちを率いて冒険者ギルドに抵抗し、大陸の冒険者たちを救ってください」
ローグは手が震えていることに気づく。彼は魔物と対峙するときに震えたことがない。彼の頭の中にあるスキルは、彼に多くの魔物と戦う方法を教える。それらは伝説の冒険者たちの記憶から来た正確で豊富な経験だ。
しかし、この世界にはまだ一人の冒険者も冒険者ギルドに反抗したことがないため、どのスキルもローグに何をすべきか教えてくれない。
それでも、ローグは前に進むしかない。残りの三人の四天王を見つけ、冒険者ギルドに立ち向かうのだ！