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作者: 犬物語
【野球】スイングチェックは監督とキャッチャーだけの権利【ルール】
球審「ストラーイッ!」

バッター「スイングしてない! 塁審にチェックしてよ!」

球審「ダメです」
 スポーツにはルールがあります

 どんな場所で、何を使ってどのような動きで競技するのか、どんな理由で勝ち負けを決定するのかそれらすべてはルールブックに記載されています

 野球においては『公認野球規則』というものがありますね。日本語版は書店にて、メジャーリーグ版(英語)はMLBの公式サイトで公表されてるので興味ある方が以下からどうぞ

MLB.com(Official Rulesからどうぞ)
ttps://www.mlb.com/official-information

 スポーツには競技をするプレーヤーのほか、それらを公正に見定める審判という存在がありますね。彼らはルールの代弁者なので強い権力が与えられています

 野球の場合『審判の判断は最終的なもので絶対』です。たとえボールより足のほうが・・・・・・・・・・速いように見えた・・・・・・・・としても、審判が「アウト」と言えばそれはアウトです

 唯一の例外として『監督がルールブックに則った采配に修正するよう進言する権利』が与えられています

 それ以外に審判の判断を覆す要素と言えばリクエスト制度を利用して映像判定をしてもらうしかありません――が、リクエスト制度もすべての判定で使えるワケじゃないので使い所が限られますわね。以下リクエストできるジャッジ

・ホームランか否か
・ファールか否か
・(各塁において)アウトかセーフか
・コリジョンか否か(併殺崩し含む)
・危険球か否か

 わりと多いじゃん、と思えるけど野球っていろんな判定あるからねぇ……まあ、それらを細かくリクエストしたら試合時間的な問題もあるか。いずれにしろ審判の権力はゼッタイです

 これは『審判がちゃんと見てるから』っていう前提のもとあるんだけど、あるプレーだと球審の位置からじゃ見えにくいヤツがあるのよ――今回はそんなプレーについて書いていきましょう



:スイングチェックってなんだ?:

 投球がストライクかボールかを判定するのは球審です。キャッチャーのうしろにいる人ね

 ボールがやってくるその延長線にいるからまあ見えやすい位置にいるよね。ただ球審をやってみるとわかるんだけどまー見えにくい場面が多々あるんだわ

 とくに低めの球。キャッチャー邪魔やねんあれしかもウマいヤツだとさり気なくミットずらししてくるし

 球審はストライク or ボールのジャッジをするので"空振り"によるストライクも責任をもっています。しかし、球審の視点からすっと中途半端なスイングの『振った or 振らなかった』はなかなかジャッジしにくい。ってことでここで救済策が用意されています

 手元にルールブックがある方は『公認野球規則 8.02(c) 原注2』をご参照ください。長い文章なので要約しますよ


 ――ハーフスイングの際、球審が「ストライク!」と言わなかったときだけ監督または捕手・・・・・・・がチェックスイングを球審に要請できる
 ――要請を受けた球審は塁審に対し裁定を一任する。そこで下されたジャッジが最終的なものになる


 つまりこういう過程になります

① ハーフスイングの際、球審が
  "ストライク"を宣告しなかった
② 監督またはキャッチャーが
  球審にチェックスイングを要請できる
③ 要請を受けた球審は
   塁審に裁定を一任 → そのジャッジが最終決定

 このプレイ、英語では[ Checked swing ]と呼ばれます。まあハーフスイングでも通じる。んでチェックスイングの条件は『①』なので球審が・・・"ストライク・・・・・!"と言ったら・・・・・それが正式判定・・・・・・・だってことをお忘れなく。つまりこういうことになります

球審「ストラーイッ!」
バッター「スイングしてない! チェックスイングして!!」
球審「ダメです」

 いつもキャッチャーばかりアピールしてる印象だけど、ルール的に監督が要求しても良かったりする。でもまあいちばん身近にいるキャッチャーが「振った! 振った!」と言うのは自然の流れだよね~

 上記ルールを尊重するなら、キャッチャーのみなさんは塁審にではなく球審に対し「チェックおねがいします!」と要請しましょう

 ちなみに、ルールには「監督はハーフスイングについて異議を唱える時はベンチから出てくるなよ?」という文言があります。アピールするぞ! と意気込んで勢い余って飛び出さないようご注意ください



:チェックスイング時の審判の動き:

 球審視点からの視認性に問題があるので、球審は"バッターと反対側の塁審"にジャッジを委ねます。塁審はすかさずジャッジを下すわけだけど、じゃあ具体的にどんなやりとりをしてるの?

 実は審判も組織がありまして、審判がゲーム中連絡をとりあうサインとか、打球方向に対するそれぞれの動きなどを練習していたりします。んでハーフスイングのチェックに関しても所定の動きがあって、具体的にはこんなことをしてるの

① 主審が要請を受けた場合、塁審を指差し
   「Did he Go?」
② 塁審は球審から判定を委ねられた場合――
  → スイングの場合、拳を上げ
    「Yes he went」
  → ノースイングの場合、両手を横に出し
    「No he didn’t go」

 野球はアメリカ発祥なので、まあコールは基本英語です。この場合「彼はやった?(スイングした?)」と球審が訪ね、指名された塁審が「ああ、やったよ(スイング)」もしくは「いや、やってないよ(ノースイング)」となります

 試合の映像を見てる方ならわかるでしょうが、この際球審は塁審に左手の指・・・・さしてますね(右手だと"ストライク"になっちゃう)。さり気なく塁審側の足を1歩下げて正対できる姿勢を作るのがまた細かい

 んで尋ねられた塁審は『アウト or セーフ』の動きをしてスイングの是非を答えます。まあ草野球とか、そういうゆるーい試合だと厳密にやらないかもしれんけど、公式試合の場合はこういうやりとりが見られます。以下実際の例をシェアリング

YouTubeチャンネル、Mid Island Men’s League
ttps://youtu.be/iYuNHi4uisI

 こういったやりとり、実は審判同士たくさん行ってます。興味ある方は選手だけでなく審判の動きにも着目してみてください。以下元プロ野球審判員の解説ね。4分20秒あたりからどうぞ

YouTubeチャンネル、篠宮慎一チャンネル【しのさんの野球の未来】
ttps://youtu.be/XRWajs7RUNU




:チェックスイングのタイミング:

 チェックスイングは厳密に言うとアピールプレイではありません。アピールはアウトを得るためのプレイだからね。ただし球審に要求できるタイミングはアピールプレイと同じです

① 投手が打者に次の1球を投じる、もしくは
  次のプレイをした、もしくはプレイを企てた
② イニングの表もしくは裏が終了した後
  守備側チームのすべての内野手がフェア地域を離れた

 これらの前に要請しないと、審判としては『チェックスイングを要請しない選択をした』と受け取るでしょう。さらに、チェックスイングやアピールプレイはタイムがかからないプレイなので、攻撃側が「アピールなどさせるか!」言うてあえて盗塁をしかけたりなんだったりして揺さぶりをかけるかもしれないね

 チェックスイングは『ボールを打とうとしたか否か』が判定材料となるため、ぶっちゃけバットがどのくらいまで出たかってのは判断材料のひとつにしか過ぎません。ほかにもバットとボールが交差してたとか打者にスイングの意志があったとかそういうのをイロイロ加味してジャッジするのです

 でなきゃインコースの球を避けるためにくるりと回転したらぜーんぶスイングになっちまうじゃねーかというツッコミが、ね?



 以上がハーフスイングに関する基本的あれこれでした。わかりやすい、もっとこういう説明がほしいなどあればコメントや評価よろしくおねがいします

 これらは野球をプレイしてるとフツーの光景ですが、そのルールを細かく見てみたり動きを観察してみると新しい発見があったりする。チェックスイングはキャッチャーだけの権利じゃないってこと初めて知った方も多いのではないでしょうか

 テレビ中継も良いですが、実際の試合を見るのもおすすめ。これからオープン戦を迎え、やがて始まるペナントレースに向けて、アナタもルールブック片手に試合観戦なんていかがでしょう?

 アナタの野球ライフに幸あれ!
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