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作者: Ganndamu00
残酷な描写あり R-15
56話:ビッグ・ブラザー作戦③
 3レギオンリーダー会議が終わった後、真昼はGE.HE.NA.のラボに来ていた。これまでとは違って隠れて入る必要はなく、堂々と入っていく。
 研究員達は時間通りにやってきた真昼に挨拶をして、採血など病院で行うような定期検診を始める。
 今日は真昼のXM3型強化衛士化の手術を行う日だった。
 カプセルの中に入って、真昼は睡眠薬で眠らされる。そして次、目が覚めると手術は終わっていた。

 真昼は自分が強くなっていることを自覚した。
 首都防衛構想会議はあと数日までに迫っている。真昼はクレスト社の代表説明者と連絡を密に取り、話を纏めていく。

 首都防衛構想会議は各衛士訓練校から代表者1〜3名を選出して話し合う会議だ。真昼は横浜衛士訓練校の反GE.HE.NA.思想を受け入れつつ、GE.HE.NA.を支援する橋渡しとして代表者に選ばれた。
 他には愛花とシノアを選び、自分の陣営で固める。

「コピリコとお台場……難敵になりそうだねぇ」

 そして首都防衛構想会議の日がやってきた。
 会場である女学院はGE.HE.NA.によって多くの教導官が殺され、ギガント級デストロイヤーによって半壊させられた場所だ。だからこそここを再起のきっかけにする為に集められたのだ。

「凄い衛士の数ですね」
「東京圏の訓練校のほぼ全てから来ているようてすからね」
「なんか見られてませんか?」
「ああ、たぶん真昼様を見ているんでしょう。あの方は色々な意味で有名ですから」

 真昼は自分に視線が集まってきているのを自覚していた。ギガント級デストロイヤーの単体討伐にラプラスの力を使った戦域支援。いくつもの戦場を渡り歩き勝利に導いてきた梨璃の噂は世界の全てが知っている。

 それに加えて足にはパワーアシストアタッチメント、腕には義手をつけている姿はどうしても目を引くものだ。

「真昼さん」
「あ、流星ちゃん。この間ぶり」
「この間ぶり。凄い注目されてるわね」
「この見た目だからね」
「それだけじゃないと思うけど」

 流星の後ろから高城もやってくる。

「こんにちは、真昼さん」
「こんにちは、高城ちゃん。今日はよろしくね」
「ええ、わかっているわ」

 二人だけにわかる合図を交わして、確認する。
 真昼はコピリコ女学院の情報を思い出す。
 私立コピリコ女学院。
 古豪のミッション系衛士訓練校
 東京地区新宿御苑にキャンパスを構えるミッション系の訓練校。東京御三家の一角を担い、東京地区を3分割して下北沢などの東京西部から南部にかけてを国定守備範囲としている。

 「時にまつわる逸話」を歴史の中に持ち、その影響からかスキル「Z」や「ファンタズム」「鷹の目」などの教育に力を入れている。
また、教育方針として「一対一の戦術への適応」を取っており、生徒は総じて戦術理解が高い。

 同じく御三家の訓練校、マイル訓練校とは長く良きライバル校として競い合っている。
 現在の3年生世代までは東京最強を誇っていたが、デストロイヤーと1対1の激しい戦いを繰り広げる「デュエル」に身を投じる衛士が多く、次第に摩耗していった。
 生徒はみな正式に衛士になるとき(高等部に入る時)に洗礼名をつける。
 最強のトップレギオン、そして自主結成レギオン。

 コピリコ訓練校はトップレギオン制を取っており、学内教会より選抜される最強のレギオン、LGテンプル騎士団が存在する。
 テンプル騎士団はメンバーが固定されておらず、都度ベストメンバーを選抜する。 選抜されたメンバーには特別なジャケットが付与され、これに袖を通すことは生徒にとって非常に名誉なことである。

 コピリコ訓練校には長らくテンプル騎士団しか存在していなかったが、訓練校とG.E.H.E.N.A.の関係を知った一部の生徒が学院に反旗を翻し、自主結成レギオンを結成する。それがアイアンメイデンである。
 自主結成レギオンは強豪ガーデンの必須条件であり、LGアイアンメイデンの結成はコピリコ女学院の強豪への返り咲きを意味している。

 コピリコ訓練校には姉妹誓約という特定の上級生が下級生を導く疑似姉妹契約の制度がある。
契約を交わす際には各々が持つブローチを交換するという習わしがある。
これは横浜衛士訓練校女学院でも存在する。

 コピリコ訓練校関東の親G.E.H.E.N.A.主義訓練校の代表として知られる。 訓練校の近くにはG.E.H.E.N.A.ビックラボと呼ばれるG.E.H.E.N.A.の大型研究施設を持ち、様々な研究を行っている。
 そのためか、G.E.H.E.N.A.の研究者を親に持つ生徒も多い。

(GE.HE.NA.過激派によってコピリコはこの有様。生徒にも傷を負った者も多い。この遺恨をどうやって解消するか。そこが鍵になる)

 GE.HE.NA.としてはコピリコ衛士訓練校の持つビックラボは何としても取り返したい。
 横浜基地と並ぶ関東のGE.HE.NA.研究施設の重要度が高い場所だ。

(あとは反GE.HE.NA.のお台場衛士訓練校)

 お台場衛士訓練校。
 東京地区御台場に校舎を構える東京御三家の一角のガーデンで、北欧神話と近しい「ベオウルフ」の世界観をガーデンの特色としている。
ベオウルフがとても強い肉体を誇った戦士であることに由来し、西洋剣術や格闘術などを必修とし、幼稚舎からの一貫教育を通して心身ともにスパルタの教育を行っている。
 「剣」へのこだわりが特に強く、戦術機に関しても「ファントム」と呼ばれる第1世代CHARMを入学時に全生徒が1振りずつ仕立ててもらい、常に身に着けている。

 戦闘時は敵をファントムで弱らせたところで、クリスタルコアを主武器戦術機に移し戦うという基本戦術をとっている。
 もともと御台場衛士訓練校は地域主義がとても強く、外征には積極的ではなかった。
 この傾向は最近のレギオンの外征増加によって変わってきてはいるが、それでも他県のトップガーデンと比べると劣り、御台場女学校がワールドクラスのガーデンになるための課題とも言われている。

 鎌倉府の聖メルクリウスインターナショナルスクールと姉妹校提携をしてから育成ガーデンに舵を切って今の地位を築いた。
校訓は「成功は苦しみからこそ得られる」

 御台場女学校のレギオンの中ではレギオンメンバー内で共闘を誓う「血誓の儀」というものが存在する。
 単にメンバーであるだけでなく、"家族"として共闘を誓う場合のみ行う。
 上級生下級生は各1人ずつ限り、同級生は2,3人ほどで結ぶ。
 実際に契約を結ぶ際は血液ではなく互いの魔力を交流させて血液の代用としているが、人によっては実際に血液を混ぜ合わせて大地に含ませる古来のやり方に則る者もいる。
 特定のアイテムの交換がない契約であったが、最近は認識票であるリングを交換することが慣習化してきている。

 御台場衛士訓練校は反G.E.H.E.N.A.主義の衛士訓練校であり、所属している強化衛士は主に研究所から救出してきた衛士である。主にヴィラル・ドルキソン教導官が救出を行っている。

「真昼様、緊張してらっしゃいますか?」

 愛花に問われて、真昼は自分が神経質になっていることに気付いた。

「そうだね。緊張しているかも。訓練校の説得に失敗すれば人類が滅びるかもしれない」
「安心してください。真昼様ならできます」
「はい。真昼様ならうまくいきます」
「ありがとう、二人とも」

 真昼達はコピリコ女衛士訓練校の校舎の中へ入っていた。
 そして真昼に視線が向いている中、スーツケースを持った黒服の大人達も、校舎に入っていく。
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