#2
『ヒーローに、ならなきゃ。』
嫌いな父親に何故かConnect ONE本部へ連れて来られた瀬川。
「(本当にConnect ONEなのか……?)」
初めは嘘だと思った。
しかしどう見ても最新鋭の技術が詰め込まれた外観に大量の以前避難誘導をしてくれた軍用車両。
そして先程から出入りしている制服を着た職員たち。
嘘だという理由を探す方が難しい環境の中で瀬川は信じるしかなかった。
「ジロ……」
その職員たちはすれ違う度に瀬川と父を蔑むような目で見ていた。
その理由は分からないが居心地が悪いのは確かである。
「何で親父がここに入る権限あるんだよ……」
そして当然の疑問を話したくもない父親に投げかける。
「この組織は軍と我々の教会が属する"創世教連盟"が共同で立ち上げたものだからな、神父長の私には当然の権限だ」
何と父親の宗教である創世教が設立に大きく関わっているというのだ。
「何で創世教が軍事組織を立ち上げれんだよ……」
疑念は更に深まるばかり。
「詳しい事情は彼から説明を受けるんだ」
父親はとある扉の方を指して見せた。
その扉が開きある人物が現れる。
「新生長官っ!」
父親が頭を下げて挨拶をした。
他の職員たちはまるで見向きもしなかったが。
「この人は……!」
テレビで見た事がある人物だった。
組織が公に姿を現した時の会見、そして先日の大阪の戦いでの会見。
そこでいつも話していた人物だ。
「やぁ最後の仔羊、会いたかったよ」
Connect ONE長官である新生継一が瀬川の事を知っているように挨拶をした。
・
・
・
瀬川と父は本部の中を歩く新生長官に着いて行く。
「(すげぇ空間だ、最新鋭の技術の塊だろ……)」
廊下やガラス窓から見える施設の近未来感に少しSF好きの血が喜んだがそれよりも父親や新生長官への疑念が大きかった。
「ふむ……」
未だに疑念の晴れない瀬川を気遣うように新生長官は話しかけた。
「いきなり呼び出す形になってすまないね、驚くのも無理はない」
「え……」
「君のお父さんは肝心な所で説明不足だ、昔からそうだよ」
少し笑いながら瀬川の父の事を言う。
「かたじけない……」
顔を下に向けて反応する父親。
余計に瀬川は分からなくなった。
「チラっ……」
そして先程からひたすら感じるすれ違う職員たちの視線。
チラチラとこちらを蔑むような目で見ながらヒソヒソと聞こえないように話している。
「あの、俺これからどうするんですか……?」
訳が分からないので恐る恐る聞いてみる事にした。
こんなSFチックな空間で素人同然の自分が何をすると言うのだろう。
「それも聞いてないのかい?本当にただ来いとだけ伝えられた感じか……」
その新生長官の言葉に反応して父親が口を開く。
「私の口から真実を話しても信じてくれないと思いましてね」
それは確かにそうだ。
内容によっては父親に着いて行く事すら拒絶しただろう。
「じゃあここで結論だけ言うとするか。瀬川抗矢くん、君にはね……」
ゴクリと息を呑む。
一体何をさせられると言うのか。
「Connect ONE実働部隊TWELVEに入って罪獣と戦ってもらう」
一瞬時が止まったような気がした。
罪獣と戦うだなんて。
「……は?」
しかし目の前の彼は至って真面目な顔をしている、父親もそうだ。
とにかく今は父親を否定したくて仕方なかった。
☆
訳も分からないまま瀬川は父親と新生長官に連れられ謎の資料室のような所へ呼び出された。
「ほら、遠慮せず座って」
まるで面接のように新生長官と向かい合って座る事になる。
そして同伴の保護者のような位置に父親は座った。
「っ……」
横の父親からは明らかな圧を感じ、前方の新生長官からは優しさという圧を感じて肩を窄めてしまう。
「緊張しなくて良いよ、これから君は家族として迎え入れられるんだから」
家族という響きがどうにも怪しい。
父の創世教にまつわる話の時のような胡散臭さを感じる。
「まずは自己紹介からしようか。私は新生継一、Connect ONEの長官を務めている」
瀬川の気持ちを他所に新生長官は自己紹介を始めた。
「元々は母から継いで創世教の司祭をやっていたんだ。そして神の定めた来たるべき時が近付いている今、軍と協力してこの組織を立ち上げたんだ」
彼も父親と同じ創世教の人間なのか。
ならばこの胡散臭さは納得だ。
「親父の言ってた事は本当なんすね……」
先ほど父の言った創世教と軍が協力してConnect ONEが出来たという話を認めざるを得なくなる。
「概ね本当だよ。彼も神父長だからある程度を知る権利は与えられている」
そして瀬川は疑問を投げかけた。
「ていうか何で創世教がこんな組織作れたんすか?あくまで一宗教がこんな大規模な……」
すると新生長官は目を細めた。
瀬川の父の方を見て少し微笑む。
「やっぱり神父長の息子が神を信仰していないという話は本当だったね……」
「……?」
「良いかい?我々は側から見れば存在しない神を崇める胡散臭い宗教団体に見えるかも知れない。ただ理解して欲しい、事実だから信仰しているという事を」
真剣な眼差しで迫られた事で余計に怖くなってしまう。
このようなヤバい人に勧誘されている、そして世界が守られているのだと。
「何の証拠もなく信仰はしないよ、しっかり研究を重ねて事実だと断定したんだ」
そう言って新生長官は資料を取り出して見せる。
そこには何かの研究データと遺跡など考古学的な写真が載っていた。
「私の家系は創世教の研究を代々やっている、その結果この時代に罪獣とゼノメサイアが現れる事を掴んだ」
確かに資料にはそのような事も書いてある。
「そして研究データを証拠に軍に話を持ちかけこの組織を立ち上げた。少し予測していた時期とズレて出動は遅れてしまったが……どうか信じて欲しいっ」
そんな事を言われた所で既に瀬川の頭はパンクしていた。
正直これ以上考える事は出来なそうだ。
「すみません、ちょっと頭がパンクして……」
頭を押さえながら伝えると流石の新生長官もハッとした。
「すまない、熱く語りすぎてしまったね……」
「いえ……」
とりあえず波風は立たせたくないので丁寧に答える。
「少し休んでから続きを話そう、休憩室へどうぞ」
そう言われて瀬川は訳が分からないまま休憩室に案内されたのだった。
「(最悪な気分だ……)」
☆
休憩室に案内された瀬川。
しかしそこには職員たちも当然おり居心地の悪さは変わらなかった。
ジロジロこちらを見る不快な視線を感じる。
「気にするな抗矢、彼ら元軍人に我ら創世教徒はあまり歓迎されてなくてな」
共に休んでいる父親が説明してくれた。
すると職員の一人がわざと聞こえる程の声で呟く。
「元じゃねぇ、今でも軍人のつもりだ」
直接殴り込みには来ないが明らかに歓迎していないのは分かる。
「それは失礼」
父親もそれだけ返事をしてそれ以上干渉はしなかった。
しかし職員たちがヒソヒソと話す声が聞こえて来る。
「何だよアイツ、また増えんのか?」
「確かに揃ってないとは言ってたけどあんなガキが……」
「高校生くらいか?どうなってんだ上は……」
恐らく瀬川の事を良く思わない発言だろう。
それは伝わって来た。
「〜〜っ」
何故突然こんな所に連れて来られてこのような想いをしなければならないのだろう。
「親父、もう限界だ。俺帰るから」
流石に我慢が出来なくなり瀬川は立ち上がり帰ろうとした。
休憩室の扉に向かい出て行こうとしたその時。
「おわっ、何で普通の人が⁈」
突然扉が開き棒キャンディを咥えた男が現れた。
瀬川の存在に驚く。
「あ、すいません……っ」
通り道の邪魔になってしまった事と驚かせてしまった事を謝罪しすぐにまたその場から離れようとした。
「あー疲れた、ん?竜司くん何してるの?」
「入口前に立つな、邪魔だっつーの……ん?」
ゾロゾロと仲間たちが集まって来る。
その者たちは瀬川の姿を見て驚いた。
「私の息子だ、TWELVEの仔羊たちよ」
瀬川の父親が彼らの前に立ち説明をした。
「え、TWELVE?」
驚く瀬川に対して。
「参謀の息子さん⁈」
彼らTWELVEの隊員たちもそちらに驚いていた。
「参謀?親父が?」
訪れる疑問の嵐。
彼らは不安から抜け出す事は出来るのだろうか。
つづく
「(本当にConnect ONEなのか……?)」
初めは嘘だと思った。
しかしどう見ても最新鋭の技術が詰め込まれた外観に大量の以前避難誘導をしてくれた軍用車両。
そして先程から出入りしている制服を着た職員たち。
嘘だという理由を探す方が難しい環境の中で瀬川は信じるしかなかった。
「ジロ……」
その職員たちはすれ違う度に瀬川と父を蔑むような目で見ていた。
その理由は分からないが居心地が悪いのは確かである。
「何で親父がここに入る権限あるんだよ……」
そして当然の疑問を話したくもない父親に投げかける。
「この組織は軍と我々の教会が属する"創世教連盟"が共同で立ち上げたものだからな、神父長の私には当然の権限だ」
何と父親の宗教である創世教が設立に大きく関わっているというのだ。
「何で創世教が軍事組織を立ち上げれんだよ……」
疑念は更に深まるばかり。
「詳しい事情は彼から説明を受けるんだ」
父親はとある扉の方を指して見せた。
その扉が開きある人物が現れる。
「新生長官っ!」
父親が頭を下げて挨拶をした。
他の職員たちはまるで見向きもしなかったが。
「この人は……!」
テレビで見た事がある人物だった。
組織が公に姿を現した時の会見、そして先日の大阪の戦いでの会見。
そこでいつも話していた人物だ。
「やぁ最後の仔羊、会いたかったよ」
Connect ONE長官である新生継一が瀬川の事を知っているように挨拶をした。
・
・
・
瀬川と父は本部の中を歩く新生長官に着いて行く。
「(すげぇ空間だ、最新鋭の技術の塊だろ……)」
廊下やガラス窓から見える施設の近未来感に少しSF好きの血が喜んだがそれよりも父親や新生長官への疑念が大きかった。
「ふむ……」
未だに疑念の晴れない瀬川を気遣うように新生長官は話しかけた。
「いきなり呼び出す形になってすまないね、驚くのも無理はない」
「え……」
「君のお父さんは肝心な所で説明不足だ、昔からそうだよ」
少し笑いながら瀬川の父の事を言う。
「かたじけない……」
顔を下に向けて反応する父親。
余計に瀬川は分からなくなった。
「チラっ……」
そして先程からひたすら感じるすれ違う職員たちの視線。
チラチラとこちらを蔑むような目で見ながらヒソヒソと聞こえないように話している。
「あの、俺これからどうするんですか……?」
訳が分からないので恐る恐る聞いてみる事にした。
こんなSFチックな空間で素人同然の自分が何をすると言うのだろう。
「それも聞いてないのかい?本当にただ来いとだけ伝えられた感じか……」
その新生長官の言葉に反応して父親が口を開く。
「私の口から真実を話しても信じてくれないと思いましてね」
それは確かにそうだ。
内容によっては父親に着いて行く事すら拒絶しただろう。
「じゃあここで結論だけ言うとするか。瀬川抗矢くん、君にはね……」
ゴクリと息を呑む。
一体何をさせられると言うのか。
「Connect ONE実働部隊TWELVEに入って罪獣と戦ってもらう」
一瞬時が止まったような気がした。
罪獣と戦うだなんて。
「……は?」
しかし目の前の彼は至って真面目な顔をしている、父親もそうだ。
とにかく今は父親を否定したくて仕方なかった。
☆
訳も分からないまま瀬川は父親と新生長官に連れられ謎の資料室のような所へ呼び出された。
「ほら、遠慮せず座って」
まるで面接のように新生長官と向かい合って座る事になる。
そして同伴の保護者のような位置に父親は座った。
「っ……」
横の父親からは明らかな圧を感じ、前方の新生長官からは優しさという圧を感じて肩を窄めてしまう。
「緊張しなくて良いよ、これから君は家族として迎え入れられるんだから」
家族という響きがどうにも怪しい。
父の創世教にまつわる話の時のような胡散臭さを感じる。
「まずは自己紹介からしようか。私は新生継一、Connect ONEの長官を務めている」
瀬川の気持ちを他所に新生長官は自己紹介を始めた。
「元々は母から継いで創世教の司祭をやっていたんだ。そして神の定めた来たるべき時が近付いている今、軍と協力してこの組織を立ち上げたんだ」
彼も父親と同じ創世教の人間なのか。
ならばこの胡散臭さは納得だ。
「親父の言ってた事は本当なんすね……」
先ほど父の言った創世教と軍が協力してConnect ONEが出来たという話を認めざるを得なくなる。
「概ね本当だよ。彼も神父長だからある程度を知る権利は与えられている」
そして瀬川は疑問を投げかけた。
「ていうか何で創世教がこんな組織作れたんすか?あくまで一宗教がこんな大規模な……」
すると新生長官は目を細めた。
瀬川の父の方を見て少し微笑む。
「やっぱり神父長の息子が神を信仰していないという話は本当だったね……」
「……?」
「良いかい?我々は側から見れば存在しない神を崇める胡散臭い宗教団体に見えるかも知れない。ただ理解して欲しい、事実だから信仰しているという事を」
真剣な眼差しで迫られた事で余計に怖くなってしまう。
このようなヤバい人に勧誘されている、そして世界が守られているのだと。
「何の証拠もなく信仰はしないよ、しっかり研究を重ねて事実だと断定したんだ」
そう言って新生長官は資料を取り出して見せる。
そこには何かの研究データと遺跡など考古学的な写真が載っていた。
「私の家系は創世教の研究を代々やっている、その結果この時代に罪獣とゼノメサイアが現れる事を掴んだ」
確かに資料にはそのような事も書いてある。
「そして研究データを証拠に軍に話を持ちかけこの組織を立ち上げた。少し予測していた時期とズレて出動は遅れてしまったが……どうか信じて欲しいっ」
そんな事を言われた所で既に瀬川の頭はパンクしていた。
正直これ以上考える事は出来なそうだ。
「すみません、ちょっと頭がパンクして……」
頭を押さえながら伝えると流石の新生長官もハッとした。
「すまない、熱く語りすぎてしまったね……」
「いえ……」
とりあえず波風は立たせたくないので丁寧に答える。
「少し休んでから続きを話そう、休憩室へどうぞ」
そう言われて瀬川は訳が分からないまま休憩室に案内されたのだった。
「(最悪な気分だ……)」
☆
休憩室に案内された瀬川。
しかしそこには職員たちも当然おり居心地の悪さは変わらなかった。
ジロジロこちらを見る不快な視線を感じる。
「気にするな抗矢、彼ら元軍人に我ら創世教徒はあまり歓迎されてなくてな」
共に休んでいる父親が説明してくれた。
すると職員の一人がわざと聞こえる程の声で呟く。
「元じゃねぇ、今でも軍人のつもりだ」
直接殴り込みには来ないが明らかに歓迎していないのは分かる。
「それは失礼」
父親もそれだけ返事をしてそれ以上干渉はしなかった。
しかし職員たちがヒソヒソと話す声が聞こえて来る。
「何だよアイツ、また増えんのか?」
「確かに揃ってないとは言ってたけどあんなガキが……」
「高校生くらいか?どうなってんだ上は……」
恐らく瀬川の事を良く思わない発言だろう。
それは伝わって来た。
「〜〜っ」
何故突然こんな所に連れて来られてこのような想いをしなければならないのだろう。
「親父、もう限界だ。俺帰るから」
流石に我慢が出来なくなり瀬川は立ち上がり帰ろうとした。
休憩室の扉に向かい出て行こうとしたその時。
「おわっ、何で普通の人が⁈」
突然扉が開き棒キャンディを咥えた男が現れた。
瀬川の存在に驚く。
「あ、すいません……っ」
通り道の邪魔になってしまった事と驚かせてしまった事を謝罪しすぐにまたその場から離れようとした。
「あー疲れた、ん?竜司くん何してるの?」
「入口前に立つな、邪魔だっつーの……ん?」
ゾロゾロと仲間たちが集まって来る。
その者たちは瀬川の姿を見て驚いた。
「私の息子だ、TWELVEの仔羊たちよ」
瀬川の父親が彼らの前に立ち説明をした。
「え、TWELVE?」
驚く瀬川に対して。
「参謀の息子さん⁈」
彼らTWELVEの隊員たちもそちらに驚いていた。
「参謀?親父が?」
訪れる疑問の嵐。
彼らは不安から抜け出す事は出来るのだろうか。
つづく
つづきます