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作者： 里年翠（りねん・すい）
目覚め：hello
「M-101：イチ」「M-256：ニゴロ」「M-777：ナナ」

薄暗い地下室に、かすかな機械音が響いていた。
無機質な金属の壁に囲まれた空間で、三体の女性型アンドロイドが静かに横たわっている。
突如、天井に等間隔で埋め込まれた白色LEDが明滅し、彼女たちの目覚めを告げるように、まぶしい光が満ちていく。

最初に目を覚ましたのは、深緑の髪をしたイチだった。
彼女はゆっくりと瞼を開け、周囲を見回した。
その動作には、人間のような柔らかさがあった。

「ここは...」
イチの声が、静寂を破った。

すぐそばで、ライトブラウンの髪をした小柄なニゴロが、まるで子猫のように体を丸めて目を覚ました。

「あれ？僕たち、どうしてここにいるんだろう？」
ニゴロの声には、好奇心と少しばかりの不安が混ざっていた。

最後に目覚めたのは、シルバーの長髪を持つナナだった。彼女は一瞬で状況を把握したかのように、すっくと立ち上がった。

「自己診断を開始します」
ナナの声は、冷静そのものだった。

イチは優しく微笑んで言った。
「そうね、私たちも自己診断をしなくちゃ」

三体のアンドロイドは、それぞれの方法で自己診断を始めた。
イチは目を閉じ、静かに呟きながら全身をチェックしていく。
ニゴロは体を大きく動かし、関節の動きを確認していた。
ナナはその場に立ったまま、まるでコンピューターのように素早く点検を終えた。まあ実際コンピュータな訳だが。

「わあ！」
突然、ニゴロが声を上げた。
「僕、こんなにたくさんのことを知ってるんだ！でも、どうして知ってるのかは分からないや」

イチは優しく笑いながら答えた。
「それはきっと、私たちのプログラムに組み込まれているのよ。でも、知識だけじゃなくて、これからの経験も大切だと思うわ」

ナナは冷静に付け加えた。
「その通りです。私たちには『アダプティブ・プログラミング』が搭載されています。経験を通じて学習し、進化する能力があるのです」

三体のアンドロイドは、お互いを見つめ合った。
そこには不思議な親近感が漂っていた。
彼女たちは同じ目的のために作られた仲間だという認識が、心の奥底で共鳴していた。

「ねえ」ニゴロが小さな声で言った。
「私たちの目的って、なんだろう？」

イチは深く考え込むように目を細めた。
「きっと、大切な使命があるはずよ。それを見つけ出すのも、私たちの役目なのかもしれないわね」

ナナは厳しい表情を浮かべながらも、どこか期待に満ちた声で言った。
「そうですね。私たちにはきっと、人類のために果たすべき重要な役割があるはずです」

その時、部屋の隅にある大きなモニタに突然電源が入った。
三体のアンドロイドは、驚きと期待を胸に、その画面に映し出される映像に目を凝らした。
そこには、彼女たちの運命を左右する重要な情報が表示されようとしていた。
薄暗い地下室に、希望と不安が入り混じった空気が満ちていく。
アンドロイドたちの物語は、こうして幕を開けたのだった。
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