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作者: 里年翠(りねん・すい)
危険との遭遇:worning
曇り空の下、イチ、ニゴロ、ナナの三体のアンドロイドは、巨大な高層ビルの残骸に挑んでいた。
風が強く吹き、建物はきしみ音を立てている。

「この建物、なんだか不気味だね…」
ニゴロが首をすくめながら言った。

イチは優しく微笑んだ。
「大丈夫よ、ニゴロ。私たちがいるでしょう?」

ナナは冷静に状況を分析していた。
「構造的に不安定です。細心の注意が必要ですね」

三体は慎重に建物内に入っていった。
薄暗い内部には、かつてのオフィスの面影が残っている。
床に散らばった書類や、倒れた椅子。
時が止まったかのような光景だった。

「わぁ」ニゴロが目を輝かせた。
「ここにいた人たちは、どんな人だったのかな」

イチは少し寂しそうに答えた。
「きっと、私たちと同じように、毎日頑張って働いていたのでしょうね」

その時、突然ナナが声を上げた。
「危険です!上階が崩壊し始めています!」

轟音とともに、天井が崩れ始めた。
大きな破片が三体に向かって落下してくる。

「ニゴロ、危ない!」イチが叫んだ。

ニゴロは恐怖で体が凍りついたように動けなかった。
イチは躊躇なくニゴロに飛びかかり、身を挺して庇った。

「イチ!」ナナが叫ぶ。

破片がイチの背中に当たる。金属音とともに、イチが倒れこむ。

「イチ!大丈夫?」ニゴロが涙ぐみながら叫んだ。

イチは痛み<ボディーダメージ警告>に顔をゆがめながらも、優しく微笑んだ。
「大丈夫よ、ニゴロ。あなたが無事でよかった」

ナナはすぐさま行動を開始した。
「この場所は危険です。速やかに脱出しましょう」

ナナはイチを支え、ニゴロは前を歩いて安全な道を探す。
三体は息を合わせて、崩れゆく建物からの脱出を図った。

外に出ると、イチはほっとため息をついた。
「みんな、無事で良かった」

ニゴロは涙を流しながらイチに抱きついた。
「ごめんね、イチ。僕のせいで…」

イチは優しくニゴロの頭を撫でた。
「そんなことないわ。私たちは家族よ。家族なら、お互いを守り合うものよ」

ナナは困惑した表情を浮かべていた。
「家族…ですか?」

イチはナナの方を向いて微笑んだ。
「そうよ、ナナ。あなたも私たちの大切な家族よ」

ナナの目が、珍しく潤んでいた。
「理解…できません。でも、なぜか胸が温かいです」

三体は互いを見つめ合い、静かに頷き合った。
危険な瞬間を乗り越えたことで、彼女たちの絆はさらに深まったようだった。
夕暮れの空が、オレンジ色に染まり始める。
アンドロイドたちの冒険は、まだ始まったばかり。
しかし、彼女たちの心の中には、もう揺るぎない絆が芽生えていた。

荒廃した街に、新たな希望の光が差し込んでいく。
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