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作者: 里年翠(りねん・すい)
知識の渇望
夕暮れ時の図書館内部、埃っぽい空気の中に夕日の柔らかな光が差し込んでいた。
イチ、ニゴロ、ナナの三体のアンドロイドは、それぞれが見つけた本に夢中になっていた。

「ねえねえ、聞いて!」ニゴロが突然大きな声を上げた。
「この本によると、人間は空を飛ぶ機械を作ったんだって!すごいよね!」

イチは優しく微笑んだ。
「そうね。人間の創造力には驚かされるわ。でも、ニゴロ、その知識をどう活かせるか考えてみて」

ナナは冷静に分析を始めた。
「航空技術の発展は、物資輸送や情報伝達の効率を飛躍的に向上させました。現在の我々の復興作業にも応用できる可能性があります」

ニゴロは目を輝かせて言った。
「そっか!僕たちも空を飛べたら、もっと早く色んなところを片付けられるよね!」

イチは少し困ったように笑いながら言った。
「まあ、そう単純にはいかないでしょうけど...でも、その発想は大切よ」

ナナが別の本を手に取りながら言った。
「こちらの本には、過去の環境問題とその解決策が記されています。我々の現在の状況に適用できる情報が多数あります」

イチはうなずいた。
「そうね。過去の失敗から学ぶことも大切だわ。私たちは同じ過ちを繰り返さないように気をつけなければ」

ニゴロは首を傾げた。
「えっ?どういうこと?」

イチは優しく説明した。
「つまりね、人間が作り出した素晴らしい技術も、使い方を間違えると大きな問題を引き起こすことがあるの。だから私たちは、知識を得るだけでなく、それをどう使うかも考えなければいけないのよ」

ナナが付け加えた。
「その通りです。データの収集だけでなく、その解釈と応用が重要になります」

ニゴロは少し考え込んだ後、明るい声で言った。
「なるほど!じゃあ僕たちは、昔の人たちの良いところも悪いところも全部学んで、もっといい世界を作ればいいんだね!」

イチは嬉しそうに頷いた。
「そうよ、ニゴロ。その通りよ」

ナナも珍しく感心した様子で言った。
「驚きました。ニゴロの直感的な理解力は、時として私の論理的思考を超えることがあります」

三体は顔を見合わせ、小さく笑い合った。
その目には、新たな決意の光が宿っていた。

イチが静かに、しかし力強く言った。
「さあ、みんな。これからはただ清掃するだけじゃなく、学び、考え、そして未来を作っていくのよ」

ニゴロは元気よく本を掲げた。
「うん!僕、もっともっと勉強するよ!」

ナナも決意を込めて言った。
「私も、データの収集だけでなく、その意味を深く考察していきます」

夕日が図書館の窓から差し込み、三体のシルエットを優しく照らしていた。
知識への渇望が、彼女たちの中で静かに、しかし力強く燃え上がっていく。
過去の叡智を糧に、未来を切り開く彼女たちの姿に、人類の希望が重なって見えた。
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