残酷な描写あり
雲上の手紙
てんごくのまま、おげんきですか?
てんしのくにに、もどった、ほんしゅあは、おねつさがった?
「……これじゃ、ママが読めないよぅ」
なんでだろう。
おかしい。うまく書けない。
…………。
……ファンルゥ、とっても凄いの。
偉いの。
だってね、文字を知っているんだもん。
だから、絵本の男の子みたいに、ファンルゥもママにお手紙、書けるはずなの。
……でも、ファンルゥが『てんごく』の『て』の字を書こうとすると、鉛筆がびよーんと長い尻尾を伸ばして、あっちにいっちゃう。
『ん』の字は、ふにゃん。『ご』は、くしゃん。けど、『く』は、とっても上手なの。
…………。
その続きは、ファンルゥの頭の中に書いてある。……だって、うまく書けないんだもん。
ママにお話したいことが、いっぱいあるのに。
ファンルゥ、がっかりだ……。
文字は『お世話係』っていう、おばちゃんたちに少しずつ教えてもらった。
ファンルゥが、お願いしたんだ。ファンルゥ、偉いの。
『お世話係』は、早くて一週間。長くても一ヶ月で別の人に変わる決まりだった。ファンルゥに『肩入れ』しないように、だって。斑目の『偉い人』が言っていた。
『肩入れ』っていうのは、『とっても可愛がること』。
ファンルゥ、賢いから、ちゃんと教えてもらって、ちゃんと知っているんだもん。……なんで、ファンルゥを可愛がったらいけないのかは、よく分かんなかったけど。
でも、ファンルゥと仲良くしてくれた人ほど早く、『お世話係』を交代になるのには気づいた。
――『お世話係』は、おばちゃんじゃなくて、お姉さんもいれば、お婆ちゃんもいた。
優しい人もいれば、怖い人もいた。
ファンルゥは、いろんな人を知っている。だからファンルゥは、ちょっと見れば、その人がいい人か悪い人か、だいたい分かる。だって悪い人は、ファンルゥとお話してくれないだけじゃなくて、目も合わせないんだもん。
ファンルゥが一番大好きだった『お世話係』は、たった一週間しか一緒にいられなかった、ちょっとお婆ちゃんのおばちゃん。
そのおばちゃんは、とっても大事なことを教えてくれた。
「いい? ファンルゥちゃん。ファンルゥちゃんは、普通の子とは違う生活をしているの」
「……?」
ファンルゥは、他の子なんてほとんど知らない。
だから、うーって考えた。パパそっくりと言われている眉毛が、ぐぐって寄っていくのが自分でも分かった。
そしたら、おばちゃんは「分かんないでしょ?」って。
ええと、なんていうのかな。そう。ふふーん、って感じで、ぐっと顎を上げた。
「『分かんない』は、大問題よ! だって、悪い人に騙されちゃうでしょ?」
ファンルゥ、あー! って思った。
そうだ、その通りだ! おばちゃん、賢い。
なんか、凄くびっくりして、あんまり、びっくりだったから、口の形だけ『あー!』で声が出なかったんだけど、おばちゃんにはちゃんと伝わったみたい。おばちゃんは、うんうん、って深く頷いてくれた。
「ファンルゥちゃんは、上の人のせいで、『知っている』ことがとても少ないの」
「?」
「でも、負けちゃ駄目。少しずつでいいから、たくさん『知っている』を増やすのよ。『知っている』は、とっても大事なことだからね」
「……?」
難しくて、よく分かんない。
けど、おばちゃんが、ふんって鼻息を荒くしながら、握りこぶしを作る顔が面白くて、なんだか楽しくなってきた。
「ファンルゥちゃんに、まず一番、大事なことを教えてあげるわね」
おばちゃんが、胸を張る。
凄くわくわくした。だから、早く教えてほしくて、おばちゃんのエプロンの端をぎゅっと引っ張っちゃったくらい。
「絶対に忘れちゃいけない、大事なことよ」
秘密を打ち明けるように、おばちゃんは声を潜める。
「ファンルゥちゃんのパパはね、とっても強くて、正しくて、偉いの!」
「……」
どんなに特別なことかと思ったら、当たり前のことだった。
がっかり。
でも、パパが褒められるのは、嬉しい。だからファンルゥは、おばちゃんの真似っこをして、胸を張って大きな声で言い返した。
「ファンルゥ、知っているもん! パパは強くて、正しくて、偉くて、……えっと、それから、凄くて、格好いいの!」
ファンルゥは、おばちゃんよりもたくさん、パパのいいところを言った。おばちゃんは目を丸くして驚いている。ファンルゥの勝ちだ。
「ファンルゥちゃん、パパのこと好き?」
「大好き!」
ファンルゥがそう言うと、おばちゃんは「いい子ねぇ!」と、にこにこしながらファンルゥの頭を撫でてくれた。
「タオロン様は、とても素晴らしい方よねぇ」
「うん!」
「でもね……」
今まで楽しそうだったおばちゃんが、急に変な顔になった。怒っているような、悲しんでいるような、くしゃっとした顔だった。
「斑目の中には、ずるくて悪い人が、いっぱいいてね。特に上の人たちは、タオロン様が人気者になると自分たちが威張れなくなっちゃうから、タオロン様の悪口を言って、タオロン様を悪者にしているの」
「え……」
「ごめんね、ファンルゥちゃん。嫌なことを『知っちゃった』ね」
おばちゃんは屈んで、ファンルゥをぎゅうっと抱きしめてくれた。今まで、そんなことをしてくれた『お世話係』はいなかったから、ファンルゥは凄くびっくりした。
「ねぇ、ファンルゥちゃん。タオロン様は強い方だけど、ひとりで頑張るのは、やっぱり大変なの。辛かったり、寂しかったりするのよ」
「パパが……?」
信じらんない。
だって、パパは大人だし、とっても強いんだもん。
「えっと、パパが……泣いちゃうの?」
ファンルゥが訊いたら、おばちゃんは、ぷっと吹き出した。
でも、そのあとすぐに、にやぁって笑った。絵本によく出てくる、ずる賢いキツネみたいな細い目で、今にも、いっひっひー、って言い出しそうな感じで。
「そうね、泣いちゃうかも! タオロン様は、お優しい方だから」
「ええぇっ!」
「でもね、ファンルゥちゃん。あなたが居るから、タオロン様は元気になれるの」
「え……? ファンルゥが、パパを元気にする?」
「そう! ちゃあんと『知っていて』あげてね」
「うん!」
ファンルゥが元気に答えると、おばちゃんは今までで一番、素敵な顔になった。
にこにこで、くしゃくしゃの皺がいっぱいで。おばちゃんというより、お婆ちゃんになっちゃったんだけど、優しくて、あったかい――!
「ファンルゥちゃんなら、いっぱい、いっぱい、『知ること』ができる。そして、パパを助けてあげて。パパが泣かないようにね!」
あのおばちゃんが、なんで『知っている』が大事だって、教えてくれたのかは分からない。
けど、それからファンルゥは、いろんなことを『知っている』にしてきた。文字も、そのひとつだ。
ファンルゥが、『お世話係』のおばちゃんたちに『教えて』って言うと、たいていの人は面倒くさそうな、嫌な顔をした。けれど、ファンルゥは『知っている』のために頑張った。
そのうち、人に教えてもらうだけじゃ駄目だ、ってのも分かってきた。
相手は嘘つきかもしれない。
自分で、よーく考えないといけないんだ。
だからファンルゥは、自分の足で調べ、自分の目で見ることも覚えた。
そして――。
ファンルゥは、ホンシュアとお友達になれた。
あの別荘で、ファンルゥがこっそり探検したから。
だって〈蝿〉のおじさんが『地下は駄目』って言うから、絶対、何かあると思ったんだ!
天使のホンシュアにとって、人間の国は、とっても熱いところだった。だからホンシュアは、ずっと辛そうで、可哀想だった。
ファンルゥ、本当は、天使の国のお話や、雲の上の世界のこと、天国のママがどうしているかを聞きたかった。けど、ホンシュアはお熱があるから寝てなきゃ駄目なんだって、ちゃんと分かっていた。だから、我慢したの。偉いの。
代わりに、ファンルゥがいっぱい、いっぱいお話をしてあげた。
ファンルゥの『知っている』は少ないから、ほとんどパパのことだったけど……。
『ホンシュアは、天国のママに頼まれて、ファンルゥの様子を見に来た天使』――じゃないってことを、ファンルゥは、ちゃんと知っている。
そうだったらいいな、って、ファンルゥが思っただけ。
でも、ホンシュアは優しいから、天使の国に戻ったあと、ママに会いに行ってくれたはず。そして、パパとファンルゥのことを伝えてくれていると思う。だから、ちゃんと、あのお話の通りになるの。
本当は……ホンシュアは、ルイフォンに会いに来た。
でもルイフォンは、ホンシュアを知らなかった。
ホンシュアには、とっても難しくて、きっと辛い『何か』がある。
「ファンルゥは、ホンシュアの役に立ったのかなぁ……」
ファンルゥは頑張った。
でも、上手くいったのかは分からない。
だからファンルゥは、いつか知りたい。
絶対、知りたい。
ホンシュアの『何か』は、ちゃんと上手くいって、今は安心して、ママと一緒に雲の上でおしゃべりをしているんだ、って。
天国のママ、お元気ですか?
天使の国に戻ったホンシュアは、お熱下がった?
パパは今も時々、頭の赤いバンダナをきゅっきゅっ、って結び直しているよ。
あれは、ママのおまじないなんでしょ?
ファンルゥ、知っているよ。
いつも、ママがそばに居るよ、ってことなんだよね。
パパが、踏ん張れるように。でも、無理しないように。
……パパが、泣かないように。
ファンルゥ、ちゃあんと、知っているよ。
パパは、やっぱり時々、辛そうだけど、でも、ファンルゥがパパを助けるから。
ママは、ホンシュアと一緒に、雲の上からファンルゥとパパを見守っていてね。
ファンルゥ、パパも、ママも、大好き!
てんしのくにに、もどった、ほんしゅあは、おねつさがった?
「……これじゃ、ママが読めないよぅ」
なんでだろう。
おかしい。うまく書けない。
…………。
……ファンルゥ、とっても凄いの。
偉いの。
だってね、文字を知っているんだもん。
だから、絵本の男の子みたいに、ファンルゥもママにお手紙、書けるはずなの。
……でも、ファンルゥが『てんごく』の『て』の字を書こうとすると、鉛筆がびよーんと長い尻尾を伸ばして、あっちにいっちゃう。
『ん』の字は、ふにゃん。『ご』は、くしゃん。けど、『く』は、とっても上手なの。
…………。
その続きは、ファンルゥの頭の中に書いてある。……だって、うまく書けないんだもん。
ママにお話したいことが、いっぱいあるのに。
ファンルゥ、がっかりだ……。
文字は『お世話係』っていう、おばちゃんたちに少しずつ教えてもらった。
ファンルゥが、お願いしたんだ。ファンルゥ、偉いの。
『お世話係』は、早くて一週間。長くても一ヶ月で別の人に変わる決まりだった。ファンルゥに『肩入れ』しないように、だって。斑目の『偉い人』が言っていた。
『肩入れ』っていうのは、『とっても可愛がること』。
ファンルゥ、賢いから、ちゃんと教えてもらって、ちゃんと知っているんだもん。……なんで、ファンルゥを可愛がったらいけないのかは、よく分かんなかったけど。
でも、ファンルゥと仲良くしてくれた人ほど早く、『お世話係』を交代になるのには気づいた。
――『お世話係』は、おばちゃんじゃなくて、お姉さんもいれば、お婆ちゃんもいた。
優しい人もいれば、怖い人もいた。
ファンルゥは、いろんな人を知っている。だからファンルゥは、ちょっと見れば、その人がいい人か悪い人か、だいたい分かる。だって悪い人は、ファンルゥとお話してくれないだけじゃなくて、目も合わせないんだもん。
ファンルゥが一番大好きだった『お世話係』は、たった一週間しか一緒にいられなかった、ちょっとお婆ちゃんのおばちゃん。
そのおばちゃんは、とっても大事なことを教えてくれた。
「いい? ファンルゥちゃん。ファンルゥちゃんは、普通の子とは違う生活をしているの」
「……?」
ファンルゥは、他の子なんてほとんど知らない。
だから、うーって考えた。パパそっくりと言われている眉毛が、ぐぐって寄っていくのが自分でも分かった。
そしたら、おばちゃんは「分かんないでしょ?」って。
ええと、なんていうのかな。そう。ふふーん、って感じで、ぐっと顎を上げた。
「『分かんない』は、大問題よ! だって、悪い人に騙されちゃうでしょ?」
ファンルゥ、あー! って思った。
そうだ、その通りだ! おばちゃん、賢い。
なんか、凄くびっくりして、あんまり、びっくりだったから、口の形だけ『あー!』で声が出なかったんだけど、おばちゃんにはちゃんと伝わったみたい。おばちゃんは、うんうん、って深く頷いてくれた。
「ファンルゥちゃんは、上の人のせいで、『知っている』ことがとても少ないの」
「?」
「でも、負けちゃ駄目。少しずつでいいから、たくさん『知っている』を増やすのよ。『知っている』は、とっても大事なことだからね」
「……?」
難しくて、よく分かんない。
けど、おばちゃんが、ふんって鼻息を荒くしながら、握りこぶしを作る顔が面白くて、なんだか楽しくなってきた。
「ファンルゥちゃんに、まず一番、大事なことを教えてあげるわね」
おばちゃんが、胸を張る。
凄くわくわくした。だから、早く教えてほしくて、おばちゃんのエプロンの端をぎゅっと引っ張っちゃったくらい。
「絶対に忘れちゃいけない、大事なことよ」
秘密を打ち明けるように、おばちゃんは声を潜める。
「ファンルゥちゃんのパパはね、とっても強くて、正しくて、偉いの!」
「……」
どんなに特別なことかと思ったら、当たり前のことだった。
がっかり。
でも、パパが褒められるのは、嬉しい。だからファンルゥは、おばちゃんの真似っこをして、胸を張って大きな声で言い返した。
「ファンルゥ、知っているもん! パパは強くて、正しくて、偉くて、……えっと、それから、凄くて、格好いいの!」
ファンルゥは、おばちゃんよりもたくさん、パパのいいところを言った。おばちゃんは目を丸くして驚いている。ファンルゥの勝ちだ。
「ファンルゥちゃん、パパのこと好き?」
「大好き!」
ファンルゥがそう言うと、おばちゃんは「いい子ねぇ!」と、にこにこしながらファンルゥの頭を撫でてくれた。
「タオロン様は、とても素晴らしい方よねぇ」
「うん!」
「でもね……」
今まで楽しそうだったおばちゃんが、急に変な顔になった。怒っているような、悲しんでいるような、くしゃっとした顔だった。
「斑目の中には、ずるくて悪い人が、いっぱいいてね。特に上の人たちは、タオロン様が人気者になると自分たちが威張れなくなっちゃうから、タオロン様の悪口を言って、タオロン様を悪者にしているの」
「え……」
「ごめんね、ファンルゥちゃん。嫌なことを『知っちゃった』ね」
おばちゃんは屈んで、ファンルゥをぎゅうっと抱きしめてくれた。今まで、そんなことをしてくれた『お世話係』はいなかったから、ファンルゥは凄くびっくりした。
「ねぇ、ファンルゥちゃん。タオロン様は強い方だけど、ひとりで頑張るのは、やっぱり大変なの。辛かったり、寂しかったりするのよ」
「パパが……?」
信じらんない。
だって、パパは大人だし、とっても強いんだもん。
「えっと、パパが……泣いちゃうの?」
ファンルゥが訊いたら、おばちゃんは、ぷっと吹き出した。
でも、そのあとすぐに、にやぁって笑った。絵本によく出てくる、ずる賢いキツネみたいな細い目で、今にも、いっひっひー、って言い出しそうな感じで。
「そうね、泣いちゃうかも! タオロン様は、お優しい方だから」
「ええぇっ!」
「でもね、ファンルゥちゃん。あなたが居るから、タオロン様は元気になれるの」
「え……? ファンルゥが、パパを元気にする?」
「そう! ちゃあんと『知っていて』あげてね」
「うん!」
ファンルゥが元気に答えると、おばちゃんは今までで一番、素敵な顔になった。
にこにこで、くしゃくしゃの皺がいっぱいで。おばちゃんというより、お婆ちゃんになっちゃったんだけど、優しくて、あったかい――!
「ファンルゥちゃんなら、いっぱい、いっぱい、『知ること』ができる。そして、パパを助けてあげて。パパが泣かないようにね!」
あのおばちゃんが、なんで『知っている』が大事だって、教えてくれたのかは分からない。
けど、それからファンルゥは、いろんなことを『知っている』にしてきた。文字も、そのひとつだ。
ファンルゥが、『お世話係』のおばちゃんたちに『教えて』って言うと、たいていの人は面倒くさそうな、嫌な顔をした。けれど、ファンルゥは『知っている』のために頑張った。
そのうち、人に教えてもらうだけじゃ駄目だ、ってのも分かってきた。
相手は嘘つきかもしれない。
自分で、よーく考えないといけないんだ。
だからファンルゥは、自分の足で調べ、自分の目で見ることも覚えた。
そして――。
ファンルゥは、ホンシュアとお友達になれた。
あの別荘で、ファンルゥがこっそり探検したから。
だって〈蝿〉のおじさんが『地下は駄目』って言うから、絶対、何かあると思ったんだ!
天使のホンシュアにとって、人間の国は、とっても熱いところだった。だからホンシュアは、ずっと辛そうで、可哀想だった。
ファンルゥ、本当は、天使の国のお話や、雲の上の世界のこと、天国のママがどうしているかを聞きたかった。けど、ホンシュアはお熱があるから寝てなきゃ駄目なんだって、ちゃんと分かっていた。だから、我慢したの。偉いの。
代わりに、ファンルゥがいっぱい、いっぱいお話をしてあげた。
ファンルゥの『知っている』は少ないから、ほとんどパパのことだったけど……。
『ホンシュアは、天国のママに頼まれて、ファンルゥの様子を見に来た天使』――じゃないってことを、ファンルゥは、ちゃんと知っている。
そうだったらいいな、って、ファンルゥが思っただけ。
でも、ホンシュアは優しいから、天使の国に戻ったあと、ママに会いに行ってくれたはず。そして、パパとファンルゥのことを伝えてくれていると思う。だから、ちゃんと、あのお話の通りになるの。
本当は……ホンシュアは、ルイフォンに会いに来た。
でもルイフォンは、ホンシュアを知らなかった。
ホンシュアには、とっても難しくて、きっと辛い『何か』がある。
「ファンルゥは、ホンシュアの役に立ったのかなぁ……」
ファンルゥは頑張った。
でも、上手くいったのかは分からない。
だからファンルゥは、いつか知りたい。
絶対、知りたい。
ホンシュアの『何か』は、ちゃんと上手くいって、今は安心して、ママと一緒に雲の上でおしゃべりをしているんだ、って。
天国のママ、お元気ですか?
天使の国に戻ったホンシュアは、お熱下がった?
パパは今も時々、頭の赤いバンダナをきゅっきゅっ、って結び直しているよ。
あれは、ママのおまじないなんでしょ?
ファンルゥ、知っているよ。
いつも、ママがそばに居るよ、ってことなんだよね。
パパが、踏ん張れるように。でも、無理しないように。
……パパが、泣かないように。
ファンルゥ、ちゃあんと、知っているよ。
パパは、やっぱり時々、辛そうだけど、でも、ファンルゥがパパを助けるから。
ママは、ホンシュアと一緒に、雲の上からファンルゥとパパを見守っていてね。
ファンルゥ、パパも、ママも、大好き!