残酷な描写あり
R-15
材料
レンは授業が終わると部室へと向かう。
ハウルは昨日の件で休みをとっていた様で平和な一日を過ごせていた。
尤も紋章魔法を披露した時からクラスメイトからは蔑みの目で見られる事なく、逆に怒らせてはいけない畏怖の対象になっていた。
それもそのはず、訓練用の木偶人形を破壊したのはレンとハウルだけである。
更に昨日の魔法事故のきっかけとなった人物だと噂になっていた。
相変わらずクラスで孤立してしまっているが、レンは気にしていなかった。
部室に行けば待っている人がいるから。
レンは部室の扉を開くと既にリコとメリルが訓練をしていた。
「遅くなりました!」
「いや、私たちも今来た所だから問題ないぞ?」
「レン君、こんにちは」
「うん、こんにちは!」
レンは直ぐに制服を脱ぎ、実習用の服へと着替える。
着替えるとは言っても肌着の上から着込むので異性の目を心配することはない。
作業台に集まると、メリルが不適な笑みを浮かべてレンとリコを見る。
二人は首を傾げるとポーチの様なものを机の上に置く。
「昨日はドタバタで忘れていたんだが、ポチおが魔工部に提供してくれた資材だ」
「先生。魔工部とはなんでしょうか?」
「部活に名前が無くては困るだろう?魔法工作部を略して魔工部だ。……そんなことより、私は魔道具の事に関しては残念ながら知識が殆どない。理由として、ポチお以外の技術者は安定した戦闘用魔道具を作ることが出来ていないから。理由は分かるか?」
二人は天井を見つめて考える。
顎に手を添える姿がシンクロしており、メリルの表情が思わず緩んでしまう。
一足早くリコが挙手をする。
リコに発言権を渡すと、頷いて口を開く。
「ポチおという方がケチで作り方を教えてないからですか?」
「ケチ……ん゙っ!ふふっ……!そ、それはないよ、リコ。アレは調査隊に関連する魔道具以外のレシピは全て公開しているんだよ」
ポチおをケチと言われ、笑いを堪えながらリコの答えを否定する。
すると、レンが手を上げる。
「じゃあ、レシピを解読できないか、別の要素が働いている……?ですか?」
「そうだな。今は憶測でしか語れないが、大方その予想で間違いはないだろうね。生まれ持った魔法が【結合】で全魔法技術士の中で最高の魔力量を誇っているポチおは気づいていないところで何かしている可能性はあるかもしれない。その中でレンは新たな開発をしたんだ。もしかすると、偉業かもしれないぞ?」
偉業と聞き、レンの目尻が下がり、恥ずかしそうに後頭部を掻く。
リコはレンが褒められたことで誇らしげな表情を浮かべており、メリルはこの二人の仲の良さに感慨深くなる。
話が進まなくなってしまう事に気づいたメリルは表情を堅めなものに戻し、二人を見つめる。
「年度末に部活の祭典があるんだ。お前達にはそれに参加してもらい、成果物を出す。これが、魔工部の目的だ。大変だろうが、期待している。それじゃあ、提供された素材でも見てみよう」
メリルはポーチを開き、次々と素材を机の上に出していく。
十センチ四方の大きさしかないポーチから質量も体積を無視した量の素材が出くる様子を見て、リコは興味深そうに見る。
「先生。こちらも魔道具なのですか?」
「そうだ。【収納】の魔法が込められた魔道具で魔力空間の中に物を圧縮して入れ込んでいる原理だ」
「高等魔法ですね……。高い物ではないですか?」
「そうだな……適正な価格という事ならば半年分の食費に相当するな。ただ、これを作れるのはポチおだけだ。だから色々付加価値がついて一年分の生活費といったところだな。リコの言う通り、ポチおはケチなのかもしれんな」
メリルはイタズラっぽい笑みを浮かべてポチおの評価を下げる。
尤も、生活用の魔道具ではないため高価になってしまうのは仕方のないことではあるが。
「戦闘用だけでなく、生活用の魔道具を作るという選択肢もありますね……」
「ということは炊事や洗濯とか?」
「はい。まぁ、このあたりの魔道具はありふれているので売れるかどうかは、長続きの度合いにもよるとは思いますが……」
リコは既に売り出すことに視野を入れているようで、レンは少し負けたような気がした。
レンは知恵を振り絞ろうとするが、やはりというべきか、初めて使った訓練用の魔道具を思い出していた。
「オレは……やっぱり戦闘用の魔道具を作りたいかな」
「ほう?それはなぜだ?」
「初めて使った魔道具ってこともあるんですが、ポチおさんが特別講師に来てくれたときに聞いたんです。魔法技術士の資格を取って、その実力が認められれば調査隊に入られるって……。その目標があるから、戦闘用魔道具が難しくても挑戦したいです!」
レンの熱意を感じ取ったメリルは嬉しそうな表情を浮かべ、レンの頭を撫でる。
「よく言った。お前は誰にも流されない確固たる意志があることがわかった。その気持ちはこれからも、卒業した後でも忘れないでほしい。お前が調査隊を目指すために魔法技術士になるというのならば私はそれの補助をしていこう。もちろんリコも私が指導するから安心してくれ」
「「は、はい!」」
二人の元気な返事が来ると、メリルはポチおから受け取った材料の説明をしていく。
「この青い石がミスリルの原石だ。ミスリル鉄鉱とも呼ばれているな」
青色に染まった石を眺め時折緑色や紫色に見える不思議な現象に見とれているとメリルが咳払いをする。
二人は姿勢を正して聞く体勢になる。
「次は魔石だな。魔獣の体内にある胆石の様な物で魔力を貯める特性がある。私もよく使う。それと……これは木か?何に使うかわからないが、ポチおが寄越したのなら使い道があるのだろう。以上の三種類をこれでもかというくらい頂いた。今度会った時にお礼を言っておくのだな」
三種類の材料ではあるものの、畳二畳分の机の上はおろか、部室の倉庫を半分埋め尽くすほどの量であり、当面は材料不足に陥る様なことは無いだろうとメリルは踏んでいた。
三人で仕分けをしつつ片付けをすると、それだけで一日が終わってしまったのだった。
ハウルは昨日の件で休みをとっていた様で平和な一日を過ごせていた。
尤も紋章魔法を披露した時からクラスメイトからは蔑みの目で見られる事なく、逆に怒らせてはいけない畏怖の対象になっていた。
それもそのはず、訓練用の木偶人形を破壊したのはレンとハウルだけである。
更に昨日の魔法事故のきっかけとなった人物だと噂になっていた。
相変わらずクラスで孤立してしまっているが、レンは気にしていなかった。
部室に行けば待っている人がいるから。
レンは部室の扉を開くと既にリコとメリルが訓練をしていた。
「遅くなりました!」
「いや、私たちも今来た所だから問題ないぞ?」
「レン君、こんにちは」
「うん、こんにちは!」
レンは直ぐに制服を脱ぎ、実習用の服へと着替える。
着替えるとは言っても肌着の上から着込むので異性の目を心配することはない。
作業台に集まると、メリルが不適な笑みを浮かべてレンとリコを見る。
二人は首を傾げるとポーチの様なものを机の上に置く。
「昨日はドタバタで忘れていたんだが、ポチおが魔工部に提供してくれた資材だ」
「先生。魔工部とはなんでしょうか?」
「部活に名前が無くては困るだろう?魔法工作部を略して魔工部だ。……そんなことより、私は魔道具の事に関しては残念ながら知識が殆どない。理由として、ポチお以外の技術者は安定した戦闘用魔道具を作ることが出来ていないから。理由は分かるか?」
二人は天井を見つめて考える。
顎に手を添える姿がシンクロしており、メリルの表情が思わず緩んでしまう。
一足早くリコが挙手をする。
リコに発言権を渡すと、頷いて口を開く。
「ポチおという方がケチで作り方を教えてないからですか?」
「ケチ……ん゙っ!ふふっ……!そ、それはないよ、リコ。アレは調査隊に関連する魔道具以外のレシピは全て公開しているんだよ」
ポチおをケチと言われ、笑いを堪えながらリコの答えを否定する。
すると、レンが手を上げる。
「じゃあ、レシピを解読できないか、別の要素が働いている……?ですか?」
「そうだな。今は憶測でしか語れないが、大方その予想で間違いはないだろうね。生まれ持った魔法が【結合】で全魔法技術士の中で最高の魔力量を誇っているポチおは気づいていないところで何かしている可能性はあるかもしれない。その中でレンは新たな開発をしたんだ。もしかすると、偉業かもしれないぞ?」
偉業と聞き、レンの目尻が下がり、恥ずかしそうに後頭部を掻く。
リコはレンが褒められたことで誇らしげな表情を浮かべており、メリルはこの二人の仲の良さに感慨深くなる。
話が進まなくなってしまう事に気づいたメリルは表情を堅めなものに戻し、二人を見つめる。
「年度末に部活の祭典があるんだ。お前達にはそれに参加してもらい、成果物を出す。これが、魔工部の目的だ。大変だろうが、期待している。それじゃあ、提供された素材でも見てみよう」
メリルはポーチを開き、次々と素材を机の上に出していく。
十センチ四方の大きさしかないポーチから質量も体積を無視した量の素材が出くる様子を見て、リコは興味深そうに見る。
「先生。こちらも魔道具なのですか?」
「そうだ。【収納】の魔法が込められた魔道具で魔力空間の中に物を圧縮して入れ込んでいる原理だ」
「高等魔法ですね……。高い物ではないですか?」
「そうだな……適正な価格という事ならば半年分の食費に相当するな。ただ、これを作れるのはポチおだけだ。だから色々付加価値がついて一年分の生活費といったところだな。リコの言う通り、ポチおはケチなのかもしれんな」
メリルはイタズラっぽい笑みを浮かべてポチおの評価を下げる。
尤も、生活用の魔道具ではないため高価になってしまうのは仕方のないことではあるが。
「戦闘用だけでなく、生活用の魔道具を作るという選択肢もありますね……」
「ということは炊事や洗濯とか?」
「はい。まぁ、このあたりの魔道具はありふれているので売れるかどうかは、長続きの度合いにもよるとは思いますが……」
リコは既に売り出すことに視野を入れているようで、レンは少し負けたような気がした。
レンは知恵を振り絞ろうとするが、やはりというべきか、初めて使った訓練用の魔道具を思い出していた。
「オレは……やっぱり戦闘用の魔道具を作りたいかな」
「ほう?それはなぜだ?」
「初めて使った魔道具ってこともあるんですが、ポチおさんが特別講師に来てくれたときに聞いたんです。魔法技術士の資格を取って、その実力が認められれば調査隊に入られるって……。その目標があるから、戦闘用魔道具が難しくても挑戦したいです!」
レンの熱意を感じ取ったメリルは嬉しそうな表情を浮かべ、レンの頭を撫でる。
「よく言った。お前は誰にも流されない確固たる意志があることがわかった。その気持ちはこれからも、卒業した後でも忘れないでほしい。お前が調査隊を目指すために魔法技術士になるというのならば私はそれの補助をしていこう。もちろんリコも私が指導するから安心してくれ」
「「は、はい!」」
二人の元気な返事が来ると、メリルはポチおから受け取った材料の説明をしていく。
「この青い石がミスリルの原石だ。ミスリル鉄鉱とも呼ばれているな」
青色に染まった石を眺め時折緑色や紫色に見える不思議な現象に見とれているとメリルが咳払いをする。
二人は姿勢を正して聞く体勢になる。
「次は魔石だな。魔獣の体内にある胆石の様な物で魔力を貯める特性がある。私もよく使う。それと……これは木か?何に使うかわからないが、ポチおが寄越したのなら使い道があるのだろう。以上の三種類をこれでもかというくらい頂いた。今度会った時にお礼を言っておくのだな」
三種類の材料ではあるものの、畳二畳分の机の上はおろか、部室の倉庫を半分埋め尽くすほどの量であり、当面は材料不足に陥る様なことは無いだろうとメリルは踏んでいた。
三人で仕分けをしつつ片付けをすると、それだけで一日が終わってしまったのだった。