残酷な描写あり
R-15
魔道具の中身は?
【解析】の魔道具はドーム状になっており、魔道具をこのドームの中に入れる事で判別する事ができるものだ。
レンの父親が遺した魔道具を装置の中に入れ、メリルは魔力を込める。
【解析】自体の難易度が高いわけではなく、消費魔力に対してドームに入るサイズの魔道具しか解析できない。
その消費魔力も中等級クラスのレンとサクラでは発動することも叶わず、リコの魔力を半分消費してやっとといったところだった。
しかし、メリルはリコの魔力程潤沢に持っているわけでない。
一度に大量の魔力を使えば息が上がったり、眩暈を起こしたりと支障がでるはずなのだが、当の本人は何事もないような涼しい顔をしていた。
魔法が発動すると、レンの瞳には紋章が映し出される。
それを素早く紙に書き上げてメリルに合図すると、魔道具の発動を止める。
「先生、この紋章……見た事ないです」
「ん?私が見てみよう。どれどれ……」
メリルはレンの描いた紋章を眺めると驚いた顔をする。
「お前たちは複合魔法についてはまだ学んでいなかったハズだな?」
三人は同時に頷く。
メリルは四種の元素魔法の紋章を紙に描き、それぞれを矢印で繋いでいく。
レンは以前オクトに教えてもらった事を思い出し、指を指す。
「これ、水と風を合わせると【氷結】ができますよね!」
「そうだ。……そうか、この辺りはオクトが目の前で見せていたな。レンの言う通り二つ以上の紋章を組み合わせる事で複合魔法ができる。ただし、オクトがやって見せたのは純粋な複合魔法ではなく、擬似的なものなんだ」
「それって、複合魔法は素養が無いと扱えないと言う事でしょうか?」
「私はそう睨んでいた」
メリルがそう言うと立ち上がり、部室の窓を開ける。
レンは入り込む風に目を細め、メリルの姿を見ると彼女は嬉しそうに、そして研究者のような好奇心に溢れた瞳を外に向けていた。
「今まで紋章を肉眼で見る事ができたのはふく様、ヴォルフ様、玉藻様、ガブ様……。昔はもっと見られたヒトがいたのだが、襲撃で大多数が殉職した。少なくともこの中に魔道具を自力で製作できるヒトはいない」
レンは魔道具を作る事自体が非常に難易度が高い事に驚く。
それは王族が誰一人として作る事ができないと言われているためである。
ただし、彼ら彼女たちはそもそも魔道具を使わなくとも強力な魔法を持っているため必要がない。
オクトの事が気になったレンは手を挙げる。
「オクトさんはどうして魔道具を作ろうとしたんですか?」
「ん……。私が生まれて少し経った後にヴォルフ様のために作った魔道具がきっかけだと聞いているな。まあ、オクト自身も強い魔法に恵まれなかったから、魔道具に頼る戦闘スタイルになったんだが。それでも他人の魔法を持ち主以上に効果的に使うという事デタラメな事をし始めるからな。アレはアレで規格外だ」
「やっぱり、調査隊に選ばれるヒトって何か一芸に秀でたヒトがなるものなのね」
「そうだな。調査隊に入るには如何にして生き残るかが鍵になる。現に歴代調査隊に死亡者は出ていないんだ。まあ、前線から離れたヒトが死ぬことはあったが……。それでもヴォルフ様の軍よりも数倍強い」
レンは飄々とした性格のオクトがヴォルフの軍:近衛師団よりも強いと聞き、訓練所での手捌きを思い出す。
「話が逸れてしまったな。結論から言ってこの紋章は複合魔法【縮地】という魔法だ。付与魔法に属する【加速】と事象魔法に属する【圧縮】を組み合わせた高等魔法だ」
「【縮地】って……白兵戦では一番欲しがられる魔法じゃない!?いいなぁ……アタシ使ってみたいなぁ……」
サクラは目を輝かせて魔道具を舐め回すように眺める。
一方リコは魔法の中身には全く興味が湧いていないようで、魔道具本体の構造をブツブツと呟きながら考えていた。
「レン。【縮地】という魔法はサクラの言う通り非常に強力な魔法だ。これほどの魔法を保存した魔道具はオクトしか作る事ができない。それでもこんなに小さく仕上げることはできない。お前の父親の名前はなんと言う?」
「……アル」
「アル?」
「手紙に書いてあったんです。『父親のアルより』って」
レンは父親が遺した手紙をメリルに渡す。
メリルはそれを受け取り目を通す。
内容はもちろん魔道具のレシピであり、魔道具の作り方をほとんど知らないメリルには到底理解できない。
しかし、目を見開き開いた口が塞がらず、メリルには珍しく狼狽えた表情を浮かべる。
手紙をレンに返すと急いで部室から出ていった。
「先生、どうしたんでしょうか?」
「わかんない。もしかしたら父さんのこと知ってるヒトがいたのかな?」
「でも、レンくんのお父さんが有名だったら魔法も魔力ももっと強かったんじゃない?」
「傷つくなぁ……」
「ジョーダンよ!そんな事より、レンくんのお父さんの手紙は何なの?」
レンは机の上に手紙を広げてリコとサクラはそれを覗き込む。
「お父様の魔道具の作り方ですね」
「確かに。作り方が書いてあるんだから簡単に作れるんじゃない?」
「父さんはこの魔道具は不完全な物だから自分で何とかして完成品を作ってくれって母さんに言ってたみたいなんだ。だから、このレシピを真似するだけじゃ作れない……!」
レンは両手を握りしめ、歯を食いしばる。
その表情はどこか嬉しそうであり、楽しんでいるようにも見え、リコとサクラはそんなレンを見て微笑むのだった。
帰ってこないメリルを待たずにレンは部室の倉庫に入り、材料を探す。
「魔石は……ちょっと大きいけどこれでいっ――」
大きな物音ともにレンは倉庫の壁に押し付けられた。
突然の物音にリコとサクラが何事かと駆けつけると首を掴まれて壁に押し付けられたレン。
倉庫にはもう一人の獣人がおり、軍服と両脚義足の狼族の男がレンを押さえつけていた。
レンの父親が遺した魔道具を装置の中に入れ、メリルは魔力を込める。
【解析】自体の難易度が高いわけではなく、消費魔力に対してドームに入るサイズの魔道具しか解析できない。
その消費魔力も中等級クラスのレンとサクラでは発動することも叶わず、リコの魔力を半分消費してやっとといったところだった。
しかし、メリルはリコの魔力程潤沢に持っているわけでない。
一度に大量の魔力を使えば息が上がったり、眩暈を起こしたりと支障がでるはずなのだが、当の本人は何事もないような涼しい顔をしていた。
魔法が発動すると、レンの瞳には紋章が映し出される。
それを素早く紙に書き上げてメリルに合図すると、魔道具の発動を止める。
「先生、この紋章……見た事ないです」
「ん?私が見てみよう。どれどれ……」
メリルはレンの描いた紋章を眺めると驚いた顔をする。
「お前たちは複合魔法についてはまだ学んでいなかったハズだな?」
三人は同時に頷く。
メリルは四種の元素魔法の紋章を紙に描き、それぞれを矢印で繋いでいく。
レンは以前オクトに教えてもらった事を思い出し、指を指す。
「これ、水と風を合わせると【氷結】ができますよね!」
「そうだ。……そうか、この辺りはオクトが目の前で見せていたな。レンの言う通り二つ以上の紋章を組み合わせる事で複合魔法ができる。ただし、オクトがやって見せたのは純粋な複合魔法ではなく、擬似的なものなんだ」
「それって、複合魔法は素養が無いと扱えないと言う事でしょうか?」
「私はそう睨んでいた」
メリルがそう言うと立ち上がり、部室の窓を開ける。
レンは入り込む風に目を細め、メリルの姿を見ると彼女は嬉しそうに、そして研究者のような好奇心に溢れた瞳を外に向けていた。
「今まで紋章を肉眼で見る事ができたのはふく様、ヴォルフ様、玉藻様、ガブ様……。昔はもっと見られたヒトがいたのだが、襲撃で大多数が殉職した。少なくともこの中に魔道具を自力で製作できるヒトはいない」
レンは魔道具を作る事自体が非常に難易度が高い事に驚く。
それは王族が誰一人として作る事ができないと言われているためである。
ただし、彼ら彼女たちはそもそも魔道具を使わなくとも強力な魔法を持っているため必要がない。
オクトの事が気になったレンは手を挙げる。
「オクトさんはどうして魔道具を作ろうとしたんですか?」
「ん……。私が生まれて少し経った後にヴォルフ様のために作った魔道具がきっかけだと聞いているな。まあ、オクト自身も強い魔法に恵まれなかったから、魔道具に頼る戦闘スタイルになったんだが。それでも他人の魔法を持ち主以上に効果的に使うという事デタラメな事をし始めるからな。アレはアレで規格外だ」
「やっぱり、調査隊に選ばれるヒトって何か一芸に秀でたヒトがなるものなのね」
「そうだな。調査隊に入るには如何にして生き残るかが鍵になる。現に歴代調査隊に死亡者は出ていないんだ。まあ、前線から離れたヒトが死ぬことはあったが……。それでもヴォルフ様の軍よりも数倍強い」
レンは飄々とした性格のオクトがヴォルフの軍:近衛師団よりも強いと聞き、訓練所での手捌きを思い出す。
「話が逸れてしまったな。結論から言ってこの紋章は複合魔法【縮地】という魔法だ。付与魔法に属する【加速】と事象魔法に属する【圧縮】を組み合わせた高等魔法だ」
「【縮地】って……白兵戦では一番欲しがられる魔法じゃない!?いいなぁ……アタシ使ってみたいなぁ……」
サクラは目を輝かせて魔道具を舐め回すように眺める。
一方リコは魔法の中身には全く興味が湧いていないようで、魔道具本体の構造をブツブツと呟きながら考えていた。
「レン。【縮地】という魔法はサクラの言う通り非常に強力な魔法だ。これほどの魔法を保存した魔道具はオクトしか作る事ができない。それでもこんなに小さく仕上げることはできない。お前の父親の名前はなんと言う?」
「……アル」
「アル?」
「手紙に書いてあったんです。『父親のアルより』って」
レンは父親が遺した手紙をメリルに渡す。
メリルはそれを受け取り目を通す。
内容はもちろん魔道具のレシピであり、魔道具の作り方をほとんど知らないメリルには到底理解できない。
しかし、目を見開き開いた口が塞がらず、メリルには珍しく狼狽えた表情を浮かべる。
手紙をレンに返すと急いで部室から出ていった。
「先生、どうしたんでしょうか?」
「わかんない。もしかしたら父さんのこと知ってるヒトがいたのかな?」
「でも、レンくんのお父さんが有名だったら魔法も魔力ももっと強かったんじゃない?」
「傷つくなぁ……」
「ジョーダンよ!そんな事より、レンくんのお父さんの手紙は何なの?」
レンは机の上に手紙を広げてリコとサクラはそれを覗き込む。
「お父様の魔道具の作り方ですね」
「確かに。作り方が書いてあるんだから簡単に作れるんじゃない?」
「父さんはこの魔道具は不完全な物だから自分で何とかして完成品を作ってくれって母さんに言ってたみたいなんだ。だから、このレシピを真似するだけじゃ作れない……!」
レンは両手を握りしめ、歯を食いしばる。
その表情はどこか嬉しそうであり、楽しんでいるようにも見え、リコとサクラはそんなレンを見て微笑むのだった。
帰ってこないメリルを待たずにレンは部室の倉庫に入り、材料を探す。
「魔石は……ちょっと大きいけどこれでいっ――」
大きな物音ともにレンは倉庫の壁に押し付けられた。
突然の物音にリコとサクラが何事かと駆けつけると首を掴まれて壁に押し付けられたレン。
倉庫にはもう一人の獣人がおり、軍服と両脚義足の狼族の男がレンを押さえつけていた。