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作者: 清水レモン
ぐるぐる
 廊下は想像より明るい。
 らせんを描く階段をのぼっていくと、ほどよい位置に踊り場がある。
 おおきな窓は曇りガラスだ。外の景色が見えないけれど、巨大な照明のように明るい。自然に光を採り入れられているのだろう。足元は冷んやりとした空気が漂っているのもわかる。
 紳士すなわち今おれたちを導いている教師は振り向かずに歩き続けていく。
 おれは比較的ぴったりついていっているほうだ。が、後ろはどうだ。

 他の受験生…だよな? なんであんなに距離をあけてるんだろ。
 
 おれは疑問に思った。らせんの階段で空間を覗けば、かなりの高さがある。たった数人の受験生はおれの後ろかなりの距離感のところで群れている、ようにも見える。
 顔見知りのグループだろうか。同じ小学校もしくは同じ塾。まあ、いいや。
 ちらり再度確認してみたが、おれの知っている顔はない。
 
 「そこだー」

 おれたちを試験会場へ導いている教師が振り向かずに声を出した。

 「そこー。受験番号で席、決まってるから。なー?」

 なんという間延びした説明、なのに容赦なく丸出しの殺気のようなピリピリしたなにか。

 試験会場は、ふたつ。のようだ。ここと、廊下まっすく向こうまでいったところ、そこにも立て札らしきものが見えている。
 
 おれは、ここ。記憶している受験番号が該当する。念のため、受験票を確認しようか。そう思ったけどやめた。カバンの中にしまってある。いちいちあけたくない。取り出してうっかり、ヒラヒラっと風に舞わせでもしたらどうする。
 危ない、危ない。またまた油断するところだった。なんのために受験番号を覚えてきたと思ってるんだ。
 脳内ひとりごとを放置したまま、おれは会場に入る…

 広かった。広い。しかも階段教室!
 ああ、それになんという窓、窓、窓、どれもおおきくて透けている白いカーテンは巨大で。
 ガラスは透明だから外の景色まるわかりだった。

 なんだよ、すごいたくさんの木々だな、おい!
 ほとんどが落葉樹。枝と幹だけ。それが線描画のように繊細で美しい。
 ここに来るとき咲いて見えていた梅は見当たらない。
 もしかするとこの木々は桜だろうか、桜じゃないのかな、いやそれ桜だろう。
 おれの脳内で、ばあっと開花して咲き乱れる桜の映像。見たことないのに。

 いいところだな、とあらためて思った。
 
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