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作者: 清水レモン
ふたたび、はじまる
 ふたたび試験がはじまる。
 刻一刻と迫ってくる。
 緊張はしていないと思う。
 と、思った時点で「緊張している」ことがばれたな。
 そうさ。模試で経験済みのこと。
 ほんとうに緊張していないのなら、いちいち自問自答みたいなことしないから。
 けど、緊張しまくっているときはこんなもんじゃないだろ。
 知ってる、それも。
 そうだ。おれは、ほんとうに色々と経験を重ねてきている。
 ひとつひとつの経験につながりがないとしても、経験の蓄積そのものが数となって相当数に達するなら、階級があがっていてもいいんじゃないか。
 それとももうすでに、あがっていたりしてな。階級かなにか。そんなもの、ないだろうけど。
 待っている時間はとても長い。
 
 この長さは偽りの長さ。ただの錯覚、ほんの勘違いに等しい。
 けれども現実には、ちがいない。だろう?
 おそらく数時間後たとえば具体的に、五時間後。
 おれは、ここにいない。
 すでにすべてを終えて帰っている。
 そのとき、こんな今のことを振り返ってどう感じるだろう。
 いや、どうでもいいなそんなこと。


 どうでもいいか、こんなこと。なあ。
 
  
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