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作者: 川崎俊介
謎への挑戦
 2日後。

 俺は見事に盗賊団を騙し、ただの石ころを売りつけてやった。

「ほら、金貨500枚だ。お前にも半分やるよ」

 俺はファルグスに金貨の入った袋を差し出す。

 異世界では金より鉄の価値の方が高い。ここでは金貨は二束三文だが、現世に持ち帰れば高値で換金できる。

「ほう。見事だ。君には詐欺師の才能があるようだな。いっそそれで食っていけばどうだ?」

「なんだかお前にいいように仕向けられたようで気に入らん。なにが目的だ?」

「黒田大河。お前には生きていてもらわないと困るのだよ。そうしないと、この異世界自体がなかったことになる」

「ハァ?」

 何を世迷言を言っているのだ?

 俺はこんな世界を創った覚えはないし、これから創れるようになるわけもない。

「まぁいい。いずれ分かる。詐欺師として食いつなぐのが正解だったと。で? その隣にいる少女は誰だい?」

「俺を殺そうとした女だが、ヘマをやらかしてスカーレット・ウィンドに捕まっていた。もう少しで売られそうだったんで、俺が買い取った」

「良い心掛けだ」

「チッ、魔法を無効化するあの変な鎖さえなければ、すぐに脱出できた!」

 アルハスラはまだそんな恨み言を言っている。

 もう少し俺に感謝したらどうなんだ?

「それより、なんで邪竜の鱗なんか持ってるわけ? 私、邪竜の死体を見たけど、灰になってたわよ」

「おやおや」

 ファルグスは可笑しそうに笑う。

 アルハスラはまだ鱗が偽物だと気付いていないのか。

 まぁ、黙っておこう。

「辛うじて頭部が残ってたけど、眼球に赤い紋章みたいなのが刻まれてた。あれは洗脳の類のものね」

「それってつまり……」

 アデオダトスが意図的にドラゴンを暴走させ、それを自分で討伐した? つまり、マッチポンプ?

「フフッ、奇天烈なことも起こるものだなぁ。アデオダトスは既に名の知れた騎士であったというのに、なぜそんなことをしてまで【邪龍狩り】の称号を欲したのか。とかくこの世は謎が多い。ククッ」

 なぜだかファルグスは可笑しそうに笑った。

「この謎に挑みたまえ、青年。そこの元大聖女様と共にな。ちなみに、真相は既に先人たちが解き明かしている」

「じゃあその真相ってなんだ?」

「それを教えてしまってはつまらないだろう。解を導くプロセスこそが大事なのだ。せいぜい過程を楽しみたまえ。君にはまだ、多くの時間が残されているのだから。ま、ヒントは与えよう」

 そうとだけ言い残し、俺に何やら古びた本を押し付けると、ファルグスは去っていった。

 なんとも不可思議な人物だった。

 いや、それよりあいつ。

 なぜ俺の名を知っていたのだ?

 入界カードに個人情報は記載されていないし、そもそもポケットにしまっていた。

 どういうことだ?
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