守護獣アイオロス
暇なので別天鏡でも読んでいると、世界樹に関する記述が見つかった。
【ここに来てから8日が経った。■■■■に人類が滅ぼされても救えるよう、破壊不能オブジェクト『世界樹』を設置。守護獣を多数置いた】
黒塗りの単語があるなんとも奇怪な記述だった。
「守護獣……ね」
確かに、世界樹の太い枝を見上げると、数々のモンスターが棲みついているのが見えた。
俺は偽物の海図を取り出した。アルハスラの書いた、ヨハンナの署名が記されている。これを使うか。
俺は適当に、【黒田大河に守護獣の使役を許可する】と書き、ヨハンナのサインを書いた。
「ほら、五柱神の一角、ヨハンナ様の勅命だ。俺に力を貸せ、守護獣ども!」
羊皮紙を掲げて叫ぶと、カサカサと枝葉が揺れた。
次いで、翡翠色の翼をもつ、一体の巨鳥が舞い降りた。
「ほう、風の精霊、アイオロスか。考えたね。彼の力を借りて私を倒そうというわけか」
アヴァロンはなぜだか嬉しそうだ。
アイオロスが鳴くと、俺の全身に風がまとわりついた。かなりの気圧を感じる。これなら行けるか?
俺はそのままアヴァロンに殴りかかる。紙一重で避けられたが、紙一重では不十分だ。俺の腕にまとわりついた風がアヴァロンに当たり、彼を吹っ飛ばした。
初めて有効打が入ったな。
「そうか。風の鎧を纏っているのか。これなら私の方から攻撃しても、君が傷つくことはないな。つまり、」
アヴァロンはようやく拳を構えた。
「存分に拳を振るえるわけだ」
それからはスパーリングの連続だった。結局、休憩込みで一日かかってアヴァロンを倒した。アヴァロンは何やら中国拳法の使い手だったようで、俺もいつの間にその技を覚えてしまった。というか、覚えるほどにしつこく繰り出された。
「完敗だ。実はね、君のような旅人が来た時のために、世界樹の苗木を5つほど用意していたんだよ」
まるで俺の動きを予知していたかのような物言い。ファルグスと同じだ。気味が悪い。
「ありがたく受け取るよ。それと、君はここで多くの技と守護獣を手に入れた。この先荒事に巻き込まれても、苦労しないだろうね」
「どうかな。却って面倒ごとに巻き込まれそうな予感しかしないが」
「そう言うな。こんな経験、なかなかできるものじゃないよ」
アヴァロンは柔和な笑みを浮かべ、俺に苗木を持たせた。
「結構かかったわね」
ちょうどアルハスラも帰ってきた。
「お前は何もしてないだろ。というか、お前が決闘してれば一瞬で済んだ話じゃないのか?」
「そうかもね」
アルハスラは興味なさげに答えた。
こいつ、俺が命の恩人だということを忘れていないか?
「なんにせよ、ありがとうございました。大河を鍛えてくれたようで」
「とんでもない。聖女様に感謝されるほどのことはしていませんよ」
アヴァロンはアルハスラの正体を知っていたのか。俺は聖女の同行者なんだから、素直に苗木を渡せばいいものを。
不満はあるが、戦果は大きかったので、俺たちは早々に出発した。まだ西方には戻れないが、そろそろ貯めた金で豪遊したいところだしな。ま、この世界のメシには期待していないが。
「言われた通り、彼を鍛えましたよ。ファルグス様」
黒田の旅立ちを見送りながら、アヴァロンはそう呟いた。
【ここに来てから8日が経った。■■■■に人類が滅ぼされても救えるよう、破壊不能オブジェクト『世界樹』を設置。守護獣を多数置いた】
黒塗りの単語があるなんとも奇怪な記述だった。
「守護獣……ね」
確かに、世界樹の太い枝を見上げると、数々のモンスターが棲みついているのが見えた。
俺は偽物の海図を取り出した。アルハスラの書いた、ヨハンナの署名が記されている。これを使うか。
俺は適当に、【黒田大河に守護獣の使役を許可する】と書き、ヨハンナのサインを書いた。
「ほら、五柱神の一角、ヨハンナ様の勅命だ。俺に力を貸せ、守護獣ども!」
羊皮紙を掲げて叫ぶと、カサカサと枝葉が揺れた。
次いで、翡翠色の翼をもつ、一体の巨鳥が舞い降りた。
「ほう、風の精霊、アイオロスか。考えたね。彼の力を借りて私を倒そうというわけか」
アヴァロンはなぜだか嬉しそうだ。
アイオロスが鳴くと、俺の全身に風がまとわりついた。かなりの気圧を感じる。これなら行けるか?
俺はそのままアヴァロンに殴りかかる。紙一重で避けられたが、紙一重では不十分だ。俺の腕にまとわりついた風がアヴァロンに当たり、彼を吹っ飛ばした。
初めて有効打が入ったな。
「そうか。風の鎧を纏っているのか。これなら私の方から攻撃しても、君が傷つくことはないな。つまり、」
アヴァロンはようやく拳を構えた。
「存分に拳を振るえるわけだ」
それからはスパーリングの連続だった。結局、休憩込みで一日かかってアヴァロンを倒した。アヴァロンは何やら中国拳法の使い手だったようで、俺もいつの間にその技を覚えてしまった。というか、覚えるほどにしつこく繰り出された。
「完敗だ。実はね、君のような旅人が来た時のために、世界樹の苗木を5つほど用意していたんだよ」
まるで俺の動きを予知していたかのような物言い。ファルグスと同じだ。気味が悪い。
「ありがたく受け取るよ。それと、君はここで多くの技と守護獣を手に入れた。この先荒事に巻き込まれても、苦労しないだろうね」
「どうかな。却って面倒ごとに巻き込まれそうな予感しかしないが」
「そう言うな。こんな経験、なかなかできるものじゃないよ」
アヴァロンは柔和な笑みを浮かべ、俺に苗木を持たせた。
「結構かかったわね」
ちょうどアルハスラも帰ってきた。
「お前は何もしてないだろ。というか、お前が決闘してれば一瞬で済んだ話じゃないのか?」
「そうかもね」
アルハスラは興味なさげに答えた。
こいつ、俺が命の恩人だということを忘れていないか?
「なんにせよ、ありがとうございました。大河を鍛えてくれたようで」
「とんでもない。聖女様に感謝されるほどのことはしていませんよ」
アヴァロンはアルハスラの正体を知っていたのか。俺は聖女の同行者なんだから、素直に苗木を渡せばいいものを。
不満はあるが、戦果は大きかったので、俺たちは早々に出発した。まだ西方には戻れないが、そろそろ貯めた金で豪遊したいところだしな。ま、この世界のメシには期待していないが。
「言われた通り、彼を鍛えましたよ。ファルグス様」
黒田の旅立ちを見送りながら、アヴァロンはそう呟いた。