残酷な描写あり
10.ハンター
『ハンター』……その職業については私でも知っている。
ハンター組合に所属し、組合が出す様々な依頼をこなし、その報酬でお金を稼ぐ人達の総称だ。
ハンターが受ける依頼は大きく『討伐』・『護衛』・『探索』・『採集』・『その他』の5つに分類される。
そしてハンターで沢山お金を稼ごうとするなら、まず前提として高ランクのハンターにならないといけない。
それは高ランクのハンターになるほど信用度が高くなり、難しい依頼を受けることが出来るようになるからだ。それに高ランクになれば名前が売れ、依頼料が割高な指名依頼も多くなる。
しかし高ランクのハンターになるのはそう簡単ではない。
様々な依頼を達成するには戦闘能力だけではなく、多種多様な技術と知識が必要になる。
ティンクの戦闘能力に関しては問題ないけど、技術と知識についてはこれから学ばなくてはいけないだろう。
勿論、それには沢山の経験と時間が必要だ。だからそれらをティンクが身に付けるまでは、高額で安定した稼ぎを出すのは難しい。
『討伐』や『護衛』なら比較的報酬の高い依頼になるので、それらの依頼を率先して受けまくるという手も無い訳ではない。だけどさっきも言ったように高ランクのハンターにならないと、その手の命の危険がある依頼は受けさせてもらえない可能性もある。
そしてもう一つ、ティンクの境遇にも問題があった。
ティンクは私の使用人ではあるけど、実は訳あって、とある人物から預かっている子なのだ。
ティンクの実力があれば大抵の事は問題ないと思うのだけど、預かっている子である以上は少しでもティンクに危険な事はさせたくない。
だからティンクがハンターになると言ったことに、私やミューダは賛成できなかった。
ティンクにはきちんと私達の気持ちを伝えたのだが、「でも他に良い仕事がなかったし、ティンクはみんなの役に立てるようにもっと強くなりたいの! だからハンターになりたいの!」と言い張り、引く気はないようだった。
ティンクは普段は素直でいい子なのだが、自分のやりたい事があるとそれを認めてくれるまで中々諦めない子供特有の頑固なところがある。
……そういえば、以前にもティンクが「錬金術と魔術を教えて欲しい!」と私とミューダに頼み込んできたことがあった。
最終的にはティンクの熱意に負けて、私とミューダはティンクに錬金術と魔術を教えることになったんだ。……懐かしいなぁ。
私がふとそんな事を思い出している間にも、ミューダとアインとニーナがなんとかティンクを説得しようとしていた。
だけどティンクも諦めずに、「ハンターになりたい!」と頑なに強く主張していた。
(これは、長くなりそうね……)
説得の様子を見て「骨が折れそうだ……」と私が思っていると、それまでティンクの説得に参加しないで、二人で何かを話していたサムスとクワトルが突然そこに割って入って来た。
「皆さん、少しよろしいですか? 私に考えがあります」
自信有り気なクワトルの言葉に、平行線の主張を繰り広げていた私達は一旦落ち着いて、クワトルの話を聞くことにした。
「まずセレスティア様達は、ハンターという危険なことが起こりえる仕事はティンクを預かっている立場として心配という事ですね?」
「ええ、その通りよ」
「一方でティンクは、高ランクハンターになって強さを磨き、沢山お金を稼いでみんなの役に立ちたいのですね?」
「うん!」
「でしたら、私もティンクと一緒にハンターになってパーティーを組み、ティンクのサポートをするというのはどうでしょうか?」
「「「「なっ!?」」」」
「えっ?」
このクワトルの提案に私達は驚きの声を上げた。
一方でサムスだけは何も言わず状況を静観している。さっきから二人はこの提案について話し合っていたのか……。
「ティンク一人では心配だと言うことですし、私がティンクのサポートに徹すれば、セレスティア様達が心配している万が一の事態にも対応と思います。ティンクも、一人でするより私と一緒に二人で活動した方が効率よく多くの依頼をこなせて、もっと沢山お金を稼げると思いますよ? それに私もまだ仕事が決まっていませんでしたし、丁度良いかと思いますが、如何でしょうか?」
「う、うん! ティンクもクワトルが一緒なら心強いの! ねぇ、それならいいでしょ! セレスティア様、ミューダ様!」
確かに気配りが上手いクワトルが一緒なら、ティンクを上手くサポートしてくれることは間違いないから心強い。
それに、二人がハンターになった場合の稼ぎに関してサムスが何も言わないところを見ると、充分に稼げる見込みがあると計算したのだろう。
「……サムス一応確認するけど、これで本当に大丈夫なのね?」
そうは解っていても、一応サムスの口から直接意見を聞いておきたかったので、念のためにサムスに確認をとることにする。
「ハンターで稼ぐにはランクを上げなければなりませんが、二人の実力ならば短期間でのランク上げはそう難しいことでもないでしょう。それと二人のハンターランクが上がるまでの稼ぎに関しても、僕とニーナの二人で頑張ればなんとかなると思います」
「ふーん……だったら私からはもう何も言うことはないわ」
我が家の財政担当のサムスがこう言っているのだから問題はないのだろう。なので私は、この件に関しては賛成の意を示してミューダに目配りをした。
ミューダはしばらく腕を組み考えていたが、とうとう大きくため息を吐いて諦めた。
「……分かった分かった。セレスティアが賛成するなら我も反対する理由はない。アインとニーナもそれでいいな?」
「セレスティア様とミューダ様がそうおっしゃるのなら、私に異存はありません」
「同じくですわ」
「じゃ、じゃあ!?」
「ええ、ハンターになることを許可するわティンク。但し約束よ! クワトルの言うことはちゃんと聞いて勝手な行動はしないこと! そして、決して無茶はしないこと!」
「……もしお前に何かあれば、あの親バカに叱られるのは我等なのだからな?」
ハンターになる許可はしたけど、もしもの為に私とミューダはティンクにしっかりと釘を刺しておく。
「ありがとうございますセレスティア様、ミューダ様! ティンク、ちゃんとクワトルの言うこと聞いて頑張ります!!」
私に抱きつき、満面の笑顔で感謝を表すティンク。
その笑顔は陽光に照される花の様にキラキラと輝いていて、それを見た私も自然と釣られて笑みが零れてしまうのだった。
ハンター組合に所属し、組合が出す様々な依頼をこなし、その報酬でお金を稼ぐ人達の総称だ。
ハンターが受ける依頼は大きく『討伐』・『護衛』・『探索』・『採集』・『その他』の5つに分類される。
そしてハンターで沢山お金を稼ごうとするなら、まず前提として高ランクのハンターにならないといけない。
それは高ランクのハンターになるほど信用度が高くなり、難しい依頼を受けることが出来るようになるからだ。それに高ランクになれば名前が売れ、依頼料が割高な指名依頼も多くなる。
しかし高ランクのハンターになるのはそう簡単ではない。
様々な依頼を達成するには戦闘能力だけではなく、多種多様な技術と知識が必要になる。
ティンクの戦闘能力に関しては問題ないけど、技術と知識についてはこれから学ばなくてはいけないだろう。
勿論、それには沢山の経験と時間が必要だ。だからそれらをティンクが身に付けるまでは、高額で安定した稼ぎを出すのは難しい。
『討伐』や『護衛』なら比較的報酬の高い依頼になるので、それらの依頼を率先して受けまくるという手も無い訳ではない。だけどさっきも言ったように高ランクのハンターにならないと、その手の命の危険がある依頼は受けさせてもらえない可能性もある。
そしてもう一つ、ティンクの境遇にも問題があった。
ティンクは私の使用人ではあるけど、実は訳あって、とある人物から預かっている子なのだ。
ティンクの実力があれば大抵の事は問題ないと思うのだけど、預かっている子である以上は少しでもティンクに危険な事はさせたくない。
だからティンクがハンターになると言ったことに、私やミューダは賛成できなかった。
ティンクにはきちんと私達の気持ちを伝えたのだが、「でも他に良い仕事がなかったし、ティンクはみんなの役に立てるようにもっと強くなりたいの! だからハンターになりたいの!」と言い張り、引く気はないようだった。
ティンクは普段は素直でいい子なのだが、自分のやりたい事があるとそれを認めてくれるまで中々諦めない子供特有の頑固なところがある。
……そういえば、以前にもティンクが「錬金術と魔術を教えて欲しい!」と私とミューダに頼み込んできたことがあった。
最終的にはティンクの熱意に負けて、私とミューダはティンクに錬金術と魔術を教えることになったんだ。……懐かしいなぁ。
私がふとそんな事を思い出している間にも、ミューダとアインとニーナがなんとかティンクを説得しようとしていた。
だけどティンクも諦めずに、「ハンターになりたい!」と頑なに強く主張していた。
(これは、長くなりそうね……)
説得の様子を見て「骨が折れそうだ……」と私が思っていると、それまでティンクの説得に参加しないで、二人で何かを話していたサムスとクワトルが突然そこに割って入って来た。
「皆さん、少しよろしいですか? 私に考えがあります」
自信有り気なクワトルの言葉に、平行線の主張を繰り広げていた私達は一旦落ち着いて、クワトルの話を聞くことにした。
「まずセレスティア様達は、ハンターという危険なことが起こりえる仕事はティンクを預かっている立場として心配という事ですね?」
「ええ、その通りよ」
「一方でティンクは、高ランクハンターになって強さを磨き、沢山お金を稼いでみんなの役に立ちたいのですね?」
「うん!」
「でしたら、私もティンクと一緒にハンターになってパーティーを組み、ティンクのサポートをするというのはどうでしょうか?」
「「「「なっ!?」」」」
「えっ?」
このクワトルの提案に私達は驚きの声を上げた。
一方でサムスだけは何も言わず状況を静観している。さっきから二人はこの提案について話し合っていたのか……。
「ティンク一人では心配だと言うことですし、私がティンクのサポートに徹すれば、セレスティア様達が心配している万が一の事態にも対応と思います。ティンクも、一人でするより私と一緒に二人で活動した方が効率よく多くの依頼をこなせて、もっと沢山お金を稼げると思いますよ? それに私もまだ仕事が決まっていませんでしたし、丁度良いかと思いますが、如何でしょうか?」
「う、うん! ティンクもクワトルが一緒なら心強いの! ねぇ、それならいいでしょ! セレスティア様、ミューダ様!」
確かに気配りが上手いクワトルが一緒なら、ティンクを上手くサポートしてくれることは間違いないから心強い。
それに、二人がハンターになった場合の稼ぎに関してサムスが何も言わないところを見ると、充分に稼げる見込みがあると計算したのだろう。
「……サムス一応確認するけど、これで本当に大丈夫なのね?」
そうは解っていても、一応サムスの口から直接意見を聞いておきたかったので、念のためにサムスに確認をとることにする。
「ハンターで稼ぐにはランクを上げなければなりませんが、二人の実力ならば短期間でのランク上げはそう難しいことでもないでしょう。それと二人のハンターランクが上がるまでの稼ぎに関しても、僕とニーナの二人で頑張ればなんとかなると思います」
「ふーん……だったら私からはもう何も言うことはないわ」
我が家の財政担当のサムスがこう言っているのだから問題はないのだろう。なので私は、この件に関しては賛成の意を示してミューダに目配りをした。
ミューダはしばらく腕を組み考えていたが、とうとう大きくため息を吐いて諦めた。
「……分かった分かった。セレスティアが賛成するなら我も反対する理由はない。アインとニーナもそれでいいな?」
「セレスティア様とミューダ様がそうおっしゃるのなら、私に異存はありません」
「同じくですわ」
「じゃ、じゃあ!?」
「ええ、ハンターになることを許可するわティンク。但し約束よ! クワトルの言うことはちゃんと聞いて勝手な行動はしないこと! そして、決して無茶はしないこと!」
「……もしお前に何かあれば、あの親バカに叱られるのは我等なのだからな?」
ハンターになる許可はしたけど、もしもの為に私とミューダはティンクにしっかりと釘を刺しておく。
「ありがとうございますセレスティア様、ミューダ様! ティンク、ちゃんとクワトルの言うこと聞いて頑張ります!!」
私に抱きつき、満面の笑顔で感謝を表すティンク。
その笑顔は陽光に照される花の様にキラキラと輝いていて、それを見た私も自然と釣られて笑みが零れてしまうのだった。