残酷な描写あり
70.それぞれの日々・モラン&エイミー編2
ペラ……ペラ……ペラ……
パラパラパラ――
ペラ…………ペラ…………ペラ…………
パラパラパラパ――――
「あれ? この本……」
本を何冊か仕分け終え、次の本に目を通していたところで、私は手を止めた。
「ん、どうしたのモランちゃん?」
私の様子が気になったのか、エイミーさんも手を止めて私に目を向けてきた。
「エイミーさん、この本見てください」
私はそう言って持っていた本をエイミーさんに手渡した。
「……この本、タイトルも作者名も無いないわね……」
本を観察する様に調べたエイミーさんがそう呟く。
エイミーさんの言う通り、普通本にはタイトルと作者名が必ず記載されているはずである。けれど、私が渡した本にはそれらが記載されておらず、表紙は無地で色褪せた緑一色だけだった。
そしてその本には、他にも不思議な点があった。
「中も読んでみてください」
そう言われてエイミーさんは不思議そうな表情を浮かべながら、表紙を捲って中に目を通していく。
「なになに……、“仮説検証記録”?
仮説①:物の燃焼には燃料となる“酸素”が必要である。
仮説②:太陽は大地の周りを回っているのではなく、大地の方が太陽を中心にして回っている。
仮説③:地震や噴火、嵐などの数々の天変地異は“神の怒り”などと言う根拠の無い妄言ではなく、自然の摂理に則った“現象”である――」
本に書いてある内容を口に出しながら読み進めていくエイミーさん。その目は次第に点に変わり、首も傾いていった。
「――何を言ってるのかさっぱりだわ……」
エイミーさんも私が思った事と同じ感想を口にした。
「エイミーさん、これって、どのジャンルに分類すればいいんでしょうか?」
「うーん……、書いてある意味はさっぱりだけど、最初に検証記録って書いてあったから、セレスティア様かミューダ様の本かしら?」
「ということは、研究用の本ってことでしょうか? 確かそういう本って地下1階にあるはずですよね? それがどうしてこのフロアに?」
「分からないわ……。とりあえず、一度セレスティア様かミューダ様に聞いてみた方がいいかもしれないわね」
「私がどうかしたの?」
突然、暗闇から私達に向かって声が飛んで来た。
「「わっ!? ――セ、セレスティア様!!」」
驚いて声のした方を振り向けば、そこには数冊の本を大事そうに抱えたセレスティア様の姿があった。
「「お、おはようございます!!」」
私とエイミーさんは慌てて立ち上がり、頭を下げて挨拶をする。
セレスティア様は私達に挨拶を返し、話を戻すように質問してきた。
「二人ともおはよう。……それで、私がどうしたって?」
「あ、はい。実は1階フロアの本を整理していたら、このような本が出てきまして……」
エイミーさんが例の本をセレスティア様に手渡した。
「本のタイトルも作者の名前も無かったのですが、内容を読む限りではセレスティア様かミューダ様の物ではないかと思い、確認に伺おうと二人で話をしていました」
エイミーさんの話を聞いて事情を把握した様子のセレスティア様は、本を開いて中を確認する。
「――ああ、これは確かに私の本ね。どの辺りにあったの?」
「えっと、これは、あの辺りだったと思います」
そう言って私は本があった天井付近の一角を指差した。
「ティンク……あの子、また適当に戻したわね……」
「えっ、ティンクちゃんですか?」
「ええ。この本は前にティンクに貸したんだけど、そこから見つからなくなってね。……まさかこっちのフロアにあったとはね」
「まあ、いつものことだけど……」と、セレスティア様はため息混じりにそう言って肩を竦めた。
「とりあえず二人とも、見つけてくれてありがとね! この本はとっても大事な物だから……」
セレスティア様は小さくそう言って、本をぎゅっと抱える。
そんなセレスティア様に、私は本を見てから疑問に思っていたことを聞いてみることにした。
「あの、セレスティア様……」
「ん、何かしらモラン?」
「その本、少し読んだのですが、よく解らないことばかり書いてあって……その……」
「……気になったの?」
私は小さく頷いて答えた。
昨日アインさんは、『好奇心と命はしっかり天秤にかけるように』と言っていた。しかしそれは、私達を地下2階に行かせないためのアインさんからの警告だ。
それで本当に行ってしまったら、何かされるのは間違いないだろうけど……。でも今回は、セレスティア様が目の前にいて、頼んだら本の内容を教えてくれるかもしれない。
とりあえず、本を読んでからずっと心の中に沸き上がって来る、この知的好奇心をなんとかしたかった。これでもし「ダメ」と言われたら、後ろ髪を引かれる思いになるかもしれないが、それはそれで諦めがつく。
エイミーさんも私と同じ気持ちだったようで、セレスティア様をじっと見つめて答えを待っていた。
セレスティア様は顎に手を当て、少し考えてから口を開いた。
「……まあ、ここで働く以上、今後の為にも二人にはある程度の知識は必要かもしれないわね……。わかったわ、二人とも今の作業に適当に切りをつけたら昼食を取って、それから私の自室に来なさい。この本の事を教えてあげるわ」
「「あ、ありがとうございます! セレスティア様!!」」
それから私とエイミーさんはこれまでにない早さで手を動かして早々に作業に区切りをつけると、急いで昼食を取ってからセレスティア様の自室へと足を運んだ。
パラパラパラ――
ペラ…………ペラ…………ペラ…………
パラパラパラパ――――
「あれ? この本……」
本を何冊か仕分け終え、次の本に目を通していたところで、私は手を止めた。
「ん、どうしたのモランちゃん?」
私の様子が気になったのか、エイミーさんも手を止めて私に目を向けてきた。
「エイミーさん、この本見てください」
私はそう言って持っていた本をエイミーさんに手渡した。
「……この本、タイトルも作者名も無いないわね……」
本を観察する様に調べたエイミーさんがそう呟く。
エイミーさんの言う通り、普通本にはタイトルと作者名が必ず記載されているはずである。けれど、私が渡した本にはそれらが記載されておらず、表紙は無地で色褪せた緑一色だけだった。
そしてその本には、他にも不思議な点があった。
「中も読んでみてください」
そう言われてエイミーさんは不思議そうな表情を浮かべながら、表紙を捲って中に目を通していく。
「なになに……、“仮説検証記録”?
仮説①:物の燃焼には燃料となる“酸素”が必要である。
仮説②:太陽は大地の周りを回っているのではなく、大地の方が太陽を中心にして回っている。
仮説③:地震や噴火、嵐などの数々の天変地異は“神の怒り”などと言う根拠の無い妄言ではなく、自然の摂理に則った“現象”である――」
本に書いてある内容を口に出しながら読み進めていくエイミーさん。その目は次第に点に変わり、首も傾いていった。
「――何を言ってるのかさっぱりだわ……」
エイミーさんも私が思った事と同じ感想を口にした。
「エイミーさん、これって、どのジャンルに分類すればいいんでしょうか?」
「うーん……、書いてある意味はさっぱりだけど、最初に検証記録って書いてあったから、セレスティア様かミューダ様の本かしら?」
「ということは、研究用の本ってことでしょうか? 確かそういう本って地下1階にあるはずですよね? それがどうしてこのフロアに?」
「分からないわ……。とりあえず、一度セレスティア様かミューダ様に聞いてみた方がいいかもしれないわね」
「私がどうかしたの?」
突然、暗闇から私達に向かって声が飛んで来た。
「「わっ!? ――セ、セレスティア様!!」」
驚いて声のした方を振り向けば、そこには数冊の本を大事そうに抱えたセレスティア様の姿があった。
「「お、おはようございます!!」」
私とエイミーさんは慌てて立ち上がり、頭を下げて挨拶をする。
セレスティア様は私達に挨拶を返し、話を戻すように質問してきた。
「二人ともおはよう。……それで、私がどうしたって?」
「あ、はい。実は1階フロアの本を整理していたら、このような本が出てきまして……」
エイミーさんが例の本をセレスティア様に手渡した。
「本のタイトルも作者の名前も無かったのですが、内容を読む限りではセレスティア様かミューダ様の物ではないかと思い、確認に伺おうと二人で話をしていました」
エイミーさんの話を聞いて事情を把握した様子のセレスティア様は、本を開いて中を確認する。
「――ああ、これは確かに私の本ね。どの辺りにあったの?」
「えっと、これは、あの辺りだったと思います」
そう言って私は本があった天井付近の一角を指差した。
「ティンク……あの子、また適当に戻したわね……」
「えっ、ティンクちゃんですか?」
「ええ。この本は前にティンクに貸したんだけど、そこから見つからなくなってね。……まさかこっちのフロアにあったとはね」
「まあ、いつものことだけど……」と、セレスティア様はため息混じりにそう言って肩を竦めた。
「とりあえず二人とも、見つけてくれてありがとね! この本はとっても大事な物だから……」
セレスティア様は小さくそう言って、本をぎゅっと抱える。
そんなセレスティア様に、私は本を見てから疑問に思っていたことを聞いてみることにした。
「あの、セレスティア様……」
「ん、何かしらモラン?」
「その本、少し読んだのですが、よく解らないことばかり書いてあって……その……」
「……気になったの?」
私は小さく頷いて答えた。
昨日アインさんは、『好奇心と命はしっかり天秤にかけるように』と言っていた。しかしそれは、私達を地下2階に行かせないためのアインさんからの警告だ。
それで本当に行ってしまったら、何かされるのは間違いないだろうけど……。でも今回は、セレスティア様が目の前にいて、頼んだら本の内容を教えてくれるかもしれない。
とりあえず、本を読んでからずっと心の中に沸き上がって来る、この知的好奇心をなんとかしたかった。これでもし「ダメ」と言われたら、後ろ髪を引かれる思いになるかもしれないが、それはそれで諦めがつく。
エイミーさんも私と同じ気持ちだったようで、セレスティア様をじっと見つめて答えを待っていた。
セレスティア様は顎に手を当て、少し考えてから口を開いた。
「……まあ、ここで働く以上、今後の為にも二人にはある程度の知識は必要かもしれないわね……。わかったわ、二人とも今の作業に適当に切りをつけたら昼食を取って、それから私の自室に来なさい。この本の事を教えてあげるわ」
「「あ、ありがとうございます! セレスティア様!!」」
それから私とエイミーさんはこれまでにない早さで手を動かして早々に作業に区切りをつけると、急いで昼食を取ってからセレスティア様の自室へと足を運んだ。