残酷な描写あり
79.四大公会談2
「貴方達の言い分は理解しました。ですが、私はその申し出を受ける気は毛頭ありません」
先程まで下手に出る態度だったのに、突然余裕の態度に豹変してそう言い切ったセレスティア。
そのセレスティアの急な態度の変化を不審に思ったが、特に気にする必要はないと判断して、ファーラト公爵はセレスティアに質問を投げかけた。
「……正直、我々はセレスティア殿がそこまで報酬に無関心なのが不思議で仕方ない。理由を聞いても?」
「……辺境伯としての地位、領土を持つことによって得られる権力、それは誰もが喉から手が出るほど欲しがるものであり、それを貰えるというのは大変魅力的なことでしょうね」
「そこまで分かっているなら、何故報酬を断るのだ?」
その言葉にセレスティアは、クスッと妖艶な笑みを浮かべて答える。
「簡単です。私にとってその様なものは、何の価値もありません。産業廃棄物と同類です」
「「「なっ!?」」」
センスの欠片もないあまりの酷い例えに、ファーラト公爵達は思わず固まってしまった。セレスティアも自分で言って「この例えは言いすぎかしら?」と思ったが、一度口に出したものは撤回出来ないので気にしないことにした。
「そもそもの話、どうやら貴方達3人と私達の間に認識にズレがあるようなので、まずはそこを改めましょうか」
「認識のズレ……だと?」
「はい」
セレスティアの言っている意味が分からず混乱するファーラト公爵達を尻目に、セレスティアは鋭い口調で話を続けた。
「貴方達は私に『辺境伯の地位と、淵緑の森の領土を与える』と言っていましたが、一体何の権限があって私にそんなことを言っているのでしょうか?」
「権限だと……? そんなものは決まっている! 我々はプアボム公国を代表する四大公だ! この国に暮らす民を導く指導者であり、この国を治める王である。ならば、功績を挙げた国民に相応の報酬を支払う責任があるのは当然だ!」
「でしたら、この国の民ではない私には、その権限は通用しませんよね?」
「「「……えっ?」」」
国民じゃない、ニッコリと笑みを作ってハッキリとそう言い放ったセレスティアに、ファーラト公爵達の混乱は更に激しさを増す。
「そ、それは、どういう――」
「どうもなにも、今言ったように私はプアボム公国の国民ではないので、地位や領土を与えられる資格はありませんよね? それに地位や領土を貰うということは、プアボム公国の……厳密に言えば四大公の配下になるということですよね? 私は何かに縛られるという面倒な生活は嫌いなんです。だから、そんなものを急に与えると言われても困るんですよ」
セレスティアの話を聞いてもファーラト公爵達はその意味を全く理解できなかった。
セレスティアの住む淵緑の森はマイン公爵領の一部だ。そこに暮すセレスティアはマイン領に住む権利を得ている領民ということになり、つまりそれはプアボム公国の国民と同義である。……そのはずなのに、セレスティアはハッキリと国民ではないと言い切ったのだ。
訳が分からないと言った様子で、ファーラト公爵達はマイン公爵に詰め寄って説明を求めた。
「セレスティア殿がプアボム公国の国民ではないとは、一体どういうことだマイン公爵!」
「淵緑の森はマイン領の一部のはずだろう!」
「だったらそこに暮らすセレスティア殿も、プアボム公国の一員のはずではないのか!?」
ファーラト公爵達の勢いはマイン公爵に食い掛からんとする程だった。しかしそれに対してマイン公爵は、先程の狼狽えていた様子がどこへ行ったのかと思う程にスンっとした落ち着いた表情で冷静に返事を返す。
「……確かに、淵緑の森はマイン領内にあるとしています。ですがそれは表向きの話で、実際は嘘、フェイクです。淵緑の森一帯は、セレスティア殿のご先祖がプアボム公国建国以前から代々所有している私有地で、正確にはマイン領に隣接しているだけの何処にも属していない完全に独立している土地です。
淵緑の森はマイン領の外にあるので、当然プアボム公国の領土ではありません。そしてそこで暮らしているセレスティア殿も、当然プアボム公国の国民にはならないのです」
「「「なんだと!?」」」
「そして更に言えば、淵緑の森の所有権は当然ながらセレスティア殿にあり、セレスティア殿は淵緑の森を治める当主……言い換えれば“淵緑の森国の女王”とでも言うべきでしょう。そのような人物に、ましてや国の危機を僅かな報酬で救ってくれた英雄に、我々四大公が上から目線で勝手に『配下になれ』と言う道理がどこにありますか? しかもセレスティア殿の土地を、勝手に交渉材料にして」
マイン公爵が淡々と語る証言に、ファーラト公爵達は足元が崩れる気分に陥って頭から血の気が引いていく。
「……な、なぜそのような重大な情報を我々に隠していた!?」
「そ、そうだぞマイン公爵! これは四大公協定に反する行為に――」
「私はセレスティア殿のご先祖様と我がマイン公爵家のご先祖様が、プアボム公国建国よりも遥か昔に交わした約束に従ったまでです。よってこれは、四大公協定の例外に該当するはずですが?」
「「「ぐうっ……!?」」」
この時、ファーラト公爵達はようやく理解した。この会談は全て、マイン公爵の手の平の上だったことを……。
マイン公爵、いや、マイン公爵家は四大公結束時から、ファーラト公爵家、エーギル公爵家、メルネーリオ公爵家にセレスティアに関する重大情報をワザと隠していたのだ。
ただ、四大公協定でお互いに隠し事はご法度とされているので、マイン公爵の行いは通常であればこれに抵触する案件であった。しかしその取り決めは、正確に言えばプアボム公国が建国されてからの事に限られているのだ。
マイン公爵家はプアボム公国が建国される以前から存在しており、セレスティアの先祖との友好関係はプアボム公国が建国される以前からある。つまり、プアボム公国が建国される以前に創作して流した淵緑の森とそこに住む淵緑の魔女の逸話、その真実を他の四大公に打ち明ける必要など初めからなかったのだ。
そしてその結果、ファーラト公爵達は淵緑の森はマイン領の一部という誤解を植え付けられ、セレスティアに対して間違った態度で接してしまう事になった。
(((やられた……!!!)))
セレスティアと親睦を図り大きな関係を築くというファーラト公爵達の計画は、セレスティアに自分達の印象を悪く植え付けるだけとなり、失敗に終わることとなった。
計画が失敗して、意気消沈としたままのファーラト公爵達。それと対照的に作戦通りに事を運べて、マイン公爵とセレスティアはしてやったりと言いたげなにんまりしたドヤ顔を浮かべていた。
円卓テーブルの半々でテンションの差が出来ている中、マイン公爵の号令で四大公会談が再開した。
会談の内容は、もちろんストール鉱山事件についてである。事件の概要と、当時の状況や被害、そして出現した魔獣の詳細などが話し合われた。魔獣についてはセレスティアの詳しい解説付きで、魔獣の特徴や特性、そして行動原理に基づいた対抗手段の方法などの有益な情報が共有されることになった。これで次に魔獣が出現したとしても、セレスティアの力を借りる必要なく各陣営で対応できるようになるだろう。
◆ ◆
ストール鉱山の議題が終了すると、私は会議室から退出した。元々私は魔獣に関するアドバイザーという立場で呼ばれているので、ストール鉱山の議題が終了した時点でお役御免になったのだ。
そのまま残って会談に参加する必要もないので、ファーラト公爵達に足止めされる前に足早に会議室を離れ、オリヴィエの為に用意された控室で会談が終わるまで待つことにした。
そして待つこと3時間……、会談を終えたオリヴィエが笑顔で戻って来た。
「セレスティアさんお待たせしました」
「おかえりオリヴィエ。会談はどうだった?」
「ええ、バッチリでしたよ。ブロキュオン帝国との会合を設ける話も、その旨を伝える使者の選定も任せてもらえることになりました!」
魔獣事件の時、ティンクの活躍で魔獣は自然発生ではなく人為的に生み出されたことが発覚した。その首謀者である二人組の男の一人の身元は、オリヴィエの調査によって既に判明している。
マターと呼ばれていたその男は、ブロキュオン帝国軍に密偵として所属していたが、ある問題を起こして逃亡し、現在はブロキュオン帝国内で指名手配されているそうだ。
オリヴィエはマターの詳しい情報を手に入れるためにブロキュオン帝国と会合しようとして「使者はこちらで用意する」とファーラト公爵達に伝えたそうだが、「使者はプアボム公国を代表して行くことになるので、マイン公爵の独断ではなく四大公会談の場で選定する」と言われてしまったそうだ。
ファーラト公爵達の意見は至極真っ当だったのだが、オリヴィエにはある企みがあり、その為になんとしても使者を選定する権利をもぎ取りたかった。
そこでオリヴィエは、私の力を知って取り込もうとしていたファーラト公爵達の計画を利用する事を思い付いた。
オリヴィエからファーラト公爵達の計画を聞いた私は、当然オリヴィエの企みに協力する事にし、会談の場で最初ワザと腰の低い演技をした。そしてファーラト公爵達の誤解を上手く利用したオリヴィエの立ち回りのおかげもあり、見事ファーラト公爵達の会談での発言力を低下させることに成功した。
そこからは一番の発言力を得たオリヴィエが上手に私の名前を使って会談を思い通りにするだけの簡単なお仕事だったことは、オリヴィエの顔を見れば想像に難くない。
「上手くいって良かったわ! ……それじゃあ用事も済んだことだし、早く帰りましょう?」
「そうですね、戻ったらパイクスとピークにはすぐに予定通り動いてもらうとしましょう。きっと今頃待ちくたびれてウズウズしているでしょうしね」
そう言って私達はすぐに馬車に乗り込むと、足早にファーラト公爵邸を後にしてマイン公爵邸の帰路についた。
先程まで下手に出る態度だったのに、突然余裕の態度に豹変してそう言い切ったセレスティア。
そのセレスティアの急な態度の変化を不審に思ったが、特に気にする必要はないと判断して、ファーラト公爵はセレスティアに質問を投げかけた。
「……正直、我々はセレスティア殿がそこまで報酬に無関心なのが不思議で仕方ない。理由を聞いても?」
「……辺境伯としての地位、領土を持つことによって得られる権力、それは誰もが喉から手が出るほど欲しがるものであり、それを貰えるというのは大変魅力的なことでしょうね」
「そこまで分かっているなら、何故報酬を断るのだ?」
その言葉にセレスティアは、クスッと妖艶な笑みを浮かべて答える。
「簡単です。私にとってその様なものは、何の価値もありません。産業廃棄物と同類です」
「「「なっ!?」」」
センスの欠片もないあまりの酷い例えに、ファーラト公爵達は思わず固まってしまった。セレスティアも自分で言って「この例えは言いすぎかしら?」と思ったが、一度口に出したものは撤回出来ないので気にしないことにした。
「そもそもの話、どうやら貴方達3人と私達の間に認識にズレがあるようなので、まずはそこを改めましょうか」
「認識のズレ……だと?」
「はい」
セレスティアの言っている意味が分からず混乱するファーラト公爵達を尻目に、セレスティアは鋭い口調で話を続けた。
「貴方達は私に『辺境伯の地位と、淵緑の森の領土を与える』と言っていましたが、一体何の権限があって私にそんなことを言っているのでしょうか?」
「権限だと……? そんなものは決まっている! 我々はプアボム公国を代表する四大公だ! この国に暮らす民を導く指導者であり、この国を治める王である。ならば、功績を挙げた国民に相応の報酬を支払う責任があるのは当然だ!」
「でしたら、この国の民ではない私には、その権限は通用しませんよね?」
「「「……えっ?」」」
国民じゃない、ニッコリと笑みを作ってハッキリとそう言い放ったセレスティアに、ファーラト公爵達の混乱は更に激しさを増す。
「そ、それは、どういう――」
「どうもなにも、今言ったように私はプアボム公国の国民ではないので、地位や領土を与えられる資格はありませんよね? それに地位や領土を貰うということは、プアボム公国の……厳密に言えば四大公の配下になるということですよね? 私は何かに縛られるという面倒な生活は嫌いなんです。だから、そんなものを急に与えると言われても困るんですよ」
セレスティアの話を聞いてもファーラト公爵達はその意味を全く理解できなかった。
セレスティアの住む淵緑の森はマイン公爵領の一部だ。そこに暮すセレスティアはマイン領に住む権利を得ている領民ということになり、つまりそれはプアボム公国の国民と同義である。……そのはずなのに、セレスティアはハッキリと国民ではないと言い切ったのだ。
訳が分からないと言った様子で、ファーラト公爵達はマイン公爵に詰め寄って説明を求めた。
「セレスティア殿がプアボム公国の国民ではないとは、一体どういうことだマイン公爵!」
「淵緑の森はマイン領の一部のはずだろう!」
「だったらそこに暮らすセレスティア殿も、プアボム公国の一員のはずではないのか!?」
ファーラト公爵達の勢いはマイン公爵に食い掛からんとする程だった。しかしそれに対してマイン公爵は、先程の狼狽えていた様子がどこへ行ったのかと思う程にスンっとした落ち着いた表情で冷静に返事を返す。
「……確かに、淵緑の森はマイン領内にあるとしています。ですがそれは表向きの話で、実際は嘘、フェイクです。淵緑の森一帯は、セレスティア殿のご先祖がプアボム公国建国以前から代々所有している私有地で、正確にはマイン領に隣接しているだけの何処にも属していない完全に独立している土地です。
淵緑の森はマイン領の外にあるので、当然プアボム公国の領土ではありません。そしてそこで暮らしているセレスティア殿も、当然プアボム公国の国民にはならないのです」
「「「なんだと!?」」」
「そして更に言えば、淵緑の森の所有権は当然ながらセレスティア殿にあり、セレスティア殿は淵緑の森を治める当主……言い換えれば“淵緑の森国の女王”とでも言うべきでしょう。そのような人物に、ましてや国の危機を僅かな報酬で救ってくれた英雄に、我々四大公が上から目線で勝手に『配下になれ』と言う道理がどこにありますか? しかもセレスティア殿の土地を、勝手に交渉材料にして」
マイン公爵が淡々と語る証言に、ファーラト公爵達は足元が崩れる気分に陥って頭から血の気が引いていく。
「……な、なぜそのような重大な情報を我々に隠していた!?」
「そ、そうだぞマイン公爵! これは四大公協定に反する行為に――」
「私はセレスティア殿のご先祖様と我がマイン公爵家のご先祖様が、プアボム公国建国よりも遥か昔に交わした約束に従ったまでです。よってこれは、四大公協定の例外に該当するはずですが?」
「「「ぐうっ……!?」」」
この時、ファーラト公爵達はようやく理解した。この会談は全て、マイン公爵の手の平の上だったことを……。
マイン公爵、いや、マイン公爵家は四大公結束時から、ファーラト公爵家、エーギル公爵家、メルネーリオ公爵家にセレスティアに関する重大情報をワザと隠していたのだ。
ただ、四大公協定でお互いに隠し事はご法度とされているので、マイン公爵の行いは通常であればこれに抵触する案件であった。しかしその取り決めは、正確に言えばプアボム公国が建国されてからの事に限られているのだ。
マイン公爵家はプアボム公国が建国される以前から存在しており、セレスティアの先祖との友好関係はプアボム公国が建国される以前からある。つまり、プアボム公国が建国される以前に創作して流した淵緑の森とそこに住む淵緑の魔女の逸話、その真実を他の四大公に打ち明ける必要など初めからなかったのだ。
そしてその結果、ファーラト公爵達は淵緑の森はマイン領の一部という誤解を植え付けられ、セレスティアに対して間違った態度で接してしまう事になった。
(((やられた……!!!)))
セレスティアと親睦を図り大きな関係を築くというファーラト公爵達の計画は、セレスティアに自分達の印象を悪く植え付けるだけとなり、失敗に終わることとなった。
計画が失敗して、意気消沈としたままのファーラト公爵達。それと対照的に作戦通りに事を運べて、マイン公爵とセレスティアはしてやったりと言いたげなにんまりしたドヤ顔を浮かべていた。
円卓テーブルの半々でテンションの差が出来ている中、マイン公爵の号令で四大公会談が再開した。
会談の内容は、もちろんストール鉱山事件についてである。事件の概要と、当時の状況や被害、そして出現した魔獣の詳細などが話し合われた。魔獣についてはセレスティアの詳しい解説付きで、魔獣の特徴や特性、そして行動原理に基づいた対抗手段の方法などの有益な情報が共有されることになった。これで次に魔獣が出現したとしても、セレスティアの力を借りる必要なく各陣営で対応できるようになるだろう。
◆ ◆
ストール鉱山の議題が終了すると、私は会議室から退出した。元々私は魔獣に関するアドバイザーという立場で呼ばれているので、ストール鉱山の議題が終了した時点でお役御免になったのだ。
そのまま残って会談に参加する必要もないので、ファーラト公爵達に足止めされる前に足早に会議室を離れ、オリヴィエの為に用意された控室で会談が終わるまで待つことにした。
そして待つこと3時間……、会談を終えたオリヴィエが笑顔で戻って来た。
「セレスティアさんお待たせしました」
「おかえりオリヴィエ。会談はどうだった?」
「ええ、バッチリでしたよ。ブロキュオン帝国との会合を設ける話も、その旨を伝える使者の選定も任せてもらえることになりました!」
魔獣事件の時、ティンクの活躍で魔獣は自然発生ではなく人為的に生み出されたことが発覚した。その首謀者である二人組の男の一人の身元は、オリヴィエの調査によって既に判明している。
マターと呼ばれていたその男は、ブロキュオン帝国軍に密偵として所属していたが、ある問題を起こして逃亡し、現在はブロキュオン帝国内で指名手配されているそうだ。
オリヴィエはマターの詳しい情報を手に入れるためにブロキュオン帝国と会合しようとして「使者はこちらで用意する」とファーラト公爵達に伝えたそうだが、「使者はプアボム公国を代表して行くことになるので、マイン公爵の独断ではなく四大公会談の場で選定する」と言われてしまったそうだ。
ファーラト公爵達の意見は至極真っ当だったのだが、オリヴィエにはある企みがあり、その為になんとしても使者を選定する権利をもぎ取りたかった。
そこでオリヴィエは、私の力を知って取り込もうとしていたファーラト公爵達の計画を利用する事を思い付いた。
オリヴィエからファーラト公爵達の計画を聞いた私は、当然オリヴィエの企みに協力する事にし、会談の場で最初ワザと腰の低い演技をした。そしてファーラト公爵達の誤解を上手く利用したオリヴィエの立ち回りのおかげもあり、見事ファーラト公爵達の会談での発言力を低下させることに成功した。
そこからは一番の発言力を得たオリヴィエが上手に私の名前を使って会談を思い通りにするだけの簡単なお仕事だったことは、オリヴィエの顔を見れば想像に難くない。
「上手くいって良かったわ! ……それじゃあ用事も済んだことだし、早く帰りましょう?」
「そうですね、戻ったらパイクスとピークにはすぐに予定通り動いてもらうとしましょう。きっと今頃待ちくたびれてウズウズしているでしょうしね」
そう言って私達はすぐに馬車に乗り込むと、足早にファーラト公爵邸を後にしてマイン公爵邸の帰路についた。