第26話 こうしょう
「んで? 結局話って何なのよ? 冷やかしだったらもう帰ってくれない?」
「アンタバカなの? 話聞いてた? 魔王が出たって言ってるでしょ!」
「…何かあんた、以前にも増してキレやすくなってない? ひょっとして更年期障害なんじゃないの? ビタミン剤分けてあげようか?」
睦美と不二子の仁義なき戦いはまだ続いていた。本当に話が進まないので久子が事情と作戦を不二子に説明する。
「…ふーん、まぁ大体は理解したわ。 …でも協力は無理ねぇ」
不二子の意外な反応に落胆の色を見せるマジボラの3人。ここまで無慈悲にバッサリと断られるとは予想していなかったからだ。
「まず下手に魔法使いを増やされても学校としても困るのよ。普段アンドレ先生や私がどれだけ骨を折って騒ぎの元を隠蔽していると思ってるの? 礼の一つも言ってもらっても罰は当たらないと思うわよ?」
確かにマジボラの活動として、あまり世間様には公表出来ないあんな事やこんな事は枚挙に暇が無い。それらを穏便にかつ静粛に事件にならない様に奔走しているのはアンドレや不二子だった。
「はい… 不二子ちゃんには陰に陽にいつもお世話になってます。ありがとうございます」
不二子に最敬礼で頭を下げる久子。釣られてつばめも頭を下げるが、睦美だけは不機嫌そうに澄ました顔をしていた。
「ほらそこの年増! 後輩に頭下げさせて自分は知らん顔してんじゃないわよ」
「誰が年増よ?! アンタだってアタシと1つしか違わないでしょ!」
「あらぁ、私は永遠の23歳、ミステリアスティーチャーだから歳なんて取りませんことよ?」
「吐かしてろ」
「私も今年23歳になりましたよぉ」
「ウッソ?! 久ちゃんが23なのぉ? 初めて会った時は小学生だったのにねぇ…」
またしても話が脱線していく。このままでは埒が明かないと、この場で奮起して発言したのは主人公であるつばめだった。
「あ、あの… たとえ1人とか2人でも仲間が増やせればとても助かるんです。全校女生徒とはいかなくても、せめて一学年だけでも調べさせては貰えませんか…?」
つばめは不二子が好きでは無い。と言うかハッキリ嫌いだ。つばめの思いびとである沖田を誘惑したから、と言うのが第一義であるが、いま保健室に来た時に男子生徒にモテモテだった事も気に入らなかった。
美人でパーフェクトボディの持ち主で男子にモテモテ。もちろん単なる下劣な嫉妬であるが、とにかくつばめは不二子の事を好かなかった。
それでもつばめは不二子に頭を下げる。マジボラの、いや地域の、いや下手をしたら世界の命運が掛かっているのだ。真摯にお願いすれば必ず分かってもらえるはずだ……。
不二子は無表情で無言のまま数秒間つばめを見つめ、口を開く。
「えーと… ゴメンなさい、貴女誰だったかしら…?」
って、そこからかーいっ!! ガックリと項垂れるつばめ。一応昨日に顔合わせをしているはずなのだが、つばめの印象は不二子には残らなかった様だ。
「あ、思い出した思い出した。昨日沖田くんの御見舞に来てた子ね。もしかして沖田くんのガールフレンド?」
え? ガールフレンド? そう見える? 見えちゃった? この先生意外と良い人かも? と不二子への高感度が急上昇し、照れてフニャフニャと科を作るつばめ。
「あ、そしたら紹介するね。こちらマジボラの新人のつばめちゃん。つばめちゃんは不二子ちゃんは知ってるよね?」
つばめと不二子の視線が合い、つばめは会釈を、不二子は微笑みを返す。
「あらぁ、よりによって何でマジボラなんて入ったの? ひょっとして怖いセンパイに脅されたとか?」
大正解である。つばめが無言のまま目で頷くと、不二子も『やっぱりねぇ』という顔で微笑みを深くする。
「まぁまだ『魔王』とか言うのは眉唾だけど、かつての私みたいにキラキラと希望に溢れた魔法少女が、徐々に絶望して堕ちていく様を見るのも悪くないかもね…」
不二子の冗談に聞こえない悪魔的な思考を垣間見て、不二子への感情が再び急降下、嫌悪を通り越して恐怖に変わりつつあるつばめ。
そんなつばめの反応を見て、大きく吹き出して大笑する不二子。
「冗談よ冗談。私をそこの冷血女と一緒にしないでね」
不二子の当て付けに対して、睦美も意地の悪そうな表情で言い返した。
「ふーん、アンタが冷血じゃないってんなら可愛い後輩の頼みくらい聞いてやったらどうなのよ?」
睦美の反撃にウッと声を詰まらせる不二子。一方『してやったり』の笑顔を見せる睦美。
「そっ、それとこれとは………… あぁもう分かったわよ! 私の担当する1年生だけなら何とか協力してあげる。それでいいでしょ?!」
「ありがとう不二子ちゃん! 大好き!!」
感極まって不二子に抱きつく久子。不二子も久子の事は妹の様に憎からず思っている様で、抱きつかれたまま久子の頭を撫でてやる。
「ありがとうございます」
つばめも頭を下げて感謝の意を表す。
そしてマジボラの3人は保健室を後にしたのだった。
結局睦美が不二子に頭を下げる事は無かったが、作戦は一部とは言え成功し不二子の協力も取り付けた。
ここから『マジボラ大増員計画』の始まりである。
「アンタバカなの? 話聞いてた? 魔王が出たって言ってるでしょ!」
「…何かあんた、以前にも増してキレやすくなってない? ひょっとして更年期障害なんじゃないの? ビタミン剤分けてあげようか?」
睦美と不二子の仁義なき戦いはまだ続いていた。本当に話が進まないので久子が事情と作戦を不二子に説明する。
「…ふーん、まぁ大体は理解したわ。 …でも協力は無理ねぇ」
不二子の意外な反応に落胆の色を見せるマジボラの3人。ここまで無慈悲にバッサリと断られるとは予想していなかったからだ。
「まず下手に魔法使いを増やされても学校としても困るのよ。普段アンドレ先生や私がどれだけ骨を折って騒ぎの元を隠蔽していると思ってるの? 礼の一つも言ってもらっても罰は当たらないと思うわよ?」
確かにマジボラの活動として、あまり世間様には公表出来ないあんな事やこんな事は枚挙に暇が無い。それらを穏便にかつ静粛に事件にならない様に奔走しているのはアンドレや不二子だった。
「はい… 不二子ちゃんには陰に陽にいつもお世話になってます。ありがとうございます」
不二子に最敬礼で頭を下げる久子。釣られてつばめも頭を下げるが、睦美だけは不機嫌そうに澄ました顔をしていた。
「ほらそこの年増! 後輩に頭下げさせて自分は知らん顔してんじゃないわよ」
「誰が年増よ?! アンタだってアタシと1つしか違わないでしょ!」
「あらぁ、私は永遠の23歳、ミステリアスティーチャーだから歳なんて取りませんことよ?」
「吐かしてろ」
「私も今年23歳になりましたよぉ」
「ウッソ?! 久ちゃんが23なのぉ? 初めて会った時は小学生だったのにねぇ…」
またしても話が脱線していく。このままでは埒が明かないと、この場で奮起して発言したのは主人公であるつばめだった。
「あ、あの… たとえ1人とか2人でも仲間が増やせればとても助かるんです。全校女生徒とはいかなくても、せめて一学年だけでも調べさせては貰えませんか…?」
つばめは不二子が好きでは無い。と言うかハッキリ嫌いだ。つばめの思いびとである沖田を誘惑したから、と言うのが第一義であるが、いま保健室に来た時に男子生徒にモテモテだった事も気に入らなかった。
美人でパーフェクトボディの持ち主で男子にモテモテ。もちろん単なる下劣な嫉妬であるが、とにかくつばめは不二子の事を好かなかった。
それでもつばめは不二子に頭を下げる。マジボラの、いや地域の、いや下手をしたら世界の命運が掛かっているのだ。真摯にお願いすれば必ず分かってもらえるはずだ……。
不二子は無表情で無言のまま数秒間つばめを見つめ、口を開く。
「えーと… ゴメンなさい、貴女誰だったかしら…?」
って、そこからかーいっ!! ガックリと項垂れるつばめ。一応昨日に顔合わせをしているはずなのだが、つばめの印象は不二子には残らなかった様だ。
「あ、思い出した思い出した。昨日沖田くんの御見舞に来てた子ね。もしかして沖田くんのガールフレンド?」
え? ガールフレンド? そう見える? 見えちゃった? この先生意外と良い人かも? と不二子への高感度が急上昇し、照れてフニャフニャと科を作るつばめ。
「あ、そしたら紹介するね。こちらマジボラの新人のつばめちゃん。つばめちゃんは不二子ちゃんは知ってるよね?」
つばめと不二子の視線が合い、つばめは会釈を、不二子は微笑みを返す。
「あらぁ、よりによって何でマジボラなんて入ったの? ひょっとして怖いセンパイに脅されたとか?」
大正解である。つばめが無言のまま目で頷くと、不二子も『やっぱりねぇ』という顔で微笑みを深くする。
「まぁまだ『魔王』とか言うのは眉唾だけど、かつての私みたいにキラキラと希望に溢れた魔法少女が、徐々に絶望して堕ちていく様を見るのも悪くないかもね…」
不二子の冗談に聞こえない悪魔的な思考を垣間見て、不二子への感情が再び急降下、嫌悪を通り越して恐怖に変わりつつあるつばめ。
そんなつばめの反応を見て、大きく吹き出して大笑する不二子。
「冗談よ冗談。私をそこの冷血女と一緒にしないでね」
不二子の当て付けに対して、睦美も意地の悪そうな表情で言い返した。
「ふーん、アンタが冷血じゃないってんなら可愛い後輩の頼みくらい聞いてやったらどうなのよ?」
睦美の反撃にウッと声を詰まらせる不二子。一方『してやったり』の笑顔を見せる睦美。
「そっ、それとこれとは………… あぁもう分かったわよ! 私の担当する1年生だけなら何とか協力してあげる。それでいいでしょ?!」
「ありがとう不二子ちゃん! 大好き!!」
感極まって不二子に抱きつく久子。不二子も久子の事は妹の様に憎からず思っている様で、抱きつかれたまま久子の頭を撫でてやる。
「ありがとうございます」
つばめも頭を下げて感謝の意を表す。
そしてマジボラの3人は保健室を後にしたのだった。
結局睦美が不二子に頭を下げる事は無かったが、作戦は一部とは言え成功し不二子の協力も取り付けた。
ここから『マジボラ大増員計画』の始まりである。