第71話 けいこく
不二子に手招きされて保健室にやって来た睦美と久子。
「どうでも良いけどアンタもずいぶんババ臭いアクションする様になったわね。何あの手招き」
睦美が開口一番で『オバサン臭い手招き』と、不二子のモノマネをしながら挑発する。
「ムカつく。せっかく人が良いネタを教えて上げようとしてんのに、何その態度?」
「そうやって仲良しの2人を見ていると、昔みたいでほんわかしますねぇ」
「「仲良くないわよ!」」
睦美の悪態、キレる不二子、宥める(?)久子の、お約束の挨拶コンボが決まってようやく本題に入る事になる。
「…本当は口止めされてたんだけど、あんた達だけならまだしも芹沢さん達も関係してきそうだから、とりあえず釘だけでも刺しておこうかな? って思ってね」
「?」
「???」
不二子の用事は何らかの警告らしい。
「実は今学校に警察の人が来てるのよ。それも潜入捜査って形で。さっき壁新聞見ていた2人が居たでしょ? あれがそうみたい」
「へぇ、アイツ中学生かと思ったら警官なの? どうりで悪い目つきしてたはずだわ…」
睦美の呟きに『お前が言うな』と心でツッコむ不二子。
「昨日のサソリ騒動を始め、最近変な事件がよく起こってるでしょ? アンドレ先生に聞いたけど、その変な事件全てにマジボラが関わっているらしいじゃない。警察としても黙って見ている訳にもいかなくなったみたいよ? ねぇ、あんた達私の知らない所で何やってんの?」
「別にアタシ達は平常運転よ。ただ最近『シン悪川興業』とかいう奴らが暴れている現場にやたら出くわすから、エナジー集めにボランティアしているだけ。別に悪い事をしている訳じゃないから、警察に来られても特に何とも思わないわね」
「あとサービスで怪人退治もしてますねぇ」
久子の言葉に身を乗り出す不二子。
「ねぇその『怪人』てのがよく分かんないんだけど? コスプレとかじゃなくて本当の怪人なの? 噂の魔王軍てやつなの? マジボラで対処出来るの? 芹沢さんや新しく入った子達を危険に晒してないでしょうね?」
「いっぺんに聞かないでよ。危険に晒すどころか、昨日その怪人を撃退したのは噂の新人よ。アタシらも到着が遅れて見れたのは最後のシーンだけだったけど、とんでもないパワーの持ち主だったわ」
睦美の説明に目と口を丸くする不二子。とても現実の話とは思えない。
「その新人って例の『増田さん』でしょ? 交通事故にあったっていう…」
「その割には部室に来た時にはピンピンしてたけどねぇ。まぁ『何か』カラクリがあるのは間違いないだろうね…」
睦美が何かを企む様な不遜な顔で微笑む。
不二子も一度咳払いをして居住まいを正す。
「何にしても学内で警察が動いているうちは、派手な事は控えて欲しいのよ。壁新聞は私も見たけど、『怪我人の治療、怪人の撃退』は一見英雄的行為だけど、見方を変えれば『無免許の医療行為、暴力事件』となって犯罪行為を問われる事にもなりかねないわ。それに『高校15年生』がいる事が世間にバレたら、そっちの方が話題になるんじゃないの?」
「…うっさいわ」
不二子の挑発に一言だけ言い返す睦美。
「とにかく芹沢さん達には『特に』厳しく言っておいて。魔法を使いこなせる様になり始めた今ぐらいが一番『派手にやりたい』時期だから余計に心配なのよ…」
話は終わりと認識した睦美は不二子に背を向ける。部屋を去り際に、
「分かったよ。アタシもあの新人には確かめたい事があるからさ…」
とだけ告げて扉を閉めた。
昼休み。
校庭脇のベンチに座りながら、約束通りにランチタイムとなったつばめと蘭。
周りに人が居るとマジボラの話題を出しにくいので、この場所とあいなった次第である。
「でも昨日の蘭ちゃん本当カッコ良かったよねぇ。範囲攻撃で凍らせたり、片手で敵のマスコットキャラを持ち上げたり… わたしもああいう活躍してみたい!」
「あ… あはは…」
興奮して熱の上がるつばめに対して、本来見られたくないシーンてんこ盛りだった蘭は冷や汗ダラダラでもあった。
特にウタマロんを持ち上げた所はだ。蘭の魔法能力は『凍結』であって、中身の凛を含めて重さ100kgを超えるウタマロんを片手で持ち上げるゴリラパワーではない。
「あ、あれは持ち上げた様に見えるけど、ちゃんとあいつの下に氷の土台を作って載せてるだけだから…」
もちろん大嘘である。つばめが蘭の戦いを最後のフロントスープレックスまで見ていたならば、蘭のパワーが魔法による紛い物では無いと思い至るかも知れないが、蘭にとって幸いな事に、生憎つばめはつばめで怪我人の相手が忙しく『凍結』の術を使ったあたりまでしか見れていなかったのだ。
「そうなんだぁ? とにかくめちゃめちゃカッコ良かったから感動しちゃってさぁ」
疑う事を知らないつばめのバカ… 素直さが心に痛い蘭としては何とか話題を逸らしたい所でもある。
話題を変えるにしても半端な話題では、すぐに元の道に戻ってしまうだろう。ここでガッツリ進路変更を決める鉄板のネタとして蘭が思いついたのが、
「そ、そう言えば最近気になる男の子を見つけたんだよね…」
恋バナであった。
「どうでも良いけどアンタもずいぶんババ臭いアクションする様になったわね。何あの手招き」
睦美が開口一番で『オバサン臭い手招き』と、不二子のモノマネをしながら挑発する。
「ムカつく。せっかく人が良いネタを教えて上げようとしてんのに、何その態度?」
「そうやって仲良しの2人を見ていると、昔みたいでほんわかしますねぇ」
「「仲良くないわよ!」」
睦美の悪態、キレる不二子、宥める(?)久子の、お約束の挨拶コンボが決まってようやく本題に入る事になる。
「…本当は口止めされてたんだけど、あんた達だけならまだしも芹沢さん達も関係してきそうだから、とりあえず釘だけでも刺しておこうかな? って思ってね」
「?」
「???」
不二子の用事は何らかの警告らしい。
「実は今学校に警察の人が来てるのよ。それも潜入捜査って形で。さっき壁新聞見ていた2人が居たでしょ? あれがそうみたい」
「へぇ、アイツ中学生かと思ったら警官なの? どうりで悪い目つきしてたはずだわ…」
睦美の呟きに『お前が言うな』と心でツッコむ不二子。
「昨日のサソリ騒動を始め、最近変な事件がよく起こってるでしょ? アンドレ先生に聞いたけど、その変な事件全てにマジボラが関わっているらしいじゃない。警察としても黙って見ている訳にもいかなくなったみたいよ? ねぇ、あんた達私の知らない所で何やってんの?」
「別にアタシ達は平常運転よ。ただ最近『シン悪川興業』とかいう奴らが暴れている現場にやたら出くわすから、エナジー集めにボランティアしているだけ。別に悪い事をしている訳じゃないから、警察に来られても特に何とも思わないわね」
「あとサービスで怪人退治もしてますねぇ」
久子の言葉に身を乗り出す不二子。
「ねぇその『怪人』てのがよく分かんないんだけど? コスプレとかじゃなくて本当の怪人なの? 噂の魔王軍てやつなの? マジボラで対処出来るの? 芹沢さんや新しく入った子達を危険に晒してないでしょうね?」
「いっぺんに聞かないでよ。危険に晒すどころか、昨日その怪人を撃退したのは噂の新人よ。アタシらも到着が遅れて見れたのは最後のシーンだけだったけど、とんでもないパワーの持ち主だったわ」
睦美の説明に目と口を丸くする不二子。とても現実の話とは思えない。
「その新人って例の『増田さん』でしょ? 交通事故にあったっていう…」
「その割には部室に来た時にはピンピンしてたけどねぇ。まぁ『何か』カラクリがあるのは間違いないだろうね…」
睦美が何かを企む様な不遜な顔で微笑む。
不二子も一度咳払いをして居住まいを正す。
「何にしても学内で警察が動いているうちは、派手な事は控えて欲しいのよ。壁新聞は私も見たけど、『怪我人の治療、怪人の撃退』は一見英雄的行為だけど、見方を変えれば『無免許の医療行為、暴力事件』となって犯罪行為を問われる事にもなりかねないわ。それに『高校15年生』がいる事が世間にバレたら、そっちの方が話題になるんじゃないの?」
「…うっさいわ」
不二子の挑発に一言だけ言い返す睦美。
「とにかく芹沢さん達には『特に』厳しく言っておいて。魔法を使いこなせる様になり始めた今ぐらいが一番『派手にやりたい』時期だから余計に心配なのよ…」
話は終わりと認識した睦美は不二子に背を向ける。部屋を去り際に、
「分かったよ。アタシもあの新人には確かめたい事があるからさ…」
とだけ告げて扉を閉めた。
昼休み。
校庭脇のベンチに座りながら、約束通りにランチタイムとなったつばめと蘭。
周りに人が居るとマジボラの話題を出しにくいので、この場所とあいなった次第である。
「でも昨日の蘭ちゃん本当カッコ良かったよねぇ。範囲攻撃で凍らせたり、片手で敵のマスコットキャラを持ち上げたり… わたしもああいう活躍してみたい!」
「あ… あはは…」
興奮して熱の上がるつばめに対して、本来見られたくないシーンてんこ盛りだった蘭は冷や汗ダラダラでもあった。
特にウタマロんを持ち上げた所はだ。蘭の魔法能力は『凍結』であって、中身の凛を含めて重さ100kgを超えるウタマロんを片手で持ち上げるゴリラパワーではない。
「あ、あれは持ち上げた様に見えるけど、ちゃんとあいつの下に氷の土台を作って載せてるだけだから…」
もちろん大嘘である。つばめが蘭の戦いを最後のフロントスープレックスまで見ていたならば、蘭のパワーが魔法による紛い物では無いと思い至るかも知れないが、蘭にとって幸いな事に、生憎つばめはつばめで怪我人の相手が忙しく『凍結』の術を使ったあたりまでしか見れていなかったのだ。
「そうなんだぁ? とにかくめちゃめちゃカッコ良かったから感動しちゃってさぁ」
疑う事を知らないつばめのバカ… 素直さが心に痛い蘭としては何とか話題を逸らしたい所でもある。
話題を変えるにしても半端な話題では、すぐに元の道に戻ってしまうだろう。ここでガッツリ進路変更を決める鉄板のネタとして蘭が思いついたのが、
「そ、そう言えば最近気になる男の子を見つけたんだよね…」
恋バナであった。