R-15
なにげない少女の何気ない一日(午後)
晩ご飯を食べた後はあくびがとまらない。だからあたしはベッドの上でゴロゴロとしながら時間を過ごすことが好きなの。眠いのだけど、眠らない。脳がふわふわと宙を彷徨っているような感じがとても気持ちよい。脳はあたしの首から解放されていた方が快適に動くの。脳はぼんやりと今日一日を想い起こしたり、考えにふけるのだ。
別に難しいことを考えているわけではないよ。今日は憧れの男の子に声をかけられたけど、なんであんなに冷たくしちゃったのかな。もっと、優しくて可愛らしくお話すればもう少しは仲良くなれるのかな、とかね。まあ小学六年生の女子の考えることなんて誰でもそんなもんでしょ。きっと。
枕を抱き締めながら寝転がる。落ち着くんだよね。ギュウって抱き締めると。幼い頃はぬいぐるみを抱き締めていた。あたしはなにかを抱き締めること好きみたい。抱き締める感覚はなにかを支配している感覚とよく似ている。意外と支配欲が強いのかもしれないのね。逆にたまには抱き締められたいとも思うこともあるんだよ。誰にと言うわけではないのだけれどね。
パパがお仕事から帰ってくる。あたしはいつも二階の自分の部屋を飛び出して玄関まで小走りするのよ。パパのお出迎えをするのは娘の仕事だと思っているから。
「おかえりなさい。お仕事お疲れ様。」
出来る限りの力を使って笑顔を作る。パパはどれだけ疲れていても、
「ただいま。」
と返事をしてくれる。うちのパパはあんまり愛想のいい人ではない。でも、お仕事がお休みのときは色々楽しいところに連れて行ってくれるし、お誕生日やクリスマスには早く帰ってきて一緒にお祝いしてくれる。プレゼントだって奮発してくれるからパパは好きだよ。でも、ときどきママとけんかをして泣かせることはやめて欲しい。でも、あたしは怖くてそんなことは口に出来ないけどね。
いつも決まった時間にお風呂に入る。お布団と同じくらいお風呂も気持ちよい。お湯に肩まで浸ると一日の身体の疲れとか悩みが溶けて取り除かれる気がするからね。
それにこの空間はあたしが掃除をしなくても片づけをしなくてもいつも綺麗だから。今はあたしだけの世界。ときどき弟の岳人がノックもせずにドアを開けることがあるんだけど。そのときはあたしもさすがにキレる。
岳人はまだ小学二年生だからきっと悪いことをしたという認識は全くないのだろう。きっとあたしの顔が見たくて、お話がしたくて、あたしがお風呂からあがるのを待ちきれないだけなのだろうけど。でも、姉弟と言ってもやっぱり恥ずかしい。
恥ずかしいと思うようになった理由は、最近ちょっと、ちょっとだけ自分の胸が膨らんできたからというのもある。他人から見たら全然気にならないのかもしれないけど、間違いなく胸は大きくなってきた。学校の友達はどうなのかなあ。なかには下着がブラジャーに変わった子もいるし、もう六年生にもなるから当たり前のことなのかもしれないけど、あたしは恥ずかしかった。だから、あまり友達ともこのことについて話はしない。
この胸は大人になってきたっていう証拠なのかな。そう考えるといつも憂鬱な気持ちになる。大人になったらどうなるのかな。もうすぐ小学生最後のクリスマスとお正月がやってきて、そしたらすぐに卒業して中学生になる。中学校と高校なんてあわせて六年間だから、ふたつあわせても小学校に通うのと同じくらいの時間しかないんだよね。そしたら、大学に行くか就職するか。嫌だな。
どうして、大人になることを考えたらこんなに憂鬱になるのだろう。大人になれば自分でお金を稼いで洋服とか欲しいものをいっぱい手に入れられるかもしれないし、お酒を飲んだり大人ならではの楽しいことだってたくさんあると思うのに。でも、あたしはずっと今のままがいい。深く考えると病気にでもなってしまいそう。大人になりたくないあたしはちょっと歪んだ性格をしているのかもしれない。そう思うとまた、嫌な気分が増してくる。こんなことを考え始めると負のスパイラルに陥っちゃうからお風呂をあがって、なにも考えないようにしているんだ。
髪の毛をドライヤーで乾かしてからリビングに戻ってパパとママにおやすみなさいと言って、二階の部屋に戻る。このときひとつだけ友達にも絶対言えない特別な儀式がある。それはパパの頬にちょっとだけキスのようなことすること。
おかしいとは分かっているんだけどさ。これだけはパパとの約束で物心ついたころから続けている。ちょっとキモいかも…とか思いつつあたしはパパにもうこんなことをするのは嫌とは言えない。そんなこと言っちゃうとパパが悲しむと思ってね。だから、ほんとにちょっとだけ頬を合わせて
「おやすみなさい。」
と言う。やっぱり今夜も恥ずかしい。でも、パパにこうするとあたし自身もなんか安心しちゃうんだ。あたしって変態?とも思っているけど平気だよね。
別に難しいことを考えているわけではないよ。今日は憧れの男の子に声をかけられたけど、なんであんなに冷たくしちゃったのかな。もっと、優しくて可愛らしくお話すればもう少しは仲良くなれるのかな、とかね。まあ小学六年生の女子の考えることなんて誰でもそんなもんでしょ。きっと。
枕を抱き締めながら寝転がる。落ち着くんだよね。ギュウって抱き締めると。幼い頃はぬいぐるみを抱き締めていた。あたしはなにかを抱き締めること好きみたい。抱き締める感覚はなにかを支配している感覚とよく似ている。意外と支配欲が強いのかもしれないのね。逆にたまには抱き締められたいとも思うこともあるんだよ。誰にと言うわけではないのだけれどね。
パパがお仕事から帰ってくる。あたしはいつも二階の自分の部屋を飛び出して玄関まで小走りするのよ。パパのお出迎えをするのは娘の仕事だと思っているから。
「おかえりなさい。お仕事お疲れ様。」
出来る限りの力を使って笑顔を作る。パパはどれだけ疲れていても、
「ただいま。」
と返事をしてくれる。うちのパパはあんまり愛想のいい人ではない。でも、お仕事がお休みのときは色々楽しいところに連れて行ってくれるし、お誕生日やクリスマスには早く帰ってきて一緒にお祝いしてくれる。プレゼントだって奮発してくれるからパパは好きだよ。でも、ときどきママとけんかをして泣かせることはやめて欲しい。でも、あたしは怖くてそんなことは口に出来ないけどね。
いつも決まった時間にお風呂に入る。お布団と同じくらいお風呂も気持ちよい。お湯に肩まで浸ると一日の身体の疲れとか悩みが溶けて取り除かれる気がするからね。
それにこの空間はあたしが掃除をしなくても片づけをしなくてもいつも綺麗だから。今はあたしだけの世界。ときどき弟の岳人がノックもせずにドアを開けることがあるんだけど。そのときはあたしもさすがにキレる。
岳人はまだ小学二年生だからきっと悪いことをしたという認識は全くないのだろう。きっとあたしの顔が見たくて、お話がしたくて、あたしがお風呂からあがるのを待ちきれないだけなのだろうけど。でも、姉弟と言ってもやっぱり恥ずかしい。
恥ずかしいと思うようになった理由は、最近ちょっと、ちょっとだけ自分の胸が膨らんできたからというのもある。他人から見たら全然気にならないのかもしれないけど、間違いなく胸は大きくなってきた。学校の友達はどうなのかなあ。なかには下着がブラジャーに変わった子もいるし、もう六年生にもなるから当たり前のことなのかもしれないけど、あたしは恥ずかしかった。だから、あまり友達ともこのことについて話はしない。
この胸は大人になってきたっていう証拠なのかな。そう考えるといつも憂鬱な気持ちになる。大人になったらどうなるのかな。もうすぐ小学生最後のクリスマスとお正月がやってきて、そしたらすぐに卒業して中学生になる。中学校と高校なんてあわせて六年間だから、ふたつあわせても小学校に通うのと同じくらいの時間しかないんだよね。そしたら、大学に行くか就職するか。嫌だな。
どうして、大人になることを考えたらこんなに憂鬱になるのだろう。大人になれば自分でお金を稼いで洋服とか欲しいものをいっぱい手に入れられるかもしれないし、お酒を飲んだり大人ならではの楽しいことだってたくさんあると思うのに。でも、あたしはずっと今のままがいい。深く考えると病気にでもなってしまいそう。大人になりたくないあたしはちょっと歪んだ性格をしているのかもしれない。そう思うとまた、嫌な気分が増してくる。こんなことを考え始めると負のスパイラルに陥っちゃうからお風呂をあがって、なにも考えないようにしているんだ。
髪の毛をドライヤーで乾かしてからリビングに戻ってパパとママにおやすみなさいと言って、二階の部屋に戻る。このときひとつだけ友達にも絶対言えない特別な儀式がある。それはパパの頬にちょっとだけキスのようなことすること。
おかしいとは分かっているんだけどさ。これだけはパパとの約束で物心ついたころから続けている。ちょっとキモいかも…とか思いつつあたしはパパにもうこんなことをするのは嫌とは言えない。そんなこと言っちゃうとパパが悲しむと思ってね。だから、ほんとにちょっとだけ頬を合わせて
「おやすみなさい。」
と言う。やっぱり今夜も恥ずかしい。でも、パパにこうするとあたし自身もなんか安心しちゃうんだ。あたしって変態?とも思っているけど平気だよね。