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作者: konoyo
R-15
不安と憂鬱と
あたしはその日から数日間学校を休んだ。ママが丈夫な体に産んでくれたから学校を休むことなんて初めてだったかもしれない。だけどこんな顔をしていては学校なんかに行けやしない。

 数日後にママと一緒に薬局を訪れた。あたしが連れて行ってくれと頼んだのだ。鎮痛剤を買う為に。別に体のどこかが痛かったわけではない。あたしが欲しかったのは気持ちを落ち着かせる成分と眠気を誘発する成分。あの夜以来眠りにつくのが怖ろしいの。毎晩毎晩現れるあのカウントダウンを見るとゾッとするの。

 確実に一晩毎に命が減っていくことを自覚するのはあまりに辛い。夢を見ないくらい深い眠りを得られるのならば、薬の力を借りることに躊躇も迷いもあるはずがない。だけど、睡眠薬を買ってくれとはママには言えないよね。そんなことを言えば余計な心配をかけるだけだから。だから、あたしは頭が痛いと訴えて、なるべく眠気が強くなりそうな薬を選んだ。多少ではあるけれど薬の効果があったみたい。寝る前にそれを飲めばまどろみを誘ってくれた。

 岳人が眠ったのを確認してから、すぐにそれを飲み込んでベッドに潜る日が続いた。

 学校を休んでしていることといえばベッドで横になっているだけ。鎮痛剤を飲むのは夜だけにとどめておいた。あまりにも早く薬を消耗してしまうと怪訝に思われるもの。だから、昼間は薬を飲まずに、なるべくなにも考えないように心がけて横になっていた。それでも死の恐怖が薄まることはない。

 一日中寝転んでいるなんて怠惰な生活だと非難する人もいるだろう。だけどそれってとても疲れるし、不愉快な生活なんだよ。こんなに疎ましいのなら外に出て行った方がましなのかな、と考える。だから今日から学校に行こうと決意した。

 鎮痛剤をお守りのようにランドセルの小さなポケットに忍ばせておく。数えてみれば学校へ行くのは十日振りだった。久しぶりに一緒に登校できることを岳人はとても喜んでくれた。その顔色を見るだけで立ち上がった甲斐がある。もちろん道のりは憂鬱で不安だったけど。果歩ちゃんや他の友達もあたしが欠席し続けたことに触れないでいてくれた。自然に不登校になる前の生活に戻ることが出来たよ。みんな有難う。久し振りの学校は案じていたよりずっと心地よかった。少しだけど、恐怖の夢の呪縛から解き放たれた気がしたな。あまり死のこと考えずに過ごせた。やはり家に閉じ籠っているより、友達に囲まれていた方が安心感がある。
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