R-15
悪魔 calling!
もうすぐ長かった中学一年生が終わろうとしている。今日と明日に行われる期末試験さえ終わってしまえば、後はのんびりと過ごせるだろう。あたしは試験の追い込みの勉強というものをほとんどしない。勉強が嫌いなわけではない。毎日二時間くらいは自分の部屋の机に向かっているのだ。土日も欠かすことはない。だから今さら試験の為の勉強をしようという気にならない。世間から見たら、毎日積み重ねを怠らない真面目な子だと言われるかもしれないが、そうではない。試験というものに不真面目なのだ。
果歩ちゃんと美羽ちゃんも試験勉強が嫌いらしい。さらに、普段机に向かう習慣もないし授業中だってろくに先生の話を聞いていないのだって。まったくの勉強嫌いのようだ。だから、今日も放課後に公園で暗くなるまでお喋りをしてきた。
机に向かっているとどこからかあたしの名を呼ぶ声がした。空耳だろうと気にもしなかった。だってもう夜の十時。ドアも窓もしっかり閉まっている。
「優江。お前だよ、優江。」
やっぱり聞こえた。さっきより鮮明に。狼狽えたし、怖かった。しかし、驚くのはその後だった。周囲を見渡すと信じられないものが目に映った。
(きゃあ。)
声にはならなかった。そこにいるのは見たこともない動物。いや、こんな動物知らない。なんなのだ、これは。生きものなのか。
顔面は人間のようで首から下は猿そっくり。そして、背中には蝙蝠みたいな小さな羽が生えていて、そいつを動かして宙に浮いている。身長は四十センチメートルくらいか。顔付きは日本人のように見えるが瞳は真っ青だった。
まずは大きく息を吸い込んで吐き出しながら目を閉じる。呼吸を整えて自問する。あたしは勉強していたのだっけ。疲れて寝てしまったのだっけ。そういえば瞼が重かった。夢を見ていたのだよね。
ゆっくりと目を開いた視線の先には、気味の悪い笑みをした不気味な生物が浮いていてこっちを覗いている。
「嘘お!」
今度は小さな声が出てしまった。しかし、あたしの心に湧いたのは怖れではなく怒りに近いものだった。
なんなのかあんたは。いったいどこから入ってきたのか。なにをしにやってきたのか。
あたしの言葉を理解出来るようだ。
「どうして人間というやつらはみんな同じことを聞いてくるんだろうな。」
そいつは呆れていたようだ。小さなため息をつく。気味の悪い顔色をしているけど、その表情を読み取れた。
「いいか、優江。おまえらが人間という分類ならば、オレはデモンという分類なんだ。おまえらみたいに個々に名前なんて持っていないから、いつも張り付いた人間に名前を付けて貰っているよ。優江もオレにいい名前をつけてくれよ。」
気安く呼び捨てにしないで。勝手なことを願い求めたりしないで。張り付くとは憑依するということなのか。なぜそんな迷惑なことをされなくてはならないのか。あたしとは対照的にソイツは随分と落ち着いている。人間と話をすることに慣れているようだ。
「ごめんな。突然現れて無茶な質問をしてしまったな。まずは優江の問いに答えないといけないな。まずはなにから説明したらいいだろうか。」
あなたは一体何者なのか。なぜあたしに憑依するのか。なによりもそれを納得させて貰えないと話にならない。
「オレはデモンという生き物。人間に張り付くことが存在する理由なんだ。どの生きものに張り付かなくてはならないのかは、そらに指示を受ける。共通して言えることは死期の見える生き物に限られるということだ。」
死期が見える?このあたしが。眠る度に見えるあの幻影のことを言っているのか。あれはやはり初めて目にしたときに感じた通り、あたしの命の残量を知らせるものなのか。
「なぜ人間に張り付くのかという問いには答えられない。もったいぶったり、嫌がらせをするつもりではないんだ。オレにも分からないんだ。ただ、そらに命じられたからそうしているとしか答えようがない。」
果歩ちゃんと美羽ちゃんも試験勉強が嫌いらしい。さらに、普段机に向かう習慣もないし授業中だってろくに先生の話を聞いていないのだって。まったくの勉強嫌いのようだ。だから、今日も放課後に公園で暗くなるまでお喋りをしてきた。
机に向かっているとどこからかあたしの名を呼ぶ声がした。空耳だろうと気にもしなかった。だってもう夜の十時。ドアも窓もしっかり閉まっている。
「優江。お前だよ、優江。」
やっぱり聞こえた。さっきより鮮明に。狼狽えたし、怖かった。しかし、驚くのはその後だった。周囲を見渡すと信じられないものが目に映った。
(きゃあ。)
声にはならなかった。そこにいるのは見たこともない動物。いや、こんな動物知らない。なんなのだ、これは。生きものなのか。
顔面は人間のようで首から下は猿そっくり。そして、背中には蝙蝠みたいな小さな羽が生えていて、そいつを動かして宙に浮いている。身長は四十センチメートルくらいか。顔付きは日本人のように見えるが瞳は真っ青だった。
まずは大きく息を吸い込んで吐き出しながら目を閉じる。呼吸を整えて自問する。あたしは勉強していたのだっけ。疲れて寝てしまったのだっけ。そういえば瞼が重かった。夢を見ていたのだよね。
ゆっくりと目を開いた視線の先には、気味の悪い笑みをした不気味な生物が浮いていてこっちを覗いている。
「嘘お!」
今度は小さな声が出てしまった。しかし、あたしの心に湧いたのは怖れではなく怒りに近いものだった。
なんなのかあんたは。いったいどこから入ってきたのか。なにをしにやってきたのか。
あたしの言葉を理解出来るようだ。
「どうして人間というやつらはみんな同じことを聞いてくるんだろうな。」
そいつは呆れていたようだ。小さなため息をつく。気味の悪い顔色をしているけど、その表情を読み取れた。
「いいか、優江。おまえらが人間という分類ならば、オレはデモンという分類なんだ。おまえらみたいに個々に名前なんて持っていないから、いつも張り付いた人間に名前を付けて貰っているよ。優江もオレにいい名前をつけてくれよ。」
気安く呼び捨てにしないで。勝手なことを願い求めたりしないで。張り付くとは憑依するということなのか。なぜそんな迷惑なことをされなくてはならないのか。あたしとは対照的にソイツは随分と落ち着いている。人間と話をすることに慣れているようだ。
「ごめんな。突然現れて無茶な質問をしてしまったな。まずは優江の問いに答えないといけないな。まずはなにから説明したらいいだろうか。」
あなたは一体何者なのか。なぜあたしに憑依するのか。なによりもそれを納得させて貰えないと話にならない。
「オレはデモンという生き物。人間に張り付くことが存在する理由なんだ。どの生きものに張り付かなくてはならないのかは、そらに指示を受ける。共通して言えることは死期の見える生き物に限られるということだ。」
死期が見える?このあたしが。眠る度に見えるあの幻影のことを言っているのか。あれはやはり初めて目にしたときに感じた通り、あたしの命の残量を知らせるものなのか。
「なぜ人間に張り付くのかという問いには答えられない。もったいぶったり、嫌がらせをするつもりではないんだ。オレにも分からないんだ。ただ、そらに命じられたからそうしているとしか答えようがない。」