残酷な描写あり
R-15
【第Ⅰ章の概要】
今まで第Ⅰ章のみの掲載でしたが、B-NOVEL限定で10万字評価基準に達するように第Ⅱ章の途中まで掲載する事にしました。
「あなたは……照朝……!?」
「輝夜……な、何でここに……!?」
双子の姉妹、明智輝夜と明智照朝はウルヴァルゼ帝国と栄耀教会によって異世界召喚された。
「お初にお目に掛かる。私は栄耀教会の教皇、ラモン・エルハ・ズンダルクと申します。――失礼ですが、どちらが『聖女』様でいらっしゃいますかな……?」
ウルヴァルゼ帝国では五十年前から、瘴気による厄災『邪神の息吹』に見舞われて危機的状況に陥っていた。
事態を打開する為にウルヴァルゼ帝国は、栄耀教会が秘匿していた『招聖の儀』によって、厄災を鎮める救世の乙女――『聖女』の召喚を決行した。
三百年前の王国時代にも『儀式』が行われ、その時もニッポンから初代『聖女』が召喚され、彼女が持つ光の極大魔力によって国内の瘴気は浄化され、当時の『邪神の息吹』は終息、ウルヴァルゼ王国は帝国へと発展して安定した時代が二百五十年も続いていた。
そうした歴史から、五十年前に再来した今回の『邪神の息吹』でも『聖女』の力に頼る事が決まり、史上二度目となる『儀式』が行われた訳だが――
「御覧の通り、召喚されたのはお二人。これは全く想定外の結果です」
どちらが『聖女』か確かめる為、速やかにカグヤとテルサに対して魔力鑑定が行われた結果、
「す、素晴らしい……! これはまさに、三百年前の初代『聖女』様と同じ御力! 太陽と見紛う程の光の魔力! あなた様こそ、サウル神の加護と導きを受けし『聖女』に違いありませぬ!」
初代『聖女』と同じ光の極大魔力が、テルサに宿っている事が判明した。
「これは……鑑定水晶の故障か?」
しかし、一方のカグヤに対しては鑑定水晶は何の反応も示さない、すなわち魔力が皆無という結果が出された。
生物なら多寡に関わらず必ず持っているはずの魔力がカグヤには無い、という不可解な鑑定結果に首を傾げながらも、誰もがテルサこそが当代の『聖女』と断定した。
「大逆の罪人カグヤ・アケチ、お命頂戴仕る」
その夜、ゼルレーク聖騎士団長とその息子ラウル、ラモン教皇の孫ザッキスら聖騎士団の部隊がカグヤを襲撃した。
「――抹殺して下さい、カグヤを」
彼らを差し向けたのはラモン教皇の意志であり、それを依頼したのはテルサ。
カグヤは異世界召喚される直前まで、両親と、一家が世話になっていた教主の計三人を殺害した罪で逮捕、拘置所に収容されていた。
そんな彼女への殺意からテルサは栄耀教会に復讐の代行を依頼、テルサの機嫌を損ねては今後の活動に支障を来すと考えたラモン教皇は、ゼルレーク聖騎士団長にカグヤ暗殺を命じたのだった。
恐怖と絶望のまま暴力を振るわれ、為す術無く止めを刺されようとするその瞬間、突如としてカグヤの身は聖騎士団の元を離れ、地下に建造された『冥獄墓所』へ転移した。
「渇く……!」
突然の事態に混乱するカグヤの前に、墓所に葬られていた男の一人がヴァンパイアと化して復活して現れた。
「あの、あなたは、どなたですか……?」
「ダスク、だ。カルディス王弟殿下にお仕えする騎士、だった……」
異世界から召喚されたばかりのカグヤと、三百年後の世界に蘇ったばかりのダスク。
次々に起こる出来事に理解が追い付かず戸惑いながらも、二人は協力して脱出する事を決意する。
「――滅せよ、悪しきヴァンパイア」
しかし脱出の道中、ゼルレーク聖騎士団長達と再度遭遇、交戦したダスクが深手を負ってしまう。
窮地の中、自らの力を自覚し始めたカグヤが念じると、二人は聖騎士団から逃れて大聖堂の外へ転移、サウレス=サンジョーレ曙光島からも脱出に成功した。
〈正解だよ。僕の名はジェフ。そしてこの子はセレナーデ。宜しくね〉
サウレス=サンジョーレ曙光島から帝都エルザンパールへ逃れたカグヤとダスクの前に、黒猫セレナーデを通じてジェフと名乗る調教術師が接触してきた。
警戒しながらもジェフの案内に従って地下水路を通り、案内された先は魔術師一族フェンデリン家の館の地下室。
「如何にも。宮廷魔術団総帥オズガルド・デルク・フェンデリン――ジェフの祖父だよ」
ジェフが使役するトカゲを通じて、『儀式』と魔力鑑定の様子を盗み見ていたオズガルドは、栄耀教会との政治闘争を有利に進める為、そしてカグヤが持つ不可解な力への興味から、二人の身柄の保護を申し出てきた。
「分かりました。まだあなた方の事を完全に信用した訳ではありませんが、ご厚意に甘えさせて頂きます」
栄耀教会によって罪人として手配され、フェンデリン家に身を寄せる事になったカグヤとダスク。
闇夜を行く二人の物語がここから始まる――。
「輝夜……な、何でここに……!?」
双子の姉妹、明智輝夜と明智照朝はウルヴァルゼ帝国と栄耀教会によって異世界召喚された。
「お初にお目に掛かる。私は栄耀教会の教皇、ラモン・エルハ・ズンダルクと申します。――失礼ですが、どちらが『聖女』様でいらっしゃいますかな……?」
ウルヴァルゼ帝国では五十年前から、瘴気による厄災『邪神の息吹』に見舞われて危機的状況に陥っていた。
事態を打開する為にウルヴァルゼ帝国は、栄耀教会が秘匿していた『招聖の儀』によって、厄災を鎮める救世の乙女――『聖女』の召喚を決行した。
三百年前の王国時代にも『儀式』が行われ、その時もニッポンから初代『聖女』が召喚され、彼女が持つ光の極大魔力によって国内の瘴気は浄化され、当時の『邪神の息吹』は終息、ウルヴァルゼ王国は帝国へと発展して安定した時代が二百五十年も続いていた。
そうした歴史から、五十年前に再来した今回の『邪神の息吹』でも『聖女』の力に頼る事が決まり、史上二度目となる『儀式』が行われた訳だが――
「御覧の通り、召喚されたのはお二人。これは全く想定外の結果です」
どちらが『聖女』か確かめる為、速やかにカグヤとテルサに対して魔力鑑定が行われた結果、
「す、素晴らしい……! これはまさに、三百年前の初代『聖女』様と同じ御力! 太陽と見紛う程の光の魔力! あなた様こそ、サウル神の加護と導きを受けし『聖女』に違いありませぬ!」
初代『聖女』と同じ光の極大魔力が、テルサに宿っている事が判明した。
「これは……鑑定水晶の故障か?」
しかし、一方のカグヤに対しては鑑定水晶は何の反応も示さない、すなわち魔力が皆無という結果が出された。
生物なら多寡に関わらず必ず持っているはずの魔力がカグヤには無い、という不可解な鑑定結果に首を傾げながらも、誰もがテルサこそが当代の『聖女』と断定した。
「大逆の罪人カグヤ・アケチ、お命頂戴仕る」
その夜、ゼルレーク聖騎士団長とその息子ラウル、ラモン教皇の孫ザッキスら聖騎士団の部隊がカグヤを襲撃した。
「――抹殺して下さい、カグヤを」
彼らを差し向けたのはラモン教皇の意志であり、それを依頼したのはテルサ。
カグヤは異世界召喚される直前まで、両親と、一家が世話になっていた教主の計三人を殺害した罪で逮捕、拘置所に収容されていた。
そんな彼女への殺意からテルサは栄耀教会に復讐の代行を依頼、テルサの機嫌を損ねては今後の活動に支障を来すと考えたラモン教皇は、ゼルレーク聖騎士団長にカグヤ暗殺を命じたのだった。
恐怖と絶望のまま暴力を振るわれ、為す術無く止めを刺されようとするその瞬間、突如としてカグヤの身は聖騎士団の元を離れ、地下に建造された『冥獄墓所』へ転移した。
「渇く……!」
突然の事態に混乱するカグヤの前に、墓所に葬られていた男の一人がヴァンパイアと化して復活して現れた。
「あの、あなたは、どなたですか……?」
「ダスク、だ。カルディス王弟殿下にお仕えする騎士、だった……」
異世界から召喚されたばかりのカグヤと、三百年後の世界に蘇ったばかりのダスク。
次々に起こる出来事に理解が追い付かず戸惑いながらも、二人は協力して脱出する事を決意する。
「――滅せよ、悪しきヴァンパイア」
しかし脱出の道中、ゼルレーク聖騎士団長達と再度遭遇、交戦したダスクが深手を負ってしまう。
窮地の中、自らの力を自覚し始めたカグヤが念じると、二人は聖騎士団から逃れて大聖堂の外へ転移、サウレス=サンジョーレ曙光島からも脱出に成功した。
〈正解だよ。僕の名はジェフ。そしてこの子はセレナーデ。宜しくね〉
サウレス=サンジョーレ曙光島から帝都エルザンパールへ逃れたカグヤとダスクの前に、黒猫セレナーデを通じてジェフと名乗る調教術師が接触してきた。
警戒しながらもジェフの案内に従って地下水路を通り、案内された先は魔術師一族フェンデリン家の館の地下室。
「如何にも。宮廷魔術団総帥オズガルド・デルク・フェンデリン――ジェフの祖父だよ」
ジェフが使役するトカゲを通じて、『儀式』と魔力鑑定の様子を盗み見ていたオズガルドは、栄耀教会との政治闘争を有利に進める為、そしてカグヤが持つ不可解な力への興味から、二人の身柄の保護を申し出てきた。
「分かりました。まだあなた方の事を完全に信用した訳ではありませんが、ご厚意に甘えさせて頂きます」
栄耀教会によって罪人として手配され、フェンデリン家に身を寄せる事になったカグヤとダスク。
闇夜を行く二人の物語がここから始まる――。