【毒】半数致死量にご注意ください【解説】
世の中"毒じゃないヤツ"は存在しないのかもしれない
毒とは『自分にとって都合の悪い働きをする物質』です
身体の外からやってくる『外来製物質』は、わたしたちの身体にいろいろな効果をもたらします。その中で、わたしたちにとって都合の悪い、たとえば消化器官の膜に穴を空けたり、血液を固めたり、脳神経をぶっ壊しまわったり――ありとあらゆる不都合を生み出す輩はすべて『毒』になります
腹痛や下痢などの症状で教えてくれるものもあれば、まったく無自覚に身体を蝕んでくるような物質もある。だからこそ、人間は昔から毒をもつ生き物を恐れ、また暗殺用の道具として利用してきたのです
毒を治すため、わたしたちは『薬』を使いますね。じゃあ薬ってなんでしょう?
薬は『自分にとって都合の良い働きをする物質』です
外来製物質のなかでも、生き物の身体に何らかの影響を及ぼすものは『生物活性物質』と呼ばれます。対照的に身体の内部にあり、なおかつ身体にプラスとなるような(たとえばビタミン・ホルモン・サイトカインなど)物質は『生理活性物質』と呼ばれます。生物のテストに出そうで出ないので覚える必要は、いやせっかくなので覚えときましょう
ここまでの解説を見ると『毒と薬は表裏一体である』ということがよくわかるでしょう
・外からやってくる"いいヤツ"
→ 薬
・外からやってくる"やなヤツ"
→ 毒
生物側の都合によって、その物質が毒か薬かが決まるのです。たとえば抗生物質はわたしたちにとって『薬』ですが、体内にいる細菌にとっては猛烈な『毒』になりますね
じゃあ"水"はどうでしょう? わたしたちにとってこれは薬に見えますね……が、実はこれも毒になりえます
『水中毒』と呼ばれる水の過剰摂取は、血液中のナトリウム濃度を急激に低下させ低ナトリウム血症を引き起こします。参考著書では1日5リットルの水を飲んだことによる死亡例が紹介されていました
これはつまり、絶対的に必ず毒であるとか、必ず薬であるという物質は世の中にないということを表しています。アナタが「これは薬だ」と思えるようなソレだって、実は使い方によっちゃ超強烈な毒となるのです
お医者さんが処方するおクスリだって、量を間違えば立派な毒となる。これはアナタもオーバードーズ的な言葉でご存知ですよね? 医薬品はよく効くからこそ容易に毒足り得る。だからこそ専門的な勉強や資格を得た医師たちや薬剤師だけが扱えるのです
さて、ここからが本題。毒と薬が表裏一体ってのはよくわかったけど、じゃあどのくらいの量から『毒』になるの? ――今回はそんなお話をしていきましょう
:毒をもつ生物・毒を利用する人間:
大昔から、ヒトに限らずあらゆる生物が『毒』と向き合わねばならぬ宿命にありました
自然界は壮大な生存戦略の坩堝です。自分にとってキケンな輩を避け、時には戦い、時には効率よくエモノをゲッチュするために切磋琢磨してきました
そのなかで外敵から身を守るため、もしくはエモノを確実に仕留めるため自らの身体に『毒』を仕込むようになった生き物さえ存在します。みんな大好きクモさんヘビさんアリさん、そのほか多くの動物が毒持ち動物として名を馳せていますね
わたしたち人間は毒をもちません……が、わたしたちは高度な学習能力によって毒を利用することができます
大自然のなかで暮らしてた人類にとって、毒をもつ動物に襲われるなんて日常茶飯事だったでしょう。そのなかで「アイツに噛まれるとなんかヤバい」ってのを経験として知っており、ある時、噛まれるとヤバい原因たる物質の存在に気づき「あれ……これ逆に利用できね?」という考えに至り、自らの武器に塗りつけて大型の動物を狩る際に活用する、なんてことも可能です
現に、旧来の生活を維持する民族のなかには槍先に毒を仕込んで狩りを行うモノも存在します。その他毒矢、毒薬など人類は歴史上多くの毒を開発してきました
中世ヨーロッパなんてほんとすげぇよ? あっちこっちで(当時では)証拠を残さないヒ素がもっぱら大活躍してて、その対策として銀食器が使われたりしてたね
暗殺者「ヒ素は水に解けるし無味無臭だし使いやすいんじゃぁ~」
って言ってたかどうか知らんけど、まあそういう歴史があったんです。毒は人類の歴史と密接に繋がってたりするので、気になる方はぜひ探究心を伸ばしてみてください。創作の一助になること間違いなしだと思うよ
さて、世の中には毒ってものがあり、生存戦略として活用できるのはわかった。が、人間にとってやはり毒は害あるもの。どうにかして毒を克服できる方法はないかなーって考えてったワケです
じゃあそういう方々はいったいどんな方法で毒を研究してきたのでしょう?
:毒の強さが知りたくて:
おお昔、中国に『神農』という方がいました
西暦何年とか、少なくとも夏王朝以前の人物です。彼は一般民衆に農耕や医療などを伝え、農学と医学の神さまとまで言われています
彼はそのヘンに生えてる草っぱを自らの身体を使って試し、身体にイイものかワルいものかをどんどん開拓していきました
これはまさに『毒に関する研究』といえるでしょう。その物質、というより植物やらなにやらがヒトの身体にどんな影響を与え、どうすれば有益になるのかを自らのボディをもって確かめたのです
蛇足ですが今現在『薬屋のひとりごと』って作品やってますよね。わたしは見てないのでよくわからないのですが、題名や作品に描かれた時代、主人公の境遇などを見ると、おそらく神農のようなあれこれをやっている場面があるのだろうと思います。なろう系統の作品なのであれば、たとえば他のみんなが知らぬ正体不明の毒の存在に主人公だけが気づき、脇役というかヴィラン役のキャラは主人公を嫉妬したり「なに言ってるんだコイツは」的な目で見たり、しかし関連キャラとかイケメンはその主人公の行動の真意に気づいたりやさしい声をかけたり……たぶんそんな場面があるんだろうなぁと思います
まあ、何も見てないわたしが語ることじゃないので閑話休題しましょう
えー、このように、わたしたちの身体にとって毒か薬か? ってのは実際に確かめればわかることです。が、現代社会で「うーんこの毒(テトロドトキシン)どのくらいの強さなのかわからないなぁ……よし、人間でためそう!」ってやるワケにはいかないじゃん? ――ってことで、わたしたちの代わりに生贄になってくれるありがたい哺乳類がいるのですよ
ハハッ
:はんぶんがイッちゃう量:
人間で試すわけにもいかない。けどなるだけ正確なデータがほしい。ってことで、毒の試験には一般的に『マウス or ラット』が使われています
デカいネズミがラット、ちっこいネズミがマウスね
一般的に"この量だけ与えるとイッてしまわれるよ"という量は『致死量』と呼ばれます。が、毒の研究でよく使われる基準は『半数致死量』と呼ばれるものです
10匹のマウスにとある毒物を与え、その量を増やしていくとはじめは1匹だけだった犠牲者が徐々に2、3と増えていき、最終的に10の半数である『5』匹が旅立った。その量を、その毒の半数致死量と呼びます
ツキヨタケの毒(イルジンS)の半数致死量は、マウスの体重1kgあたり30mg。半数致死量は"LD値"と表示されるので以下のように表記されます
・LD = Lethal Does(致命的な行為)
・LD50 = 30mg/kg
ここで得られた結果から、単純計算でヒトの半数致死量も求められます。体重60kgなら上記を60倍して1800mg、つまり体重60kgの人間は、ツキヨタケの毒1800mgを摂取すると半数がオサラバする、という予測が立てられますね
しかしここでひとつ問題があります。あ、もちろん実際にヒトで試さにゃ正確な量わからんべっていうツッコミもあるでしょうけど、それより重要なのは『ドコにどんな感じで毒が侵入したか?』です
飲み込んだ? 噛まれた? 血液の流れに乗った? ――そういった要素も求めなきゃならぬのが毒研究なのです
:どこに投与するか、それが問題だ:
人間は毒矢でエモノを仕留めていました。この話を知った時、アナタはこんな疑問を持たなかったでしょうか?
「毒でヤッた獲物を食べてもいいの? 毒食っちゃわない?」
毒にはいろいろなタイプがあり、それぞれ効果を発揮する場所や度合いが異なります。もちろん、経口摂取でパワーを発揮する毒もありますが、食ってもとくに影響ない毒もちゃんとあるんです
まあ、完全に無毒かと聞かれたら困るけど……まあ、人間の胃袋は超強烈な酸性の海だからヘーキヘーキ(目そらし
とはいえ、その毒がどこにどう効くか知っとかないと対策しようがないよね? ってことで上記半数致死量を調べるときは『ドコに投与したか?』まで記す必要があります。
投与の方法は以下の場所が代表的です
・皮下投与
皮膚だけを突き抜くように注射する
・経口投与
専用の道具で胃袋まで挿入し投与する
・静脈投与
マウスの場合、しっぽの静脈に注射する
・腹腔内投与
注射針をお腹の奥まで
臓器を傷つけないように刺して注射する
上記ツキヨタケの毒(イルジンS)に再登場していただき、より正確な結果を書くとこうなります
・30mg/kg(ラット/静脈)
ラットに静脈投与で1kgあたり30mg。そうすると投与されたラットの半数がお亡くなりになる、ということが予想されます
この実験で得られた結果は、あくまで毒性の強さを比較するための目安です。より少ない量で大量のマウスをヤれるということは、それつまり強い毒だよね? っていう予測ができるだけで、その毒の正確で確実な毒性を調べるにはまだ不足しているものがありますよね
今は動物愛護の立場から、犠牲となる動物の数を減らすためおおよそのLD50値を求めるようになっているようです。誤解してほしくないのが『半数致死量以下だから安全、だということではない』ってこと
たった1mgでもイくときはイきます。逆に50mgだろうが生きてる場合もあります。これはあくまで半数致死量であり、毒がどうなって生きるか死ぬかは神様のみぞ知る話
半数致死量の検査は投与後10分とか1時間、4時間後の反応を見るための実験です。つまり投与してすぐの毒性(急性毒性)を知る指標だということですね。なので長期的に効果を発揮する慢性毒には適用できないことも知っておきましょう
大事なことなので何度でも書くと『毒と薬は表裏一体』です。水であってもある量を超えれば『毒』になります。逆に言えば、用法用量を守りさえすれば、その物質はこれ以上ない『薬』となるのです
わたしたちの周りにはいろいろな毒があります。物質的な毒、ストレス的な毒、その他様々な毒は、もしかしたら解釈を変えると立派な『薬』になるかもしれません
ちょっと身の回りの『毒と思っているもの』を再確認してみましょう。今後ここで紹介していくアレコレが、もしかしたらそれらを変えるための力になれるかもしれません。アナタが知りたいあれこれ、アドバイス、感想などがあれば遠慮なくコメントしていってください。リクエストなどにもできる限り応えていきたいと思っています
最後に、今回の話に関わるお役立ちそうな情報源をシェアリングしておきます。アナタの心身の健康に幸あれ!
環境省、国立環境研究所:より踏み込んだ情報
ttps://www.nies.go.jp/kanko/news/29/29-1/29-1-03.html
身体の外からやってくる『外来製物質』は、わたしたちの身体にいろいろな効果をもたらします。その中で、わたしたちにとって都合の悪い、たとえば消化器官の膜に穴を空けたり、血液を固めたり、脳神経をぶっ壊しまわったり――ありとあらゆる不都合を生み出す輩はすべて『毒』になります
腹痛や下痢などの症状で教えてくれるものもあれば、まったく無自覚に身体を蝕んでくるような物質もある。だからこそ、人間は昔から毒をもつ生き物を恐れ、また暗殺用の道具として利用してきたのです
毒を治すため、わたしたちは『薬』を使いますね。じゃあ薬ってなんでしょう?
薬は『自分にとって都合の良い働きをする物質』です
外来製物質のなかでも、生き物の身体に何らかの影響を及ぼすものは『生物活性物質』と呼ばれます。対照的に身体の内部にあり、なおかつ身体にプラスとなるような(たとえばビタミン・ホルモン・サイトカインなど)物質は『生理活性物質』と呼ばれます。生物のテストに出そうで出ないので覚える必要は、いやせっかくなので覚えときましょう
ここまでの解説を見ると『毒と薬は表裏一体である』ということがよくわかるでしょう
・外からやってくる"いいヤツ"
→ 薬
・外からやってくる"やなヤツ"
→ 毒
生物側の都合によって、その物質が毒か薬かが決まるのです。たとえば抗生物質はわたしたちにとって『薬』ですが、体内にいる細菌にとっては猛烈な『毒』になりますね
じゃあ"水"はどうでしょう? わたしたちにとってこれは薬に見えますね……が、実はこれも毒になりえます
『水中毒』と呼ばれる水の過剰摂取は、血液中のナトリウム濃度を急激に低下させ低ナトリウム血症を引き起こします。参考著書では1日5リットルの水を飲んだことによる死亡例が紹介されていました
これはつまり、絶対的に必ず毒であるとか、必ず薬であるという物質は世の中にないということを表しています。アナタが「これは薬だ」と思えるようなソレだって、実は使い方によっちゃ超強烈な毒となるのです
お医者さんが処方するおクスリだって、量を間違えば立派な毒となる。これはアナタもオーバードーズ的な言葉でご存知ですよね? 医薬品はよく効くからこそ容易に毒足り得る。だからこそ専門的な勉強や資格を得た医師たちや薬剤師だけが扱えるのです
さて、ここからが本題。毒と薬が表裏一体ってのはよくわかったけど、じゃあどのくらいの量から『毒』になるの? ――今回はそんなお話をしていきましょう
:毒をもつ生物・毒を利用する人間:
大昔から、ヒトに限らずあらゆる生物が『毒』と向き合わねばならぬ宿命にありました
自然界は壮大な生存戦略の坩堝です。自分にとってキケンな輩を避け、時には戦い、時には効率よくエモノをゲッチュするために切磋琢磨してきました
そのなかで外敵から身を守るため、もしくはエモノを確実に仕留めるため自らの身体に『毒』を仕込むようになった生き物さえ存在します。みんな大好きクモさんヘビさんアリさん、そのほか多くの動物が毒持ち動物として名を馳せていますね
わたしたち人間は毒をもちません……が、わたしたちは高度な学習能力によって毒を利用することができます
大自然のなかで暮らしてた人類にとって、毒をもつ動物に襲われるなんて日常茶飯事だったでしょう。そのなかで「アイツに噛まれるとなんかヤバい」ってのを経験として知っており、ある時、噛まれるとヤバい原因たる物質の存在に気づき「あれ……これ逆に利用できね?」という考えに至り、自らの武器に塗りつけて大型の動物を狩る際に活用する、なんてことも可能です
現に、旧来の生活を維持する民族のなかには槍先に毒を仕込んで狩りを行うモノも存在します。その他毒矢、毒薬など人類は歴史上多くの毒を開発してきました
中世ヨーロッパなんてほんとすげぇよ? あっちこっちで(当時では)証拠を残さないヒ素がもっぱら大活躍してて、その対策として銀食器が使われたりしてたね
暗殺者「ヒ素は水に解けるし無味無臭だし使いやすいんじゃぁ~」
って言ってたかどうか知らんけど、まあそういう歴史があったんです。毒は人類の歴史と密接に繋がってたりするので、気になる方はぜひ探究心を伸ばしてみてください。創作の一助になること間違いなしだと思うよ
さて、世の中には毒ってものがあり、生存戦略として活用できるのはわかった。が、人間にとってやはり毒は害あるもの。どうにかして毒を克服できる方法はないかなーって考えてったワケです
じゃあそういう方々はいったいどんな方法で毒を研究してきたのでしょう?
:毒の強さが知りたくて:
おお昔、中国に『神農』という方がいました
西暦何年とか、少なくとも夏王朝以前の人物です。彼は一般民衆に農耕や医療などを伝え、農学と医学の神さまとまで言われています
彼はそのヘンに生えてる草っぱを自らの身体を使って試し、身体にイイものかワルいものかをどんどん開拓していきました
これはまさに『毒に関する研究』といえるでしょう。その物質、というより植物やらなにやらがヒトの身体にどんな影響を与え、どうすれば有益になるのかを自らのボディをもって確かめたのです
蛇足ですが今現在『薬屋のひとりごと』って作品やってますよね。わたしは見てないのでよくわからないのですが、題名や作品に描かれた時代、主人公の境遇などを見ると、おそらく神農のようなあれこれをやっている場面があるのだろうと思います。なろう系統の作品なのであれば、たとえば他のみんなが知らぬ正体不明の毒の存在に主人公だけが気づき、脇役というかヴィラン役のキャラは主人公を嫉妬したり「なに言ってるんだコイツは」的な目で見たり、しかし関連キャラとかイケメンはその主人公の行動の真意に気づいたりやさしい声をかけたり……たぶんそんな場面があるんだろうなぁと思います
まあ、何も見てないわたしが語ることじゃないので閑話休題しましょう
えー、このように、わたしたちの身体にとって毒か薬か? ってのは実際に確かめればわかることです。が、現代社会で「うーんこの毒(テトロドトキシン)どのくらいの強さなのかわからないなぁ……よし、人間でためそう!」ってやるワケにはいかないじゃん? ――ってことで、わたしたちの代わりに生贄になってくれるありがたい哺乳類がいるのですよ
ハハッ
:はんぶんがイッちゃう量:
人間で試すわけにもいかない。けどなるだけ正確なデータがほしい。ってことで、毒の試験には一般的に『マウス or ラット』が使われています
デカいネズミがラット、ちっこいネズミがマウスね
一般的に"この量だけ与えるとイッてしまわれるよ"という量は『致死量』と呼ばれます。が、毒の研究でよく使われる基準は『半数致死量』と呼ばれるものです
10匹のマウスにとある毒物を与え、その量を増やしていくとはじめは1匹だけだった犠牲者が徐々に2、3と増えていき、最終的に10の半数である『5』匹が旅立った。その量を、その毒の半数致死量と呼びます
ツキヨタケの毒(イルジンS)の半数致死量は、マウスの体重1kgあたり30mg。半数致死量は"LD値"と表示されるので以下のように表記されます
・LD = Lethal Does(致命的な行為)
・LD50 = 30mg/kg
ここで得られた結果から、単純計算でヒトの半数致死量も求められます。体重60kgなら上記を60倍して1800mg、つまり体重60kgの人間は、ツキヨタケの毒1800mgを摂取すると半数がオサラバする、という予測が立てられますね
しかしここでひとつ問題があります。あ、もちろん実際にヒトで試さにゃ正確な量わからんべっていうツッコミもあるでしょうけど、それより重要なのは『ドコにどんな感じで毒が侵入したか?』です
飲み込んだ? 噛まれた? 血液の流れに乗った? ――そういった要素も求めなきゃならぬのが毒研究なのです
:どこに投与するか、それが問題だ:
人間は毒矢でエモノを仕留めていました。この話を知った時、アナタはこんな疑問を持たなかったでしょうか?
「毒でヤッた獲物を食べてもいいの? 毒食っちゃわない?」
毒にはいろいろなタイプがあり、それぞれ効果を発揮する場所や度合いが異なります。もちろん、経口摂取でパワーを発揮する毒もありますが、食ってもとくに影響ない毒もちゃんとあるんです
まあ、完全に無毒かと聞かれたら困るけど……まあ、人間の胃袋は超強烈な酸性の海だからヘーキヘーキ(目そらし
とはいえ、その毒がどこにどう効くか知っとかないと対策しようがないよね? ってことで上記半数致死量を調べるときは『ドコに投与したか?』まで記す必要があります。
投与の方法は以下の場所が代表的です
・皮下投与
皮膚だけを突き抜くように注射する
・経口投与
専用の道具で胃袋まで挿入し投与する
・静脈投与
マウスの場合、しっぽの静脈に注射する
・腹腔内投与
注射針をお腹の奥まで
臓器を傷つけないように刺して注射する
上記ツキヨタケの毒(イルジンS)に再登場していただき、より正確な結果を書くとこうなります
・30mg/kg(ラット/静脈)
ラットに静脈投与で1kgあたり30mg。そうすると投与されたラットの半数がお亡くなりになる、ということが予想されます
この実験で得られた結果は、あくまで毒性の強さを比較するための目安です。より少ない量で大量のマウスをヤれるということは、それつまり強い毒だよね? っていう予測ができるだけで、その毒の正確で確実な毒性を調べるにはまだ不足しているものがありますよね
今は動物愛護の立場から、犠牲となる動物の数を減らすためおおよそのLD50値を求めるようになっているようです。誤解してほしくないのが『半数致死量以下だから安全、だということではない』ってこと
たった1mgでもイくときはイきます。逆に50mgだろうが生きてる場合もあります。これはあくまで半数致死量であり、毒がどうなって生きるか死ぬかは神様のみぞ知る話
半数致死量の検査は投与後10分とか1時間、4時間後の反応を見るための実験です。つまり投与してすぐの毒性(急性毒性)を知る指標だということですね。なので長期的に効果を発揮する慢性毒には適用できないことも知っておきましょう
大事なことなので何度でも書くと『毒と薬は表裏一体』です。水であってもある量を超えれば『毒』になります。逆に言えば、用法用量を守りさえすれば、その物質はこれ以上ない『薬』となるのです
わたしたちの周りにはいろいろな毒があります。物質的な毒、ストレス的な毒、その他様々な毒は、もしかしたら解釈を変えると立派な『薬』になるかもしれません
ちょっと身の回りの『毒と思っているもの』を再確認してみましょう。今後ここで紹介していくアレコレが、もしかしたらそれらを変えるための力になれるかもしれません。アナタが知りたいあれこれ、アドバイス、感想などがあれば遠慮なくコメントしていってください。リクエストなどにもできる限り応えていきたいと思っています
最後に、今回の話に関わるお役立ちそうな情報源をシェアリングしておきます。アナタの心身の健康に幸あれ!
環境省、国立環境研究所:より踏み込んだ情報
ttps://www.nies.go.jp/kanko/news/29/29-1/29-1-03.html