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作者: 犬物語
【ヨーロッパの歴史】どの時代も戦ってばっか【中編】
ジャガトマ警察なんて言ってる場合じゃねえ!!
 人類の歴史は戦争の歴史だとも言われます。その言葉の意味を深堀りしていくつもりはありませんが、この言葉はアナタ自身もミョーに納得できちゃうと思います

 動物の世界において争いが発生するのは、主に身内のキケンや食糧危機など"生命"に直結する問題。社会性をもつオオカミなどは、別のオオカミに自身の縄張りを侵されたとき、真実の意味で命をかけた戦いを繰り広げることになります

 人間も基本はそういうモノ・・・・・・でした。が、現代社会を見てもらえればわかるように、人はほかの動物にないさまざまな理由をもって争い、容赦なく、あるいは気軽に他者の命を奪っていきますね

 現状じゃこんな感じの人間ですが、それは果たして中世ヨーロッパの世界でも同じことだったのでしょうか? ひとことで『中世』言うてもヨーロッパの歴史では500~1500年までを中世と呼ぶのでながーい歴史があるのです。今回は中編と称して1000年ちょっとあたりからのお話をしていきましょう

 ※ 前編を読んでないって方は前編 【ヨーロッパの歴史】べつにジャガイモもトマトも出していいじゃん?【前編】 を読んでください




:やっぱ人類の歴史は戦争の歴史だったわ:

 前回のおさらい。中世ヨーロッパのはじまりは『ローマ帝国の崩壊』を機にはじまります。三国志の漢王朝崩壊と似たような感じね。東の遊牧民『フン族』の影響もあったり、皇帝の子孫たちに権力や運営能力が無かったとも言われます。詳しくは『東ローマ帝国 滅亡』あたりでググっていただければ幸い

 ローマ自体は『ビザンチン帝国(東ローマ帝国)』という名前で残り、西側も現在のフランスが勢力を拡大。んで切った張ったの戦国時代。ついでにローマの国教キリスト教がブイブイ言わせた感じ。その他いろんなコトは前回書いた通りですが――中世中期に至るまでに、まーた新しい宗教が生まれてきたのですわよ

ムハンマド「やあ」

 はい、イスラム教です。それまでゾロアスター教などマイナー宗教があって、キリスト教は「あ?」的な態度でその広がりを防いできたのですが、東ローマの東側、今でいうサウジアラビア的な中東地域に誕生したムハンマド氏と、彼の死後誕生したイスラム教は7世紀以降中東を中心に広がりを見せ、ビザンチン帝国の領土を一部損失させるレベルの損害を与えます。イスラム教がどのような教義をもってるのかわかりませんが、その後のイスラム教圏の勢力はローマを脅かしていき『イスラム VS キリスト』的なバトルも勃発。以降はイスラム教圏もブイブイ言わせてくるようになります

 戦争してない年代ないんじゃね? と思われるドッタンバッタン大騒ぎの時代ですが、この頃はどんなイベントがあったのでしょう?



:人口増加と温暖気候とルネッサーンス:

 中世初期は西ローマ帝国が崩壊して群雄割拠というか蛮族がいろいろ侵攻してきた影響もありあっちこっちが乱世乱世でしたが、それもある程度落ち着いてきたところで「ギリシヤや古代ローマのような文化を復活させようぜ!」という文化的な復興(ルネサンス)を目指す運動が始まりました。その結果、11世紀には高等教育を目指した『大学』が誕生しました。みんなだいすきオックスフォード、ケンブリッジなどもこの時期に誕生しています

 この時期のルネサンスは『カロリング・ルネサンス』と呼ばれます。西ローマ帝国時代の文学、芸術、建築、音楽などから知的復興を図られ、多くの分野での研究が盛んになりました。おそらく『中世ヨーロッパ風』作品が違和感なく描けるのはこの時代かと思われます

 この時代は『ロマネスク様式』と呼ばれる建築物が流行していき、さらに『ゴシック建築』と呼ばれる形へ発展していきます。ロマネスク様式はアーチ状のつくりが特徴的で、世にある『中世ヨーロッパ風』の建築物がそのまんまコレに見えます。初期に流行した『ビザンチン様式』を踏襲しつつより巨大になり、厚い壁に丸みを帯びた外見、頑丈な柱、天井は樽を転がしたような半円形をしており、規則的で対照的な部屋割りとなっております

 ゴシック様式は中世中期から後期にかけ隆盛。ロマネスク様式に豪華さをプラスした印象で、このふたつの建築様式で多くの城、とくに修道院が建てられました。このヘンは上記キーワードでググっていただくか、個人的な感想では『キングダムカム・デリバランス』というゲームの修道院がわかりやすいと思います。やっぱ現地人が開発したゲームだから再現度高いんだわ

 上記のような大学の誕生、建築様式の進化、都市化による人口増加、師弟制度にギルドの発端、各種技術の進化、教会の修道院などは聖書を複製(教徒による手作業)して保存したり、当時は羊皮紙が主流でしたが本格的に『紙』が導入されはじめた時期でもあります。なお、純粋に文字だけを書き写すのではなくそれはもうルネッサンス的な感じ? で優美な絵柄を装飾したりなんだったりして写本します。ってことで、この時期の写本はいい感じに豪華だったりします

 この時代は人口増加によって開拓も進みました。ヨーロッパのほぼ全域を木こりたちがせっせと開墾していき、つい最近までやってた『葬送のフリーレン』の景色のように年を追う事にあれよあれよという感じで町が発展していく。当時から農業が盛んだったため、たとえば畑を耕すための道具などは多く開発されより効果的に作物を世話できる環境になっていきました



:修道院ってすげーんだよ:

 前回紹介したように、修道院は地域のコミュニティセンターのような役割も担っています。修道院にいる信徒は基本自給自足かつ排他的な生活をしていて、礼拝に聖書の模写にいろんな研究にとつつましやかな毎日を送っていましたが、そのほか日本でいう寺子屋的な学習の場でもありました。また、身体が弱かったり貧しい人や老人たちのための施し的な活動(Corrody)も行っており、場合によっては金銭や労働を対価に幅広く施しをしていたようです

 修道院には病院的な施設もありました。簡易的なベッドくらいなものですが、休息や食事を必要とする旅人などにも提供しいたようです。当時の修道院は国の保護があったため、たとえば国王や貴族たちが宿泊する場所としても使われていたのでそれなり・・・・の設備はあったと思われます。まあ、質素ではあるけどね

 地域のコミュニティセンターだけあって、たとえば木こりたちの製材所や製粉所など幅広く触手を伸ばしており、王権のもとで開拓してその地域をそのまま管理でき、収入も豊富なのでうらがね、じゃなくて一般市民のための農具やらなにやらを提供できたのでまさに地域のコミュニティセンターとしての役割を担ってるよね

 裏金が無いとは言ってない。これはぜひ『キングダムカム・デリバランス』をプレイしていただければ幸い

 実はアルコール製品も修道院が作っていました。敬虔な立場にいるはずがなぜ酒を? とお思いでしょうが、当時はコレラやペストなどがタヒに直結する重大な病気で、そういった病気にかからぬようアルコールを呑むよう勧めていたのです。なので現在でも醸造所をもつ修道院的な施設はありますし、実際に販売もされています。中世ヨーロッパ風の作品を書きたいアナタ、ぜひアナタならではの修道院を描いてみて下さい



:あったか~い時代と封建制:

 10世紀以降、ヨーロッパでは暖かく穏やかな器官が続きました。一方でユーラシア大陸方面は寒冷化に襲われ、飢餓などが一因となり中東方面で『セルジューク帝国』が定立。イスラム教圏の国として中東一帯プラスαを支配しました。その余波で多くの住民がヨーロッパに流入し、ある研究では「1000年から1347年の間に、推定人口は3,500万人から8,000万人に増加した」とされています。増えすぎだと思うけど、まあこの時期は『中世温暖期(MWP)』と呼ばれるほどの温暖期が続いたから

 この時代は封建制が誕生した時期です。封建制ってなんだべ? って話をしましょう

 それまでは王と地方貴族の権力差がそこまでありませんでしたっていうか各所で好き勝手やってました。ローマが崩壊して以降自力でどうにかせなアカン状態が続いたからしかたないね。王様がお触れを出しても必ずしも従うとは限りませんでしたし、各地域の貴族はそれぞれの場所で独自に活動していたのです。ってことで、情勢が安定してきた時代、というかそうでなくても統一して政治的活動をするしくみを求めていた背景があります

 ってことで、各地の領主たちは「この土地あげるから、その代わりにウチらの仲間というか部下になってくんない?」的な契約を結ぶことがありました。これが封建制の走りになります。似たような制度はアジアや日本でもありましたが、ヨーロッパでは主従契約的なニュアンスが強いんですね

 ヨーロッパにおける封建制のパイオニアはイングランドの征服王『ウィリアム1世(ギョーム)』とされます。彼は反抗する輩をことごとくぶっとばし領地を奪い、それを自分に協力してくれた身内や仲間に割り当てました。これは『テナント・イン・チーフ』的な形、つまりビルに書かれてるテナント募集的なアレです

 地方領主はその地域に住むことはできましたがあくまで借地あり所有者ではありません。それ以前はそれぞれの土地はそれぞれの領主のモノだったんだけど、この手法により王様、つまりピラミッドの頂上に絶大な権力が残されることとなりました



:階級のあれこれ:

 領地を与えられた領主たちはそこを開拓し庭園をつくったり作物をそだてたり、自分自身や家族を養いつつ、自身と契約したナイトも養う必要があります。ってことで地方領主もプチ封建制的なことをして、庶民はその土地で作物や家畜の世話をする仕事にありついたわけです。この時代に爵位をもつ人は、すなわちどっかの誰かから土地を与えられており、そのまま階級の印となっているわけです。さらに、国境付近に領地をもつ方は防衛前線の領主でもあるためバリバリ戦闘系である可能性が高いです

 なお、爵位の高さは以下のとおり。上ほど階級も高いよ!

・公爵( Duke )
  公爵領[duchies]として知られるレベル
  ってか"〇〇公国"は公爵の領地が元
・侯爵( Marquess )
・伯爵( Earl )
  けっこう大きな土地を所有できるレベル
・子爵( Viscount )
・男爵( Baron )
  小さな土地区画を与えられるレベル

 日本の大名システムだよ。現代日本で例えるなら『日本』という土地を都道府県に分けて、それぞれの領地を知事に治めさせる的なイメージ。ヨーロッパ封建制の場合各地方領主の下に『ナイト( Knight )』がいて、地方貴族がその下かだいたい同じくらいの地位にあったとされます。あとよく聞くのが『ロード( Load )』という称号だね。これはイギリス貴族の称号で、習慣的な意味で受ける場合があります。これの女性版がおなじみの『レディ( Lady )』なの

 ちなみに、ナイトに関する税金制度もあって、国によってはナイトが国に収めるシステムや、地方領主が国へナイトを派遣する代わりにお金を収めるシステムなどもありました(Scutage)。戦いの際はそのお金を使いナイトの代わりに傭兵を雇ったりしたわけです。騎士はどのように行動すべきか? という概念は『騎士道(Chivalry)』としてフランスで誕生し、ヨーロッパに広がっていきました。現在の騎士感はこのイメージで形成されているのでしょう

 異世界ファンタジー系でよく登場するナイトですが、実際の中世ヨーロッパでナイトになるのは簡単なことではなく、裕福な家に奉公して訓練され、技量体力に優れた者たちが選別され14,15歳ごろにウマや馬具、武具などの世話をし、時として領主の戦いに同行することもありました





:戦争の技術:

 なんか平和になってる感があるけどこの時代もしっかり戦争してます。内乱があったり異民族の侵略があったりと様々ですが、それらをどうにかせんとってことで、文明進化の波は戦争の道具にも及びました

 この時代は大砲の採用があったことで戦術の幅もひろがり、さらに人口増加と農業発展もあり水車や風車の進化でエネルギー生産力もアップ。造船技術もマストを増やしたり舵が取り付けられたりして格段にアップ。大航海時代は中世の終盤ですが、この頃から伏線らしき進化は見られました。戦場では革を硬く加工したモノからパットをしきつめたジャケットからチェーンメイルが採用されるようになり、金持ち限定ですが頭部から腰下まですべて金属で覆えるようになります

 馬具の発達もこの時代です。ウマに指示を送るための"拍車"、以前まであった"鞍"ですが、より安定したアーチ状になったおかげで騎乗騎士は脇の下に槍を抱えたり、全力疾走することも可能となりました。これにより今まで優勢だった騎兵隊の重要性はさらにましていくことになります。槍をこちらに向けたウマが全力で向かってくる姿想像してみ? ちびるで?

 大砲の台頭はわりとバランスブレイカーかもしれません。なんたってドデカい金玉が城壁ぶっこわしてくるんだからこえーよな。台車つきのコンパクトサイズもあるからあっちこっちで運用でき、さらに従来の投石機も大型で大砲に劣らぬ破壊力を生み出すので城での攻防がより激しさを増したことでしょう
 
 宗教関係でも軍事力がモノを言わせる時代です。この時期にはあの『十字軍』が結成され、教皇権威のもと各所のイスラム教圏を侵略していきます。いちおう巡礼の旅名義らしいが実質アレよねっていう印象なので、この宗教戦争の様子の詳細は各自ググっていただければ幸い。ぜんぶ書くと文字数がアレなのでっていうか現時点で文字数がアレだからパス。もう締めに入っちゃうよ



 1000年代から中世の全盛期にはいり、わたしたちが思う『中世ヨーロッパ』のイメージが形成される時代となりました。いま現在日本で流行する『中世ヨーロッパ』の世界観も、この年代を舞台にすれば違和感なく再現できると思います

 なおジャガイモとトマトとトイレはない模様

 ほかにも地味に糸車、磁気で測るコンパス、メガネなども開発されており、音楽方面では現在の楽譜の原型である『ネウマ譜』が広がっていったりいろいろ豊かになっております。ってか今まで口伝で歌ってたのかよしっかり楽譜書けよと。とりあえず「だれでも唄えるようになんか楽譜つくって」とリクエストした当時の教会に感謝だわ

 ちなみに、音楽はまだみんな同じ音を奏でる『ポリフォニー』が主流で、みんな別パートを歌うような『ハーモニー』的な楽曲はほぼありません。これからさらに文明開化していく中世ヨーロッパ、きっとこの先もずっと続くんだろうなぁ(遠い目

 まだまだ紹介できないとこばかりですので、興味をもったアナタはこれを機にいろいろ調べてみてはいかがでしょう? それらをインスピレーションを高め、アナタならではの中世ヨーロッパ象を生み出してくれるかも知れません

 アナタの想像力と、これから生み出される多くの異世界ファンタジーに乾杯!
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