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作者: 犬物語
【宇宙】この世界を満たす"波"を観測する【重力】
宇宙の姿を知ることは

人類を救うことにつながる
 宇宙マイクロ波背景放射をご存知ですか?

 この宇宙は今からだいたい138億年前に誕生したとされます。その当時はすべての物質がギュウ詰め状態になっており、光さえ自由に動き回れないような世界でした

 しかし、宇宙が膨張したり冷えたりなんだったりした結果、光が「ヒャッホゥ!」言うて自由に動き回れるようになり、その当時の光が未だ宇宙全体に放射されている。これが宇宙マイクロ波背景放射です

 宇宙についてちょっと興味ある方なら知ってますよね。わたしも別のWeb小説投稿サイトで書いてる『つれづれグサッ』で取り上げたりしているので興味ある方は読んでいただくか、もしくはアナタ自身の手でググってみてください

 今回取り上げるのはコレじゃないのよ。じゃあなんでこんな話すんのかっつーと、実は宇宙マイクロ波背景放射の重力版があって、その存在が最新研究により明らかになったんじゃないか? 的な話題があるんですよね。ってことで、今回は上記の宇宙版『宇宙重力波背景放射』を取り上げてみましょう





:そもそも重力ってなによ?:

 とりあえず基本をおさらいしときましょう……と言いたいところですが、実は『重力ってなに?』ってのは研究者でもよくわかってないんですよね

 いや、べつに『すべての物質の間に働く引き合う力のこと』とシンプルに書くことはできるんです。あとアインシュタインが言ったように『物質があることによって生じる時空のゆがみ』と書くこともできます。けどなんでそんな力があるのか? どうやって力を伝えてるのか? みたいに突き詰めていくと、宇宙に存在する基本的な"力"であるにもかかわらずナゾが多かったりする。まあとりあえずなんでもかんでも引っ張り合う力のことだとイメージしといてください

 わたしたちは存在するだけで重力を生み出しています。なにせすべての質量ある存在が持っている力ですからね。極端な話、アナタと地球はそれぞれ重力によって・・・・・・ひっぱり・・・・あっている・・・・・のですが、地球があまりにもデカいので一方的に感じているのです

 わたしとアナタも引っ張り合っています。なにせ重力は無限に伝わりますから

 さっき書いたように、アインシュタインは重力を『時空の歪み』としました。で、今現在その理論に基づいた技術が開発され、実際その通りに振る舞っているのでもうこれ確定だろとなっています。わたしたちは存在するだけで周囲の時空(時間と空間)を歪ませているのですが、たとえばわたしたちがぴょんぴょんとその場で飛び跳ねればそのゆがみはぐわんぐわんと変化していきます

 なんとなくイメージできる? ――じゃなければ、アナタがプールに入ってると思ってください。アナタが動いてないとき水面も揺らめきません。しかしアナタが動くと水面も揺れ、そこに波紋が広がっていきますよね?

 アナタがプールの中を動き回ればその波紋はさらに激しく揺れ動く。この波こそが『重力波』と呼ばれるものです

 宇宙には重力という力があり、質量ある存在が動くと重力波が生まれる。ここまでは押さえられたでしょうか? ――じゃあ本題に入りましょう。今回とりあげる宇宙重力波背景放射とはなにか? それは読んで字のごとく『宇宙にある重力波の背景放射』です



:世界にひろがる宇宙創生時の重力波:

 電磁波と重力は無限に伝わるので、なにかにキャッチされなければそれらは宇宙全体に広がっていくことになります。これが"背景放射"です。光は宇宙誕生からだいたい38万年後、光が自由自在に動き回れるようになった瞬間の光が宇宙全体を満たしていますが、重力は超巨大ブラックホールが合体したものからインフレーション当時に生じたものなど、様々な起源をもつ重力波が混ざっているとされます

 これらのうち光は観測しやすいですが、重力はあまりにも弱い存在で観測が難しいのです

 重力以外の"力"はすべて重力の10の30乗倍以上の力をもっており、ひ弱な重力波を観測するには数キロにも及ぶ超巨大な施設をつくる必要があります。これに関しては『重力波 KAGRA』でググっていただければ幸い。さらに、宇宙に満たされるような重力波となると、その波長は光年単位で測定されるため「地球みたいな小さな星でそんな長い波長の波を観測できるか!」とツッコミたくなるようなレベル。2015年には突発的に生まれた"強い重力波"を観測することに成功しましたが、宇宙全体に広がるもっと弱い波長の重力波をどう観測するか。これが大きな課題でした

 しかし、2023年に「これ背景重力波を観測したのでは?」という研究結果が発表されたのです



:ブラックホールの連星:

 観測者が目をつけたのはパルサーと呼ばれる中性子星。すさまじい電磁場をもち超高速回転するこの星は、その磁極から凄まじい電磁波を放出します。いやいや重力波を観測するのになんで電磁波なんだよと思われガチですがちょっとまってください

 重力波は時空を歪みを生み出す波です。光は捻じ曲げられ地球到達のタイミングがほんの少しだけズレます。パルサーは超強力な電磁波を(宇宙レベルで)かなり正確なタイミングで打ち出しており、これを観測すれば誤差数ナノ秒という「それ誤差じゃなくてもう"同時"じゃね?」というレベルまで正確に測ることができます

 電磁波到達タイミングのズレを観測すれば、重力波観測の大きな手がかりとなるでしょう。実はこれを専門に扱う機関が存在し、北米重力波ナノヘルツ観測所、通称『NANOGrav』や『欧州パルサータイミングアレイ(EPTA)』が有名ですね。これら専門共同開発研究機関では、合計68個のパルサーを分析して精密な観測を試みました。ひとつだけ観測してもアレなので、ほかの観測結果と整合性をはかって事故やら別の原因やらの可能性を排除していくのです

 観測された重力波を分析する。この作業をひたすら研究した結果、2023年、2024年に相次いで背景重力波の存在を示唆する観測結果が発表されました。これにはふたつの超巨大ブラックホールが関わっているとされ、その大きさは太陽のの数十億倍と予測されています

 なにそれ宇宙やばい。上記研究機関がデータを共有することで、各所の分析により背景重力波の存在はほぼ確定的となっています。この発見がなぜ素晴らしいのでしょうか?



:38万年以前の宇宙の姿:

 宇宙マイクロ波背景放射は、宇宙誕生からだいたい38万年後の光です。光なので感想は容易ですが、その実宇宙誕生の瞬間の光は観測できず、できて38万年後の姿を捉えるのが精一杯でした

 それに対し、重力波は今回観測されたブラックホールのものから、インフレーション当時の宇宙創生時・・・・・の姿を捉える基調な情報源になりえます。現状、まだ存在が示唆されただけに過ぎませんが、もし宇宙重力波背景放射の存在が確定的となり、さらに具体的な観測までできるようになると、それはもうノーベル賞やら世紀の大発見やらの一大ニュースとなるでしょう

 背景重力波の課題はまだまだたくさんあります。光とことなり、背景重力波はあらゆる重力波が重なったもので、いうなればオーケストラの演奏のようなものです。そこから宇宙創生時の重力を観測するのは、オーケストラの演奏からひとつの楽器の音だけを切り取るようなもの。その難易度は想像をはるかに絶するでしょう

 しかし、科学の発展は1歩ずつ着実に進行しています。わたしが生きている間に背景重力波の存在が確定的になればいいなぁ……もしそうなったらインフレーション当時の宇宙の姿とか超弦理論の証拠が見つかりそうとか既存の理論がさらに進むこと間違いなしやろなぁ



 光と重力が無限に伝わるように、人の好奇心にもまた"果て"がないのでしょう。このお話を読んで「宇宙ヤバイ」と思ったアナタ、ぜひ学校の図書室でも図書館でも足を運んでいただき、宇宙関連の著書を手にとってみてください。近頃は民間企業も宇宙開発をしており、アナタがオトナになった未来には、だれもが簡単に宇宙旅行できちゃう時代が訪れているかもしれません

 あ、社会人でした? そしたらぜひとも宇宙飛行士に立候補してみましょう! 今は制限も(比較的)ゆるくなってるしアナタならいけるってほんと、ほら以下にJAXAの宇宙飛行士紹介しときますから

 ゆめはおっきくですよ? ――アナタの好奇心に幸あれ

:参照情報:

Arxiv(コーネル大学の論文掲載サイト)
ttps://doi.org/10.48550/arXiv.2306.16227

Berkeley News(カリフォルニア大学バークレー校のニュース、情報エンジン)
ttps://news.berkeley.edu/2023/06/28/after-15-years-pulsar-timing-yields-evidence-of-cosmic-gravitational-wave-background/

国立天文台、重力波プロジェクト推進室
 初期宇宙の背景重力波イメージ図
ttps://gwpo.nao.ac.jp/gallery/000019.html

JAXA、宇宙飛行士
ttps://humans-in-space.jaxa.jp/space-job/astronaut/
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