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作者: 杉山英零
【第四話】お買い物っ!
俺は、ヨルンデと一緒に買い物に行くこととした。
水曜日の午後1時。俺とヨルンデは、待ちに待った買い物へ行く。え、月曜と火曜に何があったって?そんなのは気にしないでくれ………………

「ほら、この服をちゃんと着るんやぞ。」

俺は、ヨルンデに注意した。勿論、ヨルンデは魔法界から来たから、我々の常識は一部通用しない。

「店の中では、きちんと普通の人間らしくいるんやぞ。」

「分かった。けどさ、人間らしくっていわれても、どうすればいいの?」

彼女は質問してきた。たしかに、人間らしくと言われても、具体的には想像できない。言い方が悪かったのかもしれない。

「う〜ん。まず、スーパーでは、あんまりはしゃがないこと。とりわけ日本人は、そういうのにうるさいからね。次に、目立つような行為をしないこと。行動で、『こいつは人間なのか?』的なことを思う人も少なからずいる。そして、後は…俺の言うことに従っとけば良いね。」

「わかった。いやあ、それにしても、人間界で外出するのは初めてだから、すごいワクワクするなぁ。」

「そうだな。準備は良いか?」

「うん。ちゃんと服は着た。財布も鞄の中に入っている。そして、帽子もニンゲンカイにおける普通のやつをかぶっている。」

「よし。ほな、行こうか。」

俺らは、笹部駅へ向かった。言われてみれば、ヨルンデが電車に乗るのも初めてだろう。

「ヨルンデ、今から電車に乗る。きちんと並んで待つんだぞ。それに、降りる人を優先するんだ。我先に行かない。」

日本における電車の乗り方についても説明した。魔法界にも電車的なやつは存在するのだろうか。

「そうなんだね。分かった。魔法界にも列車は存在するけど、ちょっとマナーが悪い。私は、秘密裏にニンゲンカイの鉄道について調べていたけど、それはアメリカでの乗り方だった気がする。」

ふうん、魔法界にも電車はあるのね。

 そうして、俺らは改札を通り、駅に入る。月曜の昼であることもあってか、待っている客の数はかなり少ない。だから、並んで待つ必要はないだろうね。

「魔法界の駅もこんな感じなのか?」

俺は尋ねた。

「いいや、違うわ。もう少しホームは低くて、乗車するときは結構大変なのよ。」

ちょっと古めかしいのかもな。

 そうして、俺らはやって来た電車に乗る。昨日の帰りに乗った電車と同じかもしれぬ。乗客はまばらで、かなり空席が目立つ。

「次は〜光風台〜こおふうだい〜」

かなり癖がすごい車掌さんだ。ワンマン運転かもしれないけど。

「うわあ、ニンゲンカイって」

彼女はこう言った。俺は、彼女の口をふさぐ。そうして、小声で伝える。

「よく考えてみてくれ。人間界がどーたらこーたらと言ったら、君が異世界から来たことがバレるというか、察せられてまうよ。」

「あ、そうか。ごめんなさい」

彼女は小声で、少し恥ずかしそうに謝った。こういう、ところ、が、俺は、す、き、な、ん、だ、、、、よ、、、、な、、、、、。

 程なくして、電車は次の駅、そして降車駅の光風台に到着した。降りて、階段を登る。そして、改札を出る。

「ヨルンデ、どうやった。人間界の電車も悪くはないだろう。」

「うん、そうだね。席も気持ちよかったし。けど、結構うるさかったというか、走行音が大きいというか。」

「ほおほお。人間界より技術が栄えているのかな」

「そうだね。ニンゲンカイも魔法界も栄えているけど、魔法界の方が素晴らしいかな。ニンゲンカイも良いけど。」

俺らは、駅前にあったスーパーへ入る。これが、俺がよく行くスーパーだ。

「俺は、普段は電車に乗ってスーパーへ行き、電車に乗って家へ帰る。けど、暇なときや体力が有り余っているときは、行きは徒歩で、帰りは電車で行っているんだ。」

俺は、ヨルンデに語る。あの定番の曲が聞こえる。

「で、今日な何を買うの?」

「ええと、米、キャベツ、白菜、牛肉、豚肉、鶏肉などなど。それはまあ後で。」

俺は、カゴを取った。ヨルンデにとっては初めての人間界での買い物の始まりだ。

「コメ?キャベツ?ハクサイ?何それ。」

「米もキャベツも白菜も、人間界の野菜だよ。魔法界にはないの?」

小声で話しかける。

「うん、ないのよ。魔法界には、肉を食べる文化はあるけど、野菜を食べる文化はないの。一部の野菜自体は存在しているけど、それも他の動物を飼育するために用いられているの。」

ほおほお。じゃあ、なんで彼女は、こん、なに、スタイ…スタイルのい、い、か、ら、だ、を保てて、い、る、ん、だ?

「米はこれだ。とても美味しいぞ。ちなみに、昨日のカレーでしれっと食べてる。」

「ああ、あれか。あれをコメと言うのね。理解したわ。それにしても、人間界の食べ物って旨いわね。」

「ああ、そーだろ。人間界は食べ物が豊富なんや。」

「魔法界は、毎日決まったものしか食べないから、なんか、あれなんだよね。」

アレとはなんだ…?まあいいだろう。

 そうして俺らは、買いたいものをすべてカゴに入れて、レジへ向かう。

「あら、けいすけちゃん。この娘はだあれ?」

俺がよく話すここの店員さん、李木おばはんが話しかけてきた。

「え、あ、ああ。この娘は俺の彼女です。」

「まあ、彼女!?すごいね。あなた、名前なんて言うの。」

「あ、あ、私は…井川恵子と言います。」

ヨルンデは、偽名で李木おばはんに話しかけた。

「恵子というのね。よろしくね。」

「は、はい。よろしくです。」

おっと、か、わ、い、、、、、、、い。

「ほな、また来週来るね!また逢いましょう!」

俺は、李木おばはんにさよならと言って、店を出た。

「ふぅー。危なかったな。」

「そうだね。バレるかと思ったわ。」

そうして、光風台駅へ向かい、電車に乗る。今日は、彼女が作った飯を初めて食べられる。

「ヨルンデ、今晩は回鍋肉を作ってくれるか?」

「ホイコーロー?何それ。」

「まあ、詳しくは家についてから話す」
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