残酷な描写あり
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「蕗二!」
鼓膜を強く揺らしたのは、聞いたこともない父の張り上げられた声だった。
赤く濡れた刃を遮り、視界を覆う大きな背。
救ってくれた背。
憧れていた背。
だがそれは今、蕗二の目の前で血の海に沈んでいた。
目に染みる鮮やかな赤が広がるほど、縋りついた体はみるみる冷えていく。
全てを否定するように、蕗二は感覚を捨てようとした。
しかし突然湧いた笑い声に、引き戻される。
錆切ったように軋む首を無理やり上げると、笑う男の姿が見えた。
泣け。
叫べ。
絶望しろ。
高らかでイカレた笑い声が、現実を突きつける。
その耳元。小さく、だがはっきりとした青い光が、蕗二の網膜に焼きついた。
≪ブルーマーク……!≫
食いしばった歯の間をこじ開け、蕗二の喉を咆哮が突き抜けた。