残酷な描写あり
R-15
62話:東京防衛戦⑤
エウォルヴの生存。
それは衛士爆弾の威力を知る者に絶望を与えるには十分な報告だった。衛士爆弾は9人のマギスフィア戦術級の威力のある爆弾だ。それを受けて生存するとはどんな体力と防御力なのか。
真昼は動揺を押し殺して、命令を下そうと口を開く。
「総員……!」
どうする? 撤退か? 攻撃か? どうしたら良い。
『真昼、来るよ。回避だ』
時雨の声が響き、エウォルヴに強大な魔力が収束がているのがわかる。真昼は思いっきり叫んだ。
「敵の攻撃が来る!!」
真昼は船田姉妹と黒十字部隊まで走る。
「魔力リフレクター! 全・開!!」
そのすぐ後だった。蒼い光の奔流がビルをぶち破りながら迫って、全員を飲み込んだ。梨璃は意識が残る最後まで魔力リフレクターを展開して全身が焼き爛れるのを感じながら、それでも誰より前で体を張ってみんなを守っていた。
司令部から通信が入ってくる。
《エウォルヴ、魔力リフレクターを展開。内部に籠るようです》
《エヴォルヴ休止状態になります》
《衛士達の回収を急げ!!》
《今のうちに体勢を立て直す》
《りょうか………!》
《…………》
真昼は意識を失った。
真昼が気がついたのは病院のベットの上だった。
全身に傷はない。リジェネターで回復したのだろう。魔力も消費しているが問題はない。やはりXM3強化衛士の弱点は意識の消失だろう。死ぬまで戦える代わりに意識を失うとその能力が全て無意味になる。
少し痛くしても、意識がなくなったら電気ショックなどで意識を取り戻す方法を取り入れたほうが良いかもしれない。
「状況は……? 私が守ろうとした人たちは」
ナースコールを押すと、ナースと一緒に愛花とシノアが現れた。二人とも無事だったようだ。
「真昼様、大丈夫ですか?」
「うん、現在の状況を教えてくれる?」
「はい」
愛花は端末を操作して立体映像を表示させる。
愛花は既に真昼に説明する為に用意していたようで、要点を纏めて説明していく。
「まず特型ギガント級エヴォルヴは休止状態に入っています。新宿を丸々飲み込む形で鎮座して、次の進化に備えていると予測されています。またエヴォルヴからデストロイヤーが生み出されて、これをイェーガーの金色一葉さんが衛士と衛士補欠を率いて殲滅しています」
東京のマップにエヴォルヴの位置と一葉のいる防衛線が引かれていく。
「そしてエヴォルヴ破壊部隊は、志願者を募り、横浜基地までガンシップで移動してXM3強化手術を受けています」
「このタイミングで?」
「最高戦略の真昼さんが倒れた事で、戦力を増強するべき意見が出たんです」
「もしかして船田香純さん?」
「はい。あと宮川高城さんと松村優珂さんです」
「高城ちゃんが? それは意外というか」
「叶星様が大怪我を負って、治療した際にその方法が不安だったらしくて、XM3強化手術で安全を保証してほしい、と」
「なるほど」
シノアは恍惚した顔で言う。
「皆さん格好良かったんですよ。『同じ衛士が命をかけているのに、何も感じないのですか!』とか『一緒に強くなりましょう』とか仲間を呼びかけて。そして強化手術を受けない人達は一葉さんと一緒にヒュージの間引き作戦に参加してます」
「そして東京はエリアディフェンスに頼っていたために都内の警戒は薄く断続的に攻撃に当たっているレギオンは複数いるが、有力なレギオンは不在です。主力レギオンが外征に行っていて支援は不可能です」
「小型のポータブルエリアディフェンスでなんとか他のデストロイヤーの発生は防いでいますが、エヴォルヴのデストロイヤー召喚は中々厳しい戦況です」
「そうなんだ。まずは強化衛士が増えないことには作戦を立てようもないね」
「そうだ、ルドピコ女学院のルチアさんから目が覚めたら話がしたい、と」
「わかった。連絡してみる」
「ではゆっくり休んでください。休めるのは今しかありませんから」
そう言って二人は部屋から出て行った。
真昼は端末を操作してルチアに連絡をした。
ルチアはコピリコ女学院の一年生で縮地とカリスマを発現、また不完全な強化衛士手術を受けて暴走した尊敬していた姉の未来を仲間と共に殺害、デストロイヤーの姫として通常のデストロイヤーから攻撃を受けない。仲間と共に反GE.HE.NA.のアイアンサイドに所属している。
真昼が知っている情報はその程度だった。
『はい、ルチアです』
「こんにちは、一ノ瀬真昼です。話がしたいって言ってたけど何かな?」
『あ、起きられたんですね。体調の方は大丈夫ですか?』
「うん。ルチアちゃんは今どこに?」
『横浜基地のGE.HE.NA.ラボです。MX3強化手術を受けました』
その言葉に真昼は意外に思った。
コピリコ女学院はGE.HE.NA.過激派によって多くの犠牲者を出した。故に幾らクリーンになったとはいえGE.HE.NA.には抵抗があると思っていたのだが。
『意外ですか?』
「そうだね。GE.HE.NA.は嫌っていると思っていたから」
『正直いえば好きではありません。けど、フランシスカさんが受けなからばならない事情がありましたから』
フランシスカ……黒髪黒リボンの子だ。あの子は確か不完全な強化衛士の被験者だった。それ故に再調整も兼ねてXM3強化手術を受けるしかなかったのだろう。
「なるほど」
『それに、真昼様の勇姿を見たんです。船田姉妹さんと黒十字衛士補欠部隊を魔力リフレクターで守る姿を。あのエヴォルヴに対抗するには強さを手に入れるしかない。それがわかったんです。葛藤や嫌な気持ちはあります。けど、人命には変えられない。それに』
「それに?」
『公の場で罪を認め、謝罪し、次に生かすと言ってくれました。そして真昼さんの活躍。信じてみようって事になったんです。人の善性というのを』
「ありがとう。大丈夫。私が完成させたXM3に危険性はない。親GE.HE.NA.のリリィに受けさせたけど、何一つ事故は起きていない。大丈夫だから、私を信じて」
『はい。ありがとうございます』
「それで聞きたい事は何なのかな?」
『真昼さんの過去と今の考えについてです。真昼様は過去に姉妹契約のお姉様を失ったと聞きました。それからどうやって今に至って、今、真昼さんは何を考えているんですか?』
真昼は黙った。そして思考を纏めて口に出す。
「私はラプラスとして扇動していたのは知っているよね? お姉様も最後は無理矢理体を動かせて戦わせて死んだんだ。そうしないといけない状況だった」
『聞いたことがあります。一年前は激戦が多く、衛士や防衛隊の死傷者もたくさん出たと』
「そこから私は戦場を渡り歩き過酷な戦いを全て勝利させてきた。そうして次の年になり、一年生が入ってきたんだ。その子は私の為に尽くしてくれた。そしてお姉様を喰らったデストロイヤーが変質して人間性を宿していたんだ。私はそれがお姉様だと思いかけた。けど一年生の子の言葉でデストロイヤーとして対処した。そこからかな。デストロイヤーに危機感を覚え始めてのは」
『……はい』
ルチアは静かに聞いている。
「私はGE.HE.NA.と提携している会社を伝ってGE.HE.NA.ラボの一つを手中に収めて、過激派掃討の為の準備と新しい装備の開発や改良の計画を進めた。そこに倫理観は挟まず、あらゆる手を尽くした。結果が、XM3と衛士爆弾と第四世代CHARMの先行量産型とアーマードコアⅡの開発」
『多いですね』
「ラプラスは未来を掴む力だ。使い方次第で最善の未来を掴むことができる。一般的には士気向上とかだけどね」
『それで、真昼さんは今は何を考えているんですか?』
「まずはエヴォルヴの破壊。大磯海底ネストの破壊、そしてレギオンの仲間の故郷である台北市の奪還して、仲間の家族の墓を建てる。それが目標。そして組織を大きくして世界中にXM3と第四世代戦術機を配備してデストロイヤーから世界を奪還する。その為の最善を全力で尽くす。以上です」
『……すごい。衛士だけじゃない。その先を見てるんですね』
「ラプラスで病院で呼ばれた時、デストロイヤー戦争で五体を損傷したりそれによって体が自由に動かなくなった人たち、また精神的に壊れてしまった人たちを見て思ったの。そんなことになるなら衛士にはならない。しかし「何か」に背中を押された結果地獄に入ってしまう」
『たしかに腕や脚を失うとわかっていれば戦場には行かないはず』
「相当使命感が強かったりしないと自分から行こうとは思わないはず。しかしその「使命感」でさえも「何か」であり、他人や環境によって醸成されたものではないか?」
『何もしらない子どもたちが、大人や環境や歴史に背中を押されたということになると言うことですか? たとえ行った先が地獄であったとしても、デストロイヤー戦争で脚を失うことになったとしても、子どもたちは何も知らないからこそ進んじゃうって』
「だけど自分で自分の背中を押した奴の見る地獄は別」
『ラプラスで操って、人の背中を押した事ですか? 人に背中を押した責任感がある。だから進み続けるしかないと』
「私は責任がある。だから私は世界を救う為に出来る限り最善を尽くすしかないんだ。私に出来る全部をかけて」
少しの間、無言があった。
『真昼さんと話せて良かったです。真昼さんは良い人な気がします』
「それは勘違いだよ。私は悪い人だ」
『そうですね、かもしれません。すみません、そろそろ失礼しますね』
「わかった。じゃあ、また、ね」
通信を切った。
「みんな、死んでほしくない人がいる。大切な人がいる。全員は救えない。だから、少しでも多く、私は」
『真昼……大丈夫かい? そろそろ肩の力を抜いても良いじゃないかい? 自分の心をよく見つめ直すと良い。最善にこだわり続けると取りこぼすものがあるかもしれないよ』
「お姉様……そうですね。休憩は必要です。ゆっくり、確実に進めていきます」
『それが良い、それじゃあおやすみ』
「はい、お姉様」
それは衛士爆弾の威力を知る者に絶望を与えるには十分な報告だった。衛士爆弾は9人のマギスフィア戦術級の威力のある爆弾だ。それを受けて生存するとはどんな体力と防御力なのか。
真昼は動揺を押し殺して、命令を下そうと口を開く。
「総員……!」
どうする? 撤退か? 攻撃か? どうしたら良い。
『真昼、来るよ。回避だ』
時雨の声が響き、エウォルヴに強大な魔力が収束がているのがわかる。真昼は思いっきり叫んだ。
「敵の攻撃が来る!!」
真昼は船田姉妹と黒十字部隊まで走る。
「魔力リフレクター! 全・開!!」
そのすぐ後だった。蒼い光の奔流がビルをぶち破りながら迫って、全員を飲み込んだ。梨璃は意識が残る最後まで魔力リフレクターを展開して全身が焼き爛れるのを感じながら、それでも誰より前で体を張ってみんなを守っていた。
司令部から通信が入ってくる。
《エウォルヴ、魔力リフレクターを展開。内部に籠るようです》
《エヴォルヴ休止状態になります》
《衛士達の回収を急げ!!》
《今のうちに体勢を立て直す》
《りょうか………!》
《…………》
真昼は意識を失った。
真昼が気がついたのは病院のベットの上だった。
全身に傷はない。リジェネターで回復したのだろう。魔力も消費しているが問題はない。やはりXM3強化衛士の弱点は意識の消失だろう。死ぬまで戦える代わりに意識を失うとその能力が全て無意味になる。
少し痛くしても、意識がなくなったら電気ショックなどで意識を取り戻す方法を取り入れたほうが良いかもしれない。
「状況は……? 私が守ろうとした人たちは」
ナースコールを押すと、ナースと一緒に愛花とシノアが現れた。二人とも無事だったようだ。
「真昼様、大丈夫ですか?」
「うん、現在の状況を教えてくれる?」
「はい」
愛花は端末を操作して立体映像を表示させる。
愛花は既に真昼に説明する為に用意していたようで、要点を纏めて説明していく。
「まず特型ギガント級エヴォルヴは休止状態に入っています。新宿を丸々飲み込む形で鎮座して、次の進化に備えていると予測されています。またエヴォルヴからデストロイヤーが生み出されて、これをイェーガーの金色一葉さんが衛士と衛士補欠を率いて殲滅しています」
東京のマップにエヴォルヴの位置と一葉のいる防衛線が引かれていく。
「そしてエヴォルヴ破壊部隊は、志願者を募り、横浜基地までガンシップで移動してXM3強化手術を受けています」
「このタイミングで?」
「最高戦略の真昼さんが倒れた事で、戦力を増強するべき意見が出たんです」
「もしかして船田香純さん?」
「はい。あと宮川高城さんと松村優珂さんです」
「高城ちゃんが? それは意外というか」
「叶星様が大怪我を負って、治療した際にその方法が不安だったらしくて、XM3強化手術で安全を保証してほしい、と」
「なるほど」
シノアは恍惚した顔で言う。
「皆さん格好良かったんですよ。『同じ衛士が命をかけているのに、何も感じないのですか!』とか『一緒に強くなりましょう』とか仲間を呼びかけて。そして強化手術を受けない人達は一葉さんと一緒にヒュージの間引き作戦に参加してます」
「そして東京はエリアディフェンスに頼っていたために都内の警戒は薄く断続的に攻撃に当たっているレギオンは複数いるが、有力なレギオンは不在です。主力レギオンが外征に行っていて支援は不可能です」
「小型のポータブルエリアディフェンスでなんとか他のデストロイヤーの発生は防いでいますが、エヴォルヴのデストロイヤー召喚は中々厳しい戦況です」
「そうなんだ。まずは強化衛士が増えないことには作戦を立てようもないね」
「そうだ、ルドピコ女学院のルチアさんから目が覚めたら話がしたい、と」
「わかった。連絡してみる」
「ではゆっくり休んでください。休めるのは今しかありませんから」
そう言って二人は部屋から出て行った。
真昼は端末を操作してルチアに連絡をした。
ルチアはコピリコ女学院の一年生で縮地とカリスマを発現、また不完全な強化衛士手術を受けて暴走した尊敬していた姉の未来を仲間と共に殺害、デストロイヤーの姫として通常のデストロイヤーから攻撃を受けない。仲間と共に反GE.HE.NA.のアイアンサイドに所属している。
真昼が知っている情報はその程度だった。
『はい、ルチアです』
「こんにちは、一ノ瀬真昼です。話がしたいって言ってたけど何かな?」
『あ、起きられたんですね。体調の方は大丈夫ですか?』
「うん。ルチアちゃんは今どこに?」
『横浜基地のGE.HE.NA.ラボです。MX3強化手術を受けました』
その言葉に真昼は意外に思った。
コピリコ女学院はGE.HE.NA.過激派によって多くの犠牲者を出した。故に幾らクリーンになったとはいえGE.HE.NA.には抵抗があると思っていたのだが。
『意外ですか?』
「そうだね。GE.HE.NA.は嫌っていると思っていたから」
『正直いえば好きではありません。けど、フランシスカさんが受けなからばならない事情がありましたから』
フランシスカ……黒髪黒リボンの子だ。あの子は確か不完全な強化衛士の被験者だった。それ故に再調整も兼ねてXM3強化手術を受けるしかなかったのだろう。
「なるほど」
『それに、真昼様の勇姿を見たんです。船田姉妹さんと黒十字衛士補欠部隊を魔力リフレクターで守る姿を。あのエヴォルヴに対抗するには強さを手に入れるしかない。それがわかったんです。葛藤や嫌な気持ちはあります。けど、人命には変えられない。それに』
「それに?」
『公の場で罪を認め、謝罪し、次に生かすと言ってくれました。そして真昼さんの活躍。信じてみようって事になったんです。人の善性というのを』
「ありがとう。大丈夫。私が完成させたXM3に危険性はない。親GE.HE.NA.のリリィに受けさせたけど、何一つ事故は起きていない。大丈夫だから、私を信じて」
『はい。ありがとうございます』
「それで聞きたい事は何なのかな?」
『真昼さんの過去と今の考えについてです。真昼様は過去に姉妹契約のお姉様を失ったと聞きました。それからどうやって今に至って、今、真昼さんは何を考えているんですか?』
真昼は黙った。そして思考を纏めて口に出す。
「私はラプラスとして扇動していたのは知っているよね? お姉様も最後は無理矢理体を動かせて戦わせて死んだんだ。そうしないといけない状況だった」
『聞いたことがあります。一年前は激戦が多く、衛士や防衛隊の死傷者もたくさん出たと』
「そこから私は戦場を渡り歩き過酷な戦いを全て勝利させてきた。そうして次の年になり、一年生が入ってきたんだ。その子は私の為に尽くしてくれた。そしてお姉様を喰らったデストロイヤーが変質して人間性を宿していたんだ。私はそれがお姉様だと思いかけた。けど一年生の子の言葉でデストロイヤーとして対処した。そこからかな。デストロイヤーに危機感を覚え始めてのは」
『……はい』
ルチアは静かに聞いている。
「私はGE.HE.NA.と提携している会社を伝ってGE.HE.NA.ラボの一つを手中に収めて、過激派掃討の為の準備と新しい装備の開発や改良の計画を進めた。そこに倫理観は挟まず、あらゆる手を尽くした。結果が、XM3と衛士爆弾と第四世代CHARMの先行量産型とアーマードコアⅡの開発」
『多いですね』
「ラプラスは未来を掴む力だ。使い方次第で最善の未来を掴むことができる。一般的には士気向上とかだけどね」
『それで、真昼さんは今は何を考えているんですか?』
「まずはエヴォルヴの破壊。大磯海底ネストの破壊、そしてレギオンの仲間の故郷である台北市の奪還して、仲間の家族の墓を建てる。それが目標。そして組織を大きくして世界中にXM3と第四世代戦術機を配備してデストロイヤーから世界を奪還する。その為の最善を全力で尽くす。以上です」
『……すごい。衛士だけじゃない。その先を見てるんですね』
「ラプラスで病院で呼ばれた時、デストロイヤー戦争で五体を損傷したりそれによって体が自由に動かなくなった人たち、また精神的に壊れてしまった人たちを見て思ったの。そんなことになるなら衛士にはならない。しかし「何か」に背中を押された結果地獄に入ってしまう」
『たしかに腕や脚を失うとわかっていれば戦場には行かないはず』
「相当使命感が強かったりしないと自分から行こうとは思わないはず。しかしその「使命感」でさえも「何か」であり、他人や環境によって醸成されたものではないか?」
『何もしらない子どもたちが、大人や環境や歴史に背中を押されたということになると言うことですか? たとえ行った先が地獄であったとしても、デストロイヤー戦争で脚を失うことになったとしても、子どもたちは何も知らないからこそ進んじゃうって』
「だけど自分で自分の背中を押した奴の見る地獄は別」
『ラプラスで操って、人の背中を押した事ですか? 人に背中を押した責任感がある。だから進み続けるしかないと』
「私は責任がある。だから私は世界を救う為に出来る限り最善を尽くすしかないんだ。私に出来る全部をかけて」
少しの間、無言があった。
『真昼さんと話せて良かったです。真昼さんは良い人な気がします』
「それは勘違いだよ。私は悪い人だ」
『そうですね、かもしれません。すみません、そろそろ失礼しますね』
「わかった。じゃあ、また、ね」
通信を切った。
「みんな、死んでほしくない人がいる。大切な人がいる。全員は救えない。だから、少しでも多く、私は」
『真昼……大丈夫かい? そろそろ肩の力を抜いても良いじゃないかい? 自分の心をよく見つめ直すと良い。最善にこだわり続けると取りこぼすものがあるかもしれないよ』
「お姉様……そうですね。休憩は必要です。ゆっくり、確実に進めていきます」
『それが良い、それじゃあおやすみ』
「はい、お姉様」