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作者: 甲斐てつろう
#4
『ヒーローに、ならなきゃ。』
ウィング・クロウの出撃要請をされた陽。

「出撃させないって言ったのはそっちじゃないですか……」

「確かに君自身が変わらないのなら出撃はさせないよ。でも仲間が助けを求めてる、それを放っておけるかい?」

「その仲間も僕を必要としてないのに……」

新生長官とこのようなやり取りを繰り広げている間にもデカラビアは暴れている。
そんな映像が彼らの背後のモニターから流れていた。

「彼らが必要としているもの、分かるでしょ?」

諭すように言う新生長官。
彼らの欲しているもの、一体何だと言うのだ。

「もう一度蘭子の言葉を思い出してごらん?」

そう言われて蘭子の言葉を思い出す。
そこで一つの答えに辿り着いた。

「……まさかアモン?」

蘭子はウィング・クロウの火力が欲しいと言っていた。
それならばルシフェル戦で上手くやったアモンが欲しいというのも頷ける。

「君にとっては辛い事かも知れないね、結局亡くなった友人の方が必要とされている。余計に自分が生き残った意味が無くなってしまうと思うだろうね」

「本当にそうですよ、何で僕が生き残ったんだか……」

そう言って落ち込む陽に彼の事情を知っている新生長官は過去の事を話題に出した。

「……友人は亡くなる直前、君に何て言ったんだっけ?」

「えっと……」

亡くなる直前のアモンの言葉を思い出す。

『お前の居場所はここじゃない、もっとお前に合った場所があるはずだ』

そしてそれを新生長官にも伝えた。

「……そうやって言ってました」

少し俯きながら言う。
一体この言葉が何だと言うのだろう。

「そうだったね……」

すると新生長官は深呼吸をして陽にある事を問う。

「君は今自分の居るべき場所に辿り着いたと思う?」

そう言われてConnect ONEに来た時から今までの事を振り返る。
その記憶は正直あまり良いものではなかった。

「いえ、正直居心地悪くてとても合った場所とは思えません……」

なので正直に自分の思う事を伝えた。

「そうだね、僕もまだ君が居場所に辿り着けてるとは思えない」

無情にもそう言い放つ新生長官に陽は思いをぶつけた。

「じゃあどうすれば良いんですか……⁈このままじゃ一生辿り着ける気がしない……っ」

その瞳は本気だった。
しかし新生長官は一切表情を動かさずに答えた。

「そう、このままじゃね」

「……っ?」

その言葉は一体どういった意味を持つのだろうか。

「このまま何もせずにいたら辿り着けないよね、だから何か行動しなくちゃ」

「そんな理由でアモンに代われって言うんですか?それこそ結局僕は置き去りです……」

「そうじゃない、この中には少なからず君を理解してくれる人はいる。僕だってそうだし竜司とも話してたよね?」

「何の関係があるんですか……?」

すると新生長官は陽の肩を掴んで力強く説得をし始めた。

「自分に無いものを持ってる他人を羨んでばかりじゃダメだ!せっかく君にも他人が羨むほどのものがあると言うのに!」

「っ!!」

「与えられたものを活かして成長するんだ、するとそこが君の居場所になる!」

そこで陽は自分に与えられたものを考えてみた。

「僕に与えられたもの、でもアモンの力は戦場で役に立つ力だ……」

まだ覚悟が決まらない陽に新生長官は更に言う。

「彼は言っているんでしょ、君を守りたいって。それはきっと君が居場所に辿り着くまでの手助けをしたいって事だよ」

「手助けですか……?」

「みんな君に秘められたアモンの力を求めてる、それに応える事で君は居場所を手にするんだ」

そこまで言って新生長官は陽の肩から手を離す。

「もう分かったかな?君の居場所を手に入れるために君がすべき事」

「僕は……」

覚悟を決める陽。
胸ポケットからアモンのサングラスを取り出して見つめる。
そして新生長官に言った。

「……とりあえず今回はやってみます、貴方を信じてますよ」

そして新生長官が頷くのを確認してからサングラスを掛けた。
その途端に人格が豹変する。

「ぃよぉぉぉし、とうとう俺の出番な訳だな?」

アモンへと変わった陽が出撃準備に入る。
そして司令室から出て格納庫に向かった彼の背中を見た新生長官は呟いた。

「……神に与えられた使命、果たすんだよ」





戦闘現場はまだデカラビアの対策に追われていた。
陽が来てくれるかすら分からない、ただ今は信じるしか他にないのだ。

「ギュルルルッ」

再び瓦礫を飛ばしてくるデカラビア。
広範囲に勢いよく放ち続けているため中々近付く事が出来ない。

「瓦礫飛ばしながら補充までしてるし、永遠に弾切れしないじゃんコレ!」

キャリー・マザーのから分析している蘭子が悪態をつく。

「早く来いっつーの……!」

貧乏ゆすりをしながら陽が来るのを待っていた。
下では火力不足で攻めあぐねている他の隊員たちやゼノメサイアも陽の到着を待っていた。

「ギュイィィィッ!!」

そして目玉から再度レーザービームを放ちゼノメサイアを攻撃する。

『グッ……』

流石にエネルギーを消費しすぎたので避けようにも動けない。
万事休すかと思ったその時だった。

『ハッ……』

突如としてゼノメサイアとレーザービームの間に何か素早いものが割り込む。
それはエネルギー体のシールドを形成しレーザービームを見事に防いでいた。

「お待たせよぉ」

やって来たのは陽もといアモンの乗ったウィング・クロウ。
その登場に一同は歓喜した。

「遅い!どんだけ待たせんだっつーの!」

口ではそう言う蘭子だが貧乏ゆすりは止まっていた。

「そう言ってやんな蘭子ちゃん。陽なりに折り合いつけたんだろ?」

無線でやり取りしているため声は聞こえている。
竜司は視線の先にいるウィング・クロウに語りかけた。

「へっ、ようやく俺の必要性に気付いたらしいな」

そしてアモンはブチ上がったテンションで空を飛んでみせた。

「お預けされた分ぶちかますぜ!!」

そして上から突っ込む。
瓦礫を放たれるが持ち前の機動力でそれらを避けていく。

「おらっ!」

そして隙を見て目玉にビーム弾を一発撃ち込んだ。

「ギャピィィィッ⁈」

明らかにダメージを受けているのが分かる。

「ハハッ!この目ん玉、大して硬くねーじゃねーか!」

するとスピーカーをオンにしてゼノメサイアに語りかける。

『おいデカブツ!突っ立ってねーで手伝え!こん中で一番万能なのはお前だ!!』

そんな事を言われてハッとするゼノメサイア。

『俺がビームでぶち壊すからお前は目玉をキャッチして押さえろ!そんでぶっ壊せ!!』

しかしゼノメサイアは少し考えているような素振りを見せている。
その様子を察したアモンは更に言葉を重ねる。

『何だ、お前ビビってんのか?安心しろ、お前にゃ陽が羨むだけのものがある!』

その言葉を聞いたゼノメサイアは少し反応を見せるが他にも名倉隊長まで反応を見せた。

「(ゼノメサイアがビビっている?何故それが分かるんだ……?)」

一体何故アモンにはそれが分かるのか、しかしそう言われれば納得の出来る材料は揃っていた。
ならばゼノメサイアがこんなに焦りビビる理由は何なのかを考える。

『お前は陽に無いものを持ってる、そんで多分だがお前に無いものを俺たちは持ってんだろ?』

飛行しながらアモンは続ける。

『世の中そーゆーもんなんだ、お互いを羨むように出来てんだよ』

そしてその言葉を聞いたゼノメサイアはゆっくりと立ち上がる。

『へっ、待ってたぜ』

そのまま構えを取りデカラビアの目玉をジッと見つめた。
アモンの言葉に応える姿勢を見せたのだ。
ここから決戦が始まる。





一斉に行動し出す両者。
ゼノメサイアは走りウィング・クロウは空を切る。

「ギュイィィィッ」

その間も瓦礫を飛ばし更にレーザービームを放つデカラビア。

『グッ……』

慌てて防ごうとするゼノメサイアだが上手く力が入らない。
そこへ救援が。

「多連装ミサイル発射っ!!」

名倉隊長のタンク・タイタンが多連装ミサイルでゼノメサイアを瓦礫から守ったのだ。
そして更に。

「俺も忘れんなよ、アンチ・グラビティだ!」

竜司のライド・スネークも重力に逆らい再び翻弄し始めた。
注意を引いて攻撃を誘っていく。

「へへっ、ナイスだ竜司!シールド展開!」

アモンも感謝しながら急降下していく。
そしてシールドを展開した。

「アイツまさか……!」

そしてそのままウィング・クロウはシールドを展開したままデカラビアの瓦礫で作られた体に突進したのだ。

「ギュゴオォォォッ……⁈」

バラバラになり目玉だけが残ったデカラビア。

「今だぁぁーーっ!!」

その言葉が自分に向けられているものだと即座に察したゼノメサイア。

『オォォォッ!!!』

そのまま勢いよく走り出し宙を舞っている目玉を両手で鷲掴みにして捕らえた。

「よし!」

「捕まえたぞ!」

一同が見守る中でゼノメサイアはその目玉を破壊しようと試みた。

『ドォォォリャァァァッ!!!!』

そのまま勢いよく飛び上がり足を出す。
目玉を思い切り蹴り付けて地面に叩きつけた。
更に思い切り踏み潰す。

「ギュイ……ガッ」

その重さでデカラビアの目玉である本体は砕け散った。
とうとう勝つことに成功したのだ。

『ハァ、ハァ……ゼアァァッ!』

勝利の雄叫びを上げるゼノメサイア。
TWELVEと協力し何とか勝利する事が出来た。

「お疲れさんっ」

コックピットから敬礼をするアモン。
その様子を見ていたゼノメサイアはようやく自分が少し認められた気がした。

『(俺、ゼノメサイアとしてなら上手くやれるかも知れない……!)』

少し自信がついた快であった。





つづく
つづきます
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