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作者: 神無城 衛
*ゲートにて*
グリニッジ標準時4月7日21時(東京時間4月6日6時)


カイパーベルトを抜けたナイアガラ号は重力潮流に入る。

各星系に通じる潮流の入り口には巨大なゲートと呼ばれる構造物があり、船はその中を通る。人が住める、もしくはたくさんの人の往来が必要な星系に優先的にゲートが設置されていて、ちょうど地上のハイウェイのようになっている。
人類の惑星開拓はシリウスを足掛かりに行われており、最初に整備されたのが地球、シリウス間の航路で、そうした要因からシリウスは重力航路の中心となっており、大きなギルド支部も開かれている。

 毎日何隻も船が往来するのでここにも宇宙港と同じように管制塔があり、ここを利用する船は必ず管制塔の指示を受ける。
ただし船の航行はあまり多くない、というのもこの装置は生産にも維持にもたいへんな労力が必要で、アルクビエレドライブよりも早く目的地に着くとはいえ、通行料とアルクビエレドライブの燃料の費用と比較するとほぼ同じ価格なので、航跡を隠したい事情のある船や定期、速達便、今回のように特殊な荷を運ぶ際に都合が良い程度である。
とはいえ今後この状況は変わり、ゲートを利用した交通が栄えれば通行料も安くなるだろう。

「管制塔、こちらEA⁻DIMOS⁻677524、 バートランド商会所属、3級装甲巡洋艦ナイアガラ号です。通行許可を願います」
『ナイアガラ号、こちらシリウス方面ゲート管制塔です、ゲート使用許可を確認しました。通行を許可します。待機の船はないのでそのまま抜けてください。貴艦にセントエルモのお導きがありますように』

 ナイアガラ号はゆっくりと加速し、ゲートに封じられた青い光を放つ亜空間に侵入する。そうしてゆっくりと飲み込まれるように船は消えてゆき、ナイアガラ号は重力航行に入った。
重力潮流のワームホール内は重力の潮流が光速よりも速く物質を押し流し、艦橋から見える内側は美しい青い光に満ちている。これはチェレンコフ光によるもので、通り抜ける艦船は高い放射線と重力に耐えるだけの準備をしておかなければならない。船齢100年近くを数える元地球連邦軍主力戦艦3番艦「ダイモス」こと、現バートランド商会所有ナイアガラ号は新技術が登場するたびに幾度となく近代化改修を行っているため、目新しい技術であるアルクビエレドライブにも、今回のような重力航行にも耐える装備を持っている。

予定ではシリウスに到着するのはグリニッジ標準時の4月10日で、その間は艦橋で青い景色を眺めることとなる。

そんなナイアガラ号のそれぞれの日課が始まる…
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