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作者: 神無城 衛
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グリニッジ標準時4月29日12時

 ナイアガラ号はシリウスを経由したことにより、航海日誌の記録はシリウス出航からグリニッジ標準時刻で航海日誌を記録し始めた。

重力航行3日の航海を経てナイアガラ号はついにアシハラ星系へと到着した。

アシハラ星系は地球に近い天体の並びで、恒星の外周からハチカン、オカミ、少し離れてヤマト、内周にミカハヤミがある。
今回目指すのは本土であるヤマト星で、ヤマト領域公海上の岩礁地帯からそのまま亜光速で突入しようとしたところ光速、亜光速ドライブに対する強烈なジャミングを検知して亜光速ドライブによる航行が緊急停止した。
船がここで止まるであろうことは予測済みで、原因はやはりというか、展開したアダルヘイムの艦隊が発していた強力なジャミングだった。
「こちらはアダルヘイム第9機動艦隊旗艦である。貴船の航行目的と積み荷を明らかにせよ」
「こちらEA⁻DIMOS⁻677524、 バートランド商会所属、3級装甲巡洋艦ナイアガラ号、艦長のセシリア・バートランドです。貴船の行動に協力しますが、貴船が我が艦の航路に立ち塞がる理由をお尋ねしたい」
「こちら第9機動艦隊旗艦、当方の行動目的については軍事機密につき答えられない」
音声のみの高圧的な態度に少し腹も立つが、ここは穏便に済ませて目的地に荷物を届けることを優先するべきだろう。
 船を止めると艦隊の1隻が30キロの距離に並んだ。積み荷の検閲は外部からのスキャンであり、移乗してひとつずつ調べるわけではないのでこれで十分なのだ。
「貴船の格納庫に異常に高い電力反応を検知した、船長の提示したログによると美術品とあるが詳細を求む」
「この荷物については超低温で形を維持する素材の美術品です。この荷はヤマト国の文化の発展を支える重要な荷物で、できれば直ちにヤマト国へ届けたいので通行許可を願います」
「…貴船の通行を許可する」
 ひとまずこの航海の最大の難関を抜けた。あまり上手い説得ではなかったと思うが、末端の、特に任務の重要性を理解していないのであろう隊員を説得するには十分だった。
「各員、再度亜光速ドライブ準備せよ、目標ヤマト国、最大出力で行くわよ」
 アダルヘイムの艦隊を背にヤマトへと向かうナイアガラ号は徐々に加速し、アダルヘイムの艦隊は見えなくなっていった。
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