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グリニッジ標準時5月23日11時
九龍海賊団の老虎からメールが来ていたのは3時間ほど前だった。朝食を終えて部屋に戻り、今後のことについて漠然と思案しながら携帯通信端末から船のパーソナル端末にアクセスしたことで気がついた。
メディアに公表する前に知らせるということで、ギルドの軍部に精通する老虎から先にギルドの決定を伝えてきた。
ギルドの決定はいくつかに渡った。
1 旧アダルヘイムという呼称をやめ、反乱軍と呼称すること
2 反乱軍に加担する幹部の公的、私的資金の口座を直ちに凍結すること
3 反乱軍に対しても戦時国際法を適用すること、ただし撃沈もやむなしと判断される場合および反乱軍が戦時国際法に違反する場合はその限りではない
4 反乱軍の、特に幹部や指揮官は死傷させず、戦犯として法廷にて裁くこと
主だってそのようなことが書かれていた。
読み進めると偵察に入ったアダルヘイム軍が収集した現在の反乱軍の情勢も書かれていた。
新CEOは治療の甲斐も虚しく逝去し、残党となった反乱軍は幹部が残りの資産をかき集めて民間から戦闘員を募り、少しずつではあるが旧知の恩情に報いようと呼応する分子で戦力が集いつつあり、集まった兵員に残りの資産である最新鋭の兵器を貸与して決戦に備えているという。
さらに反乱軍は自分たちを支持する人員に武装や艦船を各支社から集めさせ、大型機動要塞「ヨトゥンヘイム」に集めていることも分かった。
また、ヨトゥンへイム要塞の他に完成しているガストロープニル要塞を奪取し、勢いに乗って建造中のウートガルズ要塞、スリュへイム要塞を奪取しようとしたがガストロープニル要塞を陥落した際の大きな損耗によりロート・ヒュンフリッターの兵站部の自衛艦隊と、戦力が手薄だという偽情報を流した諜報部の巧みな情報操作により判断を誤り、撤退する余地もなく壊滅したという。
一方でギルドはヨトゥンヘイム要塞攻略のためにユニオンの宇宙空母を旗艦とする空母打撃群一個艦隊と反乱軍の占拠する本社を押さえるために各自治区に派兵している駆逐隊を導入することを決定し、併せてヤマト、新台国軍も加わることが決定した。特に領地を荒らされたヤマトと新台国の反転攻勢に燃える士気は非常に高まっている。
しかしセシリアはこの状況をあまり良く思っていなかった。セシリアのこの戦役に参加する目的はあくまでアダルヘイムの指揮を執るルイーサのためであり、ルイーサの目的には反乱軍を討伐することは含まれていない。ここから先はギルドの決定であり、ルイーサの本意ではないはずだ。
とはいえセシリアも祖父の代から続くギルドとの契約があり、ここで降りることはできない。そのため、できればルイーサに連絡して認識のすり合わせをしないと納得して戦うことができないと感じた。
「やれやれ、やっぱり情を割り切れない…私に軍人は務まらないな」
独りだけの艦長室でセシリアはつぶやいた。
九龍海賊団の老虎からメールが来ていたのは3時間ほど前だった。朝食を終えて部屋に戻り、今後のことについて漠然と思案しながら携帯通信端末から船のパーソナル端末にアクセスしたことで気がついた。
メディアに公表する前に知らせるということで、ギルドの軍部に精通する老虎から先にギルドの決定を伝えてきた。
ギルドの決定はいくつかに渡った。
1 旧アダルヘイムという呼称をやめ、反乱軍と呼称すること
2 反乱軍に加担する幹部の公的、私的資金の口座を直ちに凍結すること
3 反乱軍に対しても戦時国際法を適用すること、ただし撃沈もやむなしと判断される場合および反乱軍が戦時国際法に違反する場合はその限りではない
4 反乱軍の、特に幹部や指揮官は死傷させず、戦犯として法廷にて裁くこと
主だってそのようなことが書かれていた。
読み進めると偵察に入ったアダルヘイム軍が収集した現在の反乱軍の情勢も書かれていた。
新CEOは治療の甲斐も虚しく逝去し、残党となった反乱軍は幹部が残りの資産をかき集めて民間から戦闘員を募り、少しずつではあるが旧知の恩情に報いようと呼応する分子で戦力が集いつつあり、集まった兵員に残りの資産である最新鋭の兵器を貸与して決戦に備えているという。
さらに反乱軍は自分たちを支持する人員に武装や艦船を各支社から集めさせ、大型機動要塞「ヨトゥンヘイム」に集めていることも分かった。
また、ヨトゥンへイム要塞の他に完成しているガストロープニル要塞を奪取し、勢いに乗って建造中のウートガルズ要塞、スリュへイム要塞を奪取しようとしたがガストロープニル要塞を陥落した際の大きな損耗によりロート・ヒュンフリッターの兵站部の自衛艦隊と、戦力が手薄だという偽情報を流した諜報部の巧みな情報操作により判断を誤り、撤退する余地もなく壊滅したという。
一方でギルドはヨトゥンヘイム要塞攻略のためにユニオンの宇宙空母を旗艦とする空母打撃群一個艦隊と反乱軍の占拠する本社を押さえるために各自治区に派兵している駆逐隊を導入することを決定し、併せてヤマト、新台国軍も加わることが決定した。特に領地を荒らされたヤマトと新台国の反転攻勢に燃える士気は非常に高まっている。
しかしセシリアはこの状況をあまり良く思っていなかった。セシリアのこの戦役に参加する目的はあくまでアダルヘイムの指揮を執るルイーサのためであり、ルイーサの目的には反乱軍を討伐することは含まれていない。ここから先はギルドの決定であり、ルイーサの本意ではないはずだ。
とはいえセシリアも祖父の代から続くギルドとの契約があり、ここで降りることはできない。そのため、できればルイーサに連絡して認識のすり合わせをしないと納得して戦うことができないと感じた。
「やれやれ、やっぱり情を割り切れない…私に軍人は務まらないな」
独りだけの艦長室でセシリアはつぶやいた。