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作者: 神無城 衛
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 ニュースチャンネルに速報が入っていた。
 この情勢にあって報道は特に気になる、一介の商人の立場からも商機を見逃さないことは重要だが、このニュースはあまりにも衝撃的だった。
一件目はちょうどセシリアたちが戦っているさなか、新台国に侵攻した旧アダルヘイム軍がギルドとターミネイトファイブの連合艦隊によって撃破され、新台国の治安が回復したというものだった。これについては僚艦であり幼い頃から家族ぐるみで付き合いのあるマウントオリンポス級一番艦フォボスこと現「長門ながと」の艦長でニューハーフであるハンナからの愚痴の混じったメールによって既に知っていた。問題は二件目のニュースだ。
「アダルヘイム新CEO、襲撃される!?」
詳しい情報は続報を待つことになるかと思ったが同時にギルドの諜報部からもその件についてメールが来ていた。
船の通信端末とリンクした携帯端末から確認したギルドからの情報によると、襲撃したのはハチカン先遣艦隊の中級士官で、新CEOの演説のため列中にいたところを壇上に上がった新CEOに対して列をかき分けて前に出て、錯乱したように叫び声をあげて拳銃を6発、全弾発砲した、そのうち一発は新CEOの右の肺を貫通する致命傷となり、その場で取り押さえられた。新CEOのその後の経過については調査中だが、情報が秘匿されていてすぐには分からないという。
取り調べの結果、この隊員も集中力を高める効果の薬物を摂取していて、動機はハチカン上陸部隊にいた同僚が物資の奪い合いによる同士討ちで非戦闘消耗ひせんとうそんもう(戦死)し、さらにその死について遺族への補償もなく蔑ろにされたことに対する報復だと述べている。
また、動機の一つとして先のセシリアの演説に感心し、自分の為すべきことは新CEOを殺害してこのろくでもない戦争を終わらせることにあると思ったとも供述しているそうだ。

しまった。自分の感情に任せた発言の影響を考えなかったのは大きな問題だ。セシリアは激しい後悔と焦燥に苛まれた。
連絡をくれたヤマト軍司令はセシリアのせいではなく、あくまで新CEOの問題だと付記していたが、自分の発言のために法の下で裁かれるべき人間を死傷させたことには変わりない。

ともあれ今自分にできることはなく、今後の動きについてもギルドの命令下達を待つのみなので、今は独りで次の動きについて考える時間に充てることとした。
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