40話:煽られる戦火②
「疑問。彼は気でも狂ったのでしょうか?」
突っ込んできた男を見て、シャルトルーズは魔導ゴーレムがいるにも関わらず、まさか人間が前線に出てくるなんて、という気持ちがありありとでている。魔力を込めた手を向けて、そして気がつく。
早い。強化魔法を使用しているとはいえ流石に早すぎる。
その速度にシャルトルーズは心当たりがあった。僅かに眉が上がり、そして自分の持つ情報と照らし合わせて間違いが無い事を悟った。
「驚愕。あの速度はまさか……!」
「それが二つ目の悪い知らせだ。ほぼ間違いない。まずは迎撃を開始する」
迎撃、と言われた瞬間に魔法の引き金は引いている。しかし持って来ていたらしい盾に阻まれ、更にはその高機動も相まってダメージを与えられていない。そして、最悪が裏付けられる。
「強化人間だな。反応速度と身体能力が普通の人間とは比べ物にならない。さて、どうする」
強化人間、という単語にシャルトルーズは露骨に舌打ちをした。まさか強化人間なんていう巫山戯た奴の相手をさせられるだなんて思わなかったのだ。
ブリーフィングでは一切触れられていなかったが、世界封鎖機構は恐らく分かっていたのだろう。とシャルトルーズは確信していた。そうでなければ前金として装備を複数放出する訳がない。
「嫌悪。やはり封鎖機構は敵です」
「報酬前払いの時点で嫌な予感はしていたが、まぁいい」
「指示を待機。どうしますか?」
「やるべきは一つだ。距離を取って飽和攻撃。やつの高機動でも避けれない弾幕を張って削り殺す」
シャルトルーズは、自らの問いに答えたラスティの言葉に、頷いた。
「肯定。後退しながら一斉射撃を推奨。こちらに寄らせたら負けです、絶対に近寄らせてはいけません」
二人の意見が合致したことで、迅速な作戦が開始させる。バックステップで後退しながら一斉射撃で迎撃した。
そんな二人とは真反対にカラスは特攻した。多少なりとも稼げれば御の字というような行為だったが、コンマすら稼げずに撃ち抜かれ、辛さは物言わぬゴミに変わり果ててしまう。
「あれはオメガウェポンを装備か。厄介だ」
「疑問。オメガウェポンとは? あの武器でしょうか?」
「詳細は省くが、局地的な運用を想定した兵器のことだ。今回は凄い頑丈で切れ味のいいブレードのようだな。理論上は対魔法シェルターだってバターみたいに解体できる」
「驚愕。そんなヤバい代物を、たかが一強盗団風情が持ってるんですか?」
「強化手術は軍に入る時しか受けられない。そこから盗んだんだろうな」
寄られたら負ける近距離武器持ちの相手は、一定の距離を保ちながらの射撃戦で消耗させるのがセオリーだ。
ラスティ達が引き撃ちという戦法を取ったのも、そのセオリーに従ったからである。
「驚愕。なんてデタラメな動き。いくら強化人間とはいえ、何でもあり過ぎじゃないですな?」
「強化人間は5階の窓にジャンプで到達できる連中だ。甘く見ると痛い目を見るぞ」
しかし、大きくジャンプして空に輝く太陽を背にし、視界を潰そうと三次元的な機動で迫ってくる様子はシャルトルーズの度肝を抜いた。
シャルトルーズのデータではそんな事が出来るとは夢にも思わなかったが、ラスティ曰く驚くことではないらしい。どうやら強化人間になると、そのような曲芸じみた動きも可能になるようだ。
「A-1、攻撃を開始します」
「魔導ゴーレムからも攻撃が来た……強化人間にばかり気を取られてるとやられるぞ。牽制の弾幕を張りながら、魔導ゴーレムから目を逸らしてはいけない」
「苦悶。あの魔導ゴーレム、狙いが結構的確です。嫌な位置にバシバシ飛ばしてきます」
強化人間ではそれだけではない。引き連れている魔導ゴーレムが足や腕といった部位に的確に攻撃を飛ばしてきて、迎撃に集中する事も出来ない。
弾速や威力からして、恐らくは射撃魔法系列遠距離用魔力弾だろう。なんとかしたいが、前衛が強化人間なだけに距離を詰められなかった。
迂闊に距離を詰めてしまえば、強化人間の膂力とオメガウェポンのブレードから繰り出される攻撃で簡単に切り刻まれてしまう。
「難しいな」
遠距離魔法を持っている相手から距離を取るなんて愚策もいいところだが、強化人間相手に引き撃ちをしなければ全滅しかねない。
「ぐ、あ」
シャルトルーズがうめき声を上げる。傷ついている。 ジリ貧と呼んでいい現状が続くのは非常にマズい。だが、今のところはどうしようもない。
ラスティ達には、このまま下がるという選択肢しか用意されていなかった。
「マスターラスティ。後ろのヤツが邪魔です。何か作戦はありますか?」
「……魔力残量的に現実改変が行使できるのは数秒、更に射程も限られる。煙幕魔法は可能か?」
「肯定。最初の一発なら有効だと思います。それ以降はそれを想定した動きをされるでしょう」
「まずは魔導ゴーレムの視界だけを塞ぐ。すぐ抜けられるだろうが無いよりはマシになるはずだ」
「了解」
言われた通りに正確に狙いを定めて魔法を発動した。放たれたスモークは魔導ゴーレムの少し手前に着弾し、広がってその視界を煙で塞ぐ。
「それから炎属性魔法だ。上手く行けばこれで落ちる」
「魔法発動、マジカルフレイム」
恐らく抜けてくるであろう場所に炎属性魔法を置いておく。単純な思考回路しか持たない第一世代の魔導ゴーレムであれば、これでマジカルフレイムに直撃する筈だった。
だが予想を裏切り、魔導ゴーレムはマジカルフレイムに直撃しなかった。まるで炎属性魔法が飛んでくる事を見抜いたかのように、大回りして煙から飛び出してきたのだ。
爆発ダメージを最小限に抑えられた事に、シャルトルーズは驚愕した。まさか魔導ゴーレム風情にそんな事が出来るなんて思わなかったからだ。
「驚愕。強化されているのは人間だけじゃないようです」
「愉快な事になってる」
「疑問。なんか変じゃないですか? 良く見たら腕から魔法デバイスが生えてるように見えますが……あれは、あれは最近出回ってる武器内蔵型の特殊腕でしょうか?」
「動き回りながら高火力の攻撃を放つ、をコンセプトに作られたものか。恐らく魔法デバイス内蔵型のタイプ」
「合点。動きながら的確に狙ってこれる理由はそれですか」
「武器腕。武器腕は動きながら高火力の攻撃が出せるけど、デメリットとして装甲が脆いし、最悪の場合は弾薬に誘爆して自爆する。しかし」
「苦悶。丁寧な事に、こちらの有効射程に入らないように立ち回っています。有効打を与えるには距離を詰めるしかありません」
「強化人間相手に距離を詰めたら切り刻まれる」
「疑問。ならどうしますか? このまま続ければ魔力が無くなります! 魔力切れを起こせば同じ事です」
魔力を使って魔法や異能を使っている以上、魔力切れの問題はどうにも出来ない。移動力を損なわない程度に魔力補給を持ってくると、あまり長時間の戦闘は展開できず、短時間に限定しても5回が限界だ。
だからこそ通常の作戦時は物資輸送が可能な飛行場を確保して、そこで適宜魔力や糧食を補給するのが当たり前なのだが、今回はそれを行えない。
そしてこの戦闘で既にばら撒かれた魔力は、おおよそ戦闘3回分。つまり中ピンチから大ピンチに移ろうかというところ。
「少し、無理をする」
「疑問。勝算は?」
「向こうの出方次第になるが、それなり以上にあるさ。魔導ゴーレムを複製」
現実改変でコピーさせた物は中身が粗雑で、使い捨てにさせても心が痛まない。魔力をごっそり持っていかれるのが難点か。
「提案。こっちで隙を作ります。合図はそっちでお願いします」
「了解した」
ラスティはシャルトルーズを囮として活用しつつ奥の魔導ゴーレムの発射間隔をカウントしていた。
一発……二発……三発……という間隔である。
魔力弾の連射の間隔は狭くないが、広くもない。発射直後の一瞬が勝負の分かれ目になるだろう。
「耐えろ」
まだ狙いを定めているのか、自律人形は撃ってこない。
そうしている間に、距離が迫ってくる。
「耐えろ」
弾幕の勢いが弱くなってしまったからか、更に距離を詰められた。油断すると、強化人間の一足飛びでブレードの射程内に入れられてしまいそうだった。
「オラァッ!」
リロードタイミングなどを重ねて、弾幕を途切れさせた一瞬に地面が爆ぜた。
古代の遺物の超性能の目をもってしても捕捉が難しい早さで、シャルトルーズの懐に飛び込んでくる。
「耐えろ……っ!」
ぶぉん! と空気を切り裂く音と共に振るわれた実体ブレードを、二人は避ける。
「今だ。反転攻勢!」
コピーされた魔導ゴーレムが強化人間の男に衝突する。そしてそこにシャルトルーズの炎属性魔法マジカルフレイムが炸裂する。
魔導ゴーレムのコピーに誘爆して、炎は威力を上げる。
「がああああっ!?」
「決着。終わりです」
燃える男の首を跳ねて、そのままの勢いで魔導ゴーレムの弱点に拳を突き立てる。
弱点を貫かれた魔導ゴーレムは光を無くして沈黙する。
ボロボロになった二人はお互いに見つめ合い、そしてハイタッチをした。
「流石だ、シャルトルーズ」
「肯定。もっと褒めて良いですよ。貴方も良かったです」
「お互いに良い動きをした」
飛行型ゴーレムが着陸して、撤収作業を開始していた。
◆新着メールが届いています◆
FROM:世界封鎖機構
TITLE:お疲れ様です。
魔導ゴーレムは受け取りました。まずはお疲れ様てす。
近々そちらにネフェルト少佐が向かいますから、その時は歓迎よろしくお願いします。お茶請けはクッキーだと彼女は喜ぶでしょう。
追加報酬の件だけど、ネフェルト少佐が行った時に渡します。今すぐに渡せるものではないし、まだ承認されてないから。
もちろん待たせる分、相応なのは約束するわよ。期待して待っててください
では。お互い生きてれば、また会いましょう。
突っ込んできた男を見て、シャルトルーズは魔導ゴーレムがいるにも関わらず、まさか人間が前線に出てくるなんて、という気持ちがありありとでている。魔力を込めた手を向けて、そして気がつく。
早い。強化魔法を使用しているとはいえ流石に早すぎる。
その速度にシャルトルーズは心当たりがあった。僅かに眉が上がり、そして自分の持つ情報と照らし合わせて間違いが無い事を悟った。
「驚愕。あの速度はまさか……!」
「それが二つ目の悪い知らせだ。ほぼ間違いない。まずは迎撃を開始する」
迎撃、と言われた瞬間に魔法の引き金は引いている。しかし持って来ていたらしい盾に阻まれ、更にはその高機動も相まってダメージを与えられていない。そして、最悪が裏付けられる。
「強化人間だな。反応速度と身体能力が普通の人間とは比べ物にならない。さて、どうする」
強化人間、という単語にシャルトルーズは露骨に舌打ちをした。まさか強化人間なんていう巫山戯た奴の相手をさせられるだなんて思わなかったのだ。
ブリーフィングでは一切触れられていなかったが、世界封鎖機構は恐らく分かっていたのだろう。とシャルトルーズは確信していた。そうでなければ前金として装備を複数放出する訳がない。
「嫌悪。やはり封鎖機構は敵です」
「報酬前払いの時点で嫌な予感はしていたが、まぁいい」
「指示を待機。どうしますか?」
「やるべきは一つだ。距離を取って飽和攻撃。やつの高機動でも避けれない弾幕を張って削り殺す」
シャルトルーズは、自らの問いに答えたラスティの言葉に、頷いた。
「肯定。後退しながら一斉射撃を推奨。こちらに寄らせたら負けです、絶対に近寄らせてはいけません」
二人の意見が合致したことで、迅速な作戦が開始させる。バックステップで後退しながら一斉射撃で迎撃した。
そんな二人とは真反対にカラスは特攻した。多少なりとも稼げれば御の字というような行為だったが、コンマすら稼げずに撃ち抜かれ、辛さは物言わぬゴミに変わり果ててしまう。
「あれはオメガウェポンを装備か。厄介だ」
「疑問。オメガウェポンとは? あの武器でしょうか?」
「詳細は省くが、局地的な運用を想定した兵器のことだ。今回は凄い頑丈で切れ味のいいブレードのようだな。理論上は対魔法シェルターだってバターみたいに解体できる」
「驚愕。そんなヤバい代物を、たかが一強盗団風情が持ってるんですか?」
「強化手術は軍に入る時しか受けられない。そこから盗んだんだろうな」
寄られたら負ける近距離武器持ちの相手は、一定の距離を保ちながらの射撃戦で消耗させるのがセオリーだ。
ラスティ達が引き撃ちという戦法を取ったのも、そのセオリーに従ったからである。
「驚愕。なんてデタラメな動き。いくら強化人間とはいえ、何でもあり過ぎじゃないですな?」
「強化人間は5階の窓にジャンプで到達できる連中だ。甘く見ると痛い目を見るぞ」
しかし、大きくジャンプして空に輝く太陽を背にし、視界を潰そうと三次元的な機動で迫ってくる様子はシャルトルーズの度肝を抜いた。
シャルトルーズのデータではそんな事が出来るとは夢にも思わなかったが、ラスティ曰く驚くことではないらしい。どうやら強化人間になると、そのような曲芸じみた動きも可能になるようだ。
「A-1、攻撃を開始します」
「魔導ゴーレムからも攻撃が来た……強化人間にばかり気を取られてるとやられるぞ。牽制の弾幕を張りながら、魔導ゴーレムから目を逸らしてはいけない」
「苦悶。あの魔導ゴーレム、狙いが結構的確です。嫌な位置にバシバシ飛ばしてきます」
強化人間ではそれだけではない。引き連れている魔導ゴーレムが足や腕といった部位に的確に攻撃を飛ばしてきて、迎撃に集中する事も出来ない。
弾速や威力からして、恐らくは射撃魔法系列遠距離用魔力弾だろう。なんとかしたいが、前衛が強化人間なだけに距離を詰められなかった。
迂闊に距離を詰めてしまえば、強化人間の膂力とオメガウェポンのブレードから繰り出される攻撃で簡単に切り刻まれてしまう。
「難しいな」
遠距離魔法を持っている相手から距離を取るなんて愚策もいいところだが、強化人間相手に引き撃ちをしなければ全滅しかねない。
「ぐ、あ」
シャルトルーズがうめき声を上げる。傷ついている。 ジリ貧と呼んでいい現状が続くのは非常にマズい。だが、今のところはどうしようもない。
ラスティ達には、このまま下がるという選択肢しか用意されていなかった。
「マスターラスティ。後ろのヤツが邪魔です。何か作戦はありますか?」
「……魔力残量的に現実改変が行使できるのは数秒、更に射程も限られる。煙幕魔法は可能か?」
「肯定。最初の一発なら有効だと思います。それ以降はそれを想定した動きをされるでしょう」
「まずは魔導ゴーレムの視界だけを塞ぐ。すぐ抜けられるだろうが無いよりはマシになるはずだ」
「了解」
言われた通りに正確に狙いを定めて魔法を発動した。放たれたスモークは魔導ゴーレムの少し手前に着弾し、広がってその視界を煙で塞ぐ。
「それから炎属性魔法だ。上手く行けばこれで落ちる」
「魔法発動、マジカルフレイム」
恐らく抜けてくるであろう場所に炎属性魔法を置いておく。単純な思考回路しか持たない第一世代の魔導ゴーレムであれば、これでマジカルフレイムに直撃する筈だった。
だが予想を裏切り、魔導ゴーレムはマジカルフレイムに直撃しなかった。まるで炎属性魔法が飛んでくる事を見抜いたかのように、大回りして煙から飛び出してきたのだ。
爆発ダメージを最小限に抑えられた事に、シャルトルーズは驚愕した。まさか魔導ゴーレム風情にそんな事が出来るなんて思わなかったからだ。
「驚愕。強化されているのは人間だけじゃないようです」
「愉快な事になってる」
「疑問。なんか変じゃないですか? 良く見たら腕から魔法デバイスが生えてるように見えますが……あれは、あれは最近出回ってる武器内蔵型の特殊腕でしょうか?」
「動き回りながら高火力の攻撃を放つ、をコンセプトに作られたものか。恐らく魔法デバイス内蔵型のタイプ」
「合点。動きながら的確に狙ってこれる理由はそれですか」
「武器腕。武器腕は動きながら高火力の攻撃が出せるけど、デメリットとして装甲が脆いし、最悪の場合は弾薬に誘爆して自爆する。しかし」
「苦悶。丁寧な事に、こちらの有効射程に入らないように立ち回っています。有効打を与えるには距離を詰めるしかありません」
「強化人間相手に距離を詰めたら切り刻まれる」
「疑問。ならどうしますか? このまま続ければ魔力が無くなります! 魔力切れを起こせば同じ事です」
魔力を使って魔法や異能を使っている以上、魔力切れの問題はどうにも出来ない。移動力を損なわない程度に魔力補給を持ってくると、あまり長時間の戦闘は展開できず、短時間に限定しても5回が限界だ。
だからこそ通常の作戦時は物資輸送が可能な飛行場を確保して、そこで適宜魔力や糧食を補給するのが当たり前なのだが、今回はそれを行えない。
そしてこの戦闘で既にばら撒かれた魔力は、おおよそ戦闘3回分。つまり中ピンチから大ピンチに移ろうかというところ。
「少し、無理をする」
「疑問。勝算は?」
「向こうの出方次第になるが、それなり以上にあるさ。魔導ゴーレムを複製」
現実改変でコピーさせた物は中身が粗雑で、使い捨てにさせても心が痛まない。魔力をごっそり持っていかれるのが難点か。
「提案。こっちで隙を作ります。合図はそっちでお願いします」
「了解した」
ラスティはシャルトルーズを囮として活用しつつ奥の魔導ゴーレムの発射間隔をカウントしていた。
一発……二発……三発……という間隔である。
魔力弾の連射の間隔は狭くないが、広くもない。発射直後の一瞬が勝負の分かれ目になるだろう。
「耐えろ」
まだ狙いを定めているのか、自律人形は撃ってこない。
そうしている間に、距離が迫ってくる。
「耐えろ」
弾幕の勢いが弱くなってしまったからか、更に距離を詰められた。油断すると、強化人間の一足飛びでブレードの射程内に入れられてしまいそうだった。
「オラァッ!」
リロードタイミングなどを重ねて、弾幕を途切れさせた一瞬に地面が爆ぜた。
古代の遺物の超性能の目をもってしても捕捉が難しい早さで、シャルトルーズの懐に飛び込んでくる。
「耐えろ……っ!」
ぶぉん! と空気を切り裂く音と共に振るわれた実体ブレードを、二人は避ける。
「今だ。反転攻勢!」
コピーされた魔導ゴーレムが強化人間の男に衝突する。そしてそこにシャルトルーズの炎属性魔法マジカルフレイムが炸裂する。
魔導ゴーレムのコピーに誘爆して、炎は威力を上げる。
「がああああっ!?」
「決着。終わりです」
燃える男の首を跳ねて、そのままの勢いで魔導ゴーレムの弱点に拳を突き立てる。
弱点を貫かれた魔導ゴーレムは光を無くして沈黙する。
ボロボロになった二人はお互いに見つめ合い、そしてハイタッチをした。
「流石だ、シャルトルーズ」
「肯定。もっと褒めて良いですよ。貴方も良かったです」
「お互いに良い動きをした」
飛行型ゴーレムが着陸して、撤収作業を開始していた。
◆新着メールが届いています◆
FROM:世界封鎖機構
TITLE:お疲れ様です。
魔導ゴーレムは受け取りました。まずはお疲れ様てす。
近々そちらにネフェルト少佐が向かいますから、その時は歓迎よろしくお願いします。お茶請けはクッキーだと彼女は喜ぶでしょう。
追加報酬の件だけど、ネフェルト少佐が行った時に渡します。今すぐに渡せるものではないし、まだ承認されてないから。
もちろん待たせる分、相応なのは約束するわよ。期待して待っててください
では。お互い生きてれば、また会いましょう。