第三一話 田園風景
弥勒は巳代と進捗を確認する為、夜の田園地帯で会う。
弓の練習をした日の夜、弥勒は巳代と会っていた。場所は屋外だった。なんとなく、そよ風が吹く田園地帯を歩いてみたかったのだ。蛍はいるだろうかと、淡い期待もあった。
二人が会った理由は他でもなく、頭が回る巳代に、墓地の件での進捗を報告する為であった。
「夜は本当に静かなんだな、弥勒」
「本当だね。東京じゃこうもいかないよね」
「同じ日本なのかって思ってしまうよな。こうやって田んぼで作られた食材が市場で売られ、金になる。それが巡って東京に集まり、東京で経済が成長し、その力で日本を引っ張っていく。住む場所を変えて役割を分けてるだけなのに、なぜだか東京にいるだけで、田舎を馬鹿にしても良い様な気がしてしまうって、よくよく考えればおかしな話だよなぁ」
「知らないから馬鹿にして、幻滅して、嫌いになるんだよ。お互いに」
「真理だよな……それ。俺達は知らなくちゃいけないんだ。進捗はどうだ?」
「依然として、大友修造に繋がりそうななにかは見つかってない。ねぇ巳代」
「なんだ?」
「もし大友修造が本当に日本政府の転覆を目論んでいるとして、大友が学園の人も勢力に加えようとしているのなら、皆はもっと僕達を警戒するんじゃないのかな。僕が皆に聞いて回っても、そんな傾向はなかった。伊東さんも、僕が弓の連射を会得したいと漏らした時に、戦争とか革命を連想することもなく、サバイバルゲームでもするのかって冗談をいっていたんだよ。もし仮に大友の仲間なら、僕達を仲間に引き入れようと口説いてくるんじゃないかな」
「確かにな。大友の敵なら、それはそれで奴を倒す為に俺達に協力する筈だ。なにもいい出さないということは、本当になにも知らない……つまり、大友修造は日向分校の連中を、仲間に引き入れようとはしてないってことか」
「僕はそう思うんだ」
そんな話をしていた時、弥勒のスマホに連絡が入った。それは父正仁からであった。残業中に隙間時間を見つけて、連絡をよこしてくれたらしい。
「今の話を、父に連絡していたんだ」
「長官はどんなお考えかな」
父正仁は、弥勒が得た情報を整理した。そして大友が政府転覆の為に、東京侵攻という実力行使に及ばない可能性があるということを、弥勒へ伝えた
大友修造がもし攻撃を行うならば必ず神通力使いを仲間にしようとする。そして学園で仲間を作ろうとするならば、未来予知を行い、人の生死に関わる怪異を味方にする筈である。その為にも陰陽部の懐柔は確実であり、その中でも、九州でも有数の神社である宮崎神社を側に置く日向分校陰陽部を無視する筈はない。そして門外不出の未来予知について口外してしまう程、弥勒を信用した緒方吉臣が、大友修造について知り得る情報を開示しない訳が無いというという内容であった。
「つまり弥勒、大友修造はテロを必要とせず、政府転覆を成す方法を持っているということだろう。そうなれば捜索はかなり難しいものになるぞ」
「そうだね……。直接、テロを目的とした武器や薬品の製造、神通力使いの集結を行わないのなら、仮に見つけられたとしても、止める為に警察や惟神庁を動かすことも出来ないから……」
弥勒は、大友修造という見えない恐怖に、改めて面倒臭さを感じた。しかし、次にするべきことは、分かっていた。父からの連絡に、こんな指示があったのだ。
「巳代、僕達の旅は続きそうだよ。ここじゃない場所でね」
「どういう意味だ?」
「父さんからの指示だ。大友修造と思われる神通力使いの存在を知っていた犯罪者は、その殆どが九州北部にいる。あの墓地も大分だったし、九州北部だ。伊東君がいっていた諫干問題というのも長崎で、九州北部だ。だから、北部で物理的に中心地に当たる福岡に僕たちは転校するみたいだ」
「だったら初めから北部の学校にしておいてくれって話だがな」
「この日向分校は、始まりの帝都と呼ばれる程、皇室に縁のある地だよ。無視する訳には行かないよ。それに、ここでの出会いは決して無駄にならないと思うんだ」
「ま、稲葉や伊東と話すのは楽しかったしな」
そういって二人は、散歩を止めて、家へ引き返すことにした。
二人が会った理由は他でもなく、頭が回る巳代に、墓地の件での進捗を報告する為であった。
「夜は本当に静かなんだな、弥勒」
「本当だね。東京じゃこうもいかないよね」
「同じ日本なのかって思ってしまうよな。こうやって田んぼで作られた食材が市場で売られ、金になる。それが巡って東京に集まり、東京で経済が成長し、その力で日本を引っ張っていく。住む場所を変えて役割を分けてるだけなのに、なぜだか東京にいるだけで、田舎を馬鹿にしても良い様な気がしてしまうって、よくよく考えればおかしな話だよなぁ」
「知らないから馬鹿にして、幻滅して、嫌いになるんだよ。お互いに」
「真理だよな……それ。俺達は知らなくちゃいけないんだ。進捗はどうだ?」
「依然として、大友修造に繋がりそうななにかは見つかってない。ねぇ巳代」
「なんだ?」
「もし大友修造が本当に日本政府の転覆を目論んでいるとして、大友が学園の人も勢力に加えようとしているのなら、皆はもっと僕達を警戒するんじゃないのかな。僕が皆に聞いて回っても、そんな傾向はなかった。伊東さんも、僕が弓の連射を会得したいと漏らした時に、戦争とか革命を連想することもなく、サバイバルゲームでもするのかって冗談をいっていたんだよ。もし仮に大友の仲間なら、僕達を仲間に引き入れようと口説いてくるんじゃないかな」
「確かにな。大友の敵なら、それはそれで奴を倒す為に俺達に協力する筈だ。なにもいい出さないということは、本当になにも知らない……つまり、大友修造は日向分校の連中を、仲間に引き入れようとはしてないってことか」
「僕はそう思うんだ」
そんな話をしていた時、弥勒のスマホに連絡が入った。それは父正仁からであった。残業中に隙間時間を見つけて、連絡をよこしてくれたらしい。
「今の話を、父に連絡していたんだ」
「長官はどんなお考えかな」
父正仁は、弥勒が得た情報を整理した。そして大友が政府転覆の為に、東京侵攻という実力行使に及ばない可能性があるということを、弥勒へ伝えた
大友修造がもし攻撃を行うならば必ず神通力使いを仲間にしようとする。そして学園で仲間を作ろうとするならば、未来予知を行い、人の生死に関わる怪異を味方にする筈である。その為にも陰陽部の懐柔は確実であり、その中でも、九州でも有数の神社である宮崎神社を側に置く日向分校陰陽部を無視する筈はない。そして門外不出の未来予知について口外してしまう程、弥勒を信用した緒方吉臣が、大友修造について知り得る情報を開示しない訳が無いというという内容であった。
「つまり弥勒、大友修造はテロを必要とせず、政府転覆を成す方法を持っているということだろう。そうなれば捜索はかなり難しいものになるぞ」
「そうだね……。直接、テロを目的とした武器や薬品の製造、神通力使いの集結を行わないのなら、仮に見つけられたとしても、止める為に警察や惟神庁を動かすことも出来ないから……」
弥勒は、大友修造という見えない恐怖に、改めて面倒臭さを感じた。しかし、次にするべきことは、分かっていた。父からの連絡に、こんな指示があったのだ。
「巳代、僕達の旅は続きそうだよ。ここじゃない場所でね」
「どういう意味だ?」
「父さんからの指示だ。大友修造と思われる神通力使いの存在を知っていた犯罪者は、その殆どが九州北部にいる。あの墓地も大分だったし、九州北部だ。伊東君がいっていた諫干問題というのも長崎で、九州北部だ。だから、北部で物理的に中心地に当たる福岡に僕たちは転校するみたいだ」
「だったら初めから北部の学校にしておいてくれって話だがな」
「この日向分校は、始まりの帝都と呼ばれる程、皇室に縁のある地だよ。無視する訳には行かないよ。それに、ここでの出会いは決して無駄にならないと思うんだ」
「ま、稲葉や伊東と話すのは楽しかったしな」
そういって二人は、散歩を止めて、家へ引き返すことにした。