Exspetioa2.5.14 (1)
今日は、皆さんとパーティーの続きをしました。
昨日のお菓子の残りを並べると、シスター・マネチアが、「質問大会~!」と元気に言って拍手しました。私たちも合わせて拍手し、さっそく、質問大会がはじまりました。
まず、シスター・パンジーが「お互いに、なんて呼び合っているのぉ?」と質問しました。
シスター・ロベリアは、シスター・アナベルを「アナ」と、シスター・アナベルは、シスター・ロベリアを「ロゥ」と呼んでいらっしゃるそうです。
シスター・マネチアが、「へえ、いいね。私たちはシスターを外しているだけだからちょっと羨ましいかも。まあ、これが一番しっくりくるんだけど」とシスター・トレニアとほほ笑みを交わしました。
シスター・ロベリアが、「そういえば、シスター・プリムラとシスター・パンジーは?」と質問しました。
「私は『パンジー』って下の名前で呼んでいて」
「私は、『お姉さま』って呼んでいるのよぉ」
シスター・パンジーがそう言った直後、皆さんが、「いいなぁ!」と身を乗り出しました。
「『お姉さま』は、呼ぶのも呼ばれるのもとってもあこがれちゃう、最高の敬称よね……!」
シスター・アナベルが、指を組んで体をくねらせおっしゃいました。
「わかる。好きになった相手としっくりくる呼び名で呼び合えることも幸せだけど、やっぱあこがれちゃうよね。ってことで、シスター・セナ! 私をお姉さまって呼んで‼」
シスター・トレニアが私にぎゅっと抱きつこうとしたのを、シスター・ルゴサが間に入って止めました。
「いい加減にして! この浮気もの!」
「えぇ? でも、想像してみなよ? シスター・セナが『お姉さま』って呼んでくれるの」
シスター・ルゴサはシスター・トレニアを睨みながら、顔を赤くしました。
「いいわぁ」
とシスター・パンジーが、ほんのり赤くなった頬を両手で挟んでおっしゃいました。
「シスター・セナは皆の妹みたいなものだものね!」
とシスター・ロベリアがおっしゃいました。大切に想っていただけていることを感じて、とっても嬉しくなりました。
シスター・プリムラがうなずきながら、「さあ、そろそろ質問大会に戻りましょう」とおっしゃいました。
シスター・ルゴサが、「はい!」と手を上げました。
「エスの手紙は、どちらの部屋のクローゼットにあったの?」
「シスター・ロベリアよ。二人とも、毎日クローゼットに手紙を置いていたのだけれど……」
「そうなのね! じゃあ、シスター・ロベリアも『懺悔室(ざんげしつ)の魔女』に会った? どんな感じだった?」
「あっ、そういえばまだ、かわいいかわいいシスター・セナが、そのことを知らないんだったわ!」
皆さんは、「あっ」「ごめんね、シスター・セナ」と慌てると、声をひそめて、私に、エスになるための手順を教えてくださいました。
まず、クローゼットに「誰とエスになりたいのか」を綴った手紙を置いておくのだそうです。
すると、クローゼットに黒い手紙が届くのだそうです。その手紙に指示された場所へ行くと、不思議な赤い扉があり、同封された鍵を差し込むと、「懺悔室」に行くことができるのだそうです。
懺悔室はほとんど暗闇で、赤い格子と、自分の座る赤い椅子が、うっすらと見える程度なのだとか。
そして、赤い格子の向こう側の闇の中には、「懺悔室の魔女」と呼ばれる方が座っていらっしゃるそうなのです。
そのお方に「さあ、懺悔なさい」と促されたら、神よりも愛する花の修道女ができてしまったことを告白するそうです。その方からお許しをいただくと、おそろいの指輪をもらえるのだとか。その指輪をエスになりたいお相手に渡し、お相手が承諾したら、その指輪を同じ場所につけて、晴れてエスとして結ばれる、ということのようです。難しいのが、エスの手紙は、希望したすべての花の修道女のもとに届くのではないということです。どなたが手紙を運んでいらっしゃるのかもわからないので、運命次第、ということらしいのです。そのため、たとえ片思いのままでもとにかく手紙を置いて、エスの手紙が届いてから告白する子もいるのだとか。
「その経緯を伺うと、エスのお二人は、運命で結ばれているように思えますね」
私がそう言うと、皆さんがぽっと頬を赤らめて、
「素敵! なんて美しい考え方なの!」
「たしかにそうだわぁ」
「ただ名前のあるつながりが欲しいと思っていただけだったけど、シスター・セナの考えを聞いて捉え方が変わったよ」
「運命で結ばれている関係、それがエス……」
「私たち、運命で結ばれているのね……!」
そう、口々に共感してくださいました。嬉しかったです。
「シスター・セナの考え方は、とても新しくて、気持ちが明るくなるわよね。」
「本当に。私たちもセナの言葉のおかげで前に進めたし、すっごく救われたの」
「私たち、気持ちを確かめ合った時、エスになりたいけどどうしようって悩んでいて……」
「私たちは神を愛し、神の楽園をつくるために神様にこのかたちをいただいた。それなのに、神様を裏切ってしまったことの罪の意識……それに、ここにいる皆と違う――美しい花の集まりの中で、ただひとり、黒く腐り、美しさを失ってしまうような、周りに疎ましい目で見られてしまうような、そんな恐ろしさもあって……」
「あんまりにも暗く考えすぎたばかりに、心が渇いてしまうんじゃないかって、そんなことにもたくさんおびえて……」
「だけど、シスター・セナが話を聞いてくれて、神様は、私たちが幸せでいれば嬉しいはずだ、幸せな気持ちになってくれるはずだって言ってくれて……」
「シスター・セナがそう言ってくれたから、私たち、エスになる決心がついたの。神様を幸せな気持ちにすると思えば、神様を裏切ることはない。今まで通り、皆と同じでいられるって思えて。それで、一緒に手紙をクローゼットに置こうって……」
「私たちにとって、罪はとても怖いもの。だけどシスター・セナは、その怖さを軽くしてくれた」
「この秘密の花園だってそう。ここでは、堂々と好きという気持ちを表現し合える。私たちがエスでいられる場所を、シスター・セナがつくってくれているの」
「シスター・セナのおかげで、私たちはエスでいられるの」
シスター・ロベリアとシスター・アナベルが、「本当にありがとう」とほほ笑んでくださいました。
私こそです。皆さんが幸せでいてくださったら、私も幸せな気持ちになれるのです。だから、幸せになってくださり、その上、こんなに素敵なお言葉をくださり、私にたくさん幸せをくださり、本当にありがたい気持ちでいっぱいです。
「もっとたくさんのエスの子たちが、シスター・セナの考え方を知ることができたら救われるのにね」
「だめよ、エスは秘密の存在だもの。きっと私たち以外にもたくさんいるだろうけれど……」
「そうねぇ、仕事中と礼拝中は、皆指輪を外しているみたいだしねぇ」
以前、西の修道院で、エスの文化を知ったシスター・アザレアが、西のマザーに伝え、エスが禁止になったことがあるのだそうです。私たちのマザーはどのようなお考えをおもちかわからないのですが、流行していることが誰かに知られたら、禁止されてしまうかもしれません。秘密にしておくのははばかられますが、皆さんにとってエスは幸せ。その幸せを奪いたくないと、私は思ってしまうのです。
「まあまあ、エスの卵にその考えを伝えられただけでもよしとしようよ」
シスター・マネチアが、そう言ってにやりとシスター・ルゴサを見ました。皆さんも、シスター・ルゴサの方を見ました。
ほとんどエスしかいないこの場所に、エスではない私と、シスター・ルゴサが呼ばれていた理由が、やっとわかりました。私は、今まで皆さんのお話を聞いていたからに違いないのですが、おそらく、シスター・ルゴサは、エスになりたいお相手がいるのでしょう。
シスター・ルゴサは、顔を赤くして、
「もう! すぐ話がそれる! いいから次の質問に行きましょう! また時間がなくなってしまうわ!」
と叫びました。たしかに、という雰囲気になって、それからは順調に、シスター・ロベリアとシスター・アナベルへの質問が続きました。いつからお互い意識していたのか。エスになる前、互いの想いを確かめ合うための手紙のやりとりをしたのはいつからか。どちらからエスになろうと言ったのか。これからしたいこと、などなど。
時折目を合わせ、くすぐったそうにほほ笑むお二人は、とても幸せそうでした。
昨日のお菓子の残りを並べると、シスター・マネチアが、「質問大会~!」と元気に言って拍手しました。私たちも合わせて拍手し、さっそく、質問大会がはじまりました。
まず、シスター・パンジーが「お互いに、なんて呼び合っているのぉ?」と質問しました。
シスター・ロベリアは、シスター・アナベルを「アナ」と、シスター・アナベルは、シスター・ロベリアを「ロゥ」と呼んでいらっしゃるそうです。
シスター・マネチアが、「へえ、いいね。私たちはシスターを外しているだけだからちょっと羨ましいかも。まあ、これが一番しっくりくるんだけど」とシスター・トレニアとほほ笑みを交わしました。
シスター・ロベリアが、「そういえば、シスター・プリムラとシスター・パンジーは?」と質問しました。
「私は『パンジー』って下の名前で呼んでいて」
「私は、『お姉さま』って呼んでいるのよぉ」
シスター・パンジーがそう言った直後、皆さんが、「いいなぁ!」と身を乗り出しました。
「『お姉さま』は、呼ぶのも呼ばれるのもとってもあこがれちゃう、最高の敬称よね……!」
シスター・アナベルが、指を組んで体をくねらせおっしゃいました。
「わかる。好きになった相手としっくりくる呼び名で呼び合えることも幸せだけど、やっぱあこがれちゃうよね。ってことで、シスター・セナ! 私をお姉さまって呼んで‼」
シスター・トレニアが私にぎゅっと抱きつこうとしたのを、シスター・ルゴサが間に入って止めました。
「いい加減にして! この浮気もの!」
「えぇ? でも、想像してみなよ? シスター・セナが『お姉さま』って呼んでくれるの」
シスター・ルゴサはシスター・トレニアを睨みながら、顔を赤くしました。
「いいわぁ」
とシスター・パンジーが、ほんのり赤くなった頬を両手で挟んでおっしゃいました。
「シスター・セナは皆の妹みたいなものだものね!」
とシスター・ロベリアがおっしゃいました。大切に想っていただけていることを感じて、とっても嬉しくなりました。
シスター・プリムラがうなずきながら、「さあ、そろそろ質問大会に戻りましょう」とおっしゃいました。
シスター・ルゴサが、「はい!」と手を上げました。
「エスの手紙は、どちらの部屋のクローゼットにあったの?」
「シスター・ロベリアよ。二人とも、毎日クローゼットに手紙を置いていたのだけれど……」
「そうなのね! じゃあ、シスター・ロベリアも『懺悔室(ざんげしつ)の魔女』に会った? どんな感じだった?」
「あっ、そういえばまだ、かわいいかわいいシスター・セナが、そのことを知らないんだったわ!」
皆さんは、「あっ」「ごめんね、シスター・セナ」と慌てると、声をひそめて、私に、エスになるための手順を教えてくださいました。
まず、クローゼットに「誰とエスになりたいのか」を綴った手紙を置いておくのだそうです。
すると、クローゼットに黒い手紙が届くのだそうです。その手紙に指示された場所へ行くと、不思議な赤い扉があり、同封された鍵を差し込むと、「懺悔室」に行くことができるのだそうです。
懺悔室はほとんど暗闇で、赤い格子と、自分の座る赤い椅子が、うっすらと見える程度なのだとか。
そして、赤い格子の向こう側の闇の中には、「懺悔室の魔女」と呼ばれる方が座っていらっしゃるそうなのです。
そのお方に「さあ、懺悔なさい」と促されたら、神よりも愛する花の修道女ができてしまったことを告白するそうです。その方からお許しをいただくと、おそろいの指輪をもらえるのだとか。その指輪をエスになりたいお相手に渡し、お相手が承諾したら、その指輪を同じ場所につけて、晴れてエスとして結ばれる、ということのようです。難しいのが、エスの手紙は、希望したすべての花の修道女のもとに届くのではないということです。どなたが手紙を運んでいらっしゃるのかもわからないので、運命次第、ということらしいのです。そのため、たとえ片思いのままでもとにかく手紙を置いて、エスの手紙が届いてから告白する子もいるのだとか。
「その経緯を伺うと、エスのお二人は、運命で結ばれているように思えますね」
私がそう言うと、皆さんがぽっと頬を赤らめて、
「素敵! なんて美しい考え方なの!」
「たしかにそうだわぁ」
「ただ名前のあるつながりが欲しいと思っていただけだったけど、シスター・セナの考えを聞いて捉え方が変わったよ」
「運命で結ばれている関係、それがエス……」
「私たち、運命で結ばれているのね……!」
そう、口々に共感してくださいました。嬉しかったです。
「シスター・セナの考え方は、とても新しくて、気持ちが明るくなるわよね。」
「本当に。私たちもセナの言葉のおかげで前に進めたし、すっごく救われたの」
「私たち、気持ちを確かめ合った時、エスになりたいけどどうしようって悩んでいて……」
「私たちは神を愛し、神の楽園をつくるために神様にこのかたちをいただいた。それなのに、神様を裏切ってしまったことの罪の意識……それに、ここにいる皆と違う――美しい花の集まりの中で、ただひとり、黒く腐り、美しさを失ってしまうような、周りに疎ましい目で見られてしまうような、そんな恐ろしさもあって……」
「あんまりにも暗く考えすぎたばかりに、心が渇いてしまうんじゃないかって、そんなことにもたくさんおびえて……」
「だけど、シスター・セナが話を聞いてくれて、神様は、私たちが幸せでいれば嬉しいはずだ、幸せな気持ちになってくれるはずだって言ってくれて……」
「シスター・セナがそう言ってくれたから、私たち、エスになる決心がついたの。神様を幸せな気持ちにすると思えば、神様を裏切ることはない。今まで通り、皆と同じでいられるって思えて。それで、一緒に手紙をクローゼットに置こうって……」
「私たちにとって、罪はとても怖いもの。だけどシスター・セナは、その怖さを軽くしてくれた」
「この秘密の花園だってそう。ここでは、堂々と好きという気持ちを表現し合える。私たちがエスでいられる場所を、シスター・セナがつくってくれているの」
「シスター・セナのおかげで、私たちはエスでいられるの」
シスター・ロベリアとシスター・アナベルが、「本当にありがとう」とほほ笑んでくださいました。
私こそです。皆さんが幸せでいてくださったら、私も幸せな気持ちになれるのです。だから、幸せになってくださり、その上、こんなに素敵なお言葉をくださり、私にたくさん幸せをくださり、本当にありがたい気持ちでいっぱいです。
「もっとたくさんのエスの子たちが、シスター・セナの考え方を知ることができたら救われるのにね」
「だめよ、エスは秘密の存在だもの。きっと私たち以外にもたくさんいるだろうけれど……」
「そうねぇ、仕事中と礼拝中は、皆指輪を外しているみたいだしねぇ」
以前、西の修道院で、エスの文化を知ったシスター・アザレアが、西のマザーに伝え、エスが禁止になったことがあるのだそうです。私たちのマザーはどのようなお考えをおもちかわからないのですが、流行していることが誰かに知られたら、禁止されてしまうかもしれません。秘密にしておくのははばかられますが、皆さんにとってエスは幸せ。その幸せを奪いたくないと、私は思ってしまうのです。
「まあまあ、エスの卵にその考えを伝えられただけでもよしとしようよ」
シスター・マネチアが、そう言ってにやりとシスター・ルゴサを見ました。皆さんも、シスター・ルゴサの方を見ました。
ほとんどエスしかいないこの場所に、エスではない私と、シスター・ルゴサが呼ばれていた理由が、やっとわかりました。私は、今まで皆さんのお話を聞いていたからに違いないのですが、おそらく、シスター・ルゴサは、エスになりたいお相手がいるのでしょう。
シスター・ルゴサは、顔を赤くして、
「もう! すぐ話がそれる! いいから次の質問に行きましょう! また時間がなくなってしまうわ!」
と叫びました。たしかに、という雰囲気になって、それからは順調に、シスター・ロベリアとシスター・アナベルへの質問が続きました。いつからお互い意識していたのか。エスになる前、互いの想いを確かめ合うための手紙のやりとりをしたのはいつからか。どちらからエスになろうと言ったのか。これからしたいこと、などなど。
時折目を合わせ、くすぐったそうにほほ笑むお二人は、とても幸せそうでした。