R-15
part Aki 4/21 am 6:16
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手に取っていただきありがとうございます。
最初に 少しだけ解説を。
この作品は 2人の主人公の視点が交互に切り替わりながら 進んでいきます。
また 6話目までで 短編としても楽しめる構成になっています。
騙されたと思って6話まで 読み進めていただければと 思います。
少しでも 楽しんでいただければ 幸いです。
物語は 早朝の駅から 始まります……。
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ボクの名前は 宮村 亜樹。
平凡な男子高校生だ。彼女いない歴16年。一目惚れした女の子の姿が見たいばっかりに 声をかける勇気は おろか 気づいてもらえる可能性さえ ほとんど無いのに ここ2週間 毎日ドキドキしながら 駅のホームの階段を上ってる。
平凡だ。
平凡じゃなくてストーカー…って自分でツッコミそうになるけど 断じてストーカーでは ない。つけ回してるわけじゃないし 自分の行動がマトモかどうか客観的に見るように努力しているつもりだ。……いや マトモじゃないのか。なんの収穫も進展も無い行動を2週間続けるとか……ないな。完全にバカだ。彼女の名前すら わからないのに。恋に恋する16歳。平凡すぎて泣きたくなる。
まぁいい。長い階段も もうすぐ終わりだ。階段を上れば彼女の姿が見える。ドキドキが激しくなる。あと…3段。
見えた!
いつもの場所に並んで 彼女は 通勤快速を待っていた。
ベリーショートの黒髪に すらっとした後姿。彼女の姿が目に入ったとたん 心臓が止まりそうになる。そして 白いうなじ越しに見える横顔。黒い睫毛と陶器みたいな白い肌が印象的で 息が詰まるほど綺麗だ。今朝は 幸運にも彼女の後ろには 誰も並んでいない。そのポジションを他のヤツに渡すワケには いかない。小走りで彼女の後ろに並びに行く。だが もちろん怪しまれるのは ダメダメだ。あくまでも自然に…だ。
……ポジション ゲット!
今日はツイてる。TVの星占いは総合3位。恋愛運は星5つだっただけのことは ある。ビバ!星占い! ……わかってる。彼女と付き合い始めたわけでも 会話したワケですらない…。ただ〈後ろに立っただけ〉だ。
少し落ち着こうと深く息を吸い込む。
……いや やっぱりスゴいラッキーデーなのかも知れない。前に立つ彼女から春の風にのって 髪の匂いが漂ってきた。甘い匂い。女の子の薫りだ…。胸いっぱい吸い込みながら 彼女の髪を見る。ほんの少しクセのある艶やかな黒髪。耳が少し隠れるくらいのショートヘア。スポーティーだけど 女の子らしさもあって 卵形の顔立ちによく似合っている。背は けっこう高い。手足も長くてスタイル抜群だ。スポーツをやってるのか 背筋がいつも伸びていて 立ち姿がホントに綺麗だ。後ろ姿を眺めるだけで ため息が出る。
後ろから まじまじと見つめているのは いかにも怪しいので スマホを出してSNSをチェックするふりをしながら 彼女の様子をさらに窺う。濃紺のブレザーにFIHのエンブレムは藤浜工業の制服だ。藤工は公立のスポーツ強豪校で 文武両道で鳴らしている。この桜橋駅から通勤快速で3つ向こうの藤浜で降りて 東に少し歩いたところにある。……違う。ストーカーじゃないから!つけたりしてないってば!2番目の兄の母校だから知ってるだけだよ!
ちなみにボクの学校は 藤浜で快速急行に乗り換えて 4つ向こうの光岡中央から地下鉄で2駅先の公園東口から徒歩10分。徒歩の時間も合わせると通学に優に1時間半以上かかる。だから 8時前に学校に着こうと思うと 毎朝6時23分発の列車に乗んなきゃならない。そしてそれを 中学時代から もう5年も続けているんだ。校則も変に厳しいし…。ママに騙されて あんな学校受けるんじゃなかったよ…。
まぁ おかげで彼女に出会うことができたんだけどさ。
そうだ。彼女の話に戻ろう。
彼女は いつものことながら カッターシャツの第一ボタンを外して燕脂色のネクタイを少しくつろげたラフな着こなし。たぶん新入生じゃないな。ボクと同じ2年生かな? …そうだといいな。年下ってだけでダメって子も多いもんな…。彼女は 手鏡を出して 前髪を整えている。そんなありふれた仕草も 彼女みたいな美人がやるドキッとする。前髪を見ようとして 高く掲げた鏡越しに彼女の端正な顔が見える。意志の強そうなきりっとした眉。真っ黒な瞳。やっぱり 黒くて長い睫毛がすごく綺麗だ…。お化粧は してないみたいで頬のところのうぶ毛が朝日に照らされて光っていた。完璧なスタイルと淡麗な目鼻立ちで 近づき難い印象だけど そういうところは まだ子どもっぽくって ちょっと安心した。それにほっぺたがピンク色でホントの桃みたい…。……なんかカワイイ。
そういえば 彼女は さっきから目元をしきりに気にしている。
一重で切れ長の涼やかな目元で 大人っぽくって すごく素敵だ。どうしたんだろ? コンタクトがズレたってわけでもなさそうだけど? でも あんまりのぞき込むと目があってしまいそうなので 視線を他へ移す。視線を下に落とすと グレンチェックのプリーツスカートを かなり短めに穿いているのが目に入る。きっと下には レギンスを穿いてるんだろうけど すらりと伸びた長い脚が眩しすぎる。そして短めの布に隠された キュッと締まっていて それでいて肉付きの良さそうなお尻…。
……さっ 触ってみたいっ!
思わず喉の奥が鳴るけど もちろん そんなことは 許されない。当たり前だが そんなことをすれば一巻の終わり。ゲームオーバーだ。いつの日か 彼女の恋人になって このお尻を撫でても許される……そんな身分になれる日が来るんだろうか? そうなることを祈っているハズだけど 今のボクには到底 現実に起こることとは 思えなかった。
……そう。そこは 神聖不可侵な場所なんだ。
ってゆーか 彼女をそういう対象として見ること自体 許されることでは 無い気がする。……いや エッチしたくないと言えばウソになるけど…さ。だけど 彼女に出会ってからの この2週間 ボクは オナニーしていない。なんだか彼女への裏切り行為のような気がしちゃうんだ…。…うん。付き合ってはおろか 彼女に認知すらされては いないんだけど…。
煩悩を振り払うべく 視線を他へ移す。
カバンだ。カバンなら妄想も煩悩も膨らまない。彼女は カバンを2つ肩から掛けている。1つは大きな部活のカバン。メーカーのロゴでバレー用ってわかる。ほぼ 毎日このカバンを持ってるんで たぶん 彼女はバレー部で 朝練に行くところなんだろう。そう考えると 背が高いことや 背筋を伸ばした立ち居振る舞いも なんとなく納得がいく。もう1つは 青灰色の学校指定っぽい通学鞄。こちらもズシッと重そうだ。そんなことを考えながら 通学鞄を眺めていると あるものが目に入る。
「あっ!」
思わず声を上げてしまった。
ヤバッ。
案の定 彼女が怪訝そうな顔をしてこちらに振り向く。心臓がリアルに喉から飛び出そうになる。でも 素知らぬ顔をしてやり過ごすしか方法は 無い。ポーカーフェイスだ。スマホに目を落としメッセージをチェックするふりをする。実際には 大したことなかったんだろうけど 彼女は ずいぶん長いことボクを見ていたみたいだった。胸は バクバクいうし 膝は ガクガク震えたけど どうしようもない。スマホ操作のふりを続けるしかなかった。彼女にボクのこと知って欲しい 認識して欲しいって真剣に願ってたハズけど 突然 奇声を上げる変人って認知されるとか……最低だ。今日のボクは 平凡じゃなく最低。
やがて 列車の到着を告げる構内放送が聞こえ 彼女は 前を向き 手鏡を通学鞄にしまうと 到着した列車に乗り込もうと前に進み始める。ボクもスマホを鞄にしまいながら身を屈め 彼女の通学鞄のチェーンについた〈部活魂〉ってゆーキーホルダーをもう一度確かめる。そう。その裏には ひらがなで〈こんの〉と刻まれていたのだった。
『こんのさん』
それが彼女の名前だった。
ここ2週間で最大の収穫だった。彼女は幻みたいな〈駅にいる美人の女の子〉から『こんのさん』という具体的な存在になったんだ。
総合運3位。恋愛運は星5つ。ビバ!星占い。
今日はマジでラッキーデーか?
………。
……。
…。
to be continued in “part Kon 4/21 am 6:14”
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手に取っていただきありがとうございます。
最初に 少しだけ解説を。
この作品は 2人の主人公の視点が交互に切り替わりながら 進んでいきます。
また 6話目までで 短編としても楽しめる構成になっています。
騙されたと思って6話まで 読み進めていただければと 思います。
少しでも 楽しんでいただければ 幸いです。
物語は 早朝の駅から 始まります……。
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ボクの名前は 宮村 亜樹。
平凡な男子高校生だ。彼女いない歴16年。一目惚れした女の子の姿が見たいばっかりに 声をかける勇気は おろか 気づいてもらえる可能性さえ ほとんど無いのに ここ2週間 毎日ドキドキしながら 駅のホームの階段を上ってる。
平凡だ。
平凡じゃなくてストーカー…って自分でツッコミそうになるけど 断じてストーカーでは ない。つけ回してるわけじゃないし 自分の行動がマトモかどうか客観的に見るように努力しているつもりだ。……いや マトモじゃないのか。なんの収穫も進展も無い行動を2週間続けるとか……ないな。完全にバカだ。彼女の名前すら わからないのに。恋に恋する16歳。平凡すぎて泣きたくなる。
まぁいい。長い階段も もうすぐ終わりだ。階段を上れば彼女の姿が見える。ドキドキが激しくなる。あと…3段。
見えた!
いつもの場所に並んで 彼女は 通勤快速を待っていた。
ベリーショートの黒髪に すらっとした後姿。彼女の姿が目に入ったとたん 心臓が止まりそうになる。そして 白いうなじ越しに見える横顔。黒い睫毛と陶器みたいな白い肌が印象的で 息が詰まるほど綺麗だ。今朝は 幸運にも彼女の後ろには 誰も並んでいない。そのポジションを他のヤツに渡すワケには いかない。小走りで彼女の後ろに並びに行く。だが もちろん怪しまれるのは ダメダメだ。あくまでも自然に…だ。
……ポジション ゲット!
今日はツイてる。TVの星占いは総合3位。恋愛運は星5つだっただけのことは ある。ビバ!星占い! ……わかってる。彼女と付き合い始めたわけでも 会話したワケですらない…。ただ〈後ろに立っただけ〉だ。
少し落ち着こうと深く息を吸い込む。
……いや やっぱりスゴいラッキーデーなのかも知れない。前に立つ彼女から春の風にのって 髪の匂いが漂ってきた。甘い匂い。女の子の薫りだ…。胸いっぱい吸い込みながら 彼女の髪を見る。ほんの少しクセのある艶やかな黒髪。耳が少し隠れるくらいのショートヘア。スポーティーだけど 女の子らしさもあって 卵形の顔立ちによく似合っている。背は けっこう高い。手足も長くてスタイル抜群だ。スポーツをやってるのか 背筋がいつも伸びていて 立ち姿がホントに綺麗だ。後ろ姿を眺めるだけで ため息が出る。
後ろから まじまじと見つめているのは いかにも怪しいので スマホを出してSNSをチェックするふりをしながら 彼女の様子をさらに窺う。濃紺のブレザーにFIHのエンブレムは藤浜工業の制服だ。藤工は公立のスポーツ強豪校で 文武両道で鳴らしている。この桜橋駅から通勤快速で3つ向こうの藤浜で降りて 東に少し歩いたところにある。……違う。ストーカーじゃないから!つけたりしてないってば!2番目の兄の母校だから知ってるだけだよ!
ちなみにボクの学校は 藤浜で快速急行に乗り換えて 4つ向こうの光岡中央から地下鉄で2駅先の公園東口から徒歩10分。徒歩の時間も合わせると通学に優に1時間半以上かかる。だから 8時前に学校に着こうと思うと 毎朝6時23分発の列車に乗んなきゃならない。そしてそれを 中学時代から もう5年も続けているんだ。校則も変に厳しいし…。ママに騙されて あんな学校受けるんじゃなかったよ…。
まぁ おかげで彼女に出会うことができたんだけどさ。
そうだ。彼女の話に戻ろう。
彼女は いつものことながら カッターシャツの第一ボタンを外して燕脂色のネクタイを少しくつろげたラフな着こなし。たぶん新入生じゃないな。ボクと同じ2年生かな? …そうだといいな。年下ってだけでダメって子も多いもんな…。彼女は 手鏡を出して 前髪を整えている。そんなありふれた仕草も 彼女みたいな美人がやるドキッとする。前髪を見ようとして 高く掲げた鏡越しに彼女の端正な顔が見える。意志の強そうなきりっとした眉。真っ黒な瞳。やっぱり 黒くて長い睫毛がすごく綺麗だ…。お化粧は してないみたいで頬のところのうぶ毛が朝日に照らされて光っていた。完璧なスタイルと淡麗な目鼻立ちで 近づき難い印象だけど そういうところは まだ子どもっぽくって ちょっと安心した。それにほっぺたがピンク色でホントの桃みたい…。……なんかカワイイ。
そういえば 彼女は さっきから目元をしきりに気にしている。
一重で切れ長の涼やかな目元で 大人っぽくって すごく素敵だ。どうしたんだろ? コンタクトがズレたってわけでもなさそうだけど? でも あんまりのぞき込むと目があってしまいそうなので 視線を他へ移す。視線を下に落とすと グレンチェックのプリーツスカートを かなり短めに穿いているのが目に入る。きっと下には レギンスを穿いてるんだろうけど すらりと伸びた長い脚が眩しすぎる。そして短めの布に隠された キュッと締まっていて それでいて肉付きの良さそうなお尻…。
……さっ 触ってみたいっ!
思わず喉の奥が鳴るけど もちろん そんなことは 許されない。当たり前だが そんなことをすれば一巻の終わり。ゲームオーバーだ。いつの日か 彼女の恋人になって このお尻を撫でても許される……そんな身分になれる日が来るんだろうか? そうなることを祈っているハズだけど 今のボクには到底 現実に起こることとは 思えなかった。
……そう。そこは 神聖不可侵な場所なんだ。
ってゆーか 彼女をそういう対象として見ること自体 許されることでは 無い気がする。……いや エッチしたくないと言えばウソになるけど…さ。だけど 彼女に出会ってからの この2週間 ボクは オナニーしていない。なんだか彼女への裏切り行為のような気がしちゃうんだ…。…うん。付き合ってはおろか 彼女に認知すらされては いないんだけど…。
煩悩を振り払うべく 視線を他へ移す。
カバンだ。カバンなら妄想も煩悩も膨らまない。彼女は カバンを2つ肩から掛けている。1つは大きな部活のカバン。メーカーのロゴでバレー用ってわかる。ほぼ 毎日このカバンを持ってるんで たぶん 彼女はバレー部で 朝練に行くところなんだろう。そう考えると 背が高いことや 背筋を伸ばした立ち居振る舞いも なんとなく納得がいく。もう1つは 青灰色の学校指定っぽい通学鞄。こちらもズシッと重そうだ。そんなことを考えながら 通学鞄を眺めていると あるものが目に入る。
「あっ!」
思わず声を上げてしまった。
ヤバッ。
案の定 彼女が怪訝そうな顔をしてこちらに振り向く。心臓がリアルに喉から飛び出そうになる。でも 素知らぬ顔をしてやり過ごすしか方法は 無い。ポーカーフェイスだ。スマホに目を落としメッセージをチェックするふりをする。実際には 大したことなかったんだろうけど 彼女は ずいぶん長いことボクを見ていたみたいだった。胸は バクバクいうし 膝は ガクガク震えたけど どうしようもない。スマホ操作のふりを続けるしかなかった。彼女にボクのこと知って欲しい 認識して欲しいって真剣に願ってたハズけど 突然 奇声を上げる変人って認知されるとか……最低だ。今日のボクは 平凡じゃなく最低。
やがて 列車の到着を告げる構内放送が聞こえ 彼女は 前を向き 手鏡を通学鞄にしまうと 到着した列車に乗り込もうと前に進み始める。ボクもスマホを鞄にしまいながら身を屈め 彼女の通学鞄のチェーンについた〈部活魂〉ってゆーキーホルダーをもう一度確かめる。そう。その裏には ひらがなで〈こんの〉と刻まれていたのだった。
『こんのさん』
それが彼女の名前だった。
ここ2週間で最大の収穫だった。彼女は幻みたいな〈駅にいる美人の女の子〉から『こんのさん』という具体的な存在になったんだ。
総合運3位。恋愛運は星5つ。ビバ!星占い。
今日はマジでラッキーデーか?
………。
……。
…。
to be continued in “part Kon 4/21 am 6:14”