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作者: 金星タヌキ
R-15
part Aki 7/23 am 11:23



 3:25

 3:26

 3:27

 3分27秒の『True Soul』の演奏が終わる。
 ……むぅ。何なんだろう……この物足りない感じ。『True Soul』発表から3ヶ月。発表直後にダウンロードして毎日のように聴いてるけど なんか最近 物足りなさを感じるんだよな。T-GROとしては 今までで最高·最長のヒットチャートランキングだし 有線とかでもかかりまくっている。いい歌詞だし いいメロディだし 音も丁寧に作ってあるんだけど ……でも なんだかって感じてしまう。3分ちょっとのシングルカットだからか? 切ない歌詞が胸に刺さる『君を想うとき』とか ヴァイオリンのスクラッチノイズがグッと心を掴む『月と桜』とか いかにもT-GROって感じの火花の散るような緊張感が足りないのか? いや…曲のパワーは しっかり伝わって来てる。
 もちろんT-GROの曲にだって 好きになれない曲は あるし アルバム収録の曲なんかだと 駄作だろって思うような曲もある。でも 『True soul』は 駄作とは 思わない。ってゆーか T-GRO歴代の曲の中でも 屈指の名曲だと思う。
 
 ……けどが足りて無い。
 
 そのが 喉元まで出かけてるんだけど うまく言葉にすることができない。まぁ アルバム収録の曲は さらに作り込んだロングバージョンになるだろうし そっちに期待ってとこだな。
 

 次の曲を選ぶ前に スマホから顔を上げて 辺りを見回す。

 あっ 来た!

 横断歩道を渡ってくる一団の中に見えるスラッとした濃紺のジャージ姿。こんのさんに間違いない。嬉しくて手を振ろうとするけど こんのさんは こちらには 目もくれず スマホで何か確認している。そして そのままボクの横に立ち スマホの操作を続ける。

 ボクと一緒のときは スマホ出してるとこ あんまり見ないし 急ぎの返信しなきゃいけないときとかでも 一言断ってから操作してくれてる気がする。当たり前といえば当たり前のマナーだけど こんのさんは そこら辺は 運動部だけあって礼儀正しい人なので こーゆー姿は 珍しい。よっぽど大事なことなんだろうか? 午前中の試合は インターハイ出場をかけた大切な試合って話だったし その事 絡みなのかな?

 こっちに見向きもしてもらえないのは かなり寂しいけど きっと大事な用事なんだろうから 邪魔しないように 黙って待っていよう…。
 ………。
 ……。
 …。

 
 しばらくすると こんのさんは 返信を終え スマホをカバンにしまう。
 なのに ボクの方には 相変わらず目もくれない。ガン無視だ。

 ……な なんで?
 
 なんか こんのさんを怒らせるようなことしたっけ?
 落ち着け……本気の本気で怒ってるんだったら 待ち合わせ場所になんか来ないハズ。待ち合わせに来てボクの隣に立って無視ってことは『自分で気づいて謝れ』ってことなんだろうけど 見当もつかない…。

 なんなんだろう?

 これまで ボクなりに こんのさんには 誠意を持って対応してきたつもりだし やましいところなんて これっぽっちも無い。

 ……いや ちょっとはあるな…。

 こないだの こんのさんに痴漢する最低な夢以来 淫乱なこんのさん(この設定自体が妄想以外の何物でも無い…)にイジワルする妄想でスゴく興奮してしまう自分がいる。こんのさんのことを好きだし 優しくしたい 護ってあげたい…って気持ちに嘘偽りは 無いけど 彼女を支配したい穢したい…ってゆードス黒い衝動があるのも たぶん事実。そーゆー願望を押し殺し過ぎて 夢ってゆー形で自分の潜在意識の暗黒面を目の当たりにするハメになった。これ以上 自分のダークサイドを顕在化するのは あまりに危険だ。
 ときどき ガス抜きしなきゃね…。

 まぁ 要するにこんのさんをネタにオナニーするってことなんだけど…。しちゃった後はスゴく後悔するし 次の朝 手を握る時とか ホントに後ろめたい。ボクのこと信じて 不安でボクの手を握ってくれてるのに そのボクときたら痴漢願望のある下衆なのだ…。

 ホントの最低野郎だな……ボクは。

 繋いだ手から バレちゃうんじゃ…って 心配になるけど それこそ妄想で 心なんて読めるハズは 無い。もちろん人に話したり 日記に残したりもしていない。心の奥底にしっかり隠して 他人には 絶対にバレてるハズは 無い。大丈夫だ……たぶん。
 こんのさんが 怒ってるのは 少なくともボクの歪んだ願望のせいでは 無いハズ。少なくとも 昼間のボクは 彼女に最大限の誠意を持って接しているつもり…。

 でも なんで無視されてるんだろう?

 不安な気持ちで こんのさんの顔を見つめていると チラリとこちらを見た彼女と目が合う。その目は 珍しくなんの感情も湛えては いない。怒りや軽蔑じゃなくて 少し安心したけど ボクをボクと思ってないような キョトンとした表情で ボクの姿を上からしたまで ゆっくりと眺める。

 何だか初めて会った人みたいだ。

 と 思った瞬間。
 突然 いつものこんのさんに戻ったかと思うと 急に目を白黒させて 顔が真っ赤になる。

 なんなんだ いったい?

 思わず声をかけようとした瞬間 こんのさんが口を開いた。

 
「あっ あきちゃん?」


 ………。
 ……。
 …。
 

 
                         to be continued in “part Kon 7/23 am 11:42”






 
 
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