R-15
part Aki 7/24 am 2:23
〈あき〉でイクときとは全く違う 一瞬の閃光。
こんのさんを征服したという充足感と 目の前が真っ暗になるような虚無感。その暗闇の中に ボクは沈み込むように落ちていく……。
………。
……。
…。
暗闇の一番奥底についたとき ボクは ゆっくりと目を開いた。
暗がりの中に 白い天井と 丸いシーリングライトが見える。
……いつものボクの部屋。
すべての感覚は 砂粒になって流れ去り 今 確かに感じられるのは 頬を伝う涙の温もりだけ。夜 あんなに泣いたのに まだ 流す涙があったなんて 驚きだ。
「……最低の夢だったな」
声に出して言ってみる。
淫乱なこんのさんを 屈服させて犯すってゆーストーリーも酷かったけど 本当に最低だったのは 最後 こんのさんに『あきちゃんが好き。愛してる』って言われて〈救われた〉って感じたこと…。
前半の展開は こんのさんに嫌われたい 嫌いになりたいってゆー願望の表れだろう。眠る前 泣きながら決めたこと『こんのさんのことは 諦める。距離を取って 姿を消す』ってゆー想いが夢になったんだろう。もちろん こんのさんのことを 屈服させて支配したいってゆーボクの歪んだ欲望の表れでもある。こんのさんの肉体を弄び 恣にしたけど 胸踊る感じはなく 正直 胸が締め付けられる感じで 辛い夢だった。
どちらかと言うと悪夢だ。
後半 こんのさんに『あきちゃん好き。愛してる』って言われてからは 胸は 高鳴り そのドキドキは 余韻となって まだ続いていた。
そう。
ボクは まだ こんのさんに愛される夢を見ているんだ。何時間も泣いて泣いて 諦めようって自分で決めたハズなのに…。
でも 目覚めている時に見てる この夢の方が ずっと悪夢だ。
起きてる時に見る夢は 努力すればいつか叶うもの 叶えるものじゃなきゃ。〈絵描きになりたい〉 〈Vリーガーになりたい〉…。なれないかもしれないけど なるための方法は 見えている。
それが 起きてる時に見る夢。
〈男になって 愛されたい〉は 寝てる時に見る夢。なのに ボクは 現実世界で そのことを夢想している。女の子の身体に閉じ込められ そこから出ることのできない〈悪い夢〉。
醒めない悪夢の中で生きていく。
明日は 待ちに待ったハズのT-GROのライブ。
デートになるハズで準備したんだけど こんな気持ちで当日を迎えることになるなんて…。2人で楽しい時間を過ごせば過ごすほど ボクはどんどん辛くなっていくような気がする。
やっぱり 寝る前に決めたみたいに 急に体調悪くなったことにして パスしてしまおうか? ライブの後 夏休み中は 会う予定は ない。二学期になったら 通学時間を変えるとかして 二度と会わないようにすればいい。その方が 幸せかもしれない。
でも 夢に気づかされたように それでもボクは こんのさんを求めてる。たぶん ボクがこの地獄から抜け出す最後のチャンスは こんのさんを痴漢から助けた次の日の朝。もう会わない方がいいって思ったんだから 電車を1本ずらすべきだったんだ。
でも あの朝 ボクは こんのさんと出会い 会話を交わしてしまった…。
あの朝から ボクは こんのさんの笑顔の奴隷。
今 分かったこと……それは 逃げ出すことすら叶わぬ地獄だってこと。いつか救いがあるかもしれない煉獄ですらない。永遠に終わりのこない 本物の地獄。
もちろん こんのさんは〈友達〉として 優しくしてくれるし 気を遣ってもくれる。でも ボクの望みは〈あき〉じゃなく〈ボク〉を見てもらうこと。そして〈友達〉じゃなく〈恋人〉になること。親しくなればなるほど 絶望が深くなる…。
……いや そうじゃない。
1つだけ 解決する方法がある。とても簡単な方法だ。それは こんのさんに ボクが実は 男だって伝えて好きだって告白すること。そうすれば 彼女は ボクの存在に気付き ボクは 彼女の前から 姿を消す十分な理由ができる。
自殺にも似た 運命の飛躍。
でも 今ある全部を投げ捨てて ボクに気づいてもらう一瞬に すべてを賭ける。そんなことできるだろうか?
ボクは ただ 駅のホームで見かけた女の子を好きになっただけ。
ただ それだけなのに 死にたいって思うほど 苦しんでいる。人を好きになるっていうのは そんなに罪深いことなんだろうか? 生きながら地獄に堕ちるほどの。恋に恋していた 4月は 遠い過去。
枕元のデジタル時計は もうすぐ3時。
12時間後には 桜橋で こんのさんと待ち合わせ。その時 ボクはちゃんと笑えるだろうか…?
今は〈こんのさん〉って考えただけで 目から涙が溢れてしまう…。
………。
……。
…。
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4章の終わりまで 読んでいただきありがとうございます。
紺野さんの家での2回目のデート。
あくまでも〈女の子同士〉と思っている紺野さん。
その姿にクラクラする亜樹。
ちょっとお色気シーン多めで 楽しく書けました。
そして 最後 紺野さんの何気ない一言で 2人の関係は ガラリと変わります。
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to be continued in “Chapter 5:Live“True soul””