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作者: 金星タヌキ
R-15
part Kon 10/17 am 10:23




 洗面所の鏡を見ながら 睫毛にマスカラをのせる。

 ……うん。
 
 右は 上手にできた。
 次は 左。

 
「ナニ 化粧してんの? 姉ちゃんデート?」


 リビングに居た啓吾が 後ろに立って絡んでくる。
 
 なんなんだろ?
 何で ウチの家の男どもって こんなに絡み方がウザイんだ?


「……違う」


 こないだ テキトーなこと言ったせいで七面倒なことになったし キッパリ否定しておく。
 
 うん。
 
 左も上手にできた。
 ちょっとは 目がパッチリして見える。
 
 最後にリップ塗って完成。
 
 あきちゃんにしてもらったときほどじゃないにしても 結構上手にお化粧できた。
 こないだから 何回か練習した甲斐があったって感じ。

 
 振り向いて ニッコリ。
 啓吾に笑顔を向けてやる。

 啓吾は 一瞬 息を飲んで 明らかに動揺した様子。
 あたしの雰囲気が いつもと違うから戸惑ってる。

 ……でもな。
 啓吾は 素直じゃないからな。

 
「何だよソレ? ケバいって。なんか目ぇデカくて気持ち悪いし」


 オッケーオッケー。
 ちゃんと目 大きく見えてるみたい。
 アイラインとマスカラの効果出てる。
 いい感じかも。

  
「……啓吾。アンタ 女子がさ お化粧してきたときに 気のきいた一言も言えないようじゃ あっさりフラれるわよ? 素直に お姉ちゃん綺麗とか言えないワケ?」

果乃かの 化粧なんてしねぇし」


 果乃?
 
 呼び捨て?
 エラそーに。


「そりゃまだ中学生だもん。でも 来年は 高1でしょ。果乃ちゃんだってデートんとき お化粧したりすると思うわよ? そんとき『ケバい』なんて言ったら 一撃アウト。気をつけなさいね?」


 一応 忠告しといてやろう……姉として。

 啓吾のヤツは 鼻白んだ感じでタジタジだ。
 ふふん。
 ちょっといい気味。


 啓吾に流し目で一瞥をくれてやってから 階段を上がり自分の部屋に戻る。


 
 今日は あきちゃんの17歳のお誕生日。
 あきちゃんに無理言って 今日は あきちゃん家にお邪魔させてもらうことになっている。

 お祝いするだけだったら 七海堂でもよかったんだけど あきちゃん家に行くことにしたのには 理由がある。

 
 その理由がコレ。

 ……そう。
 約束のエプロンドレスだ。


 学校のファッションショーまでは まだ もう少し時間あるけど あきちゃんの誕生日に渡したくて 突貫工事で作業して 2人分 3日前になんとか完成した。

 あきちゃん ファッションショーの後だと思ってるだろうから 今日プレゼントしたら サプライズになるハズ。

 ……クレリックシャツは まだ 間に合ってないんだけど。

 
 まあ シャツは 白のブラウスでも ぜんぜん 大丈夫だと思うし。
 聖心の あの丸襟のブラウスなら 絶対可愛いハズ。

 あたしも 白のブラウスは学校用しか持ってないから 今日は それを着る予定。
 昨日 試しに着てみたけど けっこういい感じだった。
 あきちゃんの選んでくれた臙脂色は 大人っぽくて 女の子 女の子してるワケじゃないけど やっぱ 女の子らしくて あたしが着ても 可愛く見えた。

 ……いや。
 まあ 例のフルメイクあきちゃんと並んで着てたら もちろん キビシイことになるとは 思うけど…さ。


 とりあえず お互い着替えるハズだし もしかしたら メイクし直したりすることになるかもしれないから あきちゃん家でって お願いした。

 ホントの理由は ナイショのまま『あきちゃんの部屋が見てみたい』ってゆーのを理由にしたんだけど あたしの部屋も2回来てくれてるから そんなに不自然じゃないハズ。
 
 お母さんのオッケーが出たってことで 今日お邪魔させてもらうことになった。
 はじめは 昼から行くつもりだったんだけど せっかくのお誕生日だしってことで あきちゃんのお母さんが お昼ご飯を作ってくれることになった。
 あたしのワガママのせいで 迷惑かけることになっちゃってホント申し訳ないんだけど あきちゃんとゆっくり過ごせるってゆーのは やっぱ嬉しい。
 今日また 少しでも仲良くなって あたしのこと〈特別〉って思ってくれたらいいな。

 
 エプロンドレス 気に入ってもらえるといいけど……。

  
 大丈夫 大丈夫。
 丹精込めて作ったんだ。
 色は あきちゃんが 決めてくれたんだし。
 きっと 喜んでくれるハズ…。
 ………。
 ……。
 …。
 

            to be continued in “part Aki 10/17 am 10:52”


 


 
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