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作者: 金星タヌキ
R-15
part Kon 10/17 am 10:52



 桜台公園までの緩い上り坂をゆっくりと歩く。

 
 Yin&Yan の角から ずーっと一本道。
 てっぺんまで登ると 桜ノ宮八幡宮がある。
 その最後の坂がキツくなる手前にあるのが桜台公園。

 桜ノ宮のお祭りは 子どもの頃から 何度も行ったことがある。
 その手前の公園も知ってた。
 校区外だったし遊んだことは ないけど。

 この辺りは パパが子どもの頃は 雑木林が広がっていて 絶好の遊び場だったんだって(パパは『オレらの縄張り』って言ってた…)。
 だけど 30年ほど前から 森を切り開いて新興住宅が建ち始めたらしい。

 
 この道沿いも 新しくて綺麗なお家が並んで建っている。
 あきちゃん家も こんな感じの大きな家なのかな?


 
 坂道も終わりに近づき桜台公園が見えてきた。

 十字路のところに住宅案内図が立っているのが見える。
 その奥が 桜台公園。
 路上にあきちゃんの姿は 見えない。

 
 公園に到着する。
 少し大きめの児童公園で フットサルぐらいできそうな運動場と ブランコ 滑り台 ジャングルジムなんかが見える。
 名前の通り桜の樹がたくさん植わっていて 春は きっと綺麗なんだろうな。
 秋の柔らかい日差しを浴びた桜の葉が 少し色づき始めている。

 
 こないだのこともあるし 公園の中をゆっくりと見回す。
 小学校高学年くらいの男の子女の子がジャングルジムの前に5~6人集まって ナニやら 真剣な表情でヒソヒソ話をしている。
 コイバナでも してるんだろうか…。

 
 とりあえず 他に人の姿は 見えない。
 いくら あきちゃんが小さいとはいえ 小学生には 見えないハズ。

 …うん。
 大丈夫。
 栗色の髪の子は いない。

 
 まあ 大抵の場合 あたしの方が 待ち合わせ場所に先に着いてることが多い。
 あきちゃんのことだから 時間までには 来るだろう。

 
 坂道が見通せる住宅案内図の前に立って あきちゃんを待つ。
 案内図で宮村って お家を探すけど パッと見ただけじゃ見つからない。
 公園の直ぐ側ってワケじゃなさそう。

 
 
 そんなこと考えてたら 左手の下り坂を登ってくる栗色のツインテールを見つけた。
 
 パタパタと小走りで坂道を登ってくる。
 いかにも女の子ってゆー可愛い走り方。
 藤工の女子って スポーツ得意な子が多いから あーゆー女の子走りって久しぶりに見た気がする。

 あっ。
 止まった。

 なんか肩で息してる。
 そんなに一生懸命 走ってきてくれたのかな?
 例によって申し訳ない気持ちになる。


「あきちゃーん」


 大きく手を振りながら 坂道を下り あきちゃんのところへと向かう。


「こんのさん。こんにちは…ハァ…ハァ…。すみません。待たせちゃいました?」

「ううん。あたしも今来たとこ。こっちこそゴメンね。そんな走って来てくれなくても よかったのに…。だいぶ走った?」

「あー いや… そーゆーワケでも なくて…。すぐ そこなんですけど…。久しぶりに走ったんで…。運動不足なだけで……す」


 今日のあきちゃんは フード付きのグレーのトレーナーに けっこう色落ちしたジーンズ。
 あきちゃんにしては 珍しくボーイッシュな格好。
 
 そう。
 ボーイッシュってゆーのは こーゆー感じ。
 カワイイ女の子がやってこそのボーイッシュ。
 
 ……いや。
 もう よそう。
 今日は あたしもちゃんとお化粧してきた。
 きっと あきちゃん褒めてくれるハズ。

 
「あきちゃん。今日もカワイイ。パンツスタイルって初めて見た気がするけど ホント 脚細いね」

 
 …いや マジで。
 コンパスって感じ。
 ホント スタイルよくて羨ましい。
 
 あたしも脚長いとか細いとか言ってもらえることもある。
 とはいえ 部活で筋トレもしてるワケで…さ。
 あきちゃんの針金脚と比べると 大根脚は 自分が可哀想にしても ゴボウ脚ぐらいの感じ。
 毛深くは ないし色もそこまで黒くないから 白ゴボウってとこか…。

 
「こんのさんは 今日は ワンピースなんですね。こんのさんのワンピース姿ってゆーのも初めてな気がします。大人っぽくて素敵です」


 今日のために買ったチャコールグレーのニットワンピース。
 通販で2800円。
 そして黒のストッキング。
 穿いたあと やっぱコットンパンツにしようかって迷ったけど 今日はやっぱ で行くって決めた。

 だって好きな人の家に上がらせてもらうんだもん。
 女の子らしい格好で あきちゃんに綺麗って言って欲しいし…。
 
 
「お化粧も大人カワイイ感じ…。こんのさんって 黒くて長い睫毛がホントに魅力的だと思うんですけど 今日はマスカラとアイラインで 目力 さらにアップでドキドキしちゃいます。……あの 前にも一回言ったかもですけど 流し目とかしてもらっていいです?」

「ええっ? こんな感じ?」


 モデルさんっぽく 腰に手を当ててポーズ。
 あきちゃんに流し目を送る。
 ついでに 投げキッス。
 
 もちろん冗談だけど ちょっとは 気持ちが伝わればいいのにって思ったりもする。


「キャーッ!ステキーッ!」

 
 あきちゃんもノリノリで 2人で大笑いする。
 

「ホント 素敵で綺麗で 大人っぽくって ワンピースよく似合ってます。前も言ったかもですけど アタシ 男の子だったら 絶対『お願いします』って告白してます。ホント こんのさんって素敵です」


 今日も あきちゃんは 全力で褒めてくれる。
 
 嬉しくって 恥ずかしくって…。
 でも〈友だち〉で…。

 色々な気持ちがグルグルと渦巻く。

 『男の子だったら』か…。
 そういや あたし あの時『男の子だったらよかったのに』とか言ったんだよね…。

 何で あんなこと言っちゃったんだろ…?

 あたしが好きなのは〈あきちゃん〉で 男の子とか女の子とか もう ホント どうでもいいのに……。
 ………。
 ……。
 …。


 

            to be continued in “part Aki 10/17 am 10:58”




 

 
 
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