残酷な描写あり
R-15
酒場での一幕
B-novelの皆様、はじめまして。
龍崎操真と申します。
新たに開いた投稿サイトがオープンしたという訳で新規開拓も兼ねて投稿してみる事にいたしました。
とりあえず現在他サイトの方で公開中の最新話までは毎日投稿、その後は毎週金曜日24:00更新の予定ですが反応次第では一章で完結とさせていただくかもしれません。
よろしくお願いします。
では、どうぞ
龍崎操真と申します。
新たに開いた投稿サイトがオープンしたという訳で新規開拓も兼ねて投稿してみる事にいたしました。
とりあえず現在他サイトの方で公開中の最新話までは毎日投稿、その後は毎週金曜日24:00更新の予定ですが反応次第では一章で完結とさせていただくかもしれません。
よろしくお願いします。
では、どうぞ
霧の都、ロンドン。
二つ名の通り、包み込むように深く霧が立ち込める紳士の街の名だ。この街では現在、深い霧とともに奇妙な噂がロンドン市街を包み込んでいた。
内容は、深夜にビッグベンの時計塔を訪れた者は吸血鬼に攫われる、というチープな物。今日日、このような与太話を信じる奴がいるのかと一笑にふされて終わりのはずだったのだが、不幸なことに数ヶ月前、噂を聞いて度胸試しに訪れた男女のカップルが揃って失踪し、消えた二週間後に遺体で発見されるという事件が発生する。
しかも、笑えない事に二人の死因は失血死、首筋には小さな噛み傷が残っていたのだ。
もちろん、ロンドン市警はこの事件の解決のため、捜査を始めた。だが何も成果が出ないまま犠牲者は増え続け、夜に現場を張り込んだ捜査員5人が干からびたの遺体の状態で発見される事となった。
おかげで、「ロンドンには吸血鬼がいる」という噂は現実味を帯び始め、人気観光スポットだったビッグ・ベン時計塔、その近郊で営業していた飲食店はすっかり寂れてしまった。中には、店を畳んで故郷へと帰ってしまった者もいる。その中では、このバーは何とか持ちこたえている方だと言えよう。
来ている客の人品はお世辞にも良いとは言えないけれど、それでも食い扶持を繋いでくれる大切なお客様である事には変わりない。
「よぉ、兄ちゃん!ここはお前みたいな奴が来る場所じゃねぇぜ!」
「そうだ!とっとと帰ってママと一緒に寝ちまいな!」
ギャハハ、と下品な笑い声を上げ、一人で入店してきた白い髪の少年に絡むスキンヘッドと金髪の二人の青年。卓を囲いブラックジャックを遊ぶ2人は、両方とも英国人の特徴である白い肌を持っていたが、その瞳はなぜか血のように朱い色だった。対して、店の空気を吸い込み、少し顔をしかめる白い髪の少年はというと、少し変わった特徴を持っていた。
絡んでいる2人ほどではないがそれでも白い肌。だが、そんな事が霞むほどに印象に残るのはその眼差しだ。
まだ十代そこそこにしか見えないというのに、戦いとは無縁の世の中になってきたというのに、いくつもの修羅場を潜って来たかのような紅と黒の鋭い眼差し。
中から赤いフードが垂れ下がっている黒いコートの両脇の部分は、わずかにだが膨らんでいる。
からかいの言葉を気にもとめず、ミリタリーブーツの靴音を響かせ、目を付けたカウンター席へと腰を下ろした白い髪の少年は、バーテンダーへと注文を告げた。
「ブルズアイを一つ」
「おいおい、ここはバーだぜ! 酒を飲む所なんだから酒を頼まなきゃダメじゃねぇか!」
再び下品な笑い声を上げるスキンヘッドと金髪の英国人の青年。だが、気にかける素振りも見せる事なく、白い髪の少年はオレンジジュースとアイスティーを用意しているバーテンダーへと呼びかけた。
「いくつか聞きたい事がある。最近、ここら辺じゃ吸血鬼が出るって聞いたんだ。それは本当か?」
「さぁ? でも、その噂のおかげで客足は減ったね。おかげでこっちは商売あがったりだよ」
注文のオレンジジュースとアイスティーを混ぜたノンアルコールカクテル、ブルズアイをコースターに乗せて差し出しつつ、淡々と答えるバーテンダーも英国人の特徴である透き通るような白い肌を持っていた。が、やはりその白さは病的で、彼の瞳もまた朱。そのせいか、この場の空気は不思議と鉄の匂いと生臭さが入り交じったような気分になってくる。
白い髪の少年はさらに質問を重ねた。
「じゃ、次だ。ここら辺に料金を客の命で支払わせるって暴力バーがあるって聞いたんだけど」
「知らないね。もしかして、それはウチの事だって言いたいのかい」
「まさか。ここはそんなに景気が良い店に見えない」
「ははは。違いない」
「俺、ちょっと旅をしていてさ。繁盛している店をたくさん見てきたんだよ。良かったら繁盛する共通点を教えても良いけど」
「へぇ、それはぜひ聞いてみたいな」
「簡単さ。もっとノンアル系ドリンクも揃えりゃ良い。俺みたいなのも立ち寄りやすいようにな」
「それは良い考えだ。検討してみよう」
冗談を交えつつ、笑い合う白い髪の少年とバーテンダー。和やかな雰囲気のまま、白い髪の少年はさらに質問を重ねた。
「じゃあ、最後の質問。ここは暴力バーじゃないと言った割に、酒の匂いが妙に血なまぐさく感じるのは気のせいかな?」
この質問を口にした途端、時間が止まったのかのように店内は凍り付いてしまった。
そのまま数秒ほど経過した後、バーテンダーはカウンターの中から出てきて、近くにあったガラス製の灰皿を握った。
「皆……一杯奢るぞ!」
勢いよく灰皿を振り上げたバーテンダーは白い髪の少年の頭に振り下ろす。
だが、白い髪の少年は予期していたのか、軽々と不意打ちを避けて見せた。
そして懐から抜いた白銀の自動拳銃を突きつける。
「こいつを食らいな!」
冷徹に白い髪の少年は躊躇うことなく引き金を引き、白銀の銃を撃つ。瞬間、カウンターは一気に血で染まった。その際、棚に並べてある酒瓶が幾つか砕け、中身が飛び散ってカウンターを濡らす血と同じように床を濡らした。
店内は水を打ったように静まり返る。静寂に包まれる中、頭を撃たれたバーテンダーの身体は、まるで食べかけのビスケットが崩れるかのようにボロボロと崩壊した。
一部始終を見ていた連れの金髪の青年は忌々しげに口を開いた。
「銀の銃弾……!? 吸血鬼ハンターか! しかもその眼は……」
「ああ、そうさ。お前らが血眼になって探してる半吸血鬼、アーカードの息子だよ。吸血鬼」
挑発するかのように微笑む白い髪の少年は手持ち無沙汰なのか、白銀の銃をクルクルと回してもてあそぶ。
その後、自らをアーカードの息子と呼んだ白髪の少年は銃を回す手を止め、水平撃ちの状態で構えた。
「さぁ、準備ができたらかかってきな。そんな度胸があればの話だけど」
「ナメるなよ半端者のガキが……!!」
己の自信を示すように銃を構える白髪の半吸血鬼と、殺意をむき出しに吸血鬼特有の白い牙を覗かせる純度100%の吸血鬼。動き出すタイミングを探るように二人は互いに睨み合う。
いつの間にか、ちょっかいを出してきたスキンヘッドの姿が消えていた事に気付いてはいたが、尻尾を巻いて逃げるような臆病者を気にするのは時間の無駄なので意識から排除した。
酒の水溜まりに雫が滴り落ち、ピチャ、ピチャ、と音が響く。やがて、割れた酒瓶の残骸が棚からずり落ち、床に叩きつけられて破片となった。その瞬間、酒瓶が割れる音を合図に、金髪の吸血鬼が白髪の少年へと襲いかかる。
白髪の少年は薙ぎ払うような8連射で応戦した。が、一発も標的に当たらず撃ち出された弾丸は壁へ突き刺さる。その後、弾倉が空になった事によるスライドストップで安全装置がかかり、引き金が引けなくなってしまった。
白髪の少年が苛立たしげに舌打ちした瞬間、素早く懐へと潜り込んだ吸血鬼は少年の顎に向けて全身のバネを駆使した掌底を繰り出す。
古来より、大人20人分の力を持つとされている吸血鬼からそんな攻撃を貰えば、いくら普通の人間より頑丈な半吸血鬼と言えど、タダでは済まない。
この場合、通常なら本能的に仰け反ることで体勢を崩す事になるが、この少年の場合は違った。
バネが跳ね上がる前に頭突きを繰り出すことで逆に反撃して見せたのだ。予想外の反撃に固まってしまった所へ、少年はすかさずもう片方の手で抜いた黒鉄の銃を突きつける。
「くたばれ!」
引き金を指をかける白髪の少年は、口の端を吊り上げ獰猛な笑みを浮かべていた。そして、頭と心臓に3発ずつ銀弾を撃ち込むと、銃口から立ち上る硝煙を振り払うように黒鉄の銃をくるりと指先で回した。その後、流れるような動作で白銀の銃から空になった弾倉を取り出して新しい弾倉と交換する。
ボロボロと崩れ去る死体に背を向け、少年は店を後にするべく入り口のドアへ手を当てる。開けたドアが閉まる事でチリンとドアにぶら下がっている鈴が鳴いた瞬間、逃走したかに思われていたスキンヘッドの青年がドアを蹴破り、背後から飛びかかってきた。
白髪の少年は、襲撃に対して特に驚いた様子もなく、白銀の銃を向けることで迎え撃つ。
からかわれた鬱憤を晴らすように弾倉内の銀弾を全て撃ち込んだ白髪の少年は、蜂の巣になった禿頭を前にひと仕事終えたとばかりにため息を吐いた。残心を解いて撃鉄を戻し、両脇のホルスターへ愛銃を納めた少年は、今度こそ店を後にした。
これが白髪の少年、朱渡 明嗣のどこに居ても変わらない日常であり、父親の遺品を求めてやってきたロンドンから、生まれ故郷である日本へ発つ前のほんの些細な出来事であった。
二つ名の通り、包み込むように深く霧が立ち込める紳士の街の名だ。この街では現在、深い霧とともに奇妙な噂がロンドン市街を包み込んでいた。
内容は、深夜にビッグベンの時計塔を訪れた者は吸血鬼に攫われる、というチープな物。今日日、このような与太話を信じる奴がいるのかと一笑にふされて終わりのはずだったのだが、不幸なことに数ヶ月前、噂を聞いて度胸試しに訪れた男女のカップルが揃って失踪し、消えた二週間後に遺体で発見されるという事件が発生する。
しかも、笑えない事に二人の死因は失血死、首筋には小さな噛み傷が残っていたのだ。
もちろん、ロンドン市警はこの事件の解決のため、捜査を始めた。だが何も成果が出ないまま犠牲者は増え続け、夜に現場を張り込んだ捜査員5人が干からびたの遺体の状態で発見される事となった。
おかげで、「ロンドンには吸血鬼がいる」という噂は現実味を帯び始め、人気観光スポットだったビッグ・ベン時計塔、その近郊で営業していた飲食店はすっかり寂れてしまった。中には、店を畳んで故郷へと帰ってしまった者もいる。その中では、このバーは何とか持ちこたえている方だと言えよう。
来ている客の人品はお世辞にも良いとは言えないけれど、それでも食い扶持を繋いでくれる大切なお客様である事には変わりない。
「よぉ、兄ちゃん!ここはお前みたいな奴が来る場所じゃねぇぜ!」
「そうだ!とっとと帰ってママと一緒に寝ちまいな!」
ギャハハ、と下品な笑い声を上げ、一人で入店してきた白い髪の少年に絡むスキンヘッドと金髪の二人の青年。卓を囲いブラックジャックを遊ぶ2人は、両方とも英国人の特徴である白い肌を持っていたが、その瞳はなぜか血のように朱い色だった。対して、店の空気を吸い込み、少し顔をしかめる白い髪の少年はというと、少し変わった特徴を持っていた。
絡んでいる2人ほどではないがそれでも白い肌。だが、そんな事が霞むほどに印象に残るのはその眼差しだ。
まだ十代そこそこにしか見えないというのに、戦いとは無縁の世の中になってきたというのに、いくつもの修羅場を潜って来たかのような紅と黒の鋭い眼差し。
中から赤いフードが垂れ下がっている黒いコートの両脇の部分は、わずかにだが膨らんでいる。
からかいの言葉を気にもとめず、ミリタリーブーツの靴音を響かせ、目を付けたカウンター席へと腰を下ろした白い髪の少年は、バーテンダーへと注文を告げた。
「ブルズアイを一つ」
「おいおい、ここはバーだぜ! 酒を飲む所なんだから酒を頼まなきゃダメじゃねぇか!」
再び下品な笑い声を上げるスキンヘッドと金髪の英国人の青年。だが、気にかける素振りも見せる事なく、白い髪の少年はオレンジジュースとアイスティーを用意しているバーテンダーへと呼びかけた。
「いくつか聞きたい事がある。最近、ここら辺じゃ吸血鬼が出るって聞いたんだ。それは本当か?」
「さぁ? でも、その噂のおかげで客足は減ったね。おかげでこっちは商売あがったりだよ」
注文のオレンジジュースとアイスティーを混ぜたノンアルコールカクテル、ブルズアイをコースターに乗せて差し出しつつ、淡々と答えるバーテンダーも英国人の特徴である透き通るような白い肌を持っていた。が、やはりその白さは病的で、彼の瞳もまた朱。そのせいか、この場の空気は不思議と鉄の匂いと生臭さが入り交じったような気分になってくる。
白い髪の少年はさらに質問を重ねた。
「じゃ、次だ。ここら辺に料金を客の命で支払わせるって暴力バーがあるって聞いたんだけど」
「知らないね。もしかして、それはウチの事だって言いたいのかい」
「まさか。ここはそんなに景気が良い店に見えない」
「ははは。違いない」
「俺、ちょっと旅をしていてさ。繁盛している店をたくさん見てきたんだよ。良かったら繁盛する共通点を教えても良いけど」
「へぇ、それはぜひ聞いてみたいな」
「簡単さ。もっとノンアル系ドリンクも揃えりゃ良い。俺みたいなのも立ち寄りやすいようにな」
「それは良い考えだ。検討してみよう」
冗談を交えつつ、笑い合う白い髪の少年とバーテンダー。和やかな雰囲気のまま、白い髪の少年はさらに質問を重ねた。
「じゃあ、最後の質問。ここは暴力バーじゃないと言った割に、酒の匂いが妙に血なまぐさく感じるのは気のせいかな?」
この質問を口にした途端、時間が止まったのかのように店内は凍り付いてしまった。
そのまま数秒ほど経過した後、バーテンダーはカウンターの中から出てきて、近くにあったガラス製の灰皿を握った。
「皆……一杯奢るぞ!」
勢いよく灰皿を振り上げたバーテンダーは白い髪の少年の頭に振り下ろす。
だが、白い髪の少年は予期していたのか、軽々と不意打ちを避けて見せた。
そして懐から抜いた白銀の自動拳銃を突きつける。
「こいつを食らいな!」
冷徹に白い髪の少年は躊躇うことなく引き金を引き、白銀の銃を撃つ。瞬間、カウンターは一気に血で染まった。その際、棚に並べてある酒瓶が幾つか砕け、中身が飛び散ってカウンターを濡らす血と同じように床を濡らした。
店内は水を打ったように静まり返る。静寂に包まれる中、頭を撃たれたバーテンダーの身体は、まるで食べかけのビスケットが崩れるかのようにボロボロと崩壊した。
一部始終を見ていた連れの金髪の青年は忌々しげに口を開いた。
「銀の銃弾……!? 吸血鬼ハンターか! しかもその眼は……」
「ああ、そうさ。お前らが血眼になって探してる半吸血鬼、アーカードの息子だよ。吸血鬼」
挑発するかのように微笑む白い髪の少年は手持ち無沙汰なのか、白銀の銃をクルクルと回してもてあそぶ。
その後、自らをアーカードの息子と呼んだ白髪の少年は銃を回す手を止め、水平撃ちの状態で構えた。
「さぁ、準備ができたらかかってきな。そんな度胸があればの話だけど」
「ナメるなよ半端者のガキが……!!」
己の自信を示すように銃を構える白髪の半吸血鬼と、殺意をむき出しに吸血鬼特有の白い牙を覗かせる純度100%の吸血鬼。動き出すタイミングを探るように二人は互いに睨み合う。
いつの間にか、ちょっかいを出してきたスキンヘッドの姿が消えていた事に気付いてはいたが、尻尾を巻いて逃げるような臆病者を気にするのは時間の無駄なので意識から排除した。
酒の水溜まりに雫が滴り落ち、ピチャ、ピチャ、と音が響く。やがて、割れた酒瓶の残骸が棚からずり落ち、床に叩きつけられて破片となった。その瞬間、酒瓶が割れる音を合図に、金髪の吸血鬼が白髪の少年へと襲いかかる。
白髪の少年は薙ぎ払うような8連射で応戦した。が、一発も標的に当たらず撃ち出された弾丸は壁へ突き刺さる。その後、弾倉が空になった事によるスライドストップで安全装置がかかり、引き金が引けなくなってしまった。
白髪の少年が苛立たしげに舌打ちした瞬間、素早く懐へと潜り込んだ吸血鬼は少年の顎に向けて全身のバネを駆使した掌底を繰り出す。
古来より、大人20人分の力を持つとされている吸血鬼からそんな攻撃を貰えば、いくら普通の人間より頑丈な半吸血鬼と言えど、タダでは済まない。
この場合、通常なら本能的に仰け反ることで体勢を崩す事になるが、この少年の場合は違った。
バネが跳ね上がる前に頭突きを繰り出すことで逆に反撃して見せたのだ。予想外の反撃に固まってしまった所へ、少年はすかさずもう片方の手で抜いた黒鉄の銃を突きつける。
「くたばれ!」
引き金を指をかける白髪の少年は、口の端を吊り上げ獰猛な笑みを浮かべていた。そして、頭と心臓に3発ずつ銀弾を撃ち込むと、銃口から立ち上る硝煙を振り払うように黒鉄の銃をくるりと指先で回した。その後、流れるような動作で白銀の銃から空になった弾倉を取り出して新しい弾倉と交換する。
ボロボロと崩れ去る死体に背を向け、少年は店を後にするべく入り口のドアへ手を当てる。開けたドアが閉まる事でチリンとドアにぶら下がっている鈴が鳴いた瞬間、逃走したかに思われていたスキンヘッドの青年がドアを蹴破り、背後から飛びかかってきた。
白髪の少年は、襲撃に対して特に驚いた様子もなく、白銀の銃を向けることで迎え撃つ。
からかわれた鬱憤を晴らすように弾倉内の銀弾を全て撃ち込んだ白髪の少年は、蜂の巣になった禿頭を前にひと仕事終えたとばかりにため息を吐いた。残心を解いて撃鉄を戻し、両脇のホルスターへ愛銃を納めた少年は、今度こそ店を後にした。
これが白髪の少年、朱渡 明嗣のどこに居ても変わらない日常であり、父親の遺品を求めてやってきたロンドンから、生まれ故郷である日本へ発つ前のほんの些細な出来事であった。
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