残酷な描写あり
R-15
第29話 ファミレスにて
古本屋を後にした明嗣と澪は、ファミリーレストランにて昼食を食べていた。
最初は無言で各々が注文した料理を食べていたが、お互いが半分まで食べ勧めた辺りで澪は、ふと口を開いた。
「なんか意外だね」
「何が」
明嗣は注文したステーキ御膳の肉を箸で一切れ取りながら返事をした。付属の焼き石に肉を押しつけると、ジュウと肉が焼ける音と共にレアだった肉に焼き色がついていく。
「あたし、お昼はあの店で食べるのかなって思ってた」
「んなはずねぇだろ。彩城を連れて行こうもんなら、マスターにからかわれるのが分かりきってるからな……」
そろそろ良いかと焼き石から肉を離した明嗣は、おろしポン酢に肉を潜らせてから口へ運んだ。ポン酢のさっぱりとした風味が白飯によく合うので、明嗣は自然とかき込むように箸を動かしていた。一方、澪はスプーンで掬ったオムライスを口へ運び、咀嚼して飲み込んだ。ちなみにオムライスにかけるソースはケチャップとデミグラスソースの二種類の中から選ぶことができたので、澪はデミグラスソースをチョイスした。
「叔母さんがこの間テイクアウトで食べさせてくれたんだけどね。その料理が美味しかったの。だから今日、もしかしてってちょっと期待してた」
「そりゃ悪かったな」
対して悪びれる様子もなく受け答えしながら、明嗣はステーキ御膳を胃に納めて行く。一方、澪は気にする事なく話を続けた。
「今日も、銃とか吸血鬼と戦うための物が売っているお店に行くと思ってたし、なんていうか明嗣くんって思ったより普通の生活してるんだね」
「当たり前だろ。四六時中吸血鬼の事ばっか考えていたら気が滅入っちまうっつの」
明嗣は付け合せのお新香の最後の一切れを食べ終えると、ドリンクバーから飲み物を持ってくるべくグラスを手に立ち上がった。
「俺、飲み物持ってくるけど彩城は?」
「え?」
「グラス、空だろ。ついでだから持ってくる」
「じ、じゃあ……アイスティーを……」
「ミルクとガムシロは?」
「ミルク一つだけでお願いします……」
要望を聞いた明嗣は、速やかにドリンクバーへ移動し、飲み物を用意して席へ戻った。すると、澪が鳩が豆鉄砲を食らったような表情で見つめている事に気付いた。
「なんだよ」
「あ、その……飲み物持って来てくれると思わなかったからちょっとびっくりしちゃって……」
「なんだそれ。せっかく気を回してやったのに」
「ご、ごめん……意外だったからついね……」
澪の返事が気に入らないのか、明嗣は拗ねたように自分の飲み物を飲んだ。申し訳なくなった澪は話題を飲み物へ振ってみる事にした。
「明嗣くんが飲んでるそれってオレンジジュースだよね? オレンジジュース好きなの?」
「いや、これはオレンジジュースじゃねぇよ」
「え、だってそれ、どう見てもオレンジジュースだよ」
「コイツはブルズアイっつーノンアルのカクテル、専門の言葉で言うならモクテルって奴だ。オレンジジュースとジンジャーエールで簡単に作れるぞ」
「へぇ〜、モクテルって言うんだ……」
澪は、そういう物もあるのか、と素直に感心したような表情で明嗣のグラスを見つめた。その後、アイスティーを飲み干すと席を離れてドリンクサーバーへ向かっていく。やがて、戻ってきた澪の手には明嗣と同じ、黄色い液体で満たされたグラスが握られていた。
「あたしも作って来ちゃった」
「あっそう」
興味無いと言った様子で明嗣はストローで吸う。対して、澪は気にする事なく初めて飲む飲み物を少しストローで吸い込んだ。すると、驚いたように目を見開いた。
「オレンジジュース飲んでるみたいだけど、後からジンジャーエールの風味が来るからスッキリしてるね。結構好きかも」
「そりゃ良かったな」
明嗣は頬杖をついて何か疑るような表情で澪を観察しながら答えた。その視線を不思議に思った澪は、明嗣へストレートに尋ねてみる事にした。
「どうしたの?」
「なーんか、誰かに見られてる気がするな、って思ってな」
明嗣は目だけを動かして周囲を探った。古本屋にいる時もそうだった。ずっとこちらを観察されているような嫌な視線を感じる。しかし、それらしい奴を見つける事を見つける事はできない。
「え、誰に!? もしかしてストーカー……!?」
「一般人ストーカーしているなんてよっぽど物好きみてぇだな、ソイツ」
さっと顔色が青くなっていく澪に呆れたようにため息を吐いた明嗣は、再び席を立った。ついでに澪に気付かれないように注文の伝票も隠して手に持った。
「また飲み物?」
「トイレだよ」
短く答えると明嗣はスタスタと歩いてトイレへ向かった。そして5分経つと戻って来ると何事もなかったかのように席へ腰を下ろした。
「あ、おかえり。ところで午後からの事なんだけどさ 」
「なんだよ。どっか行きたい所あんのか」
残っている飲み物を飲みながら、明嗣が尋ねると澪は首を振った。
「ううん。午後からは、ただ歩きながらお話したいなって思っているんだけど、どうかな?」
「俺は構わねぇけど良いのか、それで」
「うん。それが良いの」
「まぁ、彩城が良いってんなら良いけどな……」
釈然としない表情を浮かべながら明嗣は澪の申し出を承諾した。そして、そろそろ腹も落ち着いてきた頃合いになってきたので、澪は立ち上がった。
「じゃあ、そろそろ行こっか。えーとお財布は……」
明嗣はすまし顔でグラスの中身を飲み干したながら、バッグの中身を探る澪へ呼びかけた
「会計ならもう済ませたぞ」
「えっ!? いつ!?」
「さっきトイレ行った時」
「うぅ……誘ったのあたしなのにごめん……」
「別に。こういうのは男が払うモンだ、って教わったのを実行しただけだから気にすんな」
当然の事と言わんばかりに、明嗣はレジを素通りして店を出ていった。その後ろを澪が申し訳ないと言いたげな表情でついて行く形で、2人はファミレスを後にした。
最初は無言で各々が注文した料理を食べていたが、お互いが半分まで食べ勧めた辺りで澪は、ふと口を開いた。
「なんか意外だね」
「何が」
明嗣は注文したステーキ御膳の肉を箸で一切れ取りながら返事をした。付属の焼き石に肉を押しつけると、ジュウと肉が焼ける音と共にレアだった肉に焼き色がついていく。
「あたし、お昼はあの店で食べるのかなって思ってた」
「んなはずねぇだろ。彩城を連れて行こうもんなら、マスターにからかわれるのが分かりきってるからな……」
そろそろ良いかと焼き石から肉を離した明嗣は、おろしポン酢に肉を潜らせてから口へ運んだ。ポン酢のさっぱりとした風味が白飯によく合うので、明嗣は自然とかき込むように箸を動かしていた。一方、澪はスプーンで掬ったオムライスを口へ運び、咀嚼して飲み込んだ。ちなみにオムライスにかけるソースはケチャップとデミグラスソースの二種類の中から選ぶことができたので、澪はデミグラスソースをチョイスした。
「叔母さんがこの間テイクアウトで食べさせてくれたんだけどね。その料理が美味しかったの。だから今日、もしかしてってちょっと期待してた」
「そりゃ悪かったな」
対して悪びれる様子もなく受け答えしながら、明嗣はステーキ御膳を胃に納めて行く。一方、澪は気にする事なく話を続けた。
「今日も、銃とか吸血鬼と戦うための物が売っているお店に行くと思ってたし、なんていうか明嗣くんって思ったより普通の生活してるんだね」
「当たり前だろ。四六時中吸血鬼の事ばっか考えていたら気が滅入っちまうっつの」
明嗣は付け合せのお新香の最後の一切れを食べ終えると、ドリンクバーから飲み物を持ってくるべくグラスを手に立ち上がった。
「俺、飲み物持ってくるけど彩城は?」
「え?」
「グラス、空だろ。ついでだから持ってくる」
「じ、じゃあ……アイスティーを……」
「ミルクとガムシロは?」
「ミルク一つだけでお願いします……」
要望を聞いた明嗣は、速やかにドリンクバーへ移動し、飲み物を用意して席へ戻った。すると、澪が鳩が豆鉄砲を食らったような表情で見つめている事に気付いた。
「なんだよ」
「あ、その……飲み物持って来てくれると思わなかったからちょっとびっくりしちゃって……」
「なんだそれ。せっかく気を回してやったのに」
「ご、ごめん……意外だったからついね……」
澪の返事が気に入らないのか、明嗣は拗ねたように自分の飲み物を飲んだ。申し訳なくなった澪は話題を飲み物へ振ってみる事にした。
「明嗣くんが飲んでるそれってオレンジジュースだよね? オレンジジュース好きなの?」
「いや、これはオレンジジュースじゃねぇよ」
「え、だってそれ、どう見てもオレンジジュースだよ」
「コイツはブルズアイっつーノンアルのカクテル、専門の言葉で言うならモクテルって奴だ。オレンジジュースとジンジャーエールで簡単に作れるぞ」
「へぇ〜、モクテルって言うんだ……」
澪は、そういう物もあるのか、と素直に感心したような表情で明嗣のグラスを見つめた。その後、アイスティーを飲み干すと席を離れてドリンクサーバーへ向かっていく。やがて、戻ってきた澪の手には明嗣と同じ、黄色い液体で満たされたグラスが握られていた。
「あたしも作って来ちゃった」
「あっそう」
興味無いと言った様子で明嗣はストローで吸う。対して、澪は気にする事なく初めて飲む飲み物を少しストローで吸い込んだ。すると、驚いたように目を見開いた。
「オレンジジュース飲んでるみたいだけど、後からジンジャーエールの風味が来るからスッキリしてるね。結構好きかも」
「そりゃ良かったな」
明嗣は頬杖をついて何か疑るような表情で澪を観察しながら答えた。その視線を不思議に思った澪は、明嗣へストレートに尋ねてみる事にした。
「どうしたの?」
「なーんか、誰かに見られてる気がするな、って思ってな」
明嗣は目だけを動かして周囲を探った。古本屋にいる時もそうだった。ずっとこちらを観察されているような嫌な視線を感じる。しかし、それらしい奴を見つける事を見つける事はできない。
「え、誰に!? もしかしてストーカー……!?」
「一般人ストーカーしているなんてよっぽど物好きみてぇだな、ソイツ」
さっと顔色が青くなっていく澪に呆れたようにため息を吐いた明嗣は、再び席を立った。ついでに澪に気付かれないように注文の伝票も隠して手に持った。
「また飲み物?」
「トイレだよ」
短く答えると明嗣はスタスタと歩いてトイレへ向かった。そして5分経つと戻って来ると何事もなかったかのように席へ腰を下ろした。
「あ、おかえり。ところで午後からの事なんだけどさ 」
「なんだよ。どっか行きたい所あんのか」
残っている飲み物を飲みながら、明嗣が尋ねると澪は首を振った。
「ううん。午後からは、ただ歩きながらお話したいなって思っているんだけど、どうかな?」
「俺は構わねぇけど良いのか、それで」
「うん。それが良いの」
「まぁ、彩城が良いってんなら良いけどな……」
釈然としない表情を浮かべながら明嗣は澪の申し出を承諾した。そして、そろそろ腹も落ち着いてきた頃合いになってきたので、澪は立ち上がった。
「じゃあ、そろそろ行こっか。えーとお財布は……」
明嗣はすまし顔でグラスの中身を飲み干したながら、バッグの中身を探る澪へ呼びかけた
「会計ならもう済ませたぞ」
「えっ!? いつ!?」
「さっきトイレ行った時」
「うぅ……誘ったのあたしなのにごめん……」
「別に。こういうのは男が払うモンだ、って教わったのを実行しただけだから気にすんな」
当然の事と言わんばかりに、明嗣はレジを素通りして店を出ていった。その後ろを澪が申し訳ないと言いたげな表情でついて行く形で、2人はファミレスを後にした。