残酷な描写あり
第七十六話「地獄針(上)」
あれからトラップだらけのすき焼きと悪戦苦闘し、何とか食べきる事が出来た。実に2時間は超えていると見ていいだろう。
……って、そんな事はどうでもいいからシャワーを浴びたい。
そんな思いをミスリアに表情から見せつけたところ、ミスリアは笑いながらも俺をバスルームに案内してくれた。
先程のすき焼きのタレでベトベトになった衣服を洗濯機に放り投げ、扉を開けてすぐ目の前のシャワーに手を伸ばしたその時だった。
シャワーを掴む左手に激痛が走った。
「――!?」
見てみるといつの間にか左手が無数の針のようなものに刺されていた。出血が止まらない。おまけに針も抜けない。
「何だこれはっ……!」
すると、シャワーのヘッドから無数の目が開き、ホースを蛇の尾の如く動き始めた。
「おい……何でシャワーがこんな化け物に……!」
バスルームのシャワーが蛇のような化け物……これではもうバスルームだなんて呼べない。下手したらトラウマになるぞ。
あれこれ考えてる内にシャワー……いや、蛇はホースを伸ばしながら俺めがけて本来水が出るぱずの噴出口から無数の針を吹き出した。
またも俺はベトベトで気持ち悪い身体で針を後方に飛んで避ける。しかし着地した刹那、左手の感覚が薄れていった。
「っ――!」
……毒だ。麻痺毒だ。あの針一本一本に塗られているのか。
「くそっ、左手がただの飾りかよ!」
俺は右手を扉の方に伸ばし、魔剣を手元に収めようとする。だが、それと同時にある事に気づいてしまった。
――おい待て、ミスリアはあの手合わせの後……俺が倒れている間に魔剣は何処に置いたんだ。場所によっては手元に来ない可能性がある。
「シャアアアアアアア!!!」
蛇が威嚇しながら針を飛ばしてくる。何の変哲もない湯船に警戒しながら毒針が迫る前に避ける。
「ちっ、武器無しでこんな奴倒せってのかよ!」
いくらなんでも無理難題だ。武器も魔力も無い状態で麻痺毒付きの針を飛ばす蛇に勝てるはずがない。これではただの処刑に等しい。
「シャアアアアア!!」
――まただ。また針を飛ばしてくる。次はどこを狙ってくる。そろそろ魔剣が来てくれないと困る。もうバスルームの3分の2はもう毒針によって足場が失われている。この感じだと間違いなく湯船にもトラップがあるから容易に入れない。
……だから頼む、来てくれ。
「シャアアア!!」
「――!!」
針が来た。左の方向。誰もいないが、足場を一つ失った。
「ちっ……身動き一つもとれねぇ!」
その後針が飛んでは避けるも、床に突き刺さってる毒針を踏んでしまう。
「あがっ……!!」
「シャアアアアア!!!」
くそっ、最初からこれが狙いだったのかよ!
全てあの蛇の思い通りに事は動く。抗う術はもう無い。手足から血を流し、左手と両足の感覚を失った英雄に勝つ術は失われた。
「シャアアア!!!」
――また針だ。今度の狙いは間違いなく俺だ。畜生、ベトベトで気持ち悪いし針は痛いしで最悪だ。若干湯船も俺の血で赤くなってるし……もうトラウマになりそうだ。
「シャアア!!」
そして、無数の針が横殴りの雨のように飛んできた――
……って、そんな事はどうでもいいからシャワーを浴びたい。
そんな思いをミスリアに表情から見せつけたところ、ミスリアは笑いながらも俺をバスルームに案内してくれた。
先程のすき焼きのタレでベトベトになった衣服を洗濯機に放り投げ、扉を開けてすぐ目の前のシャワーに手を伸ばしたその時だった。
シャワーを掴む左手に激痛が走った。
「――!?」
見てみるといつの間にか左手が無数の針のようなものに刺されていた。出血が止まらない。おまけに針も抜けない。
「何だこれはっ……!」
すると、シャワーのヘッドから無数の目が開き、ホースを蛇の尾の如く動き始めた。
「おい……何でシャワーがこんな化け物に……!」
バスルームのシャワーが蛇のような化け物……これではもうバスルームだなんて呼べない。下手したらトラウマになるぞ。
あれこれ考えてる内にシャワー……いや、蛇はホースを伸ばしながら俺めがけて本来水が出るぱずの噴出口から無数の針を吹き出した。
またも俺はベトベトで気持ち悪い身体で針を後方に飛んで避ける。しかし着地した刹那、左手の感覚が薄れていった。
「っ――!」
……毒だ。麻痺毒だ。あの針一本一本に塗られているのか。
「くそっ、左手がただの飾りかよ!」
俺は右手を扉の方に伸ばし、魔剣を手元に収めようとする。だが、それと同時にある事に気づいてしまった。
――おい待て、ミスリアはあの手合わせの後……俺が倒れている間に魔剣は何処に置いたんだ。場所によっては手元に来ない可能性がある。
「シャアアアアアアア!!!」
蛇が威嚇しながら針を飛ばしてくる。何の変哲もない湯船に警戒しながら毒針が迫る前に避ける。
「ちっ、武器無しでこんな奴倒せってのかよ!」
いくらなんでも無理難題だ。武器も魔力も無い状態で麻痺毒付きの針を飛ばす蛇に勝てるはずがない。これではただの処刑に等しい。
「シャアアアアア!!」
――まただ。また針を飛ばしてくる。次はどこを狙ってくる。そろそろ魔剣が来てくれないと困る。もうバスルームの3分の2はもう毒針によって足場が失われている。この感じだと間違いなく湯船にもトラップがあるから容易に入れない。
……だから頼む、来てくれ。
「シャアアア!!」
「――!!」
針が来た。左の方向。誰もいないが、足場を一つ失った。
「ちっ……身動き一つもとれねぇ!」
その後針が飛んでは避けるも、床に突き刺さってる毒針を踏んでしまう。
「あがっ……!!」
「シャアアアアア!!!」
くそっ、最初からこれが狙いだったのかよ!
全てあの蛇の思い通りに事は動く。抗う術はもう無い。手足から血を流し、左手と両足の感覚を失った英雄に勝つ術は失われた。
「シャアアア!!!」
――また針だ。今度の狙いは間違いなく俺だ。畜生、ベトベトで気持ち悪いし針は痛いしで最悪だ。若干湯船も俺の血で赤くなってるし……もうトラウマになりそうだ。
「シャアア!!」
そして、無数の針が横殴りの雨のように飛んできた――