残酷な描写あり
第八十五話「祭に迫る運命」
スパルタ以上の訓練を初めてから約半月が経った。あれからあらゆる家具やら何やらが怪物や魔法に変化し、俺を殺す勢いで迫ってきた。それでも魔剣や取り戻したばかりの魔眼を駆使し、乗り越えることが出来た。
ミスリアとの一騎打ちも前に比べてかなり太刀打ち出来るようになり、少しずつだが攻撃も正確に当てられるようになった。
「うん……! 動き、良くなってきてるね」
「……ま、まだ動きに慣れてないけどな」
「もう! 少しは素直に喜んでよ〜!」
しかし、褒められる事には慣れないままだ――
「ねぇ、オロチ君」
ある日の朝、ミスリアに声をかけられた。また何かの特訓だろうと読み取り、俺は魔剣を背中に差してミスリアの所へと向かった。 しかし……
「あ、訓練とかじゃないよ。少し話があってね……」
と言われたので、俺は魔剣を壁に立て掛ける。そしてミスリアの向かいの椅子に座る。
「よし、いいかな……じゃあ話すね」
「……何かあったのか?」
「うん、今年の学院祭なんだけどね……」
――学院祭? 今の学校にはそんなものが存在するのか。
「それで、開催場所が長崎県になったらしいんだよね〜」
「なっ……!?」
長崎!? いや待て、学院祭って言うくらいだしここで行われるものじゃないのか。
これに俺は疑問を抱いた。よりによって何故日本で……それも長崎県で学院祭が開かれるのか。
「な、何で長崎なんだ……?」
「これはこの学院の伝統でね。今のネフティス総長の故郷で毎年学院祭は行われてるの。今年はマサツグ君の故郷である長崎が選ばれたってこと」
総長って長崎出身だったのか……。って、そうじゃなくて。
「その学院祭って具体的にどんな事するんだ?」
「あ、そうだよね……何よりそれを言わないとだよね……」
あはは……と苦笑いして、ミスリアは改めて俺に説明する。
「『剣血喝祭』。その名の通り血と剣でぶつかり合う地獄の祭典。年々これによる死亡者は全生徒の3分の1を超える程の危険極まりない祭なんだ。それも実際の戦争のようなものだよ」
「剣血……喝祭」
聞き覚えの無い単語を口ずさむ。それだけでこれはただの祭では無いことを思い知らされる。背筋が凍る。然り、それは恐怖によるものだった。
「勿論特殊区分の子も犠牲になることだってあるよ。だからオロチ君も、エレイナちゃんも一切の油断は許されないよ」
「……」
……もしかしたらここで俺達四人の誰かがその犠牲者の中に入るかもしれない。それだけはどうしても避けなくてはならない。それを運命は望んでいる。決して叶えてはいけない願望だ。
だが、もしそれがチーム戦ではなく個人戦だったら……もし俺が亜玲澄やエレイナ、正義と戦わなければならなくなったら……その時点で宿命への復讐劇は終わりなのだろうか。
「……オロチ君?」
「あ、いや……」
あまりに深刻そうな顔をしてたからか、ミスリアが心配そうな目で見てきた。あまり心配されるのも正直嫌なので上手く誤魔化す。
だが、ミスリアには完全にお見通しだった。
「……何か隠してる?」
「え……?」
「分かるよ。だって今のオロチ君、地獄を見たような絶望したような顔してるし」
「どんな顔なんだそれ……」
しかし、これから訪れる未来は下手したら本当に地獄になりかねない。俺が仲間を殺したり、あるいは殺されたりすればあの巫女に合わせる顔が無い。
「ねぇ、先生に言ってごらん?」
「ひっ――!」
突然ミスリアが近づいてきた。思わず離れるが、それ以上に近づいてくる。
……何だこれは。非常に気まずいぞこれ。ひょっとして変な地雷を踏んだのか俺は。
「ほ〜ら、遠慮しないで?」
「い、いや……その………えっと………………」
冷や汗が止まらない。思わず慌ててしまう。そんな俺を見て小悪魔のような笑みを浮かべながらミスリアが近づいてくる。
俺を永久に呪う運命の事をミスリアに言うべきなのか……そんな運命に復讐するために俺はここにいる事を言うべきなのか。
絶対に信じてもらえない……その確信的な思いが俺の口を塞ぐのだった。
ミスリアとの一騎打ちも前に比べてかなり太刀打ち出来るようになり、少しずつだが攻撃も正確に当てられるようになった。
「うん……! 動き、良くなってきてるね」
「……ま、まだ動きに慣れてないけどな」
「もう! 少しは素直に喜んでよ〜!」
しかし、褒められる事には慣れないままだ――
「ねぇ、オロチ君」
ある日の朝、ミスリアに声をかけられた。また何かの特訓だろうと読み取り、俺は魔剣を背中に差してミスリアの所へと向かった。 しかし……
「あ、訓練とかじゃないよ。少し話があってね……」
と言われたので、俺は魔剣を壁に立て掛ける。そしてミスリアの向かいの椅子に座る。
「よし、いいかな……じゃあ話すね」
「……何かあったのか?」
「うん、今年の学院祭なんだけどね……」
――学院祭? 今の学校にはそんなものが存在するのか。
「それで、開催場所が長崎県になったらしいんだよね〜」
「なっ……!?」
長崎!? いや待て、学院祭って言うくらいだしここで行われるものじゃないのか。
これに俺は疑問を抱いた。よりによって何故日本で……それも長崎県で学院祭が開かれるのか。
「な、何で長崎なんだ……?」
「これはこの学院の伝統でね。今のネフティス総長の故郷で毎年学院祭は行われてるの。今年はマサツグ君の故郷である長崎が選ばれたってこと」
総長って長崎出身だったのか……。って、そうじゃなくて。
「その学院祭って具体的にどんな事するんだ?」
「あ、そうだよね……何よりそれを言わないとだよね……」
あはは……と苦笑いして、ミスリアは改めて俺に説明する。
「『剣血喝祭』。その名の通り血と剣でぶつかり合う地獄の祭典。年々これによる死亡者は全生徒の3分の1を超える程の危険極まりない祭なんだ。それも実際の戦争のようなものだよ」
「剣血……喝祭」
聞き覚えの無い単語を口ずさむ。それだけでこれはただの祭では無いことを思い知らされる。背筋が凍る。然り、それは恐怖によるものだった。
「勿論特殊区分の子も犠牲になることだってあるよ。だからオロチ君も、エレイナちゃんも一切の油断は許されないよ」
「……」
……もしかしたらここで俺達四人の誰かがその犠牲者の中に入るかもしれない。それだけはどうしても避けなくてはならない。それを運命は望んでいる。決して叶えてはいけない願望だ。
だが、もしそれがチーム戦ではなく個人戦だったら……もし俺が亜玲澄やエレイナ、正義と戦わなければならなくなったら……その時点で宿命への復讐劇は終わりなのだろうか。
「……オロチ君?」
「あ、いや……」
あまりに深刻そうな顔をしてたからか、ミスリアが心配そうな目で見てきた。あまり心配されるのも正直嫌なので上手く誤魔化す。
だが、ミスリアには完全にお見通しだった。
「……何か隠してる?」
「え……?」
「分かるよ。だって今のオロチ君、地獄を見たような絶望したような顔してるし」
「どんな顔なんだそれ……」
しかし、これから訪れる未来は下手したら本当に地獄になりかねない。俺が仲間を殺したり、あるいは殺されたりすればあの巫女に合わせる顔が無い。
「ねぇ、先生に言ってごらん?」
「ひっ――!」
突然ミスリアが近づいてきた。思わず離れるが、それ以上に近づいてくる。
……何だこれは。非常に気まずいぞこれ。ひょっとして変な地雷を踏んだのか俺は。
「ほ〜ら、遠慮しないで?」
「い、いや……その………えっと………………」
冷や汗が止まらない。思わず慌ててしまう。そんな俺を見て小悪魔のような笑みを浮かべながらミスリアが近づいてくる。
俺を永久に呪う運命の事をミスリアに言うべきなのか……そんな運命に復讐するために俺はここにいる事を言うべきなのか。
絶対に信じてもらえない……その確信的な思いが俺の口を塞ぐのだった。