木場大地
同時刻の久良目商業高校野球部部室。一年生の間には既に土曜日に明林高校と午後から練習試合を行うことが噂されていた。
高校で初めて試合に出られるかもしれない、と多くの一年生が期待に心を踊らせている。そんな中、同じ一年の木場大地の心は落ち着かなかった。
かつての親友でありライバルである伸哉の通う明林高校。伸哉が明林で野球をしているかは知らない。
もし、野球をやっていて試合で会うことになったら自分は何と言おうか。
少しだけ考えてみたが、いい言葉が思いつかない。それもそうだ。やったことが酷すぎる。何を言っても軽薄な言葉にしか聞こえないだろう。
大地は考えるのをやめた。
「それに自分は二軍に帯同させられそうだから、出ることはないかな」
大地はそう思っていた。一年で唯一ベンチ入りしている以上、チームの主力の一人と考えられているのは明白である。
そんな自分を一年生主体どころか、弱小校相手に投げさせるとは到底思えなかった。
しかし、運命は思いがけない方向に進んで行った。
「木場。ちょっとこっちへ来い」
古内から直接呼び出された。一軍で投げるのかはたまた二軍で投げるのか。大地は気楽に構えていた。
「実は明林と今週の土曜日に練習試合をするんだ」
古内が話してきたのは、やはりその練習試合の事だった。
「その試合のメンバーは一年主体で行こうと思っている」
大地は特に驚く事なく返事をした。ここまでは予想通りの内容である。
だが、自分に話をすると言うことは出番があると言う事だ
もしや……。大地はゴクリと唾を飲んだ。
「だから、お前をその試合の先発に持って行こうと思っとる。調整、しっかりしておけよ」
「はい」
もちろん嫌だった。嫌でたまらなかったが、そんなことは言ってられない。嫌という感情をおくびにも出さずはっきりと、静かにそう答えた。
「木場。お前には夏までに主力投手の一人になってもらいたい。相手は無名のチームだが気を抜くなよ」
古内は熱い目線を送った。大地が思ってた以上に古内の自分への期待は大きかったようだった。
監督室から出て来た大地は一人部室で着替えながら一人思いふけていた。
「あの頃が懐かしかったなー」
高校で初めて試合に出られるかもしれない、と多くの一年生が期待に心を踊らせている。そんな中、同じ一年の木場大地の心は落ち着かなかった。
かつての親友でありライバルである伸哉の通う明林高校。伸哉が明林で野球をしているかは知らない。
もし、野球をやっていて試合で会うことになったら自分は何と言おうか。
少しだけ考えてみたが、いい言葉が思いつかない。それもそうだ。やったことが酷すぎる。何を言っても軽薄な言葉にしか聞こえないだろう。
大地は考えるのをやめた。
「それに自分は二軍に帯同させられそうだから、出ることはないかな」
大地はそう思っていた。一年で唯一ベンチ入りしている以上、チームの主力の一人と考えられているのは明白である。
そんな自分を一年生主体どころか、弱小校相手に投げさせるとは到底思えなかった。
しかし、運命は思いがけない方向に進んで行った。
「木場。ちょっとこっちへ来い」
古内から直接呼び出された。一軍で投げるのかはたまた二軍で投げるのか。大地は気楽に構えていた。
「実は明林と今週の土曜日に練習試合をするんだ」
古内が話してきたのは、やはりその練習試合の事だった。
「その試合のメンバーは一年主体で行こうと思っている」
大地は特に驚く事なく返事をした。ここまでは予想通りの内容である。
だが、自分に話をすると言うことは出番があると言う事だ
もしや……。大地はゴクリと唾を飲んだ。
「だから、お前をその試合の先発に持って行こうと思っとる。調整、しっかりしておけよ」
「はい」
もちろん嫌だった。嫌でたまらなかったが、そんなことは言ってられない。嫌という感情をおくびにも出さずはっきりと、静かにそう答えた。
「木場。お前には夏までに主力投手の一人になってもらいたい。相手は無名のチームだが気を抜くなよ」
古内は熱い目線を送った。大地が思ってた以上に古内の自分への期待は大きかったようだった。
監督室から出て来た大地は一人部室で着替えながら一人思いふけていた。
「あの頃が懐かしかったなー」