残酷な描写あり
R-15
模擬戦!
屋外競技場へサムのクラス全員が集まり、レンとハウルはサムの前に立つ。
「まずは使える武器はコレ」
そこには古びた木剣や棍棒、布製のナックル等本当に入門用の武具が置いてあり、防具として木製の兜と胴当てがあった。
ハウルは迷わずに木剣を二振り手に取る。
片方の木剣は腰ベルトの隙間に乱雑に差し込む。
「ほう、二刀流か?」
「ちげぇよ!コイツと同じ武器なんて嫌だからな。取られないように持ってるんだよ」
「意地汚いな……」
サムは思わず口が滑ったような表情をしたが、クラスメイト全員思ったことだろう。
うんうんと首が縦に動いていたが、ハウルは気にしない。
図太さは一級品のようである。
レンは不思議な棒を見つけ、手に取る。
サムはそれを見てレンの肩に手を置く。
「それは入門者ように作られた魔道具だ。確か……【加速】の魔法が込められているとかだったな。オク……作ったヤツが戦いを知らないヒトでも使えるように実戦よりも出力をかなり低くしているって言ってたからちょうど良いかもしれないな!」
「これが、戦闘用魔道具……!」
レンは初めて握る戦闘用に作られた魔道具を手に取り、目を輝かせる。
それをしっかりと握り、レンはハウルに向き合う。
(いくら猫族とはいえ、この子はおっとりだ。ハウルは狩猟犬、ハウンド種の戦闘能力に差がありすぎる。だからイカサマくじ引きで実力の近いもの同士で対決してもらおうと思ってたんだがなぁ……。早めに切り上げさせよう)
「では、これより試合を始めさせてもらう。過剰な攻撃に対しては私が仲裁に入るから安心して戦うといい!両者構え……」
ハウルは余裕そうに構え、レンは半身になり、棒の先端をハウルに構える。
初めての戦闘で緊張と高揚感で身体が震える。
「……試合、始めっ!!」
サムにより戦いの火蓋が切って落とされた瞬間、レンの目の前にハウルが既に迫っていた。
その速さにレンは体を強張らせると、ハウルの剣撃が腹部にクリーンヒットし、吹き飛ばされ、ゴロゴロと地面を転がる。
「ヒャー!ダッセ!見たかコイツのビビった顔!あんな攻撃すらガードできないんだぜ?こんなんでよく調査隊に入ろうなんて考えるな?」
「ハウル、必要以上に相手を煽らないことだ。それに、まだ終わってないぞ?」
ハウルが振り向いた瞬間、鼻に石礫が当たり、パックリと裂ける。
犬族の急所とも言える鼻が負傷するとなると痛みは計り知れない。
ハウルは鼻を押さえて地面をのたうち回る。
「……ってて。さっきから何なんだ!ヒトをバカにするだけでお前は何を成したんだよ!口から出てくる自慢は全部父親じゃないか!」
レンの鋭い指摘にサムの腹筋は破壊され、クラスメイトの大半が大きく縦に頷く。
サムは肩を振るわせながら、レンを指差す。
「お前たち、悪口対決をしているんじゃないんだぞ?もっと真面目に戦うんだ!」
サムがそう告げた瞬間、ハウルは魔力を昂らせる。
魔力とは魔法を使うための力。
魔法は込められた魔力量と事象の認識度で威力が大きく変わる。
サムは怒りに燃え上がるような魔力の放出をしているハウルを見て、ポケットから薄手のグローブを取り出して装着する。
(これからが本番だ……。助けるのが遅れないようにしておかないとな……)
水色の紋様を空中に浮かばせるハウルは長い詠唱を始める。
「『体内に備わる大きな力よ。我の手足にその力を配らせ、全てを破壊する力を与えたまえ!』」
詠唱が終わった瞬間、ハウルの手足が赤いオーラに包まれる。
それは強化をする魔法ではよく見られる現象であり、レンは先程のように攻撃を受けないよう、顎を引き、杖を前にして構える。
「死ねえぇぇぇっ!」
到底訓練や演習とは言えないようなセリフが競技場に響き渡り、レンに向かって木剣が振り下ろされる。
しかし、油断をしていないレンはそれを軽々後方に飛び、回避する。
石礫を拾い上げ、魔法を付与していく。
【加速】の力を得た石礫はレンの手から放たれた瞬間、約百五十キロくらいの速度でハウルの顔面に目掛けて飛んでいく。
今度は顔面に当たることなく石礫を木剣で叩き落とし、再び構える。
しかし、古びていた木剣は叩きつけられ、高速で飛んで来る石礫を叩き落とした影響で粉々に砕け散る。
「そこの男子!競技場の倉庫に予備の木剣があるから持ってきてくれ」
「わ、わかりました!」
サムは荒れそうな試合を冷静に見て、仲裁のタイミングを図っていく。
ハウルはもう一本の木剣をベルトから抜き、構えようとした瞬間、レンの蹴りが木剣を弾き飛ばし、遠くで乾いた音を立てて転がる。
「テメェ!卑怯だぞ!」
「勝負の世界に卑怯もクソもないだろ!油断したハウルが悪いんだ!」
「な、何をーッ!」
ハウルの拳がレンの顔面に当たり、反動で地面を転がる。
レンも殴られたことで尻餅をついていたが、立ち上がって口を拭う。
すると口の中を切っていたのだろう。
出血しており、レンの中でスイッチがオンになった。
「大体お前は何なんだよ!ヒトの夢をバカにしたり何だの!」
レンの拳がハウルの顎にヒットし、仰け反る。
「うるせぇっ!俺はお前みたいなナヨナヨしたヤツが目立つのが嫌いなんだよ!」
ハウルも負けじとレンに掴みかかり、地面に叩きつける。
あとはもう滅茶苦茶である。
引っ掻いたり、殴ったり、噛みついたりと獣の争いである。
大怪我に至る前にサムに引き離され、二人の頭に雷が落とされたのだった。
「まずは使える武器はコレ」
そこには古びた木剣や棍棒、布製のナックル等本当に入門用の武具が置いてあり、防具として木製の兜と胴当てがあった。
ハウルは迷わずに木剣を二振り手に取る。
片方の木剣は腰ベルトの隙間に乱雑に差し込む。
「ほう、二刀流か?」
「ちげぇよ!コイツと同じ武器なんて嫌だからな。取られないように持ってるんだよ」
「意地汚いな……」
サムは思わず口が滑ったような表情をしたが、クラスメイト全員思ったことだろう。
うんうんと首が縦に動いていたが、ハウルは気にしない。
図太さは一級品のようである。
レンは不思議な棒を見つけ、手に取る。
サムはそれを見てレンの肩に手を置く。
「それは入門者ように作られた魔道具だ。確か……【加速】の魔法が込められているとかだったな。オク……作ったヤツが戦いを知らないヒトでも使えるように実戦よりも出力をかなり低くしているって言ってたからちょうど良いかもしれないな!」
「これが、戦闘用魔道具……!」
レンは初めて握る戦闘用に作られた魔道具を手に取り、目を輝かせる。
それをしっかりと握り、レンはハウルに向き合う。
(いくら猫族とはいえ、この子はおっとりだ。ハウルは狩猟犬、ハウンド種の戦闘能力に差がありすぎる。だからイカサマくじ引きで実力の近いもの同士で対決してもらおうと思ってたんだがなぁ……。早めに切り上げさせよう)
「では、これより試合を始めさせてもらう。過剰な攻撃に対しては私が仲裁に入るから安心して戦うといい!両者構え……」
ハウルは余裕そうに構え、レンは半身になり、棒の先端をハウルに構える。
初めての戦闘で緊張と高揚感で身体が震える。
「……試合、始めっ!!」
サムにより戦いの火蓋が切って落とされた瞬間、レンの目の前にハウルが既に迫っていた。
その速さにレンは体を強張らせると、ハウルの剣撃が腹部にクリーンヒットし、吹き飛ばされ、ゴロゴロと地面を転がる。
「ヒャー!ダッセ!見たかコイツのビビった顔!あんな攻撃すらガードできないんだぜ?こんなんでよく調査隊に入ろうなんて考えるな?」
「ハウル、必要以上に相手を煽らないことだ。それに、まだ終わってないぞ?」
ハウルが振り向いた瞬間、鼻に石礫が当たり、パックリと裂ける。
犬族の急所とも言える鼻が負傷するとなると痛みは計り知れない。
ハウルは鼻を押さえて地面をのたうち回る。
「……ってて。さっきから何なんだ!ヒトをバカにするだけでお前は何を成したんだよ!口から出てくる自慢は全部父親じゃないか!」
レンの鋭い指摘にサムの腹筋は破壊され、クラスメイトの大半が大きく縦に頷く。
サムは肩を振るわせながら、レンを指差す。
「お前たち、悪口対決をしているんじゃないんだぞ?もっと真面目に戦うんだ!」
サムがそう告げた瞬間、ハウルは魔力を昂らせる。
魔力とは魔法を使うための力。
魔法は込められた魔力量と事象の認識度で威力が大きく変わる。
サムは怒りに燃え上がるような魔力の放出をしているハウルを見て、ポケットから薄手のグローブを取り出して装着する。
(これからが本番だ……。助けるのが遅れないようにしておかないとな……)
水色の紋様を空中に浮かばせるハウルは長い詠唱を始める。
「『体内に備わる大きな力よ。我の手足にその力を配らせ、全てを破壊する力を与えたまえ!』」
詠唱が終わった瞬間、ハウルの手足が赤いオーラに包まれる。
それは強化をする魔法ではよく見られる現象であり、レンは先程のように攻撃を受けないよう、顎を引き、杖を前にして構える。
「死ねえぇぇぇっ!」
到底訓練や演習とは言えないようなセリフが競技場に響き渡り、レンに向かって木剣が振り下ろされる。
しかし、油断をしていないレンはそれを軽々後方に飛び、回避する。
石礫を拾い上げ、魔法を付与していく。
【加速】の力を得た石礫はレンの手から放たれた瞬間、約百五十キロくらいの速度でハウルの顔面に目掛けて飛んでいく。
今度は顔面に当たることなく石礫を木剣で叩き落とし、再び構える。
しかし、古びていた木剣は叩きつけられ、高速で飛んで来る石礫を叩き落とした影響で粉々に砕け散る。
「そこの男子!競技場の倉庫に予備の木剣があるから持ってきてくれ」
「わ、わかりました!」
サムは荒れそうな試合を冷静に見て、仲裁のタイミングを図っていく。
ハウルはもう一本の木剣をベルトから抜き、構えようとした瞬間、レンの蹴りが木剣を弾き飛ばし、遠くで乾いた音を立てて転がる。
「テメェ!卑怯だぞ!」
「勝負の世界に卑怯もクソもないだろ!油断したハウルが悪いんだ!」
「な、何をーッ!」
ハウルの拳がレンの顔面に当たり、反動で地面を転がる。
レンも殴られたことで尻餅をついていたが、立ち上がって口を拭う。
すると口の中を切っていたのだろう。
出血しており、レンの中でスイッチがオンになった。
「大体お前は何なんだよ!ヒトの夢をバカにしたり何だの!」
レンの拳がハウルの顎にヒットし、仰け反る。
「うるせぇっ!俺はお前みたいなナヨナヨしたヤツが目立つのが嫌いなんだよ!」
ハウルも負けじとレンに掴みかかり、地面に叩きつける。
あとはもう滅茶苦茶である。
引っ掻いたり、殴ったり、噛みついたりと獣の争いである。
大怪我に至る前にサムに引き離され、二人の頭に雷が落とされたのだった。